

作: ルーシー・カークウッド
演出: 栗山民也
翻訳: 小田島則子
出演: 田中圭、満島真之介、倉科カナ、眞島秀和、瀬戸さおり、池岡亮介、石橋徹郎、占部房子、八十川真由野、富山えり子、安藤瞳、阿岐之将一、田邉和歌子、金子由之、増子倭文江、大鷹明良
観劇日: 2019年2月22日(金) 18:30
上演時間: 第1部(105分) / 休憩(15分) / 第2部(70分)
劇場: 世田谷パブリックシアター
チケット代: S席 8,300円(B列:最前列) [パンフレット代:1,300円]
【感想】
私がまだ学生だった頃に起こった「天安門事件」。
事件自体もさることながら、戦車の前に立ちはだかる男の写真・映像に驚愕したのを覚えています。
舞台は、まさに、その瞬間から始まります。
その写真を撮影したカメラマン・ジョー(田中圭さん)と、ジョーの友人で、デモに参加していた中国人・ヂァン(満島真之介さん、池岡亮介さん)。
※ 実際にあの写真を撮影したのは、ジェフ・ワイドナーというカメラマンだそうです。
時は流れ、「戦車男《タンクマン》」が、現在どうなっているのか、捜し出そうとするジョーですが……。
天安門事件があった1989年と現在(2012年)を行ったり来たりしながら物語が展開されます。
とても衝撃的な写真ですが、不思議に思うことがたくさんあります。
どうやって戦車男は、誰にも邪魔されず、あの戦車の前まで行くことができたのか?
買い物袋のようなものを下げているが、何が入っていたのか?
戦車によじ登り、兵士と言葉を交わしたようだが、何を話したのか?
そして、この後、戦車男はどうなったのか?
この劇では、最後、これらの謎のいくつかが解き明かされます(もちろんフィクションでしょうが)。
2012年のヂァンを演じる満島真之介さんが、素晴らしい!
途中、田中圭さん(ジョー役)を中心に話が進んでいきますが、ラストで満島真之介さんが、全部持って行ってしまうくらいです。
2012年のヂァン(満島真之介さん)と一緒に、1989年当時のヂァン(池岡亮介さん)と妻(瀬戸さおりさん)のエピソードがオーバーラップされる演出も、印象的でした。
また、戦車男を轢き殺さなかったため、”もう一人のヒーロー”と言われる「戦車を操縦していた兵士」に触れているところも、抜かりがありません。
最近では経済発展も目覚ましく、経済的には資本主義的な中国ですが、政府に対する批判については、当局が情報規制したり、外国人(日本人含め)がスパイ容疑などで拘束されたりするニュースを見ると、あらためて社会主義なんだなあと思わされます。
ジョーは悪気なく戦車男の行方を捜しているんでしょうが、その姿は、内側の深刻さが実感できない我々の無神経さを言われているようにも感じました。