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4万字を超える長大な内容になったので、目次を作りました。
また、ブログ上では、4回に分けました。

特に、その3(3回目のアップ分)は、女性の方は必読です。
紛争地帯でのレイプについても、触れています。


目次:

その1

第一節: はじめに。
第二節: 死んではいけない、最大の理由。
第三節: 安全管理を、なぜやるのか?
第四節: 安全管理を誰に対してやるのか?
第五節: 安全管理は二つ。予防と有事対応。
第六節: 安全管理の「予防」の基本概念
第七節: 頻度と衝撃度(インパクト)
第八節: 情報収集・査定・優先付け・計画


その2

第九節: 予防の1、融和 Acceptance
1)地域有力者に会うこと
2)政治的に中立
3)宗教的に中立
4)開発段階の場合、持続可能性への配慮
5)仲良くなること
6)組織内の意識統制
7)現地スタッフの意思の尊重と管理
8)宗教と文化の尊重

その3

第十節: 予防の2、防御 Protection
1)派遣前に日本人スタッフに対して研修
2)保険への加入
3)毎週の会合(セキュリティー・ミーティング)に参加
4)他団体との情報の共有
5)事務所の物理的防御
6)立てこもり
7)緊急避難
8)通信
9)車両や人間の、移動時の規定
10)地域内の危険度を示す地図の作成
11)24時間、365日
12)現地のシニア・スタッフの研修
13)女性の強姦(レイプ)について
14)一人当たりのお金の用意
15)隣国のVISAの取得
16)安全管理マニュアルの作成

その4

第十一節: 予防の3、抑止 Deterrence
1)外交による抑止
2)軍隊による抑止
3)武装による抑止
4)ロー・プロファイルとハイ・プロファイル
第十二節 どんなに予防をしても有事は起こる
第十三節 有事対応の、初動
1)5w1hの把握。
2)誘拐からの要求と、脅迫
3)負傷者の救護
4)連絡体制の維持
5)被害拡大を阻止するための当面の措置
第十四節 有事対応の、一段落後
1)日本政府の外務省へ連絡
2)情報の確実性のクロス・チェック
3)家族への連絡
4)メディア対応
5)国外撤退、事業縮小の検討
第十五節 国際情勢により安全管理が困難に
第十六節 最後に


・・・
・・・

第一節: はじめに。


私は、国際協力をやる人を増やす活動をしている。

しかし、単に「国際協力をしてくれれば良い」のではなく、
「本当に意味のある国際協力」をする人を増やそうと
努力している。

このため、
「自己満足」ではない、
「本当に意味のある国際協力」とは、
どんなものかを考えてもらうための「材料」を、
本に書いたり、ブログに書いたりして、
紹介してきたつもりだ。

で、
「本当に意味のある国際協力」をやって頂くために、
どうしても、考えて頂かねばならない項目の一つが、

「途上国に行った時の、自分自身の身の守り方」である。

その理由を、まず次項で示す。


・・・

第二節: 死んではいけない、最大の理由。


国際協力をやる人は、途上国で死んではいけない。

もしあなたが死んだ場合、
日本人がそこで活動することは危険だと
(日本政府の)外務省などが判断し、
JICAなどの大型国際機関が活動を縮小する。

ユニセフなどの日本人の国連職員が働いている国際機関も
活動を縮小する可能性が高い。

つまり、
あなた一人が死んだせいで、
何千人もの人がおこなっている
途上国での援助活動が停止となり、
その結果、
その恩恵を受けていた途上国の人々が窮地におちいる。

食糧も水も届かなくなり、
教育も医療も停止してしまう。

あなた一人が、死んだせいで。


と、いうわけで、
あなたは、基本的に、
絶対に死んではいけないのである。

繰り返すが、

あなたが「死ぬ」ということは、
あなた一人が、自分の未来を失い、
あなたの家族や友人が嘆き悲しむだけではなく、

日本人が参加している多くの国際協力活動が、
そのせいで、停止してしまい、
その結果、援助を受けている途上国の人たちに
大きな迷惑がかかってしまう、
ということである。

このことは、絶対に、頭に叩き込んで頂きたい。


・・・

第三節: 安全管理を、なぜやるのか?


前述した内容と、やや重複するが、
基本的に、7つの理由がある。

1)あなたの命を守るため。

2)あなたが死ぬと悲しむ家族・友人などを
 悲しませないため。

3)所属する組織の活動を続けるため。

 あなたが国際協力団体に
 所属して活動している場合、
 あなたが死ぬと、人員が一人減って、
 プロジェクトを続け難くなるだけでなく、
  上述した理由で、
  この地域で日本人が活動することは危険だと、
  あなたが所属する団体の「安全管理担当者」が判断し、
  団体が活動を中止し、
  その国から(少なくとも一時)撤退するのが普通である。

4)所属する組織の風評(名誉)を守るため。

 基本的に、国際協力団体において、
 その所属スタッフが死んだ場合、
 その団体は、安全管理能力(危険回避能力)が低いとされ、
 組織の運営体制が、整っていない、いい加減な組織だと
 みなされる可能性が高い。

 このため、団体の評判が地に落ち、
 募金してもらえる量が減る場合がある。

 一般の人からの募金だけでなく、
 外務省やJICAからもらえる可能性のある、
 NGO無償資金援助や、草の根無償資金援助などの、
 公的なお金も、出資してもらえなくなり、
 経済的に壊滅的な状態におちいることも多い。

 さらには、以後、途上国などの現地で活動する際も、
 同国の政府や、地方自治体から、
 「活動してもいいですよ」という許可をとりにくくなる
 可能性がある。

5)他団体への影響

 上述のように、
 国際協力団体の『日本人』スタッフが死んだ場合でも、その国で、
 先進国から来た人が死んだことには変わりないので、

 やはり同じように先進国から来た、
 欧米人たちが活動するのも危険だと、
 国際機関(国連など)も、判断することが多い。

 そうなると、国連の設定する
 「その地域の危険度レベル(後述)」が
 1〜2ランク上昇し、
 各国際機関は活動を停止・縮小し、
 国際公務員(国連職員など)たちは、
 国外退去などを命じられる。

 あなた一人が死んだせいで、
 何百億円の予算で、何万人ものスタッフが働いている
 天下の「ユニセフ」などの国際機関も、
 活動を停止する可能性が高い。

 (すると、途上国の人たちへの支援が、途切れる。)

6)日本政府への影響

 あなたがテロ組織などに、誘拐・拉致された場合、
 身代金が要求されることになる。

 通常、何千万円という、高額なお金を要求される。

 あなたのご両親は、すぐに何千万円のお金を
 用意できないと思う。

 また、こんな時、(日本政府の)外務省などが、
 そのお金を用意して、払ってくれるという、
 『噂』がある。

 だが、実際は、違う。

 もしも、あなたの両親にしろ、外務省にしろ、
 あるいは、あなたの所属する団体にしろ、
 あなたの命を守るために、
 一度でも数千万円を払ってしまうと、
 それは一気に、アルカイダなどのテロ組織の間で
 噂になり、情報が広がり、

 『日本人を誘拐すると、
  数千万円、すぐにもらえるらしいぜ』

 という潮流が世界に生まれる。

 この結果、
 あなた一人を、数千万円払って助けたために、
 世界中にいる日本人たちは誘拐される危険が高まり、
 世界中で、テロ組織たちは、数千万円を要求しようとする
 ようになるのである。

 このため外務省は、原則として、
 (少なくとも表面上は)
 上記のようなケースで、決して犯人の要求には応じず、
 お金を払わないことになっている。

 あなたの所属する組織が、こういったケースで
 お金を払うかどうかは、
 その組織の方針や、状況による。

 こういった、誘拐などのケースでは、通常、
 (NGOの場合は)
 その国で、仲好くしていた地域の有力者などを頼って、
 『海外から援助に来てくれてたんだから、解放してやれよ』
 と犯人たちに言ってもらうのが、常道である。

 が、この方法で解放してくれるかどうかは、
 その頼まれた人の手腕によるので、微妙。

 その他、外務省などが、外交ルートを通じて、
 それなりの努力をしてくれる場合もあるが、
 あまり役に立たないと言っている人もいる。
 
 ともかく、上記のように、あなたが誘拐されると、
 「世界中にいる日本人全員に被害が及ぶ」
 可能性があることを、知っておいてもらいたい。

7)マスコミへの影響

 最後は、メディアへの影響だ。
 ちなみに、国際協力の世界では、
 マスコミとはあまり呼ばず、メディアと言うことが多い。

 マスコミ対策ではなく、「メディア対策」と言う。

 マスコミのイメージしている国際協力は、
 実際の国際協力のそれとは、
 大きく異なることが多い。

 特に、NGOに対しては、
 そのイメージが、大きくゆがんでおり、
 過度に称賛するメディアもあれば、
 過度に非難するメディアもある。

 天使のように美しい心の人たちだけがやっている組織、
 だと思っている人もいれば、

 左翼ゲリラが隠れ蓑にしている怪しい集団、
 だと思っている人もいる。

 こうした、様々な「極端な」認識を
 メディアがしている現状で、
 テロ組織に、NGOが殺されたり、誘拐された場合、

 あなたの組織の評判も、
 NGOの評判も、
 国際協力というもの全体の評判も、
 すべて、下がる可能性が高い。


以上の、7つの理由から、
あなたが、様々な人や組織に迷惑をかけないために、
絶対に、自分の身を守って頂きたい、
とお願いしているわけである。


・・・

第四節: 安全管理を誰に対してやるのか?


これに関して、最大の問題は、
先進国側スタッフと、
途上国側スタッフの扱いに、
どの程度、差を付けるか、である。

まず、用語の解説をする。

日本や欧米などの先進国から、
アジアやアフリカなどの途上国に、
国際協力や開発をするために派遣された場合、
その人のことを、
international staff または expatriates
と言う。

一方で、その外国人スタッフよりも、
だいぶ多い人数を、途上国側で雇う。

この現地で雇った途上国の人々のことを
national staff または local staff
と言う。

で、例えば、
アフガニスタンに学校を作るプロジェクトを行う場合、
日本人スタッフは、通常、
首都カブールなどの大きな町に事務所を借りて、
高い塀に囲まれた、安全な場所に住み、
そこから(地元で雇った)アフガン人スタッフに指示を出して、
プロジェクトを行う。

で、
アフガン人スタッフは、
危険な外に出かけて行って、
危険な地域で、学校を作ってくれたり、
子どもたちに教育をしてくれる、
というわけである。

繰り返すが、
日本人スタッフは、安全な塀の中にいて、
指示を出すだけ、である。

(国連などの国際機関や、
 JICAなどの政府機関の場合、
 危険な地域であるかどうかにかかわらず、
 完全に、上記のような体制でおこなう。)

(民間組織のNGOの場合、
 安全な地域の場合は、
 日本人などの外国人スタッフが、
 自分で田舎まで行って、
 自分で活動をすることが多いが、
 紛争地帯などの危険地帯では、
 国連やJICAと同じように、
 現地で雇用したスタッフを使うのが、
 普通である。)


おかしいと思わないだろうか?

もしも、
国際協力が、全ての人を平等だと考え、
日本人もアフガン人も、
「同じ人間」として扱い、
助けたいのであれば、
このやり方はおかしい、と思うはずである。

しかし、この方法は、
もっとも、途上国の現地の人々に近い、
民間のNGOでさえ、
基本的に、このような体制で
プロジェクトを運営していることが多い。

(理由は、第二節に書いた7つの理由による。)

さて、
途上国の人を、危険な地域に行かせて
プロジェクトをやらせる、と言ったが、
全然(彼らの)安全性に配慮しないわけではない。

通常、以下のようなシステムをとる。

例えば、危険度レベルを、以下のように設定する。
(注: あくまで例)


A:ものすごく命の危険がある地域

B:やや命の危険がある地域

C:物が盗まれる危険は高いは、命の危険はほぼない地域

D:物が盗まれる危険が少しある地域

E:まったく安全な地域


で、
日本人スタッフは、
AとBの危険度レベルを設定された地域には
絶対に行かず、
CからEまでの地域・場所で活動することになる。

一方、
途上国側スタッフは、
Aの地域には、流石に行かせないが、
BからEの地域までは、行かせる、
というのが、通常である。

(もちろん、プロジェクトにもよるが。
 紛争地帯でやるプロジェクトの場合、こんな感じ。
 比較的安全な開発段階の途上国で行うプロジェクトの場合、
 1段階、下にずれる。)

(上記の意味がわからないと困るので、解説するが、
 途上国といっても、3段階ある。
 1)緊急段階:戦争や内戦をしている紛争地。
    アフガニスタンなど。
 2)復興段階:一応停戦したが、まだくすぶっている。
    イラクなど。
 3)開発段階:政府も地方自治体も一応機能している。
    カンボジアなど。)

また、
安全を管理するための、機材なども、
日本人スタッフには、
通信機材を一人1台割り当てるが、
途上国側スタッフには、
車に乗っている4人に対して通信機材を一つ、
などというように、
差を付けるのが普通である。

で、これを読んで、
「それはおかしい。平等じゃないじゃん」
と思う人も、いるかと思う。

(私も、いまだに、時々、そう思う。)

実際、私がアフガニスタンで仲良くなった
現地スタッフの「アレフ君」から、
こう言われたことがある。

「トシさん(私の愛称)、
 事務所の塀を高くすることや、
 安全のための衛星携帯電話にばっかり、
 たくさんのお金を使うんだったら、
 その分、学校や病院を作る方に、
 お金を回した方がいいと思うよ。」

これは、暗に、
日本人スタッフが
安全管理にばかりお金をかけていることに対する、
批判だっのだと思う。、

で、彼の立場からすれば当然で、
自分の祖国を援助するためにやってきた
(と思っていた)団体が、
自分自身の安全を守るために、
大量のお金を使っているのをみると、
こうも言いたくなるものだと思う。

が、
(NGOに限らず、政府系でも国際機関でも)
ほとんど全ての国際協力団体が、
上記のような、
外国人(日本人など)スタッフと、
現地(途上国側)スタッフとの間に、差を付けて、
安全管理を行っている現状を、
「客観的に」鑑みた場合、

やはり、
「外国人スタッフが死亡した場合」
上述した7つの迷惑が、
様々な人や組織にかかるため、
国際協力の世界、全体のために、
この差をつけざるをえない、
のだと(一応)理解している。

(が、アフガン人の友人、アレフ君の言葉が、
 いまだに私の耳に、ひっかかっている。)

(また、後述するが、
 国際協力の世界で最近問題になっているのは、
 紛争地帯における国際協力関係者の死亡数が
 増加していることなのだが、
 同時に、
 外国人スタッフよりも、
 現地スタッフの死亡数の方が、
 より増加している、という統計データがあることも、
 ここで紹介しておく。)


・・・

第五節: 安全管理は二つ。予防と有事対応。


安全管理には、大きく分けて二つある。


1)事件が起きる前に、普段から行っておく、予防措置。

 準備しておくことや、研修などだ。


2)事件が実際に起こった時の、有事対応。

 これには、
 「初動」として、まず何をやり、
 「一段落後」に何をやるか、がある。

以上の、予防と、有事対応を合わせて、英語では、
emergency preparedness and response
と言う。


1)予防のことを、
 リスク・マネージメント、と言う。

2)有事対応のことを、
 クライシス・マネージメント、と言う。


(上記の定義は、あくまで、
 海外における国際協力において、
 上記のように使われている、といことである。
 国際協力と関係ない、他の分野では、
 まったく別の「定義」で、
 リスク・マネージメントも、
 クライシス・マネージメントも使われているので注意。)


なお、
今回、国際協力における安全管理(危険回避)と題して
書いているが、基本的に、
民間のNGOにおけるそれについて書く。

理由は、以下である。

前述したように、途上国といっても、
緊急段階、復興段階、開発段階がある。
で、
政府機関と国際機関が行う援助のほとんどは、
開発段階で行われる。
はっきり言えば、
完全に戦争がおさまって、
その国の政府が確立してから、
(途上国の政府と先進国の政府との間で、
 あるいは、
 途上国の政府と国際機関との間で)
外交上の条約などの約束を締結してから行うのが、
その方法である。
つまり、政府機関と国際機関は、
基本的に、途上国側の政府が、
きちんと確立された状態にならない限り、
援助をしない、のである。

理由は、
ある途上国で内戦が起こっている場合、
例えば、Aというグループと、
Bというグループが戦っている場合、
最終的にどちらが勝利して、政府となり、
さらにそれが国連などから国として承認されるか、
内戦中は、わからない。
よって、こうした紛争の最中の段階では、
国としては、どちらの組織にも援助をしない方がよい。
もしも、してしまった場合、
援助をした方のグループが負けてしまった場合、
日本政府は、反乱軍に加担した、
ということになってしまうからだ。

よって、政府機関も国際機関も、
基本的に、政府が確立した開発段階になってから、
その国を支援する、というのが通常である。

(ただし、これには例外がある。
 日本政府のJICAは、
 もともと開発段階だけを支援していたのだが、
 アメリカとの軍事上の外交関係があるためと、
 国連安保理の常任理事国を目指しているため、
 アフガニスタンだけは、
 緊急段階・復興段階でありながらも、
 例外的に、援助を行っている。
 また、
 国際機関に関しては、百以上もの組織があるが、
 そのうち、緊急段階でも活動をしているのは、
 WFP(国連食糧計画)、
 UNHCR(国連難民高等弁務官)、
 PKO(国連平和維持活動)、
 PKF(国連平和維持軍)、
 ぐらいである。)

と、いうわけで、
紛争中の緊急段階、
すなわち、その国の政府がまだ確立していない、
(ある意味では、援助が最も必要な地域で)
もっとも活動しているのは、
間違いなく、民間のNGOたちだ、
ということである。

ただ、その主力となっているのは、
欧米の大型NGOたちであり、
日本のNGOたちは、
まだそこのレベルまで達していないのが現状だ。

(予算、体制、スタッフの熟練度の、
 すべてにおいて、欧米のレベルに達していない。)

つまり、
紛争地帯にいくのは、
NGOたちであることが多いにも関わらず、
(特に日本のNGOたちは)
その安全管理・危険回避の手法についても、
いまだ不十分であることが多いため、
私が今、ここにこうして、
参考となるであろうことを
こと細かに書いているわけである。

なお、
JICAなどの政府機関に所属する国際協力団体は、
予算が豊富にあり、様々な専門家を動員できるため、
安全管理に関するマニュアルも、
自分の組織内に存在する。
だから、
あなたがJICAに入ったら、それを読めばよいだけである。


参考:
国際協力機構(JICA)
草の根技術協力事業(草の根協力支援型・草の根パートナー型)
実施の手引き 実施上の安全管理について
http://www.jica.go.jp/partner/kusanone/download/guidance/tebiki_05.pdf

JICA 海外での安全 2010年
http://www.jica.go.jp/about/report/2010/pdf/62.pdf

JICA 海外での安全 2009年
http://www.jica.go.jp/about/report/2009/pdf/48.pdf

JICA 海外での安全管理 2004年
http://www.jica.go.jp/about/report/2004/pdf/ann2004_35.pdf


また通常、
組織に入る前後で、それに関する研修もある。

おまけに、JICAは、そもそも、
(上述したように、ごく一部の例外を除いて)
安全管理対策に関して比較的マイルドでもよい、
途上国の中でも開発段階の国に行くことが
圧倒的に多いのである。

(余談だが、JICAの職員1500人のうち、
 3分の2以上は日本側におり、途上国にいるのは、
 3分の1弱程度である。
 つまり、そもそもJICA職員は、
 日本側で仕事をしていることが多い、
 という側面も、知っておいて頂きたい。)

と、いうわけで、
以下は、
紛争地帯に行くことが多い、
NGOのための対策などを、書く次第である。

なお、
将来、国際機関や政府機関の職員となりたい方も、
以下に書いていることを参考にし、
自分なりの「安全管理に関する意識」を持つために
役立てて頂きたい。


・・・

第六節: 安全管理の「予防」の基本概念


安全管理に関する、ものの本を読むと、
基本的に、次の「三角形」の概念が書いてある。

「セキュリティー・トライアングル」
security triangle


1.融和 Acceptance

 地元民と仲良くなり理解してもらい、守ってもらうこと


2.防御 Protection

 物理的防御(高い塀・通信機器など)とスタッフの研修


3.抑止 Deterrence

 武装警備、武装組織との契約、外交(国連に治安回復依頼)


上記の三つの要素(側面)を、
三角形のそれぞれの角に置いて考え、
自分の組織は、その三角形のバランスの中で、
どれにより多くの比重を置いて、
危険を「予防」するかを考える。

これが基本である。

最初に、結論を書いておくと、
NGOの場合は、上に並べた通り、
融和、防御、抑止、の順番に
重要である。

(政府系の場合、全く違う方針となる。)

この三つの要素については、
追って、詳細に説明する。


・・・

第七節: 頻度と衝撃度(インパクト)


起こる可能性がある事件は、
(単純な)盗難などの程度の軽いものから、
殺人などの重大なものがある。

一般に、
軽犯罪は頻度は多いが、衝撃度は低く、
重大な犯罪は頻度は少ないが、衝撃度は高い。

無数に想定される「発生する可能性のある事件」の中で、
比較的頻度が高く、
比較的衝撃度も高い、
というものを中心にして、対策をとる。

すべての事件に対して、対策をとることは、
予算の都合や、
そもそも活動をするためにここに来ている
ということのため、できないことが多い。

要するに、優先順位付けを、
日頃からおこなっておくことが大切。


・・・

第八節: 情報収集・査定・優先付け・計画


リスクの管理をするには、
まず、情報をできる限り集め、
ついで、それを(頻度と衝撃度について)
評価(リスク・アセスメント)し、
対応するかどうかの優先順位付けをし、
以上を踏まえた上で、
計画(セキュリティ・プランニング)を作る。

計画は、もちろん、
予防するための、人の研修や建物の物理的防御と、
実際に、有事が起きてしまった場合、
発生時の行動(初動)のマニュアル化、
などである。


ここでは、とりあえず、
途上国での情報収集について、述べる。

(後から書くこととも重複するが、
 とりあえずここで、一度まとめておく。)


1.セキュリティー・ミーティング

 後述するが、
 途上国で週に一回程度、
 各援助機関や軍関係が集まる会合がある。
 基本的に、出席した方がよい。
 これに出席しないと、命の保障はないかも。
 ここで、その国の中の、各地域での紛争の波及状況が
 入手できる。

2.他の援助団体とのメール、メーリング・リスト

 普通、現地では、
 日本のNGO同士や、
 同じ分野で活動するNGO同士で、
 メーリング・リストのようなものを作る。
 そこからも、有用な情報が手に入る。

3.外務省、在外公館からの情報。

 現地に大使館や総領事館がある場合、
 (アフガニスタンなどの紛争地帯では)
 基本的に、最低毎日1回、
 そこに連絡を入れることになっている。

 この件については、先日(2011年2月)、
 日本のNGOらと、外務省の間で、
 以下のような取り決めがあった。

参考:
外務省とアフガニスタンのNGOとの『安全5原則』。
1.紛争地域の緊急人道支援に実績のあるNGOが経験を有するスタッフのみで行う。
2.当該地域で国際人道機関の国際職員が活動しており密接に協力。
3.撤退計画を事前作成,外務省に提出。
4.在外公館に毎日連絡。
5.NGO自らのリスクで活動
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/23/2/0216_04.html

4.JICA事務所が、その国の首都などにある場合は、
 頻繁にJICA職員らと情報を交換する。
 その他、現地に、日本人会、在留邦人ネットワークがあれば、
 それにも一応、参加しておく。

5.国際機関との連絡も、密にする。
 紛争地帯で活動している、
 UNHCR、WFP、PKO関係との連絡は必須である。
 最低でも一回は、先方の事務所を訪問し、
 名刺交換を行い、顔を覚えてもらい、
 なにかあった時に、情報を送ってもらったり、
 助けてもらえるように、人脈(こね)を作っておくことも、
 やっておいた方がいい。
 Eメールの交換も、最低、週に1回はしておく。

6.テレビ

 NHK衛星放送、BBC、CNNのニュースは、
 見た方がいい。
 意外に、自分が派遣された国で起こっていることなのに、
 知らなかったニュースが、報道されていることも多い。
 このため、衛星放送を見るための、
 テレビ、アンテナなども、現地事務所には、必要である。

7.ラジオ

 NHKが短波ラジオを流しており、
 海外安全情報を、一応、流している。
 派遣された国によっては、受信可能。
 (受信できない国もある。)

http://www.nhk.or.jp/nhkworld/japanese/radio/shortwave/howto.html

 しかし、ラジオについては、
 NHKのそれよりも、途上国の
 現地のラジオのニュースを聞いた方がよい。

 ただし、現地のラジオは、
 現地語のことが多いので、
 通常、事務所の門番(ガード)として雇っている、
 現地人スタッフを使う。
 彼らは、基本的に、ずっと暇なはずなので、
 彼らに、定時に報道されるニュースを、
 現地語から英語に翻訳してもらい、
 それを、大学ノートに書いてもらう。

 で、それを外国人スタッフが見て、
 現地で流れているニュースを知る、
 という方法を、私はお勧めしておく。

 (人件費の節約のため。)

 もちろん、緊急ニュースなら、
 すぐに口頭で伝えてもらうことも必要だが、
 こちらが大事と思うニュースと、
 現地人が大事と思うニュースは、
 異なることが多い。

 例えば、
 アフガニスタンでは、紛争などで、
 毎週、最低でも数人のアフガニスタン人が
 死んでいるため、
 人が死ぬことはめずらしくないため、あまり大きなニュースではない。

 よって、彼らはあまり大きなニュースだと
 思わない可能性がある。

 ところが、我々にとって、大きなニュースである場合がある。
 それは、
 「外国人(欧米人や日本人)が死亡した場合」だ。

 アフガニスタン人にとっては、
 いつものように、たいしたニュースではないが、
 こちらにとっては、重大なニュースである。

 理由は、欧米人や日本人が死んだ場合、
 国連や外務省が、この地域の危険度を上げ、
 外国人(日本人)の撤退(国外退去)勧告などを、
 する可能性もあるからだ。

 つまり、プロジェクトが、いきなり中止になってしまう。

 これが最も重大なケースだが、
 他にも、現地人が重大だと思わないが、
 こちらにとって重大な事件というものがあるので、
 できれば、
 現地のニュースを、すべて、英語に翻訳してもらい、
 報告してもらった方がよい。

 (もちろん、簡潔に短くした、概要だけでよい。)

 なお、途上国に、外国人のための英語でのラジオ番組が
 ある場合もあるが、現地語の放送と、
 英語の放送では、だいぶ内容が異なることが多い。

 基本的に、現地語のそれの方が、内容が濃い。

8.インターネット

 ネット上に、無数のニュースが流れている。
 他の団体から情報を集め、
 その国における、有名なニュース・サイトなどは、
 ひととおり、チェックするように。

 基本的に、英語版がある、
 現地のメディアのニュースサイトを見るのが、普通。

 その他、BBC、CNN,日本のメディアなど。

9.雇った現地スタッフからの情報

 最低でも毎週一回、ミーティングを行い、
 全員から、活動地域付近での、
 殺人、テロ、強盗、盗難、などの治安の状況について、
 教えてもらう。
 もちろん、そうしたことがあったら、
 日頃から、すぐに教えてくれるように、指示しておく。

10.近所の人やコミュニティーと接触

 外国人が事務所の壁の外に出ることができる
 治安の状況であれば、
 近隣の人々と、お茶を飲みながら、雑談をし、
 後述の「親密度」を上げるととともに、
 付近の治安の状況を教えてもらう、
 という方法もある。

 しかしこの可否は、治安の状況による。

11.有力者のどさまわり

 安全管理担当者は、
 (村長などの)地方自治体の長、宗教施設の長、部族の長、
 各学校の長、その他の大きな施設の長などに、毎週一回は会って、
 最近の状況を教えてもらった方が良い。

 さらに、
 複数の警察官、消防官などとも、
 ある程度仲良くなっておいた方がいい。
 なにかの時に、助けてもらえる。

 その他、バスターミナル、駅などの、
 交通の集積所には、
 ニュースにまだなっていない最新の情報が集まる場合がある。

 バスの運転手らが集まって、話している雑談の中に、
 その最新の情報があることもある。

 ただし、こうした場所は、危険でもあるので、
 通常、現地スタッフなどに、
 買い物ついでに、そうした場所の状況を
 探らせるのが常道。


以上、様々な方法を駆使して、
あらゆる情報を集めることが、
安全管理をする上で、最初に必要なことになる。




続く
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65607088.html