.

治療

国連エイズ合同計画2010/11報告。治療について。1)現状。ARV治療を受けているHIV陽性者は520万人。2004年の13倍に拡大。WHO新基準により治療が必要な1500万人の36%。2)課題。需要増のため治療の普及が追いつかず。簡便で低価格、耐性を作らない治療法の開発が必要

国連エイズ合同計画2010/11報告。トリートメント2.0という新しいアプローチを導入すれば、1)試算で2025年までに現在よりさらに1千万人の命が救われる。2)WHOの新ガイドラインにも従って治療を行えば(予防にも効果があり)年間100万人の新規HIV感染を減少できるとしている

国連エイズ合同計画2010/11報告。トリートメント2.0で、1)HIV治療を簡略化、2)薬へのアクセスを拡大、3)治療費抑制、4)処方が単純明快、5)保健制度への負担減少、6)HIV陽性者とその家族の生活の質を向上、7)試算で2025年までに現在よりさらに1千万人の命が救われる

トリートメント2.0(Treatment 2.0)とはUNAIDSのシディベ事務局長が提唱したHIV治療法の戦略。五つの柱。1)安価な薬の開発。2)周りの人に感染させるのを予防するために治療。3)費用高騰抑止。4)HIV検査の理解を改善し治療に直結。5)地域コミュニティーの活性化

国連エイズ合同計画2010/11報告。現在の治療は最適なものではない。トリートメント2.0という構想は、1)治療を革新的に簡略化し、2)薬剤耐性ができにくい薬剤を提供することを目的とする。また同時に、診断とモニタリングも簡便にし、HIV抗体検査が容易に実施できるようにする。

治療の進歩によりHIV/エイズ患者の予後は劇的に改善。25歳の感染者の余命が40年にまで延びたとの報告も。予後の改善に大きく寄与したのは多剤併用療法。しかしこの数字はあくまでも予測であり本当にすばらしい長期予後が得られるかどうかは、薬剤の副作用や耐性ウイルスへの対応にかかってくる

国連エイズ合同計画2010/11報告。低中所得国での治療カバー率。地域ごとの低い順。1)中東・北アフリカ12%、2)欧州・中央アジア19%、3)東・南・東南アジア32%、4)サハラ以南アフリカ37%、5)カリブ諸国49%、6)ラテンアメリカ53%

・・・

ヘルスワーカー

HIV/エイズ治療の簡略化。現状としてアフリカ等では医師が足りないので、看護師が診断・治療を行う。田舎の村ではそれすら無理なので村のヘルス・ワーカー(数週間の研修を受けただけの村人)が、診断・治療を行う。このため簡便な診断・治療プロトコールが必要。既にいくつかの国・地域で実施中。

エイズ治療をアフリカ等の田舎で村のヘルス・ワーカー(数週間研修を受けた村人)にまかせた場合、診療のプロトコールにより典型的なケースでは診断・治療が可能だが、例外的なケースだと困難。このため携帯電話のSMS(ショート・メッセージ・サービス)で首都にいる専門医に質問。が、インフラ必要

日本では医師法により医師でなければ診断も治療もできない。看護師等は原則として医師からの指示に従う体制。アフリカでは医師がおらず看護師も足りないため村人を数週間研修したヘルスワーカーを使う。現地の実情を考えると、妥当か。多少ミスがあったとしてもトータルでは救える人の数が増えると判断

・・・

ジェネリック薬

世界エイズデーを前に2010年11月、国境なき医師団はEUが年内の締結を急ぐ、「開発途上国に対するインド製・後発エイズ治療薬の供給に制限を設ける措置」を即時停止するよう求めた。また「国際社会が金融危機によりエイズ治療への支援が先細りを見せている現状に対し責任ある行動を起こすべき」

2010年11月、EUはインドとの自由貿易協定(FTA)交渉を再開させ、「新薬データ保護期間」を導入するよう圧力をかけた。締結した場合、安価なHIVジェネリック薬の供給が妨害。現在、世界基金など国際的に主要な資金拠出機関が購入する抗HIV薬の80%以上は、インド製のジェネリック薬

新薬データ保護期間とは、新薬の安全性と有効性を証明する試験データの不正な商業的使用からの保護義務を規定した権利。「規制当局が(インドの抗HIV薬などの)ジェネリック薬の製造を許可すること」を一定期間妨げることができ、最初に薬を開発した製薬会社にとっては、事実上の市場独占権となる。

「途上国の薬局」として(抗HIV薬等の)安価な薬を生産しているインドは医薬品への特許権の付与を義務付けた世界貿易機関の規定で脅されてきた。インドの特許法は公衆衛生の保護を目的に特許権を付与する医薬品と付与しない医薬品を区別。多国籍製薬会社はこの特許法を覆そうと試みついにEUが加担

・・・

新薬開発

エイズに対する抗HIV薬は、既に20種類を超えているが、必ずウィルスは耐性化してくる。2007年に発売された、「ダルナビル」は、従来の薬は(ウィルス構造に対する)標的が一つだったものを、標的を二つとした。標的の片方が遺伝子変異を起こしても、もう一つの標的が残り、耐性が起きにくい。

エイズ治療薬は20種類を超え、複数の薬を組み合わせてのむ「多剤併用療法」(HAART)により、発症前に治療を始めれば約40年発症しないと考えられている。1996年、HIVに対する効果的な治療法が生まれた。死亡者数のピークは、2004年の220万人がピークで、2009年180万人に

ビル・ゲイツは個人所有投資会社カスケードインベストメントを通し2010年5月1千万ドルをシュレーディンガーに投資。同社は「ドッキング・シミュレーション」などの創薬支援ソリューション。ゲイツはソフトウエア技術で新薬開発を促進するコンピューター・ケミストリー・システム(CCS)に注目

エイズの新薬開発の可能性。2010年3月IBMの "World Community Grid"の演算能力が研究を支援。研究者はHIVプロテアーゼの新結合部位の存在を証明。HIVプロテアーゼに対抗する新薬(プロテアーゼ・インヒビター)の開発 http://bit.ly/9bZozM

World Community Grid とは、電源は入っていても(自分では)使用していないコンピューターの能力を(インターネットを通して)医学などの研究者たちに無償で提供。無数のパソコンを接続すればスーパーコンピューター並みの能力になる http://bit.ly/8l89y

・・・

結核
国連エイズ合同計画2010/11報告。結核患者のHIVサービスへのアクセスは、徐々に拡大しているものの、結核と診断された人の中で、HIV抗体検査を受けた人の割合は小さく、2009年には26%である。HIV陽性者への結核に関するサービスの提供にも、進歩はあまり見られない。

・・・

悪性腫瘍、長期投与の合併症

抗HIV薬の開発によりHIV感染者の長期生存が可能になったが悪性腫瘍の合併が増加。AIDS 指標悪性腫瘍のうちカポジ肉腫と原発性脳リンパ腫の合併は減少。ホジキンリンパ腫,肺癌,肝臓癌,ヒトパピローマウィルス関連腫瘍(肛門癌,口唇癌など)などの非 AIDS 指標悪性腫瘍の合併が増加

HIV/エイズに対するHAART(highly active antiretroviral therapy)は確率されたが、長期服用に伴う毒性や薬剤耐性ウイルスの出現など、問題点も明確に。克服する手段として,インテグレース阻害薬やCCケモカイン受容体(CCR)5阻害薬などが実用化

HAARTの長期投与に伴い合併症が増加。したがって短期的な副作用のみならず長期的な副作用(脂質代謝異常,糖代謝異常,腎機能障害)に関して、対策を立てることが重要。核酸系逆転写酵素阻害薬のミトコンドリア障害,プロテアーゼ阻害薬による脂質代謝異常,糖代謝異常などへの対策が重要となる。

・・・

社会・人権

女性

「処女を強姦すればエイズが治る」。この噂がアフリカで出回っている。もちろん、医学的根拠はなく、ウソ。しかし、多くの男性が信じており『確実な処女』である、10歳以下の(初潮前の)女児が強姦されるケースがあいついでいる。HIV感染者の男性に強姦された場合、感染してしまう危険性が高い。

国連エイズ合同計画2010/11報告。1)HIV陽性者の半数以上が女性と少女。2)サハラ以南アフリカでは女性の割合が高く、15~24歳の女性は、男性に比べてHIV陽性率が8倍高い。3)女性と少女のHIV感染を防ぐには、女性を暴力から守り、年上の男性からの経済的自立を促す必要がある

国連エイズ合同計画2010/11報告。女性と少女に対する脆弱性は、得にサハラ以南アフリカで高い。女性HIV陽性者の80%が同地域で生活している。HIVの予防・治療等を達成するには、女性と少女に焦点をあてることが求められている。しかしそうしたプログラムを持つ国は全体の半数に満たない

ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)を、計算することすらできない国で、女性の権利低下が、貧困・教育・医療等に影響している可能性のある国は、ジンバブエ、ソマリア、ニジェール、シエラレオネ、中央アフリカ、マリ、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国、チャド、ブルンジ、アフガニスタン。

ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM、2007年)は低い順に、イエメン0.135、バングラデシュ0.264、エジプト。287、サウジアラビア0.299、アルジェリア0・315、モロッコ0.318、イラン0.331、トンガ0.363、トルコ0.379、アゼルバイジャン0.385

ジェンダー・エンパワーメント指数(gender empowerment measure : GEM)とは、女性の政治参加や経済界における活躍や意思決定に参加できるかを表す指数。UNDPが導入。国会議員、専門職・技術職、管理職などにおける女性の割合と、男女の推定所得などを用いて算出

ジェンダー不平等指数(GII、2008、UNDP、計算できた138カ国中)低い順に、138)イエメン、137)コンゴ民主共和国、136)ニジェール、135)マリ、134)アフガニスタン、133)パプアニューギニア、132)中央アフリカ、131)リベリア、130)コートジボワール

国連エイズ合同計画2010/11報告。ジェンダーについて。1)現状。HIV陽性者の女性の割合が増えておりサハラ以南の15-24歳で男性の8倍。女性への暴力とHIVの広がりには関連あり。2)課題。女性と少女にHIVと性と生殖に関する保健サービスを。男性と少年に有害な慣習を変える啓発

サハラ砂漠以南アフリカの15歳から24歳までの女性のHIV感染率が男性より8倍高い件だが、これは恐らく、同地域では妊婦健診(ANC)が政府・自治体・援助団体により積極的に実施されており、このため女性のほとんどがHIV検査を受けることになるのに対し、男性は検査を受ける機会がないため

国連エイズ合同計画2010/11報告。コンドームの入手確率は大幅に上昇した。2009年、国際機関と比政府組織(NGO)の財政支援により、2580万個の『女性用コンドーム』が提供された。コンドームの配布は、2008年から2009年の間に1000万個も増加した。

女性用コンドーム(female condom)とは、女性の腟内に装着する女性用避妊具。外陰部と腟内の双方をおおう構造により、精子の侵入を防ぎ性感染症に感染する危険も減少。性交渉の際はあらかじめ装着されたコンドームの中にペニスを挿入。慣れない場合、女性が女性コンドームの入り口へ導く

世界で最も有名な医療系の専門雑誌の一つが「ランセット」。6月に「母子保健」の特集。15歳から44歳の女性の二大死因は(1)HIV/エイズ(19%)と、(2)妊娠出産に起因するもの(15%)。The Lancet Vol. 375 Number 9730 Jun 05, 2010

「国連女性」(UNウィメン)2011年1月新設。4機関を統合。国連女性開発基金(UNIFEM)、国連ジェンダー問題特別顧問事務所(OSAGI)、国連女性の地位向上部(DAW)、国際女性調査訓練研修所(INSTRAW)。性と生殖に関する女性の権利の国連人口基金(UNFPA)は不参加

国連内の女性に関係する4組織が統合され「国連女性」(UNウィメン)が創設されたが女性の権利を扱う組織だけで構成。ミレニアム開発目標で最も遅れているのは妊産婦死亡率だがこれは保健医療の分野。しかし新組織に保健関係は入っていない。これを補うために医師でもある元チリ女性大統領を選んだか

「わたしは女性です」、と思っている方、是非読んでみて下さい。あなたの性と、あなたの恋愛観が、ひっくり返るかもしれません 「性の決定 4260字」 http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65234572.html

・・・

社会的弱者たち

国連エイズ合同計画2010/11報告。人権について。1)現状。人権への配慮は各国のHIV対策に明記。しかし、HIV陽性者等を犯罪者として規制する法律が存在。2)課題。効果的なHIV対策を妨げる、法律や制度を改正する。HIV陽性者、影響を受ける人、脆弱な人の政策への参加を拡大する。

GIPA(Greater Involvement of Peaple with HIV/AIDS)原則とは1994年のパリ・エイズサミットの共同宣言に盛り込まれた原則。HIV陽性者及びHIV/エイズに影響を受けている人のより積極的な参加が倫理的にも有効性の面からもエイズ対策に重要

GIPAとは、HIV/エイズとともに生きる人(または影響を受ける人)の声をより多く国際社会に届ける枠組み。Greater involvement of people living with or affected by HIV/AIDS  http://bit.ly/fFsRoG

国際保健の構造変化(architecture change、ランドスケープ変化)とは、以前は先進国、国際機関、NGOが途上国にバラバラの援助をしてたが1990年代から上記の三つに加え、途上国、患者団体、民間財団も加わり、パートナーシップを組んで援助の手法を相談するようになったこと

国連エイズ合同計画2010/11報告。1)80以上の国で同性間の性交を禁止。2)51の国と地域にHIV陽性者に対する旅行規制。3)これらの法律は差別であり不正である。4)89%の国で人権の重要性が国家エイズ対策の中に。5)93%の国でHIVに関連する差別を無くすプログラムが存在。

国連エイズ合同計画2010/11報告。HIV予防プログラムを、1)男性と性交する男性(MSM、Men who have sex with men)、2)セックスワーカーとその顧客、3)トランスジェンダー、4)注射による薬物使用者(IDU、injecting drug user)へ

トランスジェンダー(transgender)とは、自分の肉体の性と心の性の不一致から反対の性で生きようとする人。国際的な人権を論じる場合、『性自認』が身体的性別と一致しない状態。性自認とは、自分の性が何であるかを意思とは無関係に、無意識的に、かつ継続的に確信している自分の性の状態

国連エイズ合同計画2010/11報告。効果的なHIV対策の障害となる法律、政策、規制が認識されつつある。各国は、セックスワーカー、薬物使用者(IDU)、男性とセックスする男性(MSM)、トランスジェンダーを犯罪とすることをやめ、効果的なHIV対策を妨げる法律を改正するべきである

LGBTとは、女性同性愛者(レスビアン、Lesbian)、男性同性愛者(ゲイ、Gay)、両性愛者(バイセクシュアル、Bisexuality)、そして性転換者(トランスジェンダー、Transgender)の人々をまとめた呼称。GLBTとも言う。しかし、LGBTの概念には異論も多い。

MARPSとは、(HIV/エイズなどの)リスクに最もさらされる可能性が高い集団(Most at risk population)。注射薬物使用者(IDU)、セックスワーカー、MSM(男性と性交する男性)、トランスジェンダー、移動労働者など。またそうした人々のパートナーである女性も

・・・

ゲイ

「現在、(宗教などの理由で)同性愛を禁じる法律のある国が、80以上ある。9カ国が、いわゆる同性愛の性的志向があれば、死刑に値する、としている。これは本当に恐ろしいことだ。」 国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長・ミシェル・シディベの講演(2010/09/02)より

同性愛が死刑となる国は9つ。サウジアラビア、イエメン、アラブ首長国連邦、イラン、アフガニスタン、スーダン、ソマリア、モーリタニア、ナイジェリア(北部のいくつかの地域)

同性愛が終身刑となる国。シンガポール、モルディブ、インド、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマー、ウガンダ、シエラレオネ、ガイアナ、ブリッジタウン。(いくつか、確認を要す)

シンガポールは、バングラデシュ、ブータン、モルディブ、パキスタン、スリランカ、ブルネイ、マレ?シアとミャンマーと共にアジアにおいて男性間性交渉を犯罪としている9カ国のうちの1つ。女性間性交渉は犯罪とされない。英国植民地時代の遺物であるシンガポール刑法337A 条。2年以下の禁固刑

2001年オランダで「同性結婚法」が制定され同性間でも婚姻が可能になった。次いで、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカでも同性婚が可能に。一方、結婚ではないが「同性のパートナーに特定の権利を与える法律」のある国も。デンマーク、ノルウェー、フランス、ドイツ、イギリス等。日本は無し

6月27日は「同性愛者の権利を世界に訴える日」だが、この日、アイスランドの女性の首相(67歳)が同性のパートナーと結婚した。彼女は同性愛者であることを公言した世界初の首相になったと同時に、同性と結婚した最初の首相となった。アイスランドでは同性愛に対する国民の理解が高いことが背景に

独ベスターベレ外相が同性のボーイフレンドと結婚。同性愛者であることを公表しているドイツのギド・ベスターベレ外相(48歳)が、ドイツ西部ボンで長年のボーイフレンドであるミヒャエル・ムロンツさん(43歳)と結婚した。「近親者とボン市長の立ち会いで結婚した」とドイツのメディアが報じた。

アイスランドの女性の首相が、同性同士で結婚をした。これに関係する話を以前ブログに書いた。「自分は女性だと思っているあなた、本当のあなたの性は?」 http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65234572.html

・・・

薬物中毒者

国連エイズ合同計画2010/11報告。アフリカでの改善傾向とは逆に、悪化しているのが、ロシア・東欧・中央アジア。7カ国で、新規感染が2001年比で25%以上増加している。注射薬物乱用(IDU)や、(ゲイ、MSMによる)男性同士の性交渉で、感染が急増。2000年以降3倍に増加した。

ハーム・リダクション(harm reduction)とは「危害の削減」。麻薬使用者が、注射器の使いまわしをすると、その人たちがHIVなどに感染してしまうので、彼ら・彼女らがたむろするような公衆トイレなどに、国やNGO(市民団体)が清潔な針や注射器を無料で提供する(置いておく)こと

2010年7月23日、国際エイズ会議で「ウィーン宣言」。要旨は、まだ多くの国が薬物使用者を取り締まる政策をとっているが、薬物使用者に清潔な注射器や注射針を与えることにより、HIV/エイズの拡散を防げるということは、科学的なエビデンス(証拠)が出ている。各国はその実施のための政策を

中央アジアを含む旧ソ連圏(カザフスタン、タジキスタン、キルギス、グルジア(ジョージア)、アルメニア)では陽性者人口は150万人。その6割が注射薬物使用者(IDU)であり、薬物使用者の4人に1人がHIV陽性者。感染予防の上からも薬物使用者への働きかけが焦眉の課題であると考えられる。

ウィーン国際エイズ会議では「ウィーン宣言」。薬物使用者を犯罪者として社会から遠ざけるのではなく、医療と支援を必要とする人として社会に受け入れる。それによりHIVに関する様々な政策(予防・治療)にアクセスできるようにし、社会での感染拡大を防ぐ。そのため、ハームリダクションが重要。

マレーシアの現存HIV陽性者数は2009年末で7万4千人を超え、その70~75%が注射による薬物使用者。マレーシアでは2005年に新たな国家戦略が策定、HIV/エイズ閣僚会議も設置。6つの戦略の筆頭にハームリダクション。薬物を刑事問題として扱うことを当然とする人々に姿勢の転換を。

薬物依存とHIV。ゲイの間で1990年代にRUSH(2006年に厚労省が製造販売禁止)が人気となり頻繁に使用。「オラオラ系」と呼ばれるハードコアなセックスを盛り上げるために使用。2000年代は「ゴメオ」(5-MeO-DIPT)を使用。酩酊しているとセーファー・セックスがおろそかに

ドラッグ・セックスとは、麻薬・覚醒剤・その他の薬物を用いながら行う性行為のこと。使用される薬物は様々だが、RUSH、ゴメオ(5-MeO-DIPT)などが有名。使用すると性交中の快感が非常に強くなると言う。薬事法等で違法となってからも使用が相次ぎ、逮捕・収監後も再犯率が非常に高い。

ハーム・リダクション(麻薬使用者に無料で清潔な注射機器を提供すること等)に関しては、WHO、UNAIDS、エイズ関連団体等が、それを支持している。が、私の個人的見解では、かなり疑問である。世の中に対するエイズと麻薬の社会的悪影響の度合いを比べた場合、麻薬の害の方がよりひどいと思う

麻薬・覚醒剤の社会的悪影響がHIV/エイズに比べてはるかに悪いと私が考える理由は以下。1)麻薬産業は多くがテロ組織等の非合法な暴力的組織と癒着している。2)またそもそも各国の法律で禁止されているため、こっそり製造。よって児童労働等が実施されるなど人権配慮がなく、環境への配慮もない

「誰も、彼の健康や命に、関心をもっていませんでした。彼は、エイズで死んだのではなく、『絶望』で死んでいったのではないでしょうか?」 1991年、ソビエト連邦が解体されてから、ロシアの人々は生きる目的を失いアルコールと麻薬に溺れた。薬物を静脈注射で回しうちした人の多くがHIVに感染

・・・

渡航制限、出入国の規制・制限・禁止。

国連エイズ合同計画(UNAIDS)の報告によると、「HIVとともに生きる人々」(HIV感染者)への偏見・差別が続いている。51カ国で(入国・出国の禁止などの)旅行・移動を制限する法律が存在する。アメリカと中国もHIVに感染している外国人の入国を拒否していたが、最近やっと撤廃した。

HIV感染者の「渡航制限」"」"travel ban"。HIV感染者への差別(移動の制限)が、現在も各国で続いている。51カ国で(入国・出国の禁止などの)旅行・移動を制限する法律が存在する。アメリカと中国もHIVに感染している外国人の入国を拒否していたが、最近やっと撤廃した。

主要国のHIV感染者の入国規制。1)重度の制限:中国(改訂中)、アメリカ(改訂中)、シンガポール、カタール。2)軽度の制限:韓国、台湾、モンゴル、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、UAE、イエメン、エジプト、モロッコ、ロシア、ノルウェー、カナダ、キューバ

中国は2010年11月『出入国エイズ予防管理弁法』(2007年施行)の改訂を発表。「1年以上海外に在住した中国国民は帰国後エイズ検査を受ける必要がある」との条項を削除。HIV感染者及びエイズ患者は中国帰国時に申告し検査検疫機関が「それを確認する」と定められていたが、この条項も削除

・・・

青少年

国連エイズ合同計画2010/11報告。世界的に見ると、包括的で正しい知識を持つ男女は、2008年に比べて僅かに増加。しかしこの数は、国連環境開発特別総会(UNGASS)の目標である、95%の3分の1にすぎない。

国連エイズ合同計画2010/11報告。15歳以前に性行為をしたことのある若者の割合(現在15~25歳の人に実施)。 1999~2003年は約13.7%。 2004~2009年は12.3%。 やや減少した。まだ多くの若者がコンドームや潤滑剤に容易にアクセスできない状況が続いている。

国連エイズ合同計画2010/11報告。15~24歳の若者の間で、HIVの流行に関する知識と、予防に関する知識が増えてきているが、それでも感染のリスクが最も高いのはこの年代。最近リスクの高い性行為でコンドームを使用した人の割合が男性で80%以上だったのは6カ国。女性は2カ国だった。

・・・

宗教

ローマ法王ベネディクト16世がHIV感染防止を目的としたコンドーム使用を容認すると2010年11月に発言。法王は2009年「エイズ対策に避妊具は役立たない」と言い批判された。厳格なカトリックは避妊を原則否定。法王は「感染症リスクを減らすという特定の場合にのみコンドーム使用を容認」

ローマ教皇ベネディクト16世は『避妊、人工妊娠中絶、同性愛』に対し断固反対という立場をとっていた。国際協力の世界では、1)妊産婦死亡率・乳児死亡率を下げるため、母親の体力が回復しないうちに連続した妊娠はしない方が良いという統一見解がある。2)HIV/エイズの予防にコンドームも必要

・・・

基礎医学研究

HIV貯蔵庫

抗レトロウィルス療法(ART)によるHIV/エイズの完治を妨げる「HIV貯蔵庫」となっている細胞は、1)リンパ系器官の濾胞樹状細胞、2)骨髄樹状細胞、3)腸などのマクロファージ、4)HIV特異的なメモリーT細胞(Tリンパ球)など。A)実質的完治または、B)感染の完全解消を目指す。

HIV/エイズに対する現在の抗レトロウィルス療法(ART)では、治療がうまくいってもHIVは体内のいくつかの部位の細胞に隠れ潜み続ける。こうした細胞を「HIV貯蔵庫」という。ARTを中止すれば、その貯蔵庫からHIVは再び出てきて増加してしまう。今後HIV貯蔵庫が研究のターゲットに

・・・
・・・

諸外国の動き

アジア諸国では、成人のHIV感染率は、ほぼ1%未満である。ただし、タイだけは、1.4%と高い。また、バングラデシュやパキスタンでは、HIV感染率の上昇がみられる。なお、インドは、HIV感染率は0.3%と低いが、人口が12億人もいるため、感染者数は240万人超おり、アジアでは最多。

インド。世界で最もHIV感染者数の伸びが危惧されている国。爆発的な人口増加と、HIV感染者数の増加。成人のHIV感染率0.3%。HIV陽性者数240万人(人口は12億人)。治療を受けている人、235,000人。クリントン財団がインドと南アフリカの製薬会社とジェネリック薬購入で協定

「エイズは誰からも同情されない病気です。癌の人は同情されるのに、エイズは『自業自得だ』と言われるのです。私の場合、家柄が良いためになおさらです。一時は自殺も考えました。でも、娘のために生きようと思いました。」ビジャヤ・マダス、インド人、36歳、男性(カースト制度における名門の出)

タイのとったHIV/エイズ対策は数少ない成功例。新規感染者は1990年代初頭にピークだったが現在80%以上減少。84年国内初感染。87年国家エイズ予防対策計画(財源確保)。89年チェンマイで売春婦などのハイリスクグループに大量コンドーム配布。女性に教育支援をし売春婦になるのを防止

第10回・アジア・太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP)のミュンハン・チョウ(韓国)副会長は、「HIV陽性者に対する韓国の入国規制は、政府が撤廃を決定した」と報告。撤廃の背景は、HIV対策を主導するハン・ギブン国連事務総長が韓国出身のため。(しかし、国会はまだ通っていない。)

韓国の釜山(プサン)で、第10回・アジア・太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP)が2011年8月に開催される。韓国では、HIV陽性者への入国制限がいまだに残っており、UNAIDSや国際エイズ学会(IAS)等から、政策の変更を求められている。

韓国で国際結婚の悪徳仲介業者が増加。花嫁のHIV感染情報伝えずに紹介。この1カ月間で761人を不法営業の疑いで検挙。韓国では国際結婚が急増、結婚仲介ビジネス市場規模も拡大、それにからむ犯罪も正比例。背景には「嫁不足」に悩む韓国農村部の男性と「豊かさ」を求めて来韓する東南アジア女性

中国衛生局は2010年10月までの累計でHIV感染者の報告は37万そのうち発病が13万、死亡は6万8千。2009年衛生局・UNAIDS・WHOは2009年末までに中国で生存しているHIV感染者及び発症者は74万そのうち発症10万5千。2009年新規感染4万8千人、死亡は2万6千人

中国の人権活動家・胡佳さんの妻、曽金燕さんが2010年11月、エイズで親を失った遺児らを支援するため夫妻で立ち上げたNGOの活動を停止。税務当局の調査と強い圧力による。「自分で生んだ子を自分の手で殺すような気持ちです」。学生時代から、「売血」行為で広がるエイズ問題に取り組んでいた

香港で、ベトナムからの密入国者が増加。この人たちは、わざと警察に見つかり、こう言う。「私は伝染病にかかっている。医療刑務所に収容して欲しい」と。彼ら彼女らのほとんどがエイズ患者。高額な医療費を払えない貧しい人の窮余の策だが、警察もその対応に慣れている。一種のメディカルツーリズムか

ビル・ゲイツ談「ベナン都市部ではHIVはセックス産業従事者とその顧客に集中し今後20年間に新感染者が10万人以上。そこを標的とする既存の予防ツール(コンドーム使用の奨励、治療の提供等)のスケールアップで2031年までに46%減。またワクチン、PrEP、殺菌剤を提供し最大90%減」

ビル・ゲイツ談「HIVが人口の大部分に広がっているジンバブエ地方部では今後20年間に70万人以上の新規感染。既存の予防ツール(男性の割礼、抗レトロウイルス治療等)のスケールアップで2031年までに38%減。さらに効果的なワクチン、PrEP、殺菌剤が加われば新規感染を90%減らす」

暴露前発症予防(Pre-exposure Prophylaxis:PrEP)とは黄熱病、マラリア等に対するワクチンや予防薬。暴露後発症予防(Post-exposure Prophylaxis : PEP) は狂犬病、結核、麻疹、水痘、A型肝炎。HIVは後者で論じられていたが前者へ

ウガンダは、HIV感染者の数を減らすことに成功した国とされる。1980年代にHIV/エイズが流行し国民の14%が感染したが、政府主導の「ABCプログラム」が成功し、5%前後まで低下した。Aは禁欲。Bは貞操保持。Cはコンドーム着用。Cが最も有効だったとされる。

エイズ対策の「ABCプログラム」とは、Aが禁欲(abstinence)、Bが貞操保持(be faithful to your partner)、Cがコンドーム(condom)。ウガンダではこれで成功したとされるが実際はCのみに効果があった。人間には性欲という本能があるのでAは無理

スワジランド。世界で最もHIV感染率が高い国。大人の4人に一人が感染。母親の半数近くが感染。成人のHIV感染率26.1%(妊婦は42%)。HIV陽性者数19万人(人口は120万人)。治療を受けている人、32,700人。治療を必要とする人、59,000人。エイズ遺児、56,000人

「娘のテネレは赤ちゃんの時HIVに感染していると診断されました。具合が悪く歩くどころかハイハイもできない状態でした。でも1歳から治療を始め、今は2歳ですが走ることもできます。HIVに感染しても、死を意味するわけではなく『生きられるのよ』と言いたいです。」スワジランド、35歳、女性

ケニアのいくつかの地域では降水量が減少。地球温暖化による気候変動のせいかも、との報道。飲料水に使える水が減っているため、人々はミルク(人工乳)を作ることができない。HIV感染者の母が乳児に母乳を与えると、感染する可能性があるが、やむなく母乳を使い続ける。その結果、母子感染が増加中

・・・