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目次:

はじめに
RNA干渉、ノーベル賞を受賞
遺伝子の仕組みの解明
治療に応用
産業、産学の連携、特許
その他


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はじめに


昔はDNAからRNAができ蛋白質ができるとされていた。だが人の全DNAの中で遺伝子をコードするのは2%。残りは謎だった。最近、残りのDNAは『マイクロRNA』を生み出し、どの遺伝子がどの臓器で、いつ(受精卵からの発生のどの段階で)発現するか調節していることが判明。これがRNA干渉


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RNA干渉、ノーベル賞を受賞


RNA干渉(RNA interference、RNAi)。二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持つmRNAが分解される現象。この現象を利用して、人工的に二本鎖RNAを細胞内に導入することで、任意の遺伝子の発現を抑制可能。この手法により簡単に、狙いをつけた遺伝子の持つ機能を調べられる。

RNA干渉(RNAi)。二本鎖RNAと相補的な塩基配列を持つmRNAが分解される現象。2006年、アンドリュー・ファイアー(1959年生)とクレイグ・メロー(1960年生)は、線虫の一種(C. elegans)を用いて、「RNA干渉」発見の功績よりノーベル生理学・医学賞を受賞した

マイクロRNA(micro-RNA、miRNA)。細胞内に存在する長さ20〜25塩基ほどの1本鎖RNA。他の遺伝子の発現を調節すると考えられている。ncRNA(ノンコーディングRNA:タンパク質への翻訳はされないもの)の一種。mRNAとmiRNAとの結合等により、翻訳が阻害・調節

siRNA(small interfering RNA)。21〜23塩基対から成る低分子二本鎖RNA。RNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象に関与しており、メッセンジャーRNA(mRNA)の破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制。ウイルス感染に対する生体防御機構と言われている

シー・エレガンス(C. elegans)。線虫の1種。体長1mm で透明な体。神経細胞は僅か302 個だが、脳に相当する領域を持つ。実験材料として優れており「モデル生物」として広く利用。この線虫を用いた実験でアポトーシスやRNA干渉などが解明され、研究者らにノーベル賞をもたらした


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遺伝子の仕組みの解明


ヒトの体の60兆の細胞は多種多様な機能を持つ。遺伝子の数は2万数千個に過ぎないが最終的な蛋白質の種類は数10倍。これは蛋白質を合成する鋳型となるmRNAの種類を増やす仕組みが存在するから。だがこのmRNAの種類が増加する際、エラーも起こる。このためそれを排除する品質管理機構がある

東北大学は、遺伝病の原因となる異常タンパク質の合成を抑制する機構として、異常な「mRNA(メッセンジャーRNA)」の分解を促進する新しい「品質管理機構」を発見したと発表。2012年4月。異常なmRNAを認識して排除するための「品質管理機構」を細胞は持っている。それを解明したと言う


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治療に応用


RNA干渉医薬は任意の遺伝子の発現を抑制し病気の原因となるタンパク質の産生を妨げることで様々な疾患に対応。従来の低分子医薬品や抗体などとは全く異なる作用機序を有することから、これまで治療が困難とされてきた、がん、遺伝性疾患、そのほかインフルエンザやウイルス感染症などへの適用が期待

乳癌や卵巣癌の発生や進行を、染色体の異常を修復して抑える癌抑制遺伝子「BRCA1」は、『マイクロRNA』という物質を作り出すことで癌を抑えていることを大阪大のチームが突き止めた。2012年4月。「色々な癌でマイクロRNAの異常が見つかっている。新しい治療薬の開発につながるかも」

遺伝子の働きを調節する短いリボ核酸(RNA)「マイクロRNA」を急性心筋梗塞を起こした状態のマウスの心臓に注入し、回復を促すことに米デューク大の研究チームが成功。2012年4月。マイクロRNAが心臓組織の多くを占める線維芽細胞に作用し、血液のポンプ機能を担う心筋細胞に直接転換した

細胞の機能を抑える性質を持つ物質が、骨肉腫が肺へ転移するのを抑える作用を持つことを、鳥取大学の尾崎充彦が発見。この物質は、遺伝子の働きにかかわるリボ核酸(RNA)の断片の一つとされる「マイクロRNA143」。細胞増殖や生理活性物質の分泌など細胞の機能を制御する作用。2011年5月

骨肉腫の転移を抑えるリボ核酸の断片の一つ「マイクロRNA143」。尾崎充彦らは、約1千あるといわれるヒトのマイクロRNAのうち、肺に転移した骨肉腫細胞の中で少なかったマイクロRNA143に着目。ヒトの骨肉腫の細胞を投与したマウスに、マイクロRNA143を投与して効果を確かめた。


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産業、産学の連携、特許


RNA干渉を用いた核酸医薬に関する研究開発を進めてきた九大、東京医大、(株)ボナックは、眼科領域に特化した新しい分子標的核酸医薬の開発を進める為、2012年3月、産学連携ベンチャー「アクアセラピューティクス」を福岡に設立。主要な技術特許が国外企業により独占されていたため対抗し特許

株式会社ボナック http://t.co/4D7JgqbK RNAi(RNA干渉)に関連した、核酸創薬などの会社。2010年2月設立。福岡県久留米市。 microRNAとは http://t.co/joaG19il RNAi関連用語集 http://t.co/tZEqwPAi

飛べないテントウムシを人工的に作り出すことに名古屋大が成功。2009年7月。遺伝子組み換え技術を使っていないため、生態系へ与える危険もないという。化学農薬に代わる存在として期待。テントウムシの羽の形成に必要な遺伝子(ベスティジアル遺伝子)を、『RNA干渉』という手法で抑制した。


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その他


振りかけるだけで、さまざまな細胞になりうるiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作ることに大阪大の森正樹教授のチームが成功。2011年5月。振りかけるのは、遺伝子の働きを制御する分子「リボ核酸(RNA)」の断片。ウイルスを使う遺伝子組み換え技術に頼る従来の手法と違い、癌化の危険性は低い

河岡義裕教授らが電子顕微鏡を使いCTに似た方法でインフルエンザウィルスを調べた所、1本の遺伝子分節は棒状のたんぱく質にリボ核酸(RNA)が巻き付いている。遺伝子分節同士は、数本の細いひもで結ばれる。このひもができないようにする薬を開発すれば、ウイルスは増殖できない。2012年1月