日本代表とダンディ西野監督お疲れ様でした。
今のベルギー相手に2点先取するまで行けるチームもなかなかだと思います。
最後は…日本の「最後の数分にマークが遅れる」伝統が出てしまったので残念ですが、これまでの敗退ぶりを考えたらよくやったと思います。
芝を叩いて悔しがる昌子の姿がサポーターの悔しさとリンクしてこれからも流れてしまいますね。

さて、
「半分、青い」を見て、ちょっと書きたい事が増えてしまいました。
脚本の北川氏がくらもちふさこ作品と当時の漫画の作り方をよく取材しているな、という事と、
NHKとのかけひきが「上手いことやってる」という感じがします。
ドラマそのものは、自分自身が好きな「セリフのひとつひとつを反芻して味わう」ようなタイプのドラマではないのですが「うまさ」が目立つのと、好きな事詰め込んでよく成り立っていると。


まず、恋愛トレンディドラマと、ホームドラマと、青春群像劇と職業サクセスものをうまい比率で織り交ぜているので
どういう層にも受け入れられやすいものにしているのは、岡田の「ひよっこ」でもそこまで欲張りではなかったのでそこまでやる意気を買う。

キャラクターの性格付けも絶妙で、朝ドラのヒロインはどこまでもまっすぐで…みたいな
大きなくくりではNHKも喜びそうなそういう系ですが、追い詰められるとつい言い過ぎて思わず相手が傷つく事まで言ってしまう。
ここで「この子はそういうところがねぇ…」と思った人は北川さんの術中にハマっている訳です。
「朝ドラの主人公」より、一人の人間として見てしまう仕掛けがいろいろされている。
この愛されるけどちょっと言い過ぎる主人公は北川作品の特徴で
そのマイナスがあるから成長とともに素直になるのを楽しめるけど、漫画家の修羅場になってからそれを出すあたりがNHK対応も視聴者対応としても巧妙です。

そしてキメ台詞や奇抜キャラで視聴率が取れると思ってるNHKの要望には(あまちゃん以降全部それ)、最低限の「フギョギョ」も最初だけで乱発はせず、
ツインズというストーリーから現実離れしたキャラでなんとなくやり過ごし、
さらに律が実家に手紙をよこさない事に「主人公が親に手紙を書くのはNHKの朝ドラだけ」というセリフにまでしてる。(ひよっこでの「朝ドラ得意の立ち聞きです」と同じ戦法)
戦って利用してる事に関心します。

その上で取材に妥協がない事が伺える質の高さもキープしている。
「漫画家のアシスタントが徹夜作業した後のお風呂にはスクリーントーンが浮く」という、わずか2秒くらいのカットでしたが
当時、デザインも手作業だったので肘の裏とかについた写植文字やらがお風呂に入ると浮いて気がつく…という自分の経験も思い出し泣きそうになりました。
くらもちさんや漫画考証の人にしつこく取材してるのが判ります。

Gペン、スクールペン、丸ペン、軸を太く細工したペン等誰も気がつかないところまでリアルにやっている。
すずめの最初の仕事である「かけあみ」は、自分も必死に練習した時期があるので、均等にあそこまでできるようになるコツをつかむまでに費やす時間とか、完全にシンクロしましたが、
お茶の間的には「大変なもんだねぇ」というだけのシーンで、そこまで取材してるのは凄い気合。

要望に追われるだけでなく、作品の中に自身の思い入れをかなり入れ込んでいる。
例えば仲間の「ボクテ」くん。サスペンダーにスリムパンツ、中性的(作中ではゲイ)で女性とも普通に話せる「いいヤツ」ですが
このモデルというか想定したのはおそらく、くらもち作品「ハリウッドゲーム」に出てくる「中川くん」あたりではないだろか、
その「中川くん」のモデルは、中川翔子のお父さんでもある歌手の故中川勝彦さん、昔からくらもちさんと友人でいい関係性であった事を両者が様々なインタビューで語っている。
nakagawa
↑ハリウッドゲームの名脇役中川くん、ボクテに似てませんか?
↓中川勝彦とくらもち先生
katuhiko

勝彦氏はゲイではなかったですが歌手としては中性的でした。

ちなみに、ごく近い幼馴染の関係という設定は、くらもち先生が子供の時に同じ社宅にいた子、という思い出から描いていた「いろはにこんぺいと」の「透ちゃん」からであるようにも思える。
彼女ができても「でも、この私がいるアパートに戻ってくるんだ」というあの感覚と
すずめと律の関係性が少し重なっていた感じもします。

そして途中から嫌な性格に描かれてしまった律の彼女ですが
「弓道」はくらもち先生の連載を終えたばかりの「花に染む」の設定であり、
花に染むの「陽大(はると)」のやぶさめの美しさに特別なものを感じた「花乃」や、
陽大の弓を引く姿に、好きだったロリィタファッションを捨てても彼に弟子入りする水野がいたりと、
「弓の姿に惹かれ自分も始める」という設定は男女を入れ替え盛り込みたかったのは間違いない。
hanasimu


ドラマですずめの初連載作品「一瞬に咲け」の陸上選手とアマチュアカメラマンという設定は
「100Mのスナップ」という女子ハードラーとカメラマンの男子という作品設定と男女入れ替えで同じです。
この100Mのスナップはショパンからの少しシリアスな流れでもあり、シリアスから離れた「いろはにこんぺいと」「ハリウッドゲーム」あたりまで「神がかっていた時期」と思いましたが
その後にもどんどん第4期くらいまでの「神がかり」が来るのが「続けていける才能」だと思います。

自分は、このドラマの隠れたテーマとして、
好きな事を限界までやってみる事、逃げてでも別の幸せを掴めるタイプの人、どんな事をしても続ける事で失う物と得る物、一度やめて外を見て別のクリエイティブや価値観に目覚める人、
みたいな…そういう脚本家として感じてきた経験も盛り込むのだろうと思いました。

(減量中に)「うどんを食べてしまった西」というセリフがあり、
「あしたのジョー」をドラマの中で引き合いに出したあたりでそれが明確になった。
西はその後、ジョーとは別の道を行き、ジョーについていけなくなった紀子と幸せな結婚をします。
これがアイデアをパクったボクテではなく、裕子の方に当てはめたのが女性脚本家らしい。


書き進めながら話を作るスタイルなので、細かくちりばめた枝葉を全て回収できるか解りませんが、上の理由で漫画家として一度挫折するところまでは読めてました。(オレンジデイズと同じですね)
ここからの気になるポイントは
律が夏虫の駅で久しぶりにすずめと会ってなぜか「泣いていた」事です。
クールな彼としては「懐かしかった」とか「すずめだったと気づいた」というだけではない気がしますが、だとすればまだ明かされていません。
「就職決まった」というタイミングなので、大学院の研究で何かの挫折があったのか、まわりは「おめでとう」でも本人は違ったりとか??

それは教授に出会った時の「耳が聞こえるようになるロボットは…」という、そもそもがすずめのためだった事と無関係なんだろうか?とか。
そこまで回収すると濃密なドラマになりますが、描写するかは解りませんね、時間が足りなそう。
ただ、本人はあの夏虫の駅のシーンは「降りてきた」とまで言ってましたから
あの「泣き」に意味がなかったとは思えない気がします。

そして、すずめは本当にそのまま漫画家をやめて別の幸せを、という展開なのかどうか、
すでに仲間の「裕子」がそのパターンなので、全く同じ展開では無い気もしますね。

そして律との関係性がこのまま終わる訳は無いのでそちらも楽しめます。
トレンディドラマでは最終的にくっつくのありきでしょうけど
新たな関係性に「昇華」していくようなストーリーでないと、あの「地味」と言われてた「嫁」も可哀想だし、(そもそも「律の会社の受付の子」という平凡な設定のままか)
そこは「それでも、生きていく」の二人の最後の関係性、思いあいながら、心が通じ合いながら、離れても同じ朝日を見ている、という感じになってしまうのか
そんな切なすぎる系の朝ドラをNHKが許すかはわからないですけどね(笑)

ドラマ自体も面白いのですが、何といっても秋風先生が渡すペン入れした原稿、
即ち、くらもち先生がドラマに協力して描いた「線」の凄さ。
アシのすずめたちに渡す人物のアウトラインの力強く、しかし研ぎ澄まされた、美しい線。
(ちゃんと裏付けとしてデッサンよりクロッキーを重視するシーンまであった)
原稿を落としたすずめの代わりに描いた「月が屋根に隠れる」の扉絵のあの完成度。
背景が何も描いていないのにその情景までが浮かんでしまう圧倒的な凄みに
毎回、おおおお〜と、のけぞるのでした。



いろんなこだわりが詰まっている中でもこの曲に注目してるのが面白い
上手い下手、好き嫌い、そういう次元の事と別の「残っていく唯一無二の物」みたいな
「こんな曲が作れたらやめてもいい」という裕子のセリフの意味は分かります。
時代設定が違えばブルーハーツだったりするのかもね。

中村雅俊がじいさんにしては粘っこい歌い方なのは…まぁ仕方がない。