作・演出: 倉持裕
出演: 奈緒、伊藤万理華、菅原永二、今野浩喜、田村たがめ、早霧せいな
観劇日: 2021年5月16日(日) 13:00 ※初日
上演時間: 2時間(休憩なし)
劇場: 世田谷パブリックシアター
チケット代: S席 8,000円(F列) [パンフレット代:1,000円]
【感想】
緊急事態宣言が延長されると聞いたときには、これも中止になるのかもと覚悟しましたが、まずは無事に開幕できたことに安堵です。
チラシを見ると、ポップで楽しそうな舞台だと思ったのですが……。
真知(奈緒さん)は、普通の高校生。
ある晩、母親の美津子(早霧せいなさん)が、酔っ払って帰ってきます。
しかも、誰かと喧嘩をしたのか、服に血を付けて。
美津子は、元女優。
挫折して、故郷であるこの田舎に戻ってきましたが、周りとトラブルを起こしてばかりです。
真知はそんな母親を嫌悪していましたが、翌朝、目覚めると、別人のように明るく社交的な母親になっていました。
不思議に思った真知は……。
いきなり、サスペンス?って感じで始まったオープニング。
でも、変人で引きこもりの科学者(今野浩喜さん)が登場すると、コメディ?っていう色が濃くなり。
そしてネタバレになりますが、真知の家の納戸のドアが、パラレルワールドにつながっている(母親は向こうの世界から来た)ということが分かると、SFの様相も呈してきます。
「あったかもしれないもう一つの世界」との行き来を経て、今の生活を見つめ直す。
まあよくある話といえば、よくある話ですが、母親との関係だけでなく、友人や先生、母親の同窓生たちといった多彩な関係性を組み込んでいるので、物語を多層的に観ることができます。
ただ、ちょっとややこしいところも。
当然、あちら側の人たちとこちら側の人たちは、それぞれのキャストが一人二役するんですが、キャラや衣装がハッキリと違う先生や科学者は別として、真知や美津子、真知の同級生の理々子(伊藤万理華さん)は、見た目にそれほど違いがなく(若干、髪型などを変えてたりしますが)、それに加えて、あちら側の真知がこちら側の真知に成りすまそうとしたりするもんだから、ちょっと「ん?ん?」となってしまうところもありました。
また、あちら側の真知が、こちら側に来たかった理由も、イマイチ理解できず……(女優の娘という肩書が欲しかった?)。
少しの消化不良を残しつつ、でも、ラストは決して悪くなかったかな。
そう言えば、こちら側の警察官の制服が、どこの国とも分からないデザインで。
もしかしたら、こちら側と思って観ていた世界が、我々にとってはあちら側の世界で、あちら側の世界が、我々の世界だったということだったのでしょうか。