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2010年12月16日(木)
NHKラジオ第一、ラジオあさいちばん。

午前7時45分ごろから7分半程度
エコトピック、環境問題で今年一年を振り返る

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質問1:
おはようございます。山本さんは、環境問題に関して今年はどんな一年だったとお感じでしょうか?


回答1:
今年は、10月に生物多様性条約・締約国会議COP10が、日本の名古屋で行われたこともあり、また11月から12月にかけて、メキシコのカンクンで気候変動のCOP16も開催されたので、今後の環境問題への対策に関して、世界が大きく進展することを期待していました。

しかし、まず気候変動の方は、全く進展せず、生物多様性の方も、今一つの成果だったような気がしています。

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質問2:
それはたとえばどういうことでしょうか?


回答2:
気候変動に関しては、まず、今後の地球温暖化が本当かどうか、という議論もあるのですが、仮にそれに触れず、人類由来のCO2により温暖化が進行していくことが本当だ、と仮定した場合、もし本気で止めようと思うならば、2020年までに全ての国がCO2などの温室効果ガスの排出を25%減らし、2050年までには50~80%減らすことが必要だと言われています。

しかし、昨年のCOP15と今年のCOP16で、途上国、というよりも新興国である中国・インドなどが、CO2の絶対排出量の上限を決めることに反対し、合意できないことになりました。新興国は、京都議定書の単純延長を望んでいるのですが、京都議定書に批准しているのは、ロシア、EU,日本などだけで、地球全体のCO2排出量の28%にしかなりません。批准していない中国は21%、アメリカも20%で、インドなども含めた批准していない国の合計CO2排出量は72%です。

また、中国とインドは、今後も年10%近い、高度な経済成長を続けていくため、CO2排出量もそれにともなって増加することになります。年10%近い経済成長率に比例してCO2排出量も増えると仮定して計算した場合、2020年には2.6倍、つまり、中国一カ国だけで、現在の全地球からのCO2排出量の55%、半分以上を放出することになります。

全体の9%しか占めていないEUと日本だけが、25%減らしても、ほとんど焼け石に水にしかならない状態なのに、新興国の中国・インドは、自分たちの経済的発展を優先して、京都議定書の単純延長を要求している、というのが現在の側面の一つです。

 また、かつて、地球温暖化対策には、二つある、と言われていました。緩和策、と呼ばれるCO2排出削減の取り組みと、適応策、と呼ばれる、温暖化が起こってしまった場合に、主に途上国での被害を少なくする、という取り組みがあったのです。

ですが現在は、前者の、緩和策、つまりCO2排出削減は、もはややっても意味がないのではないか、と考えられるほど、絶望的な状況だ、ということです。よって今後は、適応策に主眼が置かれることになると思います。

適応策の具体例としては、海面上昇に対する護岸や移住、高温環境に適応する農作物の品種改良、熱帯感染症の感染地域の拡大への対策、などです。

ま、それはともかく、話をちょっと戻しますが、地球温暖化が今後本当に進行するかどうかはともかくとして、私としては、気候変動対策が世界的な流れで進むことにより、低炭素社会、すなわち、石油などの化石燃料に依存している現状から、人類が脱却してゆくことは望ましいことだと思っていたので、結局、今回のCOP16で、緩和策、すなわち、CO2排出の世界的な規制を一斉に行うこと、を諦めることになったのは、残念でなりません。


一方、生物多様性COP10の方ですが、一応、名古屋議定書や愛知ターゲットがまとまった、という意味ではそれなりに成果がありました。しかし残念だったのは、日本の国民の間に、生物多様性という概念の認識が広まらなかったことです。

まず、2009年の内閣府の調査で、「生物多様性を聞いたことがある」という人は、36%、でした。これは地球温暖化の認識度に比べるとずっと少ない数字です。

で、今年の10月に名古屋で生物多様性COP10が開催された時も、「途上国から先進国に生物資源を運び出して、商品を作った時に、先進国企業などが途上国政府などに金をいくら払うのか」、すなわち「生物資源へのアクセスと公平な利益分配」(ABS)という項目だけが、メディアに注目されてしまい、生物多様性を守るための本質的な意義が、国民にあまり伝わらなかったのが、残念でした。

生物多様性条約の目的は三つあるのですが、最大の目的は、「人類が、生物資源を、未来永劫、持続的に利用できるようにすること」です。で、現在のような市場経済がグローバル化してしまった経済優先の状況では、もうすぐ生物資源が枯渇してしまい、未来の子どもたちなどがその恩恵を得られなくなる、ということになると思います。

今後は、生物資源に限らず、持続可能な資源の利用、ということが、人類社会にとって、最大のポイントになるのではないか、と考えています。

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質問3:
どうでしょう、私たちの生活の中にも、「持続可能な○○」というような言葉がもっと広がっていればいいのに、そんな気がするのですが。


回答3:
持続可能性というものを実現するためには、二つのことが問題になると思っています。

一つは、資源が枯渇することです。生物資源などの生態系サービス、石油などの化石燃料を含んだエネルギー源、あとは、食糧関係で必要になる、水、というか「淡水」。最後が、高い農業生産を得るための化学肥料のもとである、リン鉱石などの資源です。

もう一つの問題が、いわゆる環境問題です。それは、いわゆる地域的・局地的な公害と、地球全体の環境問題になる、地球温暖化と気候変動、生物多様性の消失と生態系サービスの劣化、などです。

この二つの問題を、なんとかしないと、人類にとっての、持続可能な世界を作ることは、かなわないんじゃないかと思っています。

で、よーく考えてみますと、これらの問題は、根本的には、次の二つのことが原因で起こっています。それが、人類の世界的な人口増加と、産業革命以来の経済活動のグローバル化です。

日本は少子化なのでピンときませんが、世界では人口が爆発的に増えています。簡単にいいますと、西暦0年頃は、人口は3億人だったのです。でその後の2千年間は、数億人で横ばいだったのですが、1760年の産業革命以後、爆発的に増えて、1810年に10億を超え、2010年現在で、68億人です。つまり、人口は、この僅か200年間で、58億も増えたのです。徐々に増えてきたのではなくて、最近急に増えた、ということです。

また、それに伴い、産業革命以降、人類は、電気を使った豊かな生活を望むようになってしまったため、増えた人口とあいまって、全ての資源を喰いつくし、環境問題が発生しまくる、という事態になっているのです。

で、そうしたことは、一応、間違いない事実だと思われるのですが、マスコミ等のメディアでは、あまりニュースでも報道されませんし、ドキュメンタリー番組などでも取り上げられないのが、私としては残念でなりません。解決するのが非常に難しい問題ですが、目をそむけたり、忘れたりしては、決していけないことだと思っています。

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質問4:
山本さんが、「持続可能な」という考え方を大切にする理由とはなんでしょうか?


回答4:
私はアフリカやアフガニスタンなどで病院や学校を作る活動をしてきましたが、必ず、持続可能性ということにこだわって、それをおこなってきました。理由は、私が医師としてアフリカに行っても、その派遣期間である、半年から2年の任期が終われば、私は日本に帰ってしまいます。そうなると、その地域は、元通りの、医者のいない状態に戻ってしまうのです。それでは、あまり意味がない、と思っていました。『自己満足』じゃないかな、と思っていました。

ですので必ず、病院を作った場合は、私が日本に帰国した後も、現地の人々の手だけで、ずーっと、未来永劫、『持続的に』その病院がやっていけるようにすることを目指して、がんばっておりました。具体的には、教育をする、ということです。私が日本に帰るまでに、私と同じような医療ができる人が現地で育つようにがんばりました。国際協力の世界で、よく使われる言いまわしですが、「魚を与えるより、魚の釣り方を教える方が大切だ」ということです。

ところが、この「持続可能性」ということを頭に入れて活動してきた所、大きな問題にぶつかったのです。それが、先ほどの、人口増加問題と、人間はより豊かな生活を求め続けてしまう、ということでした。

単純化して説明しますと、アフリカでは一人の母親が一生の間に7人ぐらい子どもを産むのですが、その子ら全部が食べていけるような農業生産はありません。このため、飢え死になどで5分の1ぐらいの子どもが5歳までに死亡したりするわけです。よって、子どもの死亡率を下げたければ、医療をするよりも、農業生産力に見合った分しか、そもそも、子どもを産まないようにした方がよい、という考え方も、あるかもしれない、ということになります。

また、途上国でも、中国やインドを始めとした国が、大量に電気を使う生活を始めていますが、世界自然保護基金(WWF)は、もしも世界中の68億人が、日本人と同じような生活をした場合、地球が2.3個必要だ、という試算を、今年発表しました。これはエコロジカル・フットプリントという概念で、資源の枯渇や、環境問題などを考慮して算出されるものなのですが、ともかく、現在の人口でも、みんなが豊かな生活をした場合、「地球がもたない」という試算がある、ということです。

と、いうわけで、私は国際協力をアフリカなどで行ってきましたが、なるべく多くの人が、未来永劫、幸せに暮らせるようにするには、すなわち、「持続可能な世界」を作るためには、まず、日本などの先進国側で、企業などの経済活動を、よりよい方向に向かわせることが必要だ、と考えるようになりました。で、それをその後、途上国にも普及する、ということです。このためNPO法人・宇宙船地球号では、環境に配慮して企業が商品を作るように啓発したり、また実際に、そうした環境配慮や社会貢献をしている度合いによって、各企業をランキングする活動、すなわち「企業の社会的責任ランキング」(CSRランキング)というものを、おこなっています。

ちなみに、うちの団体は、いわゆる大企業からは1円ももらっておらず、また政治・宗教的にも完全に中立な形で活動をしている、非常に珍しい団体です。

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⑤最後に、「持続可能な社会」、「持続可能な自然との関わり方」、その実現のために、来年に向けたメッセージをお願いできますか。

「持続可能な世界」を作っていこうとして、考えられた概念は、うちの団体の名前にもなっている「宇宙線地球号」という概念です。

地球という星は、一つの閉ざされた空間です。宇宙空間を飛んでいる、宇宙線地球号という船の中に、私たちはいるのです。そこには、限りある資源しか、ありません。そこで人間がどんどん増えているのです。しかも一人一人が、より豊かになりたいと思い、また、一度得てしまった豊かな生活レベルを下げることはイヤだ、と思って暮らしているわけです。このため、資源はどんどん減ってゆき、代わりに、ゴミが増え、環境問題が悪化してゆく、というのが、地球と言う閉ざされた空間で起こっている出来事です。

これから必要なことは、まず企業が、商品を作る時の考え方を、根本的に変えることです。原則は、資源を一切減らしては行けないということと、ゴミを一切出してはいけない、ということです。

えー、ちょっと話は変わりますが、自然界にいる、蚕(かいこ)は繭(まゆ)の形で、「美しい線維」を作ります。海の牡蠣(かき)は、海水中の二酸化炭素とカルシウムをくっつけて、「非常に堅い殻」を自分の周りに作ります。しかし、そうした自分に必要な製品を作る過程で、産業廃棄物や、ゴミなどの、自然界で分解されないものは、出しません。また出来上がったものも、必ず自然界で分解されるものです。このように、自然界に住んでいる生物たちは、「持続可能性」という意味においては、人間よりも、産業技術力が高い、ということになります。逆に言えば人間は、文明を進化させる方向を間違っていたのかもしれません。

よって今後は、具体的には、石油などのあと数十年でなくなってしまう資源は、ここ20年ぐらいで使用することは止め、その間に再利用可能な資源を開発する、ということになります。是非も問われていますが、トウモロコシ等から作られるバイオプラスチックなどがその候補になることでしょう。

また、ゴミや産業廃棄物などの、自然界で、自動的に分解されないものは、商品の製造過程で出しては行けないし、また商品自体も、自然界で自動的に分解されるものしか作ってはいけない、ということです。はっきりいえば、石油由来の、プラスチックやビニールなどは、永久にゴミとして残ってしまうため、作ってはいけない、ということです。

このように、1760年の産業革命以来の、石油・石炭などを中心に出来上がってきた、持続可能でない産業構造を、改革してゆくことは大変ですが、今後は、それをやらないといけないのではないか、と思っています。

なお、一般の消費者でできることは、そうした、環境問題に取り組み、社会貢献をしようとがんばっている企業を見つけだし、それを応援することです。すなわち、そうした企業の商品を優先的に購入する、逆に言えば、そうしたことをしていない企業の商品を買わず、社会から淘汰することだ、ということになります。どうやってそうした企業を見つければいいかというと、うちの団体のホームページに、「企業の社会的責任ランキング」がございますので、多少なり、参考にして頂ければ幸いです。


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補足:

企業がどのくらい、1)環境に配慮して商品を作り、2)社会貢献をしていて、3)透明性のある経営をしているか。NPO法人・宇宙船地球号の、企業の社会的責任(CSR)ランキング、ウェブ版 http://bit.ly/cbk2bX と、紙媒体版  http://bit.ly/d4JTV3

「国際協力ってなんですか?」「三つあります。1)途上国に行って直接的に教育や医療等をする。2)先進国側にいて計画を作り予算を獲得し各援助団体の分担を決める会議をする。3)消費者と企業が、残り少ない資源を奪い合う戦争が起きないよう、気候変動による降水量減少で飢饉がおきなう、節約する

「買い物とは、『未来に残っても良い』とあなたが思った企業に対する投票です。もしも全ての人が、『環境に配慮し、社会に貢献する企業の商品しか買わない』と決意したならば、そうした企業だけが未来に残り、そうでない企業は淘汰されていきます。あなたの買い物で世界が動いているんです」 山本敏晴

「私たちは大きなことをすることはできない。でも小さなことを大きな愛を持ってすることはできる。」マザー・テレサ(アグネス・ゴンジャ・ボヤジュ)We cannot do great things. But we can do small things with great love.