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目次:

人間の安全保障の定義
誕生の背景
創設の経緯
創設の裏経緯
ODAにおける推進
ODA改革との関係
人間の安全保障の概念と実践
外務省の、国連内の「人間の安全保障基金」を通じた支援
島嶼国の問題
自衛隊との連携
eセンター
人間の安全保障への批判
知的財産保護と矛盾する可能性
東日本大震災
キャパシティ・ディベロップメント


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人間の安全保障の定義


人間の安全保障の定義。「人間の生にとってかけがえのない中枢部分を守り、すべての人の自由と可能性を実現すること」 「安全保障の今日的課題」p11(「人間の安全保障委員会」報告書 2003年5月)

「人間の安全保障」とは、(外務省によれば)人々が「恐怖と欠乏から解放」され、尊厳ある生命を全うできる社会・国の実現のため、人間一人ひとりに焦点をあて、,修諒欷遒版塾篭化、∩蠍澆亡慙△垢觸問題への包括的な対処、B人佑粉愀玄圓箸力携を重視する考え方。

外務省、ODA,人間の安全保障(分野をめぐる国際潮流) http://t.co/ZA0lNoMA 人間の安全保障パンフレット(2011年10月)PDF http://t.co/vSnayAvU


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誕生の背景


「人間の安全保障」が生まれた背景。‥貔称篝錣僚結と内戦の増加。▲哀蹇璽丱覯修砲茲蝓経済危機の相互影響、国際テロ、地球規模環境問題、感染症パンデミック等の国境を越えた脅威の増加。以上より国を単位とした「国家の安全保障」では不十分のため、人々に焦点を当てた「人間の安全保障」の導入

「人間の安全保障」の背景。冷戦終結後に多発するようになった内戦や地域紛争において、国家が国民の生命と財産を守るという「国家の安全保障」が充分に機能せず、たくさんの一般市民が紛争や国内の混乱の犠牲になっていること。その状況下で、国際社会がいかに当事国の国民の安全を守るかという課題。

「人間の安全保障」の背景。グローバリゼーションが進むにつれ、人・物・サービス・お金・情報などが大量にかつ瞬時に移動。その結果、国際テロ・犯罪、感染症、世界金融危機、食料価格高騰、気候変動など。このような国家としての枠組みだけでは対応することが困難な脅威から人々を守るために生まれた

「人道問題に、人道的解決なし」 緒方 貞子(1927年生 )。元国連難民高等弁務官、現JICA理事長、「人間の安全保障」を提唱。「曖昧で不透明な問題などというものはない。曖昧で不透明と考えるのであれば、それを個々の課題に落とし込み、課題ごとの方策を考えていくことが肝要なのである」


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創設の経緯


「人間の安全保障」の歴史。1994年UNDPの人間開発報告で言及。98年の小渕総理演説(及び寄付)により、99年国連に「人間の安全保障基金」設立。00年森総理が「人間の安全保障委員会」の設立呼びかけ。01年設置(緒方貞子、アマルティア・センが共同議長)。03年同委員会の最終報告書

「人間の安全保障」の歴史。2005年、国連首脳会合成果文書で「人間の安全保障」に言及。06年以降「人間の安全保障フレンズ会合」。08年、国連総会テーマ別討論の課題で人間の安全保障。09年鳩山総理が国連総会で「人間の安全保障の推進」。10年、国連事務総長が人間の安全保障に関する報告



人間の安全保障。1994年の国連開発計画の「人間開発報告書」の中で初めて提唱された安全保障上の概念。冷戦崩壊後に登場した新たなタイプの武力紛争(内戦等)に対応するためには従来の「国家の安全保障」では不十分であり、人間の生存や尊厳を脅かす、あらゆる脅威から一人一人を守ろうとする概念

「人間の安全保障」は1994年に国連開発計画(UNDP)が打ち出した概念でノーベル賞・経済学者アマルティア・センや、緒方貞子JICA理事長(元国連難民高等弁務官)が主導して広めた。日本人の緒方が関わったため日本政府・外務省は当初からこの普及に尽力し「人間の安全保障基金」も作った。

外務省。「人間の安全保障基金」とは,人間の安全保障の実践のため,日本のイニシアティブにより1999年に国連に設置された信託基金。日本は現在までに総額約413億円を拠出。この基金を通じ人間の生存,生活,尊厳に対する脅威に対し、国連関係国際機関の210件以上のプロジェクトを支援した。

国連の「人間の安全保障」諮問委員会の緒方貞子議長が退任。2011年4月。同委員会は日本が主導する「人間の安全保障」の概念普及や基金の活用について国連事務総長に助言するもので緒方は2003年の設立時から議長。後任はコスタリカ出身で米州人権機関議長のソニア・ピカード。緒方は名誉議長に


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創設の裏経緯


人間の安全保障」に「特許権」が入るとすると、HIV/エイズに関する薬が問題。欧米の製薬会社が作った抗HIV薬をインド等の会社がジェネリック医薬品として安く作ってアフリカで活動するNGOに売ったが、明らかな特許権の侵害だった。が人道的に許されるこということで容認されたが、相矛盾する

「人間の安全保障」は「国の安全保障」と対立する概念だったが国家を重視するキューバなどの社会主義国家が反対し国連の場では合意不可能。このため2010年春、国際連合事務総長・潘基文は各国の合意を得るため言い方を変え「国の安全保障と人間の安全保障は相補的なもので、対立するものではない」

「人間の安全保障」でポイントとなっていたのは(国家の横暴によって)国民が危機的な状況に陥っている場合、国連が武力を投入して守ろうとする(保護する)ことを正当とするかどうか、だった。しかしキューバ等の社会主義国家が反対しこれは不可となった。2010年春、国連事務総長がそれを明言した

「人間の安全保障」は元々「国の安全保障」のアンチテーゼとして生まれた。国家を維持することが最重要と考えれば国家に逆らう民衆を虐殺してもよいことになる。これを防ぐため生まれたのが「人間の安全保障」だったのだが国連が各国からの合意を探る過程で国家主権に配慮しトーンダウンした印象がある


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ODAにおける推進


外務省、開発協力の3本柱。”郎ず鏝此人間の安全保障。当面はMDGs達成。貧困削減につながる持続的成長、保健、教育に重点。∧刃造悗療蟷顱6杁淇容算抉腓ら開発まで継ぎ目のない支援。持続的な経済成長。ODA 以外の手段も使い日本の成長戦略に活用。環境、インフラ、投資環境整備に重点

ODA大綱(2003年8月改定)。〔榲:国際社会の平和と発展への貢献を通じて、日本の安全と繁栄を確保。基本方針。途上国の自助努力支援、人間の安全保障、公平性の確保、日本の経験と知見の活用、国際社会における強調と連携。重点課題:貧困削減、持続的成長、地球的規模の問題、平和構築

ODA大綱(政府開発援助大綱、1992年、閣議決定。2003年改定)。五つの基本方針。ヽ発途上国の自助努力支援、◆嵜祐屬琉汰簡歉磧廚了訶澄↓8平性の確保、げ罎国の経験と知見の活用、ス餾歇匆颪砲ける協調と連携 http://t.co/o55pTppY

ODA大綱・ODA中期政策における「人間の安全保障」の定義。「一人一人の人間を中心に据えて、脅威にさらされる得る、あるいは現に脅威の下にある個人及び地域社会の保護と能力強化を通じ、各人が尊厳ある生命を全うできるような社会づくりを目指す考え方」

人間の安全保障の日本のODAへの反映。2003年8月「新ODA大綱」で五つの基本方針の一つ。05年2月「新ODA中期政策」で「人間の安全保障」は「開発支援全体にわたってふまえるべき視点」と記載。



ODA2010年度重点事項。。唯庁韮鹵成支援。もって人間の安全保障の推進。鳩山イニシアティブ。気候変動対策に取り組む途上国を支援。E譽▲献共同体構想。成長支援、格差是正。ぅ謄蹐龍式劼紡个垢襪燭瓩凌契鑪。アフガン・パキスタン支援。タ靴靴じ共の担い手であるNGOの支援と連携

草の根・人間の安全保障無償資金協力(草の根無償)。途上国の多様なニーズに応えるため1989年に導入。開発途上国の地方公共団体,教育・医療機関,NGOが実施する比較的小規模なプロジェクト(1,000万円以下)に対し,在外公館が行う資金協力 http://t.co/5nBKln1a


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ODA改革との関係


ODA改革。民間企業等との連携。ヽ発効果の高いBOP(Base of Pyramid)ビジネス促進に向けた多様な援助手法の整備。¬唄峇覿箸CSR活動やBOP ビジネスとNGOの連携を促進するため官民連携に草の根・人間の安全保障無償資金協力を活用。


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人間の安全保障の概念と実践


「人間の安全保障」の概念。/祐崔羶瓦任△襪海函9餡箸茲蠖佑肪輒棔脅威。国家の脅威ではないものでも、人への脅威であれば脅威とする。C瓦ぜ蝓9颪世韻任覆NGOや国際機関など多様な担い手。で塾篭化。その実現のためには、保護されるだけでなく、自らを守る能力強化が必要であること。

人間の安全保障。「恐怖からの自由、欠乏からの自由」がキャッチコピー。人々を取り巻く脅威(紛争・テロ・災害・環境破壊・感染症・経済危機・貧困・栄養失調・社会サービスの欠如・基礎インフラの未整備、など)が、さらに悪化する危険性を、「ダウンサイド・リスク」と言う。

JICA、人間の安全保障の概念。.肇奪廛瀬Ε鵝聞餡箸らの保護)、▲椒肇爛▲奪廖淵ャパシティ・ディベロップメントによる地域社会の育成)、6寡櫃らの自由、欠乏からの自由、に貢献する包括的な支援。ぃ唯庁韮鹵成を支えるインフラ整備。ゼ匆馘弱者に裨益。Д哀蹇璽丱襯螢好への対応。

人間の安全保障。実戦方針ゞ寡櫃鳩臻海らの自由。紛争再発予防のリスクマネジメント。人道緊急支援、復旧復興支援、開発支援という継ぎ目のない支援。⊆匆馘弱者に裨益。J欷遏protection)と能力強化(empowerment)双方を実現(政府、自治体、地域社会に同時にアクセス)

JICAが「人間の安全保障」に含まれるとしている課題。.哀蹇璽丱襦Ε螢好:地球環境問題(CDM関連機関の強化)、人口・食糧・エネルギー問題(省エネ等)、災害、気温上昇による感染症の拡大。国境を越える課題:国際犯罪、人や動物の移動に伴う感染症の拡大(エイズ等)、金融・経済危機。

JICA人間の安全保障、03年アフガン。国家連帯計画(National Solidarity Program, NSP)地方開発支援プロジェクト(Inter-communal Rural Development Project, IRDP)http://t.co/LygtUSyS


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外務省の、国連内の「人間の安全保障基金」を通じた支援


外務省、人間の安全保障基金を通じたソロモン諸島への支援、2011年8月。206万2088ドル(約1億8353万円)。1998年に起こった紛争により大きな被害。貧困,社会に対する不満・不信感,コミュニティー間の隔絶等,紛争の構造的火種が残存 http://t.co/YaUn43p

外務省、人間の安全保障基金を通じたインドネシアへの支援、2011年8月。日本は,国際移住機関,国連人口基金、世界保健機関が「インドネシアにおける人身取引被害者の保護と能力強化」プロジェクトに対し235万7798.30ドルの支援 http://t.co/dOc77wQ

外務省、人間の安全保障基金を通じたコンゴ共和国への支援、2011年11月 http://t.co/cUp1NKyD UNDP,FAO,UNICEF,WHO,UNFPAがコンゴ共和国で実施する「コンゴ共和国における平和定着,紛争予防と人間の安全保障」事業に対し、414万5240ドル

外務省、人間の安全保障基金を通じたウズベキスタン共和国での事業に対する支援 http://t.co/nazCY3Yd 日本の主導により設置された国連人間の安全保障基金を通じて,UNDP等が実施する「アラル海災害の影響を受けた持続可能な生計」事業に対し,394万4,787ドルの支援

外務省、人間の安全保障基金を通じたボリビア多民族国での事業に対する支援、2011年11月 http://t.co/GQwkC3wW 「強靱性,対応力,食料安全保障の統合的支援を通じた農村コミュニティの人間の安全保障の強化」事業に対し, 204万1,178ドル(約1億8166万円)


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島嶼国の問題


日本時間の2011年8月21日午前2時前と3時すぎ、南太平洋(オーストラリアの北東)のバヌアツ諸島付近で大きな地震が相次ぎ、震源地の近くで小さな津波が観測。マグニチュード7.5と7.4。太平洋の島嶼国は、海抜が低いため、数メートルの津波でも住民が全滅する恐れ。人間の安全保障に関係

太平洋には、ツバルなどの海抜3メートルもない島国たちがある。太平洋周辺にある、日本や南米(チリなど)で地震が起こった場合、津波が発生するが、それが島国たちを「ひとのみ」にする可能性がある。日本政府は「人間の安全保障」を国際社会で主導しようとしているが、最優先課題の一つではないか。


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自衛隊との連携


自衛隊イラク派遣と人間の安全保障の関係。人間の安全保障委員会は、1)脅威からの保護と同時に、2)被支援者の能力強化を提言。自衛隊はイラクで間接医療支援(被災者・患者を直接診療するのではなく、医療スタッフや医療設備を支援対象として現地の医療基盤を向上させることを目的とした医療支援)

自衛隊イラク派遣での医療支援における民軍連携。日本の政府開発援助(ODA)の草の根・人間の安全保障無償資金協力等により救急車と医療器材の供与。自衛隊の衛生隊は救急車を導入する際、乗務員に対する救急法教育を実施し、超音波診断装置導入時には現地医師に対し使用法を指導。モノとヒトの支援


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eセンター


「eセンター」とは、「国際人道援助緊急事態対応訓練地域センター」のこと。2000年、日本政府による「人間の安全保障基金」によって、国際連合難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所内に設立。緊急援助を行う団体スタッフに対し、年間10回300人以上、緊急時の対応に関する研修・訓練を実施


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人間の安全保障への批判


「人間の安全保障」という概念は1994年に国連開発計画(UNDP)が「人間開発報告書」の中で提唱したもの。「恐怖からの自由、欠乏からの自由」というキャッチコピーのもと、「人間の生存、生活、尊厳を脅かすあらゆる種類の脅威を取り除くこと」を言う。しかし、概念が抽象的すぎて実効性に問題

「人間の安全保障」を日本政府・外務省が普及している理由は緒方貞子JICA理事長が関係していたからだが実際は日本の国益のためではないかという批判が強い。日本の「プレゼンス」(国際社会への影響力)を保つため国連にこの概念の普及を目指している。つまり日本が国連の常任理事国になるのが目的

ODA改革。「途上国の人々と共に人間の安全保障の実現を図る」として、あいかわらず日本が主導(?)してきた「人間の安全保障」をODAのキャッチコピーに使っているが、概念が曖昧なため、国際的にはそれほど普及していない。綺麗ごとだけで具体性がなく、総論賛成、各論反対で終わる可能性が高い

「人間の安全保障」が根本的に間違っているのは、「人間」しか考えていないこと。世界の持続可能性を考えた場合、人間の都合だけを考えていると、人口は果てしなく増え続け、やがて世界中の資源を食い潰し、社会は壊滅する。「生命の安全保障」に概念を進化させる必要があると考えるのは、私だけか?

「人間の安全保障」は、もともと「国の安全保障」のアンチテーゼとして生まれた。国家を維持することが最重要と考えれば国家にさからう民衆を虐殺してもよいことになる。これを防ぐため生まれたのが「人間の安全保障」だが抜け落ちている概念が二つ。「未来の子どもたちの人権」と「他の生物の生存権」



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知的財産保護と矛盾する可能性


札幌で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)。94年インドネシアで決まった「ボゴール目標」(貿易・投資の障壁の削減、資本の自由な流れの促進など)の後の「横浜目標」の作成を目指す。骨子は「地域経済統合」「域内の成長戦略」に加え、「人間の安全保障」も。2010年11月までに策定

アジア太平洋経済協力会議(APEC)で「人間の安全保障」が言及された背景としては、貧困の人々も恩恵を受けられる公正な貿易、特許権に関する衡平な国際システムの構築、などの要因が関係するため。外務省の「人間の安全保障基金」が東南アジアの農業開発・貧困削減に拠出していることとの一貫性か

人間の安全保障」に「特許権」が入るとすると、HIV/エイズに関する薬が問題。欧米の製薬会社が作った抗HIV薬をインド等の会社がジェネリック医薬品として安く作ってアフリカで活動するNGOに売ったが、明らかな特許権の侵害だった。が人道的に許されるこということで容認されたが、相矛盾する


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東日本大震災


日本が推進する概念「人間の安全保障」に関する国連事務総長特別顧問を務める高須幸雄が2011年4月14日、ニューヨークにて、東日本大震災について、「避難所にいる被災者には人間らしい生活がない。最低限の命だけでなく、尊厳も確保しなければならない。それこそが人間の安全保障の基本だ」


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キャパシティ・ディベロップメント


CDアプローチ(キャパシティ・ディベロップメント・アプローチ)。1990年代より従来の先進国の知識・技術を一方的に途上国へ持ち込む置換(Replacement)アプローチの限界が明らかとなり、途上国のオーナーシップに基づく途上国自身の社会的能力を向上させることが持続的な開発成果に

キャパシティ・ビルディング(CB)とキャパシティ・ディベロップメント(CD)の違い。1)CBは組織や個人の能力向上。CDは加えて制度や政策の整備、社会システム改善。2)CBは外から構築する介入、CDは途上国自身による内発的なプロセス。3)CBは構築する段階のみ、CDは強化・維持も

調査研究 途上国の主体性に基づく総合的課題対処能力の向上を目指して キャパシティ・ディベロップメント(CD)〜 CDとは何か、JICAでCDをどう捉え、JICA事業の改善にどう活かすか〜 http://t.co/F8gghWBy