地球温暖化、気候変動、温室効果ガス、CO2

1988年、NASA(アメリカ航空宇宙局)のジェームズ・ハンセン (James Hansen) が、「人類の経済活動に由来するCO2等の温室効果ガス排出によって、『地球温暖化』が進行している」と発表。同年、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が創設。5~6年毎に報告書作成

IPCCとは、気候変動に関する政府間パネル (Intergovernmental Panel on Climate Change) 。1988年に創設された地球温暖化についての調査機関で約5年ごとに報告を作成。130ヵ国以上から800名以上の科学者が協力。2007年ノーベル平和賞

企業の社会的責任(CSR)が普及するきっかけになったのが「地球温暖化」。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば「人類由来の(CO2等の)温室効果ガスの影響を考えなければ産業革命以来の(これまでの)地球温暖化は説明できない」。つまり企業活動が環境に影響したことの科学的証明

スターン報告とは、2006年に世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターン卿が発表した地球温暖化(気候変動)に関する報告書。正式名は "The Economics of Climate Change" (気候変動の経済学)。気温が6℃上昇したら世界はGDPの20%を喪失するなど

資本主義社会のまま低炭素社会を作るには、好むと好まざるとに関わらず「炭素市場」(カーボン・マーケット)を作り、温暖化対策等を行おうとする国や企業が排出権(等の利益)を得られるシステムを作らねばならない。が、その前に必要なのが、現在各国が自己申告しているCO2排出量が信頼できるか?

地球温暖化を考える時、全く異なる三つの議論をする必要がある。1)過去の産業革命以後二百年ぐらいの間、人類由来CO2によって温暖化がより進行したのは多分正しい。2)今後の百年、温暖化が進行する確立は70%程度で30%はそうはならない。3)遠い未来の百年以上先は誰にも全く予想できない

経団連は製造業・エネルギー産業34業種による2009年度のCO2排出量を公表。景気低迷により京都議定書が削減の基準年とする1990年度比で16.8%減の4億2170万トン。一方、京都議定書の削減約束期間である08年度から12年度まで5年間の排出量予測は年平均で90年度比8.2%減

環境省と日本経団連の懇談会。松本龍環境相は「温暖化は待ったなし」。経団連の米倉弘昌会長は、「世界的に厳しい経済情勢の中、日本は唯一の規制強化の国。経済や産業の活力をそがぬように」。地球温暖化対策基本法案は2020年のCO2等を1990年比で25%削減。環境税や排出量取引制度の導入

「鉄鉱石の物産」と呼ばれるほど鉄鋼に依存する三井物産だが、日本の産業セクターごとCO2排出量を調べると最も多いのが発電と鉄鋼。今後、鉄鋼事業は縮小か?これに関係してか(三井物産の輸入先の)オーストラリアも2012年に資源税(炭素税?)を40%に増税。同社は戦略の見直しをせまられる

温室効果ガス排出量は2009年に世界で308億トン(CO2換算)になり08年より1.3%減ったという論文を英米仏等の研究チームが2010年11月の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(電子版)に。世界の排出量が減少するのは21世紀に入ってからは初めて。 ただし世界的な経済不況の影響

2010年11月、ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場では、1バレル=87.81ドルと2年1カ月ぶりの高値。国際エネルギー機関(IEA)は、各国の地球温暖化対策が現状レベルで推移した場合、1バレル=243.8ドルと、09年の60.4ドルから4倍超に大幅上昇すると試算

気候変動に関する議論での緩和と適応。1)緩和とはCO2削減。が、中国、インドなどの経済成長を続ける国が絶対的CO2総排出量の削減をする気がないためEUと日本だけやっても無駄な状況。2)適応とは、温暖化が起こってしまった場合の対策。海面上昇に対する護岸、高温に適応する農作物の開発等

「国際協力機構・年次報告書2010」。2010年11月に発行。巻頭に10の事実。1)47カ国で小中学校の34000教室を整備。210万の児童。研修受けた教師20万人。2)エジプト風力発電事業で年間25万トン分のCO2削減。3)1400万haの森林・生態系保全。受益者1100万人。

「二国間(温室効果ガス)オフセット・メカニズム」とは、例えば、日本企業がインドネシアに高効率の石炭火力発電設備を提供する。それにより大幅に削減されるCO2を、二国間協定で「国際クレジット」と認定し分配。日本は企業の収益になるだけでなく、そのクレジットを「1990年比25%削減」に

「二国間(温室効果ガス)オフセット・メカニズム」が考えだされた背景は、「京都議定書」の中にあった「クリーン開発メカニズム」(CDM)が、事実上、あまりつかえないため。審査が厳しく、新規のものはほとんど認められない。二国間のメカニズムだと利害が一致しやすいので企画が簡単に通り易い

インドネシアの熱帯雨林では毎年森林火災と「泥炭火災」。森が数万年かけて吸収したCO2を一気に放出。しかし発生するCO2が定量できなかったため「クリーン・デベロップメント・メカニズム」(CDM)の対象外。今後、人工衛星からのCO2測定で、先進国が排出権獲得のために資金援助する可能性

人工衛星「いぶき」による宇宙からのCO2観測で新たにわかるのが先進国からの排出量よりもむしろ熱帯雨林などがある途上国や新興国の実態。インドネシアやマレーシアでは開発による森林減少と泥炭火災。ロシアでは永久凍土が溶けてメタンが発生。こうした部分はこれまで定量的に検証されていなかった

宇宙から温暖化を監視する人工衛星「いぶき」。世界各国のCO2排出量はこれまで各国の自己申告だった。はっきり言えば中国などがどれだけ排出しているか不明だった。また地球上のCO2観測点の数は限られており、またムラがあり、とても信用できるものではなかった。これらの問題が改善可能になった

地球温暖化による海面上昇で将来、水没の恐れがある島を「星砂」で救う試みを東京大の茅根創教授や国立環境研究所などが南太平洋のツバルで開始。島を構成する堆積物に占める有孔虫の割合は、全体の5~7割だった。ところが近年は人口が増え、市街地に近い海では、水質悪化のため有孔虫の減少していた

地熱発電(Geothermal power)は自然エネルギー(再利用可能エネルギー)の一つで火山の多い日本では有効。通常は蒸気発電(flash steam)でマグマの熱で生成された水蒸気でタービンを回して電気へ変換。しかしこの水蒸気中に大量のCO2を含み地球温暖化対策には使用不可

2009年の気候変動枠組み条約COP15で「コペンハーゲン合意」に留意(take noto)。途上国への支援に関し、1)短期支援(2012年までに300億ドル)、2)長期支援(2020年までに1千億ドル)、3)REDD(植林の取組に加え森林の減少・劣化に起因するCO2の排出削減)

「コペンハーゲンの失敗」とは2009年12月気候変動枠組条約COP15において、1)先進国と新興国が激突。アメリカ対中国、フランス対インド・中国。2)国連の限界。各国の利害の主張だけ。3)議長国デンマークの不手際。先進国側の事前協定が途上国にばれた。大陸ごとの集会も根回しだと非難

生物多様性COP10は2009年の「気候変動枠組条約でのコペンハーゲンの失敗」を繰り返さないため途上国が途中で方針を変更し先進国からより多くの金を引き出す戦略に。日本もこれに対応し、3回に分けて資金援助を徐々に上積みしてゆく戦略をとった。この結果、先進国の案が、ほぼそのまま通った

2010年5月の新たな国際的枠組みは森林を保全する途上国に資金や技術を提供しCO2排出の削減。69カ国が参加。2012年までに先進国が40億ドルを支援。途上国は得られた資金で森林伐採や焼き畑停止で収入を失う住民の生活支援や植林。先進国は協力事業で削減できたCO2を排出枠として獲得

「人類由来CO2による地球温暖化」を支持するデータは、実は捏造されていたことが発覚した「クライメートゲート事件」。知らなかった人は、是非ご一読を http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65340863.html

家庭における二酸化炭素排出量の計算は、それぞれにCO2排出係数をかけて合計。電気(kWh)x0.39、都市ガス(m3)x2.1、LPガス(プロパン)(m3)x6.5、水道(m3)x0.36、灯油(L)x2.5、ガソリン(L)x2.3、軽油(L)x2.6、可燃ごみ(kg)x0.34

省エネ住宅(省CO2住宅)とは、1)屋根に太陽光発電・温水器、2)断熱性の高い壁・床・天井・窓サッシ、3)窓の前で植物を育てスクリーンとし、夏の間は日射遮蔽。冬は枯れて陽光を部屋に入れる。4)効率のよい給湯機器。5)エアコンは夏は28度、冬は20度に設定。暖房は冷房より環境に負荷

「高校生でもできる国際協力はありますか?」 温暖化による気候変動で降水量が減り水不足から農業ができず餓死したり水の奪いあいの戦争が発生。だから温暖化を止めること。コンビニ等でチョコなどのお菓子を買う時に、どの会社が一番CO2を出さないで商品を作っているかまず調べ、それから買うこと

映画 「ツバル 大切なものに導かれて」 をとりあげて頂いた、記事の記録。 「ツバルを守りたい 温暖化で沈んでしまう…」 中日新聞・中高生Weekly 2008年4月21日の記事 http://edu.chunichi.co.jp/weekly/?p=63

「ラジオ版 学問ノススメ」に出演した時の記録が残っていました。MP3でダウンロードし、全ての内容を聞けます。前半は地球温暖化、後半は国際協力師の話しです。2008/3/30放送分。以下のサイトの真ん中よりやや下 http://www.jfn.co.jp/susume/y2008/

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生態系の保護、説滅危惧種

1958年から1960年まで中国の毛沢東は、農工業の大増産政策(大躍進政策)を実施。その一つが四害駆除運動。スズメ、ハエ、カ、ネズミが四害とされ、特にスズメは農作物を喰い荒すとして1年間で11億羽以上を捕獲。その結果、スズメが捕食していた昆虫類が増え害虫となり、逆に農業生産は減少

1988年に「生物多様性」という言葉を産み出したハーバード大学のエドワード・ウィルソンは「バイオフィリア仮説」を提唱。バイオフィリアとは生物への友愛。人間は自発的・本能的に他の生物や生命に関心を抱き、『街頭に引き寄せられる蛾のように生命に引き寄せられていく』傾向がある、としている

自然界からの生態系サービスには4つある。1)供給サービス(木材、食糧、水、燃料などを提供)、2)調節サービス(死体の分解や廃棄物処理、気候の安定化など)、3)基盤サービス(光合成による炭水化物生産、窒素固定、授粉など)、4)文化的サービス(伝統、芸術、観光旅行、精神的活動など)。

サービスとは、1)経済学の用語のおける「無形の財」。2)法律学の擁護では「役務」。前者の意においてのサービスは、A)売り買いした後に物が残らず、生産と同時に消費される、B)品質は一定でなく、C)在庫をすることが不可能、D)事前に商品を見たり試すことが困難。第三次産業が取り扱う商品

2001~2005年、国連等のグループが行った「ミレニアム生態系評価(MA)」によれば「生態系サービスにはまず基盤サービスがあり、その上に供給サービス、調節サービス、文化的サービスという三つが乗っている。それにより、1)安全、2)豊かな生活の基本資材、3)健康、4)良い社会的な絆

生態系サービスの中の供給サービスの例。現在、人類は、年間1億3千万トンの水産物を海や川から手に入れている。その金額は一千億ドル(10兆円)にのぼるとされる。さらに、生物資源・遺伝資源からは、医薬品、食品添加物、栄養補助食品などが先進国で作られており、45~70兆円の市場規模がある

生態系サービスの中の調節サービスの例。マングローブは河口等に住む植物群の総称だが、サンゴ礁と並んで、1)高潮や津波、台風の時の暴風雨などから沿岸を守り被害を軽減する天然の防波堤(護岸効果)。2)多くの魚介類の産卵の場であり生息の場を提供。落とした種子から食物連鎖。生物多様性の保持

ハイチは国が貧しかったため、かつては国土の全域を覆っていた森林のほとんどを伐採し売ってしまった。残っているのは1%のみ。このため毎年のようにハリケーンによる大きな災害を受けている。一方、ドミニカ共和国は、大統領の強権もあり、28%の森林が保持されているためハリケーンの被害が少ない

全ての生物の栄養源を作っているのは、植物の光合成。大気中の二酸化炭素(CO2)と土壌中の水(H2O)から炭水化物を作る。しかし豆科の植物は蛋白質も大量に作るため、窒素(N)も必要になる。どうやって窒素を得ているのかと思ったら、根粒菌という細菌が根に寄生しており、大気中の窒素を固定

人間が栽培している農作物1500種のうち約半分が蜂などの授粉媒介動物に頼っている。EUが2006年オランダとイギリスで蜂の数を調査。オランダでは67%、イギリスでは52%の区画で蜂が減少。授粉媒介動物が人間にもたらす利益は年間1530億ユーロ(19兆円)。世界の農業生産額の約1割

アメリカ、スミソニアン熱帯研究所のルービック博士は科学雑誌「ネイチャー」に「花粉を媒介する蜂がいるコーヒー畑では豆の収量が最大50%多くなる」と発表。また「近年、各国で単位面積あたりのコーヒーの収量が落ちているのは大規模な開発で、授粉等に必要な昆虫が生息できなくなったことも一因」

2004年アメリカ、スタンフォード大学のポール・エーリッヒ博士は鳥類による「生態系サービス」として4つを挙げた。1)種子散布(依存する植物の種の維持)、2)授粉(近親交配の予防、着果率(実を付ける割合)の増加)、3)腐肉の消費(病気の流行防止)、4)捕食(虫害抑制、収穫量の増加)

動物の絶滅危惧種が多い国、1)アメリカ、948種、2)オーストラリア、733種、3)インドネシア、701種、4)メキシコ、636種、5)マレーシア、455種、6)コロンビア、429種、7)フィリピン、425種、8)インド、413種、9)中国、370種、10)エクアドル、369種

植物の絶滅危惧種が多い国、1)エクアドル、1839種、2)マレーシア、686種、3)中国、446種、4)インドネシア、386種、5)ブラジル、382種、6)カメルーン、355種、7)マダガスカル、281種、8)スリランカ、280種、9)ペルー、275種、10)メキシコ、261種

生物多様性のリスク管理に使える「生物多様性統合アセスメントツール」(IBAT)は、国連環境計画(UNEP)、バードライフ・インターナショナル、コンサベーション・インターナショナル(CI)、国際自然保護連合(IUCN)の4つの自然保護団体が共同で実施。無数にあったデータを統合した

IBATとは、生物多様性統合アセスメントツール(Integrated Biodiversity Assessment Tool )。世界各地の情報を統合し提供。国連環境計画、国際自然保護連合(IUCN)、コンサベーション・インターナショナル、バードライフ・インターナショナルが共同

森林面積の減少面積(FAO、 2000~2005年、万ha/年)、1)ブラジル310、2)インドネシア187、3)スーダン59、4)ミャンマー47、5)ザンビア45、6)タンザニア41、7)ナイジェリア41、8)コンゴ民主共和国32、9)ジンバブエ31、10)ベネズエラ29

世界の森林面積は40億haと陸地の3割。CO2を吸収し酸素を作り、水や土壌を守り、食料や木材を供給。熱帯雨林は薬効成分を持つ有用な植物等の宝庫。が、途上国の違法伐採や農地・牧草地への転換などで減少。FAOによると、東南アジアやブラジルで日本の森林の3分の1の730万haが毎年減少

「愛知ターゲット」20項目。認識、政府計画、有害措置廃止、関係者、自然生息地の損失速度、漁業、農林業、過剰栄養、外来種、気候変動、保護地域カバー率、絶滅危惧種、栽培種の遺伝多様性、生態系サービスの公平なアクセス、生態系回復、ABS(利益分配)、国家戦略、伝統的知識、科学技術、資金

国連環境計画(UNEP)金融イニシアチブの末吉竹二郎特別顧問は、「生物多様性の損失も温暖化問題同様、人間の経済活動が原因。環境保全コストを企業活動に取り込むことが重要で、今回の会議はその気づきとして欲しい」。愛知ターゲットの個別目標20個を国や地域の開発計画にどう盛り込むかが重要

生態系保全の世界共通目標についてEUは強硬に高い目標を主張していた。この理由は、1)地球温暖化防止でCO2排出権取引を決める際、そのルールをEUが初めて導入するなど世界を主導し、EU内の企業と市場が優位に立った。2)生物多様性でもそれに対応できるEU内の企業を有利に導きたかった?

生物多様性版IPCCが2010年秋発足。2001~05年、世界中の科学者が参加した「ミレニアム生態系評価(MA)」、05~08年IMoSEB(生物多様性に関する科学専門家国際メカニズム)、08年より、IPBES(生物多様性と生態系サービスに関する科学-政策政府間プラットフォーム)

生物多様性の保全をテーマにした初めての国連首脳級会合が2010年9月22日に開催。冒頭で前原誠司外相が提案。1)今後10年間を生態系保全のための集中的な行動期間「国連生物多様性の10年」、2)「生物多様性と生態系サービスについての政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」設置

"IPBES"とは、「生物多様性と生態系サービスに関する科学-政策政府間プラットフォーム」(Intergovernmental Science and Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)。2010年秋発足

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TEEB(生態系と生物多様性の経済学)

1997年、アメリカ、メリーランド大学の経済学者、ロバート・コンスタンザは、16種類の生態系を調べその価値を試算した。1年間1ヘクタール当たりの経済的価値が最も高いのは、「河口域の生態系」。生活排水に含まれるリンや窒素を処理するには、大きな下水処理場と多大なランニングコストが必要

ロバート・コンスタンザが生態系サービスの価値を試算した所、1年間当たり33兆ドル(3300兆円)だった。これは当時の世界の国内総生産(GDP)が18兆ドルだったので、その1.8倍になるという数字だった。この頃、まだ温暖化に影響するCO2の吸収などは加味されていなかったのに、である

ロバート・コンスタンザによる生態系サービス。大気成分の調節、気候の調節、撹乱の調節(森林による暴風雨からの保護等)、水の調節、水資源の供給、土壌侵食の制御、栄養分の循環、廃棄物の処理、授粉、生物の数のコントロール、隠れ場所の提供、食糧供給、原材料、遺伝資源、レクリエーション、文化

生態系と生物多様性の経済学(TEEB)は2007年3月ドイツのポツダムで行われたG8 環境大臣会合にて「ポツダムイニシアティブ」により、生物多様性の地球規模の喪失に関する経済評価の重要性が指摘。気候変動と経済に関するスターンレビューの生物多様性版とも称されるTEEB活動が承認。

「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB : The Economics of Ecosystems and Biodiversity study )とは、生態系の破壊や生物多様性の減少がもたらす経済学的な被害を定量的評価する枠組み http://www.teebweb.org/

「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)には、2つの目的。1)「スターンレビュー」と同様に、現状のまま特に対策をとらない場合、生物多様性が損なわれることによる経済的・社会的損失の規模を示す、2)各国の政策決定者や地方自治体、(企業の)事業者や市民に対して、具体的な対処方法を示す

TEEB最終報告は、D0:理論編)科学的・経済学的な基盤、D1:政策決定者向け)生態系への支払い制度(PES)やREDD(森林減少による排出削減)、D2:地方自治体向け)意思決定の選択肢、D3:事業者向け)リスク管理と、ビジネスチャンス、D4:一般市民向け)ウェブで消費選択の参考

2008年、ドイツのボンで開催された、生物多様性条約・COP9で発表されたレポートが、「生態系と生物多様性の経済学」(The economics of ecosystems & biodiversity : TEEB)の中間報告。TEEBは生物多様性版のスターンレビューと呼ばれる

TEEBは2007年の中間報告では森林のみが分析の対象となっていたが2010年のCOP10では海洋生態系やサンゴ礁などのバイオーム(生物群系)も対象に。貧困問題や国連ミレニアム開発目標(MDGs)との関連についても包括的な分析。生態系の状態を評価し経済モデルに用いる指標群の開発も

TEEB中間報告によれば、我々が失っている生態系サービスの価値は、陸域をベースとした生態系だけを考慮しても毎年約6650億円の規模に相当。対策をとらない場合、生態系や生物多様性が損なわれることによる経済的損失の規模は、2050年までに控えめに見積もっても世界のGDPの7%に達する

TEEB中間報告では、1)対策を取らない場合、生態系が損なわれることによる経済的損失は、2050年までに世界のGDPの7%。2)生態系サービスの最大の受益者は貧困層。3)生態系の経済評価において高い「割引率」を適用することは、自分たちの子孫世代が受ける利益を不当に低く評価する恐れ

TEEB中間報告では、「割引率」に関する問題提起。経済評価を行う際、将来の価値は一定の「割引率」で割り引いた上で現在価値に換算。例えば4%の割引率を50年間にわたって適用すると、自分たちの孫の世代が将来の生物多様性から受ける利益を現在の価値の7分の1程度にしか評価しないということ

TEEBは、1)「生態系インフラへ」について、保護地域に450億ドルを投資し年間5兆ドル規模の生態系サービスの確保、2)「サンゴ礁保護」について、海岸浸食の防止・魚類の育成等は年間1700億ドルの価値。が、世界が目標とするCO2濃度450ppmの安定化では海水酸性化等でサンゴ死滅

「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)では、低所得国、貧困層ほど生態系サービスの毀損(きそん)の影響がより強く及ぶことを指摘。これが正しければ新興国・途上国の開発政策も生物多様性保全を考慮に入れる必要がある。これまでの開発政策は貧困撲滅を最終目標として対内投資誘致による工業化

TEEB中間報告によれば、生態系サービスや生物多様性と貧困問題の結びつきに関するインドでの研究結果によると、森林の生物多様性や生態系サービスの最大の受益者は貧困層であること、また生物多様性や生態系サービスが失われることによって最も大きな影響を受けるのも、貧困層の収入保障や生活福祉

TEEBは"Climate Issues Update"で生態系サービスに対する国民所得会計(National Income Accounting)の導入と、生態系インフラ(Ecological Infrastructure:自然と人工的生態系の両方を統合した概念)への投資を主張

TEEBの政策立案者向け提言の例。タイ南部のマングローブを切り開いて造ったエビ養殖場は、1,200ドル/ha(ヘクタール)の収益を上げる。しかしこれはマングローブ林から得られた木材の供給や漁業収益、沿岸保護の損失コスト(12,000ドル/ha)を考慮していない。つまり10倍の損失

TEEBの最終報告のD3が、企業を含む事業者向け。生物多様性に関するリスクをどのようにして事前に予見し、回避・低減することができるか。海外ではibat(生物多様性のための統合アセスメントツール)やBBOP(ビジネスと生物多様性オフセットプログラム)などの「リスク管理ツール」の開発

"BBOP"とは、「ビジネスと生物多様性オフセットプログラム」(The Business and Biodiversity Offsets Program)。各国の試験的オフセット事業の紹介をしオフセットの普及を目指す http://bbop.forest-trends.org/

2008年の生物多様性COP9の決議には、民間企業が取り組む最優先事項として、「BBOP(ビジネスと生物多様性オフセットプログラム)と協力して生物多様性オフセットのケーススタディーや各種ガイドライン、さらには国や地域の関連政策の枠組み作りをCOP10に向けて作成する必要性」が明記

TEEBの最終報告のD3では、生物多様性に関連した新しいビジネスチャンスも紹介。生物多様性オフセット、生物多様性バンキング、REDD(森林減少・劣化による排出削減)、といった生物多様性保全に関連するビジネスチャンスの拡大。エコツーリズムや有機農産物など急速に拡大しているマーケット

"REDD"とは、「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減」(Reduced Emissions from Deforestation and forest Degradation)。途上国における森林の破壊や劣化を回避し、温室効果ガス(二酸化炭素)の排出を削減しようとすること

TEEB最終報告の具体例。1)森林破壊を止めCO2増加を止めることでNPV(現在価値)換算で370兆円。2)乱獲する漁業で毎年4兆円が損失。3)サンゴ礁喪失で年2兆4千億~1兆4千億円の損失。4)市街地への40万本植林による冷房利用抑制で5,400億円~1,600億円(4年間)

「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)最終報告。ハワイのサンゴ礁の価値は年3億6千万ドル。乱獲による漁業資源損失は全世界で年500億ドル、カメルーン熱帯雨林が温暖化防止効果は1ヘクタール当たり年最高2265ドル等。世界の生態系破壊による経済損失は年間5兆ドル(405兆円)以上

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PES(生態系サービスへの支払い制度)

"PES"とは、「生態系サービスへの支払い制度」(Payment for Ecosystem Services)のこと。汚れた水や空気を人間が浄化するより生態系にそのサービスを提供してもらった方が費用が安く済む。そのサービスの対価、ないしはそのサービスの維持管理コストを支払おう。

PES (生態系サービスへの支払い)は、中米や東南アジアでその導入が続いている。理由は、森林管理を行うための、植林・間伐・持続可能な利用・不法利用者の取り締まりなどのために雇用が生まれ「貧困の削減」につながり一石二鳥。資金は排出権クレジットを(気候変動監査の)OCICが海外に転売

PES (生態系サービスへの支払い)の国レベルでの例は、コスタリカの森林保全。(森林はCO2を吸収するので)国民からガソリン税を徴収、また森林の吸収するCO2によって得られた排出権クレジットを「国家森林財政基金」に貯蓄。ここから土地所有者へ、森林保全を行った面積に応じ対価の支払い

PES (生態系サービスへの支払い)の例としては、フランスのミネラルウォーター会社ヴィッテル。1980年代、(ヴィッテルと関係ない地元農家の)畜産と飼料栽培が盛んになるにつれ、商品の水源が硝酸塩と農薬で汚染された。農家と交渉をし、農業慣行を変更してもらい、その費用を補填することに

PES (生態系サービスへの支払い)に関して、森林率が84%で全国1位の高知県は2003年度に日本で初めて森林環境税を導入。個人・法人県民税に均等割で(1人または1社当たり)年500円を上乗せし集められた年間1億7000万円を間伐等の森林環境保全に使用。この手法が全国30県に拡大

PES (生態系サービスへの支払い)の応用例として、淀川流域では、1965年から大阪府、大阪市、兵庫県などによる「下流費用負担」が実施され、琵琶湖周辺で水源林が造成されている。(大都市を擁する場合が多い)下流域の自治体が、上流の水源を擁する自治体に対して、水源林の費用の一部を負担

PES (生態系サービスへの支払い)を、ソニー・セミコンダクタ九州が実施。半導体製造のために大量の清浄な水が必要。熊本市は白川中流域の水田による「かん養」により地下水が豊富だったが近年は減少。このため熊本市は湛水(水張り)を奨励。湛水期間に応じて助成金を支払う。ソニーはこれに参加

PES (生態系サービスへの支払い)を日本では飲料メーカー、ビールメーカー等が実施。アサヒビールは「アサヒの森」として水源林を社有林として保全。キリンビール、サントリー、コカ・コーラなどは、国または地方自治体が統轄する「企業の森」・「法人の森」制度に参加し、間接的に水源林を保全。

「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」がその報告書で生態系サービスを活用した成功事例として兵庫県豊岡市のコウノトリ復帰を紹介。餌になる生き物が生息できるよう農薬を控えた米づくりを実施。この米は通常よりも5割高い値で売れた。コウノトリの野生復帰で観光客が増え市の収入が1・4%増

「空気は、無料ではなかった。土も、水も、森も、林も、そして『光』さえも、決して無料ではなかったのだ。今、その勘定書が回ってきた。人間たちがこの『ツケ』を返済しないかぎり、大自然は地球の上に人間たちが住むことを許さないだろう。未来永劫、決して、許さないだろう 」 井上ひさし(作家)

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グリーンエコノミー

グリーンエコノミーとは環境に優しい経済(低炭素な経済)。欧州委員会ニコラス・ヘンリーによると「経済危機と気候変動に伴い“グリーン経済”に向けた期待が高まってる。ビジネスチャンスの可能性。既にEU内で、1)440万人の雇用、2)GDPの2.3%、3)他の部門をしのぐ年率8%の成長」

グリーンエコノミーが動き出す~COP10 TEEB-DAYを振り返る~ 11月29日(月)午後6時30分から午後8時30分 世界銀行情報センター(PIC東京) 生物多様性条約市民ネットワーク、IUCN日本 共催 http://go.worldbank.org/HJ1HZIASY0

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CRM(慈善運動関連マーケティング)

CRM(Cause Related Marketing)とは、社会的問題解決のために、企業が持っているマーケティング等の力を生かすと同時に、売り上げやブランドイメージアップも目指す手法。売上げの一部をNPOなどの連携先団体に寄付する形が多い。消費者も間接的に社会問題解決に関われる

CRM(Cause Related Marketing)は、日本語では、「慈善運動に関連したマーケティング」、またはそのまま、「コーズ・リレーテッド・マーケディング」と訳される。この場合の"cause"は、原因や目的という意味ではなく、(人を動かすための)理念・信念・大義のこと。

CRM(慈善運動関連マーケティング)の対象となる商品は、コモディティ化しやすい日用品や食料品が多く、支援対象先も「女性」や「子ども」など商品の購入者層(主に主婦)が共感しやすい内容に。企業とNPO等の連携目的は、企業側は、商品の差別化・社会貢献。NPO側は、団体の知名度上昇・寄付

コモディティ化とは、競争が激しい商品の間では、その特性(機能、品質、ブランド力など)が失われてしまうこと。このため商品の差別化が困難になり、消費者にとってはどこのメーカーの商品を購入しても大差のない状況に。これを打開するため、環境配慮、CSR配慮、社会貢献性などをアピールする戦略

CRM(慈善運動関連マーケティング)のC(cause)は、「良いことなので援助をしたくなるような対象」のことをいい、その結果、消費者がその商品を購入する確率を上昇させる。日本ではコーズとして、環境問題系が人気。消費者が主婦の場合、女性・子どもの支援。アメリカでは人権等多彩なコーズ

CRMの活用。1)新車購入前の試乗1キロ毎に環境保護に10円募金。試乗率アップ。2)洋服店が古着回収し途上国寄付してると来店率アップ。3)懸賞を行い落選しても応募1口当たり1円を途上国の母子に寄付。落選者のイメージダウン防止。4)商品が社会的課題に取り組んでいるというイメージ定着

ユニクロは、2006年以降、国際連合難民高等弁務官(UNHCR)と連携し、ネパールにあるブータン難民キャンプなどで、衣類の支援を実施。店頭で客から回収した中古の衣類を、12カ国で200万枚以上、難民や国内避難民に届けた。 http://www.uniqlo.com/jp/csr/

CRM(慈善運動に関連したマーケティング)の例。ダノンウォーターズオブジャパンはユニセフと連携し「1L for 10L」プログラムを2007年より実施。ミネラルウォーター「ボルヴィック」の売上金の一部を出荷量1リットル当たりアフリカ・マリ共和国の水不足解決のため10リットルを提供

ボルヴィックは、売り上げの一部でユニセフの活動を支援。アフリカで飲料水を確保するための井戸を作り、また10年間に渡る井戸のメンテナンス。売り上げ1リットルあたり、10リットルの水がアフリカの井戸から生まれる仕組み。「1L for 10L」 http://bit.ly/aIrFrh

マリ共和国は西アフリカの内陸国。国土は日本の3.3倍だが、70%がサハラ砂漠占められている。地球温暖化によると言われている急速な砂漠化、旱魃やバッタの異常発生等の被害によって、常に飢饉に脅かされている。人口1300万人。イスラム教徒90%。識字率が世界最低。一夫多妻の習慣が根強い

CRM(慈善運動関連マーケティング)は、消費者の「ちょっと何か良いことをしたい」という感情を満たしてあげるために、商品の利益の一部を(環境・女性・子どもの問題などの)社会問題に寄付するとして商品を宣伝することにより、売り上げが伸びることを目指すもの。一応、ウィン・ウィンの関係か?

PEP(Profit Equals Price Effect)効果とは、例えば企業がある商品の収益の一部を慈善事業に寄付すると言った場合、1)売り上げの1%、と、2)利益の1%、ではどちらが多いか。もちろん1)なのだが、消費者の購買意欲上昇効果は変わらない。この錯覚のことを言う。