作・演出: 前川知大
出演: 篠井英介、藤原季節、浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛
観劇日: 2023年5月31日(水) 14:00
上演時間: 1時間50分(休憩なし)
劇場: シアタートラム
チケット代: 6,000円(H列) [パンフレットなし]
【感想】
決して難解ではないんだけれど、捉えどころのない、どこか夢の中にいるかのような舞台でした。
刑務官の八雲(安井順平さん)が、森深いところにある廃墟のような屋敷を訪れます。
彼は、死刑が執行された時に抜け落ちた"魂"を、母親(篠井英介さん)のもとに届けにきたのです。
その屋敷には、他にも5人の男性が暮らしており……。
客席に入ると、開演前からスモークがたかれていて、早くも怪しげな雰囲気が漂っていました。
物語は、届けられた"人魂"を中心に話が進んでいくのかと思いきや、どちらかと言うと"人魂"は放っておかれて、そこで暮らしている男性たちが、その屋敷に来るまでの過去や経緯を話していくといった構成になっています。
過去が語られる時に場面転換などもなくて、他の人たちが、語られる人の関係者(妻とか)などを演じていくので、まるで、その人たちの魂が乗り移ったかのようにも見えます。
日常で使う「魂」って言葉は、「心」とか「気持ち」といった意味合いとして使うことが多いと思います。
でも、明らかに「魂」の方が比重が重い。
「心を込めて」より「魂を込めて」の方が、「魂」なだけに、命懸けの感じがします。
ここに辿り着いた人たちは、心が傷ついたと言うより、魂が傷ついた人たちなんでしょう。
だから、もしかしたら、ここは現世ではなくて、あの世なのかもしれない。
そんな妖しげな世界観は、篠井英介さんが作り出していると言っても過言ではない、それほど篠井さんの存在が際立っていて。
美輪明宏さんのようなスピリチュアルな佇まいで、この世のものではない様相を呈していました。
冒頭で浜田信也さんが語っていたエピソードや途中でテロリストに話が及ぶところなどが、結局、何と結びついているのか、何となく掴めそうで掴めない。
ズドンとストレートに問題提起されたのではなく、それこそ会場を包み込んでいた霧のようにふわっと問いかけられたような、そんな舞台でした。