2011年03月06日

ジャニーズ・ヒップホップの2つの水脈――アメリカナイゼーションとオリエンタリズム

「夜のプロトコル番外編 黒人音楽として見るジャニーズ、及びK-POP」では、ヒップホップ・ファン(というか歌唱法としてのラップ好き)として、ジャニーズにおけるヒップホップ受容についてプレゼンしたいと思っています。



ジャニーズにおけるラップ/ヒップホップと言えば、いまや嵐≒さくラップとしてかなり認知されていると思うが、その水脈は日本にヒップホップが本格的に輸入された80年代なかば〜後半から、断片的にだがちゃんと流れている。

ジャニーズにおいて、最初に意識的にヒップホップを試みたのは少年隊「ガ・ガ・ガ」(87)だろう。このタイトル自体が、曲中の「ガ、ガ、ガラスの〜」とスクラッチを意識したリリックから取られているものだが、サウンドはと言えばハービー・ハンコックがヒップホップに傾倒して作った「Rock It」とそっくりである。「Rock It」の曲中には、ファブ・5・フレディによる「Change The Beat」(通称「チェンビ」)という超定番スクラッチネタを使ったスクラッチが挿入されているが、「ガ・ガ・ガ」にも「チェンビ」っぽいアレンジが施されており、かなり意識的に「Rock It」をなぞっている。



その後、光GENJI「急がなきゃ食べられちゃう」やスマップの各種の曲(そのなかでも本格的でクオリティが高いのは、ハウス・オブ・ペイン「Jump Around」っぽい「Slicer's Blues」か)、V6「Beat Your Heart」など、80年代後半〜90年代を通じてコンスタントにヒップホップ/ラップを意識した曲をやっている。そして、99年の嵐の登場では、直前のドラゴン・アッシュ、ダ・パンプのヒットも手伝って、デビュー曲からしてヒップホップ/ラップの要素を前面に押し出すようなになった。これが、非常に正統なジャニーズによるヒップホップ受容と言えるだろう(途中、ブッダ・ブランドのデヴ・ラージプロデュースによる森田剛の珍曲などもあるのだが)。

ジャニーズの、こうした隠れたヒップホップを洗い出すだけでも、あらためて聴けばなかなか聴き応えがあると思うが、今回はそうしたアメリカの方を向かなかった、もうひとつのヒップホップ受容について考えてみたいと思う。先走って結論めいた言い方をするならば、それは「オリエンタリズムとしてのジャニーズ・ヒップホップ」とでも言うべきものである。その出発点になるのは、先の少年隊によるヒップホップの前年に出た、ご存じシブがき隊「スシ喰いねェ!」(86)である。



「スシ喰いねェ!」をラップ/ヒップホップだとするのは、いかにも後付けの解釈だろうと思われるかもしれないし、僕自身、あれをラップ/ヒップホップと呼ぶには抵抗があるが、09年に当事者による貴重な発言が出現した。

当時 日本に Run-D.M.C.のラップというジャンルが入ってきたばかりだった
「よし!ラップを作ろう!」っと言い出した 布川青年。
「ラップなら 音程外す俺にも歌えるし、日本人で まだ誰も歌ってない!」
っと、KUZU と2人で曲作り。
MC の中で お遊び程度で歌うだけなので、かる〜く作曲。
さて続いて歌詞。
ホテルのルームサービスで単品の寿司を頼んだ際のメモ用紙が
布川青年の目に飛び込んできた〜
「この注文した ネタ並べリャイイよぉ〜、ラップなんだから、なんだって いけるだろ〜!」
ってな具合で超適当なラップ・スシ食いねェ!の原曲が誕生したのだ!

布川敏和オフィシャルブログ『日々是好日』「スシ食いねェ! が産まれた所!」

「スシ喰いねェ」がランDMCを手本にしていた!? なるほど「スシ喰いねェ」が発表された86年はランDMC初来日の年であり、音源化される以前というのは、まさに日本にランDMC旋風が吹き荒れていた時期だ。ランDMCに触発されたのはECDだけではなかったのである。しかし重要なことはそれだけではない。フっくんのブログの引用部を読めばわかるが、ラップの題材が「スシ」であったことの必然性は無いに等しく、ほとんど偶然的にラップと寿司が結びついてしまった。しかし、この曲があれよあれよの大ヒット。この時点から、ジャニーズ・ヒップホップには奇妙な形でオリエンタリズムの視線が入り込むうようになったのではないか。そう考えたときに重要なグループは、「お祭り忍者」でデビューした忍者である。



この曲は、もちろん美空ひばり「お祭りマンボ」のカヴァーなのだが、「お祭り」「忍者」といういかにも外国人が喜びそうなオリエントなモチーフを、美空ひばりという「創られた「日本の心」」(輪島裕介『創られた「日本の心」神話』光文社新書)に接続しつつ、それをヒップホップ的な打ち込みサウンドで解釈するという戦略は、明らかに「スシ喰いねェ!」の成功を意識したものだ。忍者はその後も、「日本ブギ」「早口ブギ」などオリエンタリズムとヒップホップを同居させた曲を発表する。つまり、「お祭りマンボ」のような〈べらんめえ感〉〈チャキチャキ感〉の節回しをラップに擬態させる戦略が、ここで確立している。そして、「〜ブギ」という曲名を目にしてしまった以上、その源流には、あのブギの女王の存在を感じさせずにはいられないのだ…。



イベントでは、このようなジャニーズ・ヒップホップの2つの流れについてプレゼンしたいと思います。オリエンタリズムとしてのジャニーズ・ヒップホップの最新型とはなにか。そのへんまで考えていけたら良いですね。これはあくまで、僕のプレゼンパートで、他にも話題は満載でヴォリューム抜群なので、ぜひお越しください!

『夜のプロトコルBLOG』
http://www.yorutoko.com/2011/02/blackjk.html

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