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(中学一年生時に山本敏晴の講演を聞いて下さった皆様へ)
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神奈川学園高等学校2012年度卒業生へのメッセージ
(中学一年生時に山本敏晴の講演を聞いて下さった皆様へ)
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私は、アフリカや中東などで国際協力活動をしてきました。
医師として、主に医療分野の支援をしていました。

しかしながら、残念なことに、
私一人だけで、がんばっても、
世界の状況は、よくなっていかないので、
なんとかして、
「地球全体のために仕事をしよう」、
と思う人を増やすための活動も
おこなってきました。

まずは、
「世界にある、様々な問題を、皆さんにわかりやすく説明したい」
と思っていたので、
世界中の人々に、次のような質問をすることを思いつきました。

「あなたにとって、一番、大切なものは、何ですか?
 それを絵に描(か)いてみて下さい。」

この質問をされた時、
比較的、幸せな状態にある人は、
「その人が、喜びを感じるための、人や物」
を描(えが)きます。

例えば、
家族とか、友達とか、
自分の身の回りにある、遊ぶための道具などです。
愛情や、将来の夢などを書く人もいます。

ところが、一方で、
「あなたの大切なものは何か?」と聞かれた時、
心の中に、なんらかの問題や悲しみを抱えている人は、
「そうした問題が、社会にないこと」が大切だ、
という絵を描くのです。

例えば、
学校がない地域の子どもは、
大切なものとして、「教育」と書く。
女性が、男性に迫害されている地域の少女たちは、
「女性と男性の立場が対等であること」が大切だ、と書く。
戦争や内戦が起きている国の人々は、
そうした「争いがないこと」が大切だ、と書く、
などです。

これまでの十数年間で、
私は、世界の72ヶ国・地域から、
約1万枚の「大切なもの」の絵を集めてきました。

それらを使って、写真絵本を出版したり、
インターネット上で見られるホームページを作りました。

こうした仕事をしているうちに、
地球上には、
様々な、「幸せの形」があり、
また、
無数の、「苦しみの形」があることが、わかりました。

さて、ところで、
「あなた」の、「大切なものは、なんですか?」
それを、今、この瞬間に考えてみて下さい。

おそらく、「大切なもの」は、
どんどん、変わっていくはずです。

明るい気持ちの時は、
自分が幸せを感じるための物や出来事が大切だと思う。

暗い気持ちの時は、
そうした状況を作り出している物事が、
「ない」ことを大切だと思う。

あなたは、今、
どんな気持ちで、この話を聞いていらっしゃいますか?

いろんなことを考えながら生きているのは、
きっと、他の人たちも、同じです。

隣りに座っている同級生の方々も、
日本の社会で働いている人たちも、
遠く離れたアフリカで暮らしている人々も、
みんな、同じように、
一瞬、一瞬を、
それこそ、「大切にして」生きています。

私は、
そうした「世界中の人々の大切な気持ち」を、
守る仕事をしています。

「今、その人が当たり前のように、
 享受(きょうじゅ)している幸せな社会」
を守り、
「今、その人が、苦しんでいる場合には、
 その原因となっているものを、減らす努力をする。」

私が、たずさわっている、
国際協力という分野には、
とてつもなく、たくさんの仕事があります。

戦争をとめたり、内戦を防ぐための仕事、
女性の社会的な地位を男性と同等にする仕事、
貧しい人々が、貧困から脱出できるような方法を提供する仕事、
子どもたちの未来の可能性を広げるような学校を作る仕事、
病院のない地域でも、人々が健康でいられるようにする仕事、
ゴミや公害、地球温暖化などの環境問題を減らす仕事、
世界人口の増加のため、足りなくなりそうな食糧や資源を開発する仕事。

みなさんの多くは、これから進学されると思いますが、
あなたが、どんな大学に進んだとしても、
そこで、勉強することは、
必ず、今まで話したような、
「様々な社会問題」を解決するための
「道しるべ」になるはずです。

是非、がんばって、勉強してみて下さい。

そして、
大学を卒業する時、
「そういえば、あの時、山本さんが、
 国際協力という就職場所もあるって言ってたな」
ということを、思い出して頂ければ幸いです。

国際協力は、無給のボランティアだけではありません。
有給のプロになり、仕事としておこなう方法もあります。

ユニセフなどの国連職員になれば、
アメリカ合衆国の国家公務員と同等以上の給与がもらえます。

日本の外務省が運営している
「国際協力機構」(ジャイカ)という組織に就職すれば、
日本の国家公務員と同等以上の給与がもらえます。

これら以外にも、
様々な方法で、「仕事として国際協力をおこなう道」があります。

ちょっと話しは変わりますが、
昨年の4月に、
私は、新しい本を出版しました。

「「国際協力」をやってみませんか?
 仕事として、ボランティアで、普段の生活でも」
という本です。小学館から出版しました。

国際協力について、何も知らない少女に対し、
私が優しい言葉で説明している様子を、
会話形式のまま、本にしたものです。
笑い話やギャグもいれてあるので、
漫画のような感じで読めます。

この学校の図書館に、一冊、寄贈させて頂きました。
興味がありましたら、読んでみて下さい。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093882290

さて、
長い話になってしまいましたが、
最後に、私自身の、「大切なもの」について、
述べさせて頂きます。

私の大切なものは、
「私からのメッセージを聞いて下さっている『皆さん』」です。

私は、今、47歳ですが、平均寿命の半分を越えて、
人生の、「後半」を迎えています。

人が生きた証(あかし)というのは、
やはり、
メッセージを、誰かに伝える、あるいは、残す、
ということではないかと思います。

そうした、
「メッセージを伝えることができる人が、
 自分の、そばにいる、
 あるいは、遠くにいて下さる」
ということが、
なにか、かけがえのないことのように、思います。

皆さんは、これから、この学校を卒業されますが、
もし、この学校の中に、
「大切な人」がいらっしゃったのならば、
それが、同級生の方(かた)であれ、先生方(がた)であれ、
なにか一つ、メッセージを伝えて頂ければ、と思います。

それが、あなたが、
この学校で「生きていた」証(あかし)の一つになり、
なによりの「思い出」になるのではないかと思います。

それでは、ご清聴、ありがとうございました。
ご卒業、本当に、おめでとうございます。

宇宙船地球号・山本敏晴拝