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第九節: 予防の1、融和 Acceptance


途上国の活動地域で、
周辺の人と仲良くなり、
受け入れてもらい、
誤解されて非難などされないよう注意し、
また、
なにか(事件が)あった時に
守ってもらうような関係を
日頃から構築しておくこと。


1)地域有力者に会うこと

目的・実施内容・受益者(地域のメリット)
などの説明をする。

紛争をやっている最中、あるいはその直後の、
緊急・復興段階にある地域でのプロジェクトの場合、
例えば、以下のように地元の人々に説明する。

「目的は、この地域に病院を三つ、作ることです。
 そのために何をするかと言いますと、
 村長さんの許可をとった土地で建設工事をおこなわせて
 頂きます。
 病院が完成した後は、
 数十人のスタッフを地元で(有給で)雇用する予定です。
 これらのことに対し、
 この付近の民族の長と、宗教団体の長の許可もとる予定です。
 そしてまた、
 この病院を作り、運営していくことで、
 肺炎で死んでしまう子どもたちを救ったり、
 出産の前後で死んでしまう妊婦などを助けることができます。
 それが私たちの目的です。
 こうした活動を、治安が悪化しない限り、
 少なくとも1年間続ける予定です。」

上記のように、
その地域の有力者たちの許可をとるのが、基本である。
行政上の有力者(村長、郡長など地方自治体関係)だけでなく、
民族の長、宗教団体の長の許可も必要。

さらに、その地域で、
対立する武装勢力が争っている場合、
その両方のコマンダー(司令官)と会って、
「我々は、政治的に中立だ。
 あなた方の敵対勢力とは関係なく、
 すべての人に、分け隔てなく、援助をする方針だ」
ということを、説明する必要がある場合もある。

この件は、非常に難しくて、
例えば、A部族と、B部族が内戦をしている場合、
A部族の司令官と会っただけで、
B部族の人たちから、
「あいつらは、A部族の仲間だ」
と思われてしまい、ヤブヘビになることもある。
よって、接触しない方が良い場合もあり、
こうした判断は、基本的に、
前述したような様々な地域の有力者たちの意見を聞き、
また、
他団体がどうしているかなどを参考にして
決定をする必要がある。
(この件は、非常に難しい。)


2)政治的に中立

民間のNGO(非政府組織)の場合、
基本的に、「政治的に中立」のはずなので、
「我々は、中立です」
と、はっきりいうことができる。

JICAなどの政府系の組織の場合、
これが、できない。

日本政府は、アメリカ政府と日米安保条約という
軍事同盟を結んでいる。

中東圏の人はアメリカが嫌いなことが多いので、
日本もその仲間だと思われて、嫌悪されることがある。

要するに、「日本の看板を掲げると」
テロの標的になりやすい場合がある。

(よって、日本の国旗のマークを
 事務所の壁や、車の車体に貼ることは、
 よく、その是非を検討してからにした方が良い。)

ともかく、NGOであるならば、
自分たちの活動を、地域の人々に説明する時に、
「日本政府ともアメリカ政府とも、
 全く関係なく活動している。
 あくまで、善意を持つ個人の集団である、
 民間の日本人たちが、
 日本政府らの方針とは全く関係なく、行っています」
と言うことを、強調しておく必要がある場合もある。

(注:例外あり。
 地元の政府が既にJICAなどから援助を受けており、
 日本「政府」に好意を持っている場合は、
 NGOは政府とは関係ない、ということを
 言わない方がいい場合もある。)

(注:また、
 NGO(非政府組織)と言っても、
 近年は、日本政府のODA(政府開発援助)の予算から、
 外務省やJICAなどの「草の根無償資金援助」という枠組み、
 あるいは、
 緊急援助のための「ジャパン・プラットフォーム」
 という組織などから、
 NGOでも政府から資金援助を受けている場合が多い。
 つまり、(活動資金の出所を考えた場合)
 NGOだから政府とは関係ない、
 とは言えない場合が多い。
 よって、あなたが将来、NGOに所属した場合、
 その予算の出所はどこなのか、まずは確認した方がよい。)


参考:
草の根・人間の安全保障無償資金協力
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/kaigai/human_ah/index.html

参考:
ジャパン・プラットフォーム
http://www.japanplatform.org/top.html
 

また、この「政治的な中立」に関して重要なのは、
日本政府・アメリカ政府などの欧米諸国と関係ないだけでなく、
その国(その途上国)の、政治体制の批判も、
基本的にしてはいけない、ということ。

途上国の政府を運営する与党の批判をしても、
その対立勢力の野党等の批判をしても、
いずれも、
活動地域の何割かの人を敵にまわすことになる。

(与党側と野党側が、ともに軍隊を持ち、
 内戦などの形で争っている場合、
 基本的に、どちら側の支持も不支持も
 表明しない方が無難。
 どちらかから、攻撃される可能性が高くなる。)

よって、
もしも、あなたのやりたいプロジェクトが、
貧困削減・教育・医療・環境などの、
直接的には、その国の政治と関係ない分野であるならば、
基本的に、政治批判(政治的グループの批判)は
しない方が無難である。
スタッフにも、それを徹底する。

(どうしても政府あるいは反政府勢力の批判を
 することが必要な場合は、
 「政治体制を批判すること自体が活動」
 となっている啓発型の団体に頼んで、
 そちらの組織から言ってもらう、
 というのが妥当である。)

また、
以上の話と矛盾するようだが、
途上国で国際協力活動をする場合、
まず、その国の政府や地方自治体の許可を
とらなければならないことが多いので、
当然、政府側となんども会合を持つことになる。

この結果、
反政府勢力側から、
「あいつらは政府の仲間だ。攻撃しようぜ」
と思われる可能性がある。
が、これは、もう、どうしようもない。

政府の許可をとらないで活動した場合、
なにか(事件が)あった時(有事の際に)
さらなる問題を起こす可能性が高いからだ。


3)宗教的に中立

「宗教的に中立」であることを示すことも重要だ。
アフリカや中東では、
キリスト教系の団体が、その布教のために
学校や病院を作ることが多く、
布教のための「ミッション」なのか、
人道援助の「プロジェクト」なのか、
よくわからないことをやっているケースが多い。

(ちなみにアフリカの私立の学校は、良くも悪くも、
 そのほとんどが、宗教団体の資金によって運営されている。)

このため、
「うちの団体は、宗教的には中立で、
 キリスト教を始めとする宗教の普及には、
 一切、加担しておりません。」
と地域有力者などに、はっきり言っておくも重要。

また、自分の団体のスタッフにも、
そうしたことをしてはいけない、ということを
徹底しておくこと。
そうでないと、イスラム系テロ組織から
狙われる可能性が高くなる。


4)開発段階の場合、持続可能性への配慮

一方、紛争が終わってある程度安定した地域、
すなわち、開発段階にある国では、
政府も地方自治隊も機能しており、
加えて、
各地域でコミュニティーを作ることができるはずなので、

外国人が考えた「押し付け」の援助の側面を減らし、
その地域のコミュニティーが自分で考えたプロジェクトに、
外国人はあくまでサポートとしてお金や技術を支援する、
という形にするのが「近年の国際協力の潮流」である。

こうした考え方を、途上国の「自助努力を促す」
または「オーナーシップ(ownership)を高める」と言う。

また、開発段階では、
「持続可能性」への配慮が最も重要になる。

例えば、学校や病院を作った場合、
その立ち上げに協力した自分の組織が、
(数年後に)いずれ撤退し、
資金援助などを打ち来ってしまっても、
その学校や病院が、未来永劫、地元の人々の手によって、
運営・維持されていくことができるかどうか、
ということが、最も重要になる。

このため、緊急段階での援助の場合、
学校の教育費、病院の治療費などを、
(外国から援助団体側が、全て代わりに払ってあげ)
完全に無料にしてあげることが多いが、

開発段階の場合、
(雇われた地元スタッフの給料などを将来も確保するため)
学校の教育費、病院の治療費などを、
有料とすることが多い。

我々からの資金援助を打ち切った後も、
学校や病院が「持続可能な状態」にするため、である。

要するに、開発段階では、原則として、
(外国人は)あまりお金を出さない方が良いのである。

あくまで、コミュニティー自身によって、
徐々に地域を良くしていこうという
機運を高めることが中心となる。

(これを、ファシリテーション(地域育成)とか、
 エンパワーメント(能力強化)、と言う。)

このため(お金をあまり出さないため)、
「あいつら、外国から来たのに、金を出しやがらねぇ。
 金持ちのくせに、ふざけやがって!」
というような不満を持たれないように、
十分に、「持続可能性」の大切さについて説明し、
また、なによりも、
「我々は、いずれ、撤退する。
 無限にお金を持っているわけではない」
ということを、日頃から理解してもらう必要がある。


5)仲良くなること

さて、
緊急援助にしても、開発援助にしても、
上記のような「基本」を押さえた後は、
あとはともかく、
近所の人などと、仲良くなることも必要。

しかし、これも難しく、
仮に、あなたが近所のAさんと仲良くなりすぎた場合、
Aさんを嫌いなBさんは、
あなたも、嫌いになることがある。

また、Aさんと仲良くなりすぎて、
服を買ってあげる、などの友情を示す行為をすると、
Bさんなどから妬まれる(ねたまれる)ことになる。

さらに、もしも、
Aさんが自分の団体のスタッフとして雇用した人だった場合、
仲良くなりすぎると、上下関係が希薄になり、
団体としての統制がとれなくなることも多い。

というわけで、「ほどほどに」仲良くするのが妥当である。

ただし、
仲良くなったスタッフからは、
通常は知ることのできない
安全関係の(危険を防ぐための)情報を、
こっそり教えてもらえることもある。

このため、
スタッフの中の(代表ではない)一人が、
近所の人が毎日「お茶を飲む機会」などに参加し、
雑談をする中から、
その地域の治安の状況を(情報として)拾い上げる、
ということを、やった方がいい場合もあるし、
やらない方がいい場合もある。


6)組織内の意識統制

あとは、組織の内部の「意識統制」が重要だ。

日本から連れてきた外国人スタッフたちや、
地元で雇った現地人スタッフたちが、
組織の目的などについて、
近隣の人に対し、もしも違ったことを言ってしまった場合、
まわりの住民たちは、不審に思う。

このため、毎週のようにミーティングを行い、
団体の方針をスタッフ間で確認することが必要。

確認する内容は、
団体の目的・実施する事業の予定・現地にとってのメリット、など。


7)現地スタッフの意思の尊重と管理

あとは、現地スタッフの自主性の尊重の問題がある。

基本的に、
紛争地域などの緊急段階の場合、
外国人スタッフが現地人スタッフに「命令する」、
トップ・ダウン方式で運営する。
そうでないと、緊急時に対応が遅れる。

しかし、
地域の状況が開発段階に近い場合、
現地人スタッフの意見を尊重し、
彼らの意見を、プロジェクトなどに
より多く取り入れる「姿勢」をみせる
必要がある場合もある。

さらに、
現地スタッフにも役職を与えるため、
現地スタッフの中でも上下の関係はできるのだが、
それ以外の、
宗教の違い、民族の違いなどによって、
絶対に、現地スタッフを差別してはいけない。

もしも、雇用した現地人スタッフが不満を持ち、
敵に回った場合、非常に「まずい」ことになる。

近所で、あなたの団体の悪評をふれまわったり、
最悪のケースとしては、
夜、強盗を事務所内に誘導するなど、
とんでもないことが生じる可能性もある。

なお、今回は、余談になるので軽く触れるが、
現地人スタッフは、通常、3カ月めぐらいから、
だんだん慣れてきて、
事務所の物品を盗んだり、
買い物を頼んだ時に「不正」を働くようになることも多い。

(使った買い物の金額に関しウソをついたり、
 自分の親戚や友達の商店だけで、全ての物品を購入するなど。)

このため、仲良くなりすぎてもダメで、
あくまで、現地スタッフを管理する、と言う姿勢も
持っていないといけない。

このあたりのバランスが、難しい。


8)宗教と文化の尊重
 
さて、この「融和」の部分の最後に、
現地の宗教や文化の尊重を強調しておく。

イスラム教の国に言ったら、
その「しきたり」について勉強し、
その地域にいる間は、 
原則として、その慣習に従う姿勢を見せるのが、
基本である。

そうでないと、地域の人から反感を持たれたり、
そうでなくても、「目立つ」ことになり、
テロ組織から襲撃を受けやすくなる。

イスラム教の地域であれば、
豚肉は食わない、
1日5回は、仕事中でも現地スタッフは礼拝する、
金曜は、イスラム教の休日、
女性は絶対、頭にスカーフ等をかぶる、
女性はなるべく、体の線を強調する服は着ない。
ラマザーン(断食)の期間は仕事量を減らしてあげる、
など、多数。


参考:
女性の服装に関する情報が掲載されているサイト
<Journeywoman>
http://www.journeywoman.com/ccc/default.html

 
・・・

続く
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65607094.html