ドクター・ホフマンのサナトリウム

ドクター・ホフマンのサナトリウム ドクター・ホフマンのサナトリウム

作・演出: ケラリーノ・サンドロヴィッチ
振付: 小野寺修二
出演: 多部未華子、瀬戸康史、音尾琢真、大倉孝二、村川絵梨、犬山イヌコ、緒川たまき、渡辺いっけい、麻実れい、谷川昭一朗、武谷公雄、吉増裕士、菊池明明、伊与勢我無、王下貴司、菅彩美、斉藤悠、仁科幸
演奏: 鈴木光介(Tp)、向島ゆり子/高橋香織(Vn)、伏見蛍(Gt)、関根真理(Per)
観劇日: 2019年11月21日(木) 18:30
上演時間: 第1部(1時間45分) / 休憩(15分) / 第2部(1時間30分)
劇場: KAAT神奈川芸術劇場 ホール
チケット代: S席 9,500円(7列) [パンフレット代:1,800円]


【感想】

カフカの不条理とケラさんの不条理がクロスした、どこか夢を見ているかのような舞台でした。

時は現代(2019年?)。
ブロッホ(渡辺いっけいさん)は、幼い頃にカフカと親交のあった祖母(麻美れいさん)が持っていた"カフカの未発表原稿"を見つけ、出版社へ売り込もうとしています。
カフカのことを何も知らないブロッホは、図書館で『カフカ入門』を借りてきますが、誰かのイタズラで中身は『やさしい道の迷い方』に差し替えられていました。
そうとは気づかず『やさしい道の迷い方』を読んでしまったブロッホ。
やがてブロッホは親友(大倉孝二さん)と一緒に、時代を越えて、不思議な世界へ迷い込みますが……。

現代と未発表原稿の小説の世界、そして1924年(カフカが生きていた世界)を行ったり来たりしながら物語は進みます。
ちょっとややこしそうにも思えますが、気持ちのいいややこしさで、観ている間は全く苦痛ではありませんでした。
でも後からやっぱり、「ん?あれはどういうこと?」という疑問も湧き出て来て……まあそれはそれで楽しい後味でした。

多部未華子さんは主に、未発表小説に出てくるカーラという女性を演じています。
凛として物怖じしないキャラをうまく表現していましたが、私は彼女のよく通る澄んだ声質も大好きです。

声質といえば、緒川たまきさんや犬山イヌコさんも独特のものがあり、少し冷たくて取っつきにくいようにも聴こえる声が、私には心地よく感じられます

それから麻美れいさんの千変万化!老婆から少女まで違和感なくこなしていたのに驚きです。
少女役の時には、最初、麻美れいさんとは気づかなかったくらい(笑)。

そして、相も変わらぬ大倉孝二さんのボケっぷりも顕在で、大いに笑わせてもらいました。

プロジェクションマッピングのようなスクリーンへの映像投影、エッシャーの階段を思わせる騙し絵のような舞台セット、小野寺修二さん振付の不思議なムービング……物語もさることながら、すべてが観客を不条理な世界へ迷い込ませるような演出で、3時間半が短く感じた舞台でした。