最近のmalaさん高木浩光さん(Twitterアカウント)をTwitterなどで拝見させていただいて、まとまった感想があったので、ブログ書く。この文章は特に何か新しい見解や、問題提起をしたいわけではない。ただの感想です。
僕はインターネット広告代理店でプランナーをしていたことがある。当時、僕はmalaさんや高木浩光さんのようなインターネットにおけるプライバシー問題について、警告を発している技術者の人を知らない、ただのインターネット広告屋だった。

この文章を書く上で、事前に断っておきたいのは、僕がインターネット広告代理店で働いていたのは4〜6年前なので、今現在のところはどうなのかはわからない。

当時、インターネット広告メニューの流行りとして、個人の属性に強いターゲッティングをする広告メニューがあった。

インターネットのバナー広告においては、Yahooのプランドパネル(Yahooトップページの右上にあるバナー)のような、大多数の人にアピールできる広告の他に、専門メディアに広告を出すやり方がある。

例えば、ITMediaに広告を出せば、IT好きの人に露出できるだろうし、@コスメに広告を出せば、化粧品に関心のある人に露出することができる。というように、メディアの出し分けによって、露出を変える方法と、インターネットは技術的に広告を出し分けすることができる。

僕がプランナーの駆け出しだった頃にすでにあった「デモグラフィックターゲティング」という広告メニューがある。例えば、「Yahooメール デモグラフィックターゲティング」というメニューはYahooメールのページにおいて、Yahoo登録しているユーザー情報を元に、年齢と性別を絞って広告を配信するこどができる。「20代女性のみに広告を配信」というような。

というような性別、年齢を絞って、配信する広告があったぐらいだったが、そのうち「行動ターゲティング広告」というユーザーの行動を識別して、配信する広告が爆発的に流行った。

細かい技術については各社の行動ターゲティング広告メニューによって違っているので、ここで細かく書くのは控えるが、要は、ユーザーのページ閲覧履歴などといった一ユーザーのインターネット上の行動履歴によって、そのユーザーが何に関心を持っているかを技術的に予測し、そのユーザーに対して、ダイレクトに広告を露出していくメニューだった。

他にはバナー広告ではないが、Google躍進を支えた検索連動型広告(リスティング)もユーザーの関心に対して、広告を出していく手法といえる。また、リターゲティング広告という一度サイトに訪れたユーザーに広告を露出し続ける手法もある。(通称、ストーカー広告と言われる) Facebookも多くのユーザー情報を取得し、Facebook広告に活かしている。

インターネット広告がラジオの広告費を抜き、雑誌の広告費を抜き、新聞の広告を抜いた。目指すはテレビ広告費を抜けるように、技術はどんどん進んでいった。ユーザーに関心がはっきりわかる広告メニューもどんどん増えていった。

その進化によって、広告効果はどんどん上がっていった。広告効果が上昇することによって、広告を出したお客さんも喜んだ。お客さんが喜んでお金を出してくれたことによって、インターネット広告代理店も喜んだ。インターネット広告代理店もお客さんもハッピーだった。

広告効果を良くするため、インターネット広告業界はユーザーから、どんどん個人情報を取得していった。その進化はインターネット広告業界にとって良いことである、と業界の人は信じていた。僕も信じていた。

インターネット広告業界の発展が、インターネットそのものの発展である、と考えている人も多くいたと思う。

インターネットメディアにおける多くは無料で見られるサイトであり、広告収益を主なビジネスモデルとしていたため、インターネット広告業界が、インターネットを支えているような意識もきっとあったと思う。(現在は有料メディアも出てきたので多少状況は違うかもしれない)

つまり、ユーザーからどんどん個人情報を取得していくのが、インターネット広告の精度を高めることであり、それがインターネット広告業界の発展であり、インターネット広告業界がインターネットを支えているのであるから、ユーザーから個人情報を取得していくのがインターネットの発展である、と。

それは、本当だろうか?

僕は業界の人間であったから、どんどん出る新しいターゲティングメニューにわくわくしていた。新しいターゲティングメニューを学び、お客さんに提案した。お客さんは喜んで試していた。要は業界に染まっていた。

今、何歩か引いて考えることができる。

そこにインターネットユーザーは不在ではなかったのか?インターネットユーザーは個人情報を取得されていたことに気づいていたか?インターネットユーザーが個人情報を取得されていたことに気づかないことをいいことに、どんどん個人情報の取得を進めていたのではないのか?

今僕は、インターネット広告業界を離れた。業界を離れた視点でインターネットを見てる。(インターネット業界自体にはまだいる)

インターネットのプライバシー問題に警告を発しているmalaさんや高木浩光さんの発信する情報、メッセージ、やりとりを受け止めて、考えている。やはり思う、個人情報を取得していくのが正しいインターネットの未来ではない。

(インターネットの未来論についてはもっとたくさん書きたいけど、長くなりそうなので、また別の機会に書こう)

ブログパーツやソーシャルボタンの類でアクセスログが残るのは当然だけどトラッキングされるのは当たり前にはなっていない - 最速転職研究会

上記の記事を読んだ。今、インターネットのユーザーの個人情報の取得はここまできている。この記事の要旨は「同意を得ていないのに、取得していることの問題」ということだから、プライバシーにおいての問題ではない。

付け加えると、インターネット広告において、ターゲティングされる広告が全て悪いとは思わないし、全てブラックな手法とも思わない。また、上記の記事でも、高木浩光さんも指摘しているけど、行動ターゲティング広告メニューそのものがブラックやグレーな手法ではなく、ルールを守って配信しているものもあるので、行動ターゲティング広告メニューを配信している会社が悪い、という話ではない。

僕が言いたいのは、広告メニューのターゲティング広告の進化の過程において、ユーザーが不在ではなかったのか、ということを言いたい。

インターネットの世界が悪い方向に進んでいくのを、お金とかではなく、自分の良心に照らしあわせて、時間を掛けて、手間を掛けて、警告をしてくれている人たちがいる。良識ある人であれば、インターネットの世界をこれからも良くしていきたい人であれば、これをちゃんと受け止めて、肝に命じていこう。いきませんか? 僕はそう思った。

あなたの考えるよりよいインターネットの未来はなんですか?

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