えーと、コロナで止まってたのが全部動いて
現在5本同時進行です。もう、忙しさで気が狂いそうです。休憩中にドラマ系の話で更新です

おかえりモネ以前から時代は若手女優が作り出す世界観が台頭してるような事を書いてましたが
ゆったりじっくりした「おかえりモネ」は名作たり得たのか、まだよくわかりません。
そういう尺度の外にあるリアリティなので、単に「暗いの嫌い」みたいな反応を見ると「ハハ…」と、役者がどう頑張ってもじっくり見る気がなければドタバタコメディの方がうけるのか、とも思うし。

しかし、若手の役者の可能性すごいなと思ったのは確かで、
そんな時に場面展開が急すぎるカムカムエブリバディの悲劇の叩き売りのような上白石さん編を見て、「ああ…また朝ドラはこのテンポになるのか」と思っていたら
2幕目の、娘るいの話になったとたんに、ものごっつい丁寧な描写になって、「ああ、このブロックのための1幕目だったのか」と理解した。

特にオダギリジョー演じるジョーと深津絵里さんのシーンは、2大ベテラン俳優の実力大開放。
この二人だから与えられるシナリオと演出でもあり、それ以上の表現力で引き込む俳優陣はすごい。

必要以上に感情をオーバーに表現しない、でも心の揺れ方がわかる。
ジョーのたこ焼き落としから、るいが2階から駆け寄るカメラワーク、驚いて見送るクリーニング屋のご夫婦の描写とかは昭和の名作邦画的的だし
その後のかき氷のシーンで「サッチモちゃんの分もあるよ」「置いといてください」
「溶けるよ」「すぐ行きますぅ」「はぁい」
こののんびりしたテンポの掛け合いで、一瞬で「あ、この二人は素直な自分で居られそうな関係」と解らせるシーンは流石
その前のシーンでは「はい…」だったのが「はぁい」に変わる距離感の変化。

花火を見つめていたらジョーがいなくなり、いたと思ったら風鈴を差し出し、プレゼントしてくれて、帰っていくまでセリフは「大月さん」という一言だけなのに、とても雄弁に二人の気持ちの接近具合を描写してくる。
深津さんの後ろ姿で風鈴を持つ手の角度までもが絶妙。ことさら嬉しさアピールで持ち上げて鳴らすでもなく、だらんと下げるでもない、斜め下にかざして歩く
モノローグを入れるとすれば「あの部屋の窓ならいい風で鳴るじゃろうか」とかそういう嬉しさ表現だと思うけど、一切何も説明を必要としないくらい手の角度だけで少し嬉しい距離感と心の変化が出せる。
ハリウッドのアクターズスクールのメソッドより参考になるに違いない。


モノローグが入る時も秀逸で、ジョーに勧められたサッチモのレコードを探す際の
「たしか…この辺じゃったなー」というだけのモノローグが、感情の起伏をオーバーに入れない絶妙な加減で
「自分の中の会話」として自然すぎて、るいの心の中を見るのに効果的だったり
レコードプレーヤーの値段見てただ「たけーなー」と言ってるだけでも、お給料を貯めて買いたい、そういう目的ができている喜びみたいなものが、レコード屋でのモノローグとつながって表現されてる。
しかもジョーにその様子見られてのリアクションは、今や別マでもお目にかかれないであろう「そろっとレコードを後ろでに隠す」というもので…間も動きもカンペキに少女漫画的
憑依型の演技怪物的な女優というより実力派がフルスイングしたらあそこまで、という研ぎ澄まされた芸を見た気がしました。

ジョーは役名でも分かる通りオダギリジョーへのあてがきという事もあり、他のドラマに見る奇異な男を少しマイルドにしただけで、あれだけのリアリティになるというのも凄いし、
クリーニング屋のご夫妻の達者な演技もまたシナリオを仮想現実にしてくれていて、
村田雄浩さんがジョーに「足崩しぃ」という話し方だけで、そこが居やすい空間になっている事を分からせる。

市川さん演じるベリーもまた、憎まれ役的ポジションでも共感を得てしまうような、きっと嫌なやつじゃ無い、将来の親友感の出し方がうまい。
二人が子供たちの野球を見てるのを見つけてしまう佇み方も素晴らしかった。

尋常では無い描写力が続いた週で、窓からの光で白くフォギーがかかったジョーとるいのトランペット指南のシーンは絵のように美しく、これがアラフィフの二人である事など感じさせない。
深津さんは水原恵理と名乗って伝説の泉を探すヤワい映画(STAY GOLD)に出ていた頃のようでした。



ストーリー上の重要なシーンばかり集めると魅力半減以下だなぁ。
注目ポイントはつなぎのシーンにこそある。
ある意味リアルな暮らしの中で起こる特別な出来事以外が実は大切なのと一緒です。

NHKはきっとまた展開の嵐に戻すでしょう。
それだけにきっとこの週の輝くようなゆったりとした二人の時間とそれを取り巻くやさしい人々の思い出が美しく二人に刻まれる形になるのかな、と。
先週のトーンで全編行くならば間違いなく名作でしょうけど。



昨年の後期ドラマで目立ったのはBLものというか同性愛が出てくる話で「昨日何食べた」以降は各局必ず入れていた。
よく深夜でやっていたのは「理解されない世界」的アプローチでしたが、それはマイノリティを外から見てる描写にすぎないし、
もっと言えば「やや気持ち悪い世界観」と取られてもおかしくないものばかり(そういう中にも「美しい彼」など質がいいものはありましたが)

ただ昨年後半から「消えた初恋」など、知らない世界ではなく、生活感ある普段の中にそういう可能性があるかのような、アホっぽい青春コメディだけど扱い方がすごくリアルで
他の謎めいた美少年系のBLものは、現実の人たちのあっけらかんとした感じとはかけ離れていて、
「消えた初恋」の道枝くん演じる青木くんの「いつのまにオレ」という普通感覚の演技が素晴らしく、顔面以外は現実にそこらにいそうな感じがする悩み方や戸惑い方で面白かった。

昔、2丁目に連れていかれて、今のようにライトな感じではなかったので「ウチはノンケ(その気の無い人、同性愛者ではない人)はお断りだよ!」と簡単にただの女好きであることを見抜かれるほど、鋭い人たちでしたが
話す事はごくごく普通というか、少なくとも気持ちの悪い世界ではなかった。

「恋です ヤンキー君と白杖ガール」も原作を少し読んだけど、見事なドラマ化で
ベースが弱視の日常という中でさらにBLも入ってくるのがドラマでは奇異になるかと思ったけど、獅子王の描写も自然なイイやつで、時代に即して当たり前にそこらにいる、となっていくのでしょうか。
「おちょやん」から開放されて本領発揮した杉咲さんもすごかったし、杉野遥亮くん、田辺桃子さん、めるるもいい演技でした。なにげに全話見たかも。


忙しいと言ってていつ見る時間があるのか、土日にまとめて絞った作品を見ています。
それだけに今季も「時間を惜しんで見る価値はない」と中断するドラマも多いですが
1話は必ず見るのでこの趣味もまた大変です。