橋本崇載著の新書「棋士の一分 将棋界が変わるには」を読み終える。発売と同時に買ったので、本に関心のある方もいると思い、感想を記録します。

棋士の一分 将棋界が変わるには (角川新書)
橋本 崇載
KADOKAWA (2016-12-10)
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Twitterでも1億%クロと言及していたとおり(後に該当ツイートは削除。本人は自身のツイートを否定)、カンニング事件の踏み込んだ話が書いていると期待していたが、ほとんど目新しいことは書いてなくて、残念。

コンピュータ将棋研究Blogさんが「ただ、この本を発売した時期があまり良くなかったと思う。もし10月以前に発売し、内容も一部修正していたならネット上でのレビューの内容もだいぶ違ったのではないだろうか。」と書いたとおり、それには納得。やはりあの事件以降の時期に発売すると、カンニング事件への言及を期待してしまう。Amazonのレビューにも厳しい意見が多く、おおむね納得できる。

前半はコンピュータ将棋と絡めて、米長元会長批判が多い。米長元会長で対局料で私腹を肥やす話など、独裁の話は知らなかったので、なるほどと思う点が多い。

読み終えた感想として、橋本崇載さんが将棋界を変えようとしているのは十分わかる。本当に変えるためには著者も強く批判している将棋連盟の内部から変えられる理事になるのが最も近道だと思う。ただ、本書には落選したことによる精神的な落ち込みからか、二度と出ないとしている。

しかし、著者が書いている理想を実現するためには理事にならないといけないように思う。二度と立候補しない理由は精神的なものだけかは本書ではハッキリしないが、理事にならなければ、将棋連盟を変える力は他の棋士と代わらなくなる。橋本崇載さん以外にも将棋界を変えようと思う棋士は少ないが、いると思う。

著者はSHOGI BARを経営するなどして、変わっていく転換期の途中の本だと思う。「将棋界」「橋本崇載」に興味がある人には面白いと思うけど、純粋に「将棋」に興味ある人にはおすすめしない本だと思った。

将棋界を盛り上げる具体的な方法としては「ファンによる投票」の棋戦という言及に留まり、弱いという印象を感じる(他にも外部人材の登用や、適材適所の配置があるが、具体性に乏しい)。「ファンによる投票」の棋戦というのは従来の将棋ファンにしか届かない。しかし、コンピュータ将棋は話題性があり、ファン層を広げるのに貢献はしたいと思う。

コンピュータ将棋は面白くない?


個人的に最も気になったのは、人間と比べて、コンピュータ将棋は面白くない・魅力がない、という主張だった。僕はそんなことはないと思う。

「面白い将棋を指す人」もいるし、「面白くない将棋を指す人」もいる。「面白い将棋を指すコンピュータ」もいるし、「面白くない将棋を指すコンピュータ」もいると思う。

著者が名前を挙げて言及しているとおり、藤井システムの藤井猛さんの将棋は面白い。だけど、本書では藤井猛さん、村山聖さんしか「おもしろい将棋を指す人」の記述はない(本書では「魅力」という言葉が多い)。何を持って将棋の魅力か、という点をもう少し書いてほしかった。(個人的には佐藤康光さんや、山崎隆之さん、千田翔太さんの将棋が面白くて好きです)

コンピュータ将棋は正確無比、人間は間違うから面白い、というような記述もあったが、コンピュータ将棋も理由はわからないが、ボケたような手を指すこともある。それも面白いと思う。

「人間じゃないコンピュータが指す将棋は面白くない」というのは間違いだと思う。と同時に何を持って面白いか面白くないか、というのを判断するのは難しく、この基準を持って、コンピュータ将棋を否とする主張は読んでいて弱いと思った。

もし、その点を強調するのであれば、読んでいる人を魅了し、納得させてしまうような魅力的な将棋についての記述をするべきである。

最近のコンピュータ将棋の序盤戦は独創的で面白い。定跡通りに指す人間の将棋よりも面白いと思う将棋も多い。切れ味が鋭いコンピュータ将棋も多い。

個人的にはTwitterでこいなぎさんという方が紹介しているコンピュータ将棋は本当面白い。このような将棋を見たら「人間の指す将棋のほうが面白い」ということは言えないと思う。






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中盤に書いたように、本書は変わっていく転換期の橋本崇載さんの本だと思う。どうもこの本を見ると、「気持ちが折れてしまった橋本崇載」という印象になってしまう。数年後にまた考えを深め、またあのような将棋界を盛り上げたパフォーマンスや将棋を指す橋本崇載さんを期待しています。

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