トゥカチンチラ古典文学案内

読了した、日本純文学、海外文学、哲学といった古典を紹介したいと思います。                        私の徒然を綴った本ブログはhttp://ameblo.jp/andukga822/です。

モラリスト

「ラ・ロシュフコー 箴言集」

ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫)ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫)
著者:ラ・ロシュフコー
岩波書店(1989-12-18)
販売元:Amazon.co.jp
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 ラ・ロシュフコーはフランスの公爵。卓越した人間観察眼を持った彼は、人間の本性というものを否が応にも感じ取り、それを幾つもの短い格言として書いた。
 
 彼の言わんとしていることを要約すれば次の通りになろう:人間は自己愛に満ちている。礼儀、謙遜といった要素も、虚栄の一種であり、他人に認めてもらいたいという表れ。美徳は悪徳を偽ったものであるということ。
 
 この書物は有名ではあるが、愛読されてきたものというより、読者の反感を買ってきた形で今まで読まれてきた。それはやはり内容が人間に対する悲観的・侮蔑的な表現が多いからだろう。私自身も書かれている内容に完全に賛同することは出来ないが、かといって完全に否定することも出来ない。人間が自己愛に満ちていることは疑いようもない事実であり、それが時折醜さを醸し出すのもまた認めねばなるまい。それに反感を買う、ということはそれだけ皆が目をそむけようとする真実を読者が面前に突きつけられるからではあるまいか。
 
 また、人生の不幸から守るための心得、不幸にあった時の自分を見失わないための心得、更には恋愛に関する肌寒い真実についても、やや辛辣な文体が駆使されながら散在している。
 
 この本を読めば自分にとって何かの展望が開けるとは思う。ただそれをプラスに転じるには、本書の放つ毒素に耐えられなければなるまい。さもなくば、悲観的になってしまうだろう。須らく気をつけよ。

この文章:
「人は決して今思っているほど不幸でもなく、かつて願っていたほど幸福でもない」
「恋においてはあまり愛さないことが、愛されるための確実な方法である」 「賢者を幸福にするには殆ど何も要らないが、愚者を満足させることは何を以てしてもできない」

「パンセ」

パンセ (中公文庫)パンセ (中公文庫)
著者:パスカル
中央公論新社(1973-12)
販売元:Amazon.co.jp
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「人間は考える葦である」で有名なパスカルの哲学書。全部で14章に分かれ、長さの大小こそあれアフォリズム(格言の連なり)の形式となっている。

600ページ(中央公論新社)と分量が多いが、この本の真髄を味わおうとする場合ならともかく、何か精神的な糧を得ようとする場合、全てに目を通す必要はない、というのがこの本を紹介するにあたっての嘘偽りのない私の意見である。というのも、宗教や聖書、神の存在といった概念を取り扱った箇所が大部分を占めており、日本においては宗教的なもの(ましてやキリスト教)とは無縁な人が多く、そのためその箇所に目を通しても退屈を覚えるだけにとどまるのではないだろうか。

それはさておき、この本について特に目を通して頂きたい箇所(つまり宗教とは関連性が薄く、どの読者も興味を覚える部分)は次のとおりである。すなわち:
「精神と文体に関する思想」
「神なき人間の惨めさ」
「賭の必要性について」
「哲学者たち」

これらにおいて、彼は人間の矛盾、幸福になれないことへの一種の皮肉、ということを述べた。しかし、悲観的で終わっているのではなく、人間はその他の生物とは違い自己のみじめさを自覚しているということ、そして何よりも自己の考えを持っているということにその偉大性があるとも記した。

この文章:
「壮麗な宮殿の中にいて、四万の兵に取りまかれているトルコの兵をただの人間だと思うには、よほど澄み切った理性を持つ必要がある」
「偉大さを感じるには、それを離れる必要がある。何事においても、連続は、嫌気を起こさせる。身体を温めるには、寒さも必要である」
「私がよく言ったことは、人間の不幸というものは、みなただ一つのこと、すなわち、部屋の中に静かに休んでいられないことから起こるのだということである」
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