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目次:

はじめに
河岡義裕教授の論文の衝撃性
米政府が、バイオテロを恐れ、論文の公開を差し止め
WHOが、リスクより利益が多いとして、論文を公開へ
デュアルユース問題
デュアルユース問題の契機となったアメリカ炭疽菌事件
科学と倫理
河岡論文の詳細な内容
エジプトで、人から人に感染できる新型インフルエンザが発生する?
河岡論文の公開に対し、有識者らは?
河岡論文、ネイチャー
関連ブログ


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はじめに


高病原性鳥インフルエンザウイルスについて僅かな遺伝子の変異で哺乳類の間でも容易に感染することを示した河岡義裕の論文が2012年5月3日付の英科学誌「ネイチャー」に全文掲載。この論文については米政府が生物テロに悪用される懸念があるなどとして非公表を求めたことで掲載が先送りされていた

鳥インフルエンザは世界で散発的に人に感染しているが、『人から人に感染』するウイルスは今のところ出現していない。河岡教授はウイルスの表面にあり細胞に入り込むための突起「ヘマグルチニン」に注目。これに関する遺伝子を操作し3カ所を変異させた所、哺乳類同士で感染(すなわち人同士でも感染)

鳥インフルエンザ(H5N1)。。廝硲呂療計で、これまで、人への感染例は602、死亡は355。すなわち死亡率は約60%。▲ぅ鵐疋優轡◆▲┘献廛函▲戰肇淵燹中国に多い。2012年はエジプトで人への感染が増加。人から人へ感染できる4つの変異のうち、既に2つの変異をエジプトで確認。


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河岡義裕教授の論文の衝撃性


鳥インフルエンザが人の季節性インフルと遺伝子組み換えを起こすと哺乳類に効率的に感染する恐れがあると、東京大医科学研究所の河岡義裕教授らが発表。季節性インフルA香港型(H3N2)とで遺伝子混合の組み合わせを254通り想定。増殖に関係する遺伝子(PB2)を獲得し欧州で既に散発的に流行

人に感染すると6割近い致死率を示す高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)がインドネシアで豚に感染し一部が人ののどや鼻の細胞に感染しやすいウイルスに変異したと、東京大医科学研究所の河岡義裕教授らが発表。豚では症状を起こしにくく感染した豚は無症状だったため気づかないうちに広がった可能性

死亡率が高い鳥インフルエンザのウイルス(H5N1)と新型インフルエンザのウイルス(H1N1)は交雑して高い増殖力を持つものができやすいとの結果を東大医科学研究所の河岡義裕教授が発表。2009年流行した新型ウイルスは様々なウイルスの遺伝子が豚の中で交雑して発生。今後、豚の監視が重要


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米政府が、バイオテロを恐れ、論文の公開を差し止め


感染症やウイルスの科学者39人が高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の哺乳動物への感染に関する研究を60日間停止すると発表。バイオテロ等への研究成果の悪用を米政府が懸念したため。発端となった研究論文をまとめた河岡義裕東大教授は懸念払拭の方策を見つけ研究を加速すべきとの考え

鳥インフルエンザ研究論文の公開問題。2012年2月。米国政府に論文の公表を控えるよう求められた、東京大学医科学研究所の河岡義裕教授は、「これまで、私たちの研究の重要性がしっかりと評価されず、もしテロリストがこのウイルスを作ったらどうするのかなど、仮定の話ばかりが先行してしまった」


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WHOが、リスクより利益が多いとして、論文を公開へ


東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らは、強毒性の鳥インフルエンザウイルス「H5N1」が哺乳類同士でも感染する仕組みを解明。2012年5月。将来、大勢の死者を出す懸念がある新型インフルエンザの病原体になる可能性を示す成果で、論文が3日、英科学誌ネイチャーに載る。予防ワクチン開発に道

河岡義裕教授の鳥インフルエンザ論文はバイオテロに繋がらないとして公開へ。論文は、鳥インフルエンザウイルス「H5N1」が変異して実験動物のフェレットで空気感染するようになる報告。2012年2月、WHOはテロ悪用の危険性より新型インフルエンザ対策に役立つ公衆衛生上の利点が大きいと判断

高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)が哺乳類でも空気感染することを示した日本とオランダの論文に対しバイオテロに関する米政府の委員会が内容の一部削除を求めていた問題で、一転して論文の全文公表を認める声明。2012年3月末。河岡義裕・東京大学医科学研究所教授らの論文について全文公表へ

米政府が一時、生物テロへの悪用の懸念を示した鳥インフルエンザウイルスに関する東京大医科学研究所の河岡義裕教授らの論文を英科学誌ネイチャーが2012年5月3日付の電子版で内容を削除せずに全文公開。毒性の強いH5N1型のウイルスが、わずかな遺伝子変異で「人から人に」感染するようになる

河岡義裕教授の論文(2012年5月)。WHOでの議論を経て、テロ利用の危険は低いと判断された上、逆に(予防等のため)研究の重要性が再認識された。議論の過程では、科学技術の悪用・誤用をどう防ぎ、社会の利益に繋げるかが問われた。科学技術の軍事転用やテロ等の悪用は「デュアルユース問題」


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デュアルユース問題


デュアルユース問題(dual-use)。科学技術は、人類の繁栄に貢献するだけでなく、軍事利用や(テロ・犯罪等への)利用もされるジレンマをかかえること。仝胸厠魯┘優襯ーに関しては、原子力発電所等と原子爆弾・水素爆弾等の関係。∪己学においては、治療薬開発等とバイオテロの危険の関係

外務省、シンポジウム「生命科学の進展に伴う新たなリスクと科学者の役割」の開催、2011年8月。悪用された場合や事故発生時には,人類に災禍。デュアルユース(二重用途)性を有している。このため生物兵器禁止条約(BWC)の会議においても問題に http://t.co/1lQN5Vh

外務省、第7回生物兵器禁止条約(BWC)運用検討会議の開催、2011年12月 http://t.co/oPG4M8iw 5年に1度開催。2015年までの次期会期間の活動方針を決定。バイオ技術・生物剤が悪用・誤用される二重用途性(デュアルユース)問題に関する科学者への教育・意識向上


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デュアルユース問題の契機となったアメリカ炭疽菌事件


アメリカ炭疽菌事件。2001年9月18日と10月9日、米国の大手テレビ局、出版社、上院議員に対し、炭疽菌が封入された容器の入った封筒が送りつけられたバイオテロ事件。5名が肺炭疽を発症し死亡、17名が負傷。アルカイダの同時多発テロ事件の7日後に発生した為、全米が震撼した。

アメリカ炭疽菌事件(2001年9月)。坑隠吋謄軣掌紊世辰燭燭瓮▲襯イダ犯行説。同封されていた手紙に「米国に死を。イスラエルに死を。アラーは偉大なり」とありイスラム教徒に容疑。ウォールストリートジャーナルが「炭疽菌はイラクで生産されアルカイダが郵送」。2003年イラク戦争へ

アメリカ炭疽菌事件(2001年9月)。(イラク戦争後の)2005年、FBIは犯人をブルース・エドワード・イビンズと断定。フォート・デトリックのアメリカ陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)の科学者。“爐培養していた炭疽菌と遺伝子的な類似点、封筒と研究室のフラスコの指紋が一致


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科学と倫理


世界科学者連盟(World Federation of Scientific Workers)。各国の科学者団体の国際組織。1946年ロンドンで設立、現在はパリ。48年の総会で採択された科学者憲章は科学者の世界的な行動規範として参考にされる。96年「核兵器完全廃絶」に関する決議

科学者憲章(日本学術会議、1980年)。ー己の研究の意義と目的を自覚し人類の福祉と世界平和に貢献。学問の自由を擁護し創意を尊重。諸科学の調和ある発展を重んじ科学の精神と知識の普及。げ奮悗量技襪藩靈僂魴找し、それらの危険を排除するよう努力。ゲ奮悗旅餾歙を重んじ世界との交流


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河岡論文の詳細な内容


河岡義裕教授の論文(2012年5月)。毒性の強いH5N1型・鳥インフルエンザのウイルスが、わずかな遺伝子変異により、哺乳類のフェレットで感染力を持ったことを明らかにする内容。1990年代後半からアジアを中心に鳥の間で流行しているウイルスが、人への脅威となり得ることを示した。

河岡論文。^篥岨卅犧遒粘鏡に関わる2つのアミノ酸を改変したH5N1をフェレット(イタチ)に投与、鼻の粘膜で増殖。感染したフェレットと健康なフェレットを狭い空間で一緒に飼育すると飛沫感染した。ウイルスを採取して調べるとアミノ酸が4つ変異。僅かな変化で哺乳類同士で感染すると結論

河岡義裕教授は、「鳥インフルエンザ(H5N1)が、感染に関わる4つのアミノ酸の変異を起こせば、人でも感染するようになる。4つの変異のうち、既に2つは、最近エジプトで鳥から見つかったH5N1で確認されている。エジプト株を参考にしたワクチン製造、備蓄を、急ぐ必要がある」2012年5月


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エジプトで、人から人に感染できる新型インフルエンザが発生する?


WHOに報告された鳥インフルエンザ(H5N1)のヒトへの感染の累計(2012年1月1日〜4月12日)総数24、死亡15..┘献廛硲后∋猖苅機キ▲ぅ鵐疋優轡■機∋猖苅機キベトナム4、死亡2.ぅ丱鵐哀薀妊轡紕魁∋猖苅亜キゥンボジア2、死亡2.γ羚顳院∋猖苅

WHOに報告された鳥インフルエンザ(H5N1)のヒトへの感染の累計(2003〜2012年4月)総症例602、死亡355..ぅ鵐疋優轡■隠牽検∋猖苅隠毅供キ▲┘献廛硲隠僑掘∋猖苅僑亜ベトナム123、死亡61.っ羚顳苅押∋猖苅横検キゥ織ぃ横機∋猖苅隠掘キΕンボジア20、死亡18

鳥インフルエンザウイルス(H5N1)。WHO, Avian influenza (“bird flu”) http://t.co/7VIrZCY

WHO Influenza at the Human-Animal Interface (HAI) http://t.co/fOl5XSpT

Cumulative number of confirmed human cases of avian influenza A(H5N1) reported to WHO 2003-2012 http://t.co/hbxAWNll 


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河岡論文の公開に対し、有識者らは?


バイオセキュリティーに詳しいとされる、防衛医大の四ノ宮成祥教授は、「今回の(河岡義裕の論文の)公表で、テロリストがただちに研究結果を利用する可能性は低いのでは。テロリストは簡易手製爆弾など簡単な技術に走る傾向があり、わざわざ先端のバイオ技術を使うとは考えにくい」と発言している。

防衛医大の四ノ宮成祥は、河岡義裕のH5N1インフルエンザ論文の公開について「遺伝子の組み換え技術は比較的簡易な施設でも可能。遺伝子の特定の場所に特定の変異を加えるのは少し複雑だが、一定の教育を受けた人なら隠れて行うことはできる。核兵器などに比べるとハードルは低い」2012年5月。

外務省、2009年生物兵器禁止条約(BWC)締約国会合(概要と評価)2009年12月 http://t.co/Hzxf0l3z 防衛医科大及び英国ブラッドフォード大の共同による生命科学者に対する教育モジュールの研究。四ノ宮成祥防衛医科大学校教授がその取り組みについてステートメント

国立保健医療科学院・健康危機管理研究部の金谷泰宏部長は、河岡義裕教授のH5N1インフルエンザ論文の公開について、「バイオ分野は転用可能な分野が軍事から医薬品まで幅広い。ルール作りは必要だが、医薬品などで企業が研究している場合は、どこまで監視していいのか」。2012年5月

国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター田代真人センター長は河岡義裕論文の公開について「H5N1ウイルスはあとほんの少しの変異でヒト型に変化する可能性が裏付けられた。今、準備されているワクチンや治療薬の有効性も判明。研究の制限はリスクと利益を見極めて判断する必要がある」


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河岡論文、ネイチャー


河岡Nature. 2012 Jan 20;481(7382):443. doi: 10.1038/481443a. Fouchier RA, Garcia-Sastre A, Kawaoka Y. Pause on avian flu transmission studies.

河岡義裕の論文。Nature. 2012 Jan 25;482(7384):155. doi: 10.1038/nature10884. Kawaoka Y. H5N1: Flu transmission work is urgent. 

河岡論文Mutant-flu paper published. Controversial study shows how dangerous forms of avian influenza could evolve http://t.co/sijcuEss 2012年5月初頭


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関連ブログ


「バイオテロ、鳥インフルエンザ、天然痘、炭疽、新型インフルエンザのツイート 20120123まで 8077字」 http://t.co/2hq8eJsQ 山本敏晴のブログより

「抗インフルエンザ薬、インフルエンザ治療薬に関するツイート 20120131まで 2196字」 http://t.co/3YUmAkUt 山本敏晴のブログより

「ボツリヌス菌、生物兵器禁止条約に関するツイート 20120327まで 4660字」 http://t.co/LNC44ago 山本敏晴のブログより