〜オキシトシン神経の機能不全とその治療可能性〜
社会性の不調を伴う発達障害は、数百種類による遺伝的なリスク要因と、母胎内における環境要因とが複雑に交絡して発症に至ると考えられています。そのため、脳の中でどのような神経細胞が機能低下して社会性の不調に至るのかよく分かっていません。
今度、理化学研究所の研究チームは、社会性コミュニケーションの不調を示すモデルマウスにおいて、社会性をつかさどるオキシトシン神経細胞の一群が選択的に機能不全を起こしていることを明らかにしました(2024年10月11日リリース)。
同研究チームは、環境要因(薬物服用)による社会性不調モデルマウスにおいて、組織学的な観察と網羅的な遺伝子発現パターン解析を用いて、機能低下した神経細胞を探索しました。
その結果、社会性行動の制御に重要なオキシトシン神経細胞の一群が遺伝子発現パターンの顕著な異常を示し、オキシトシンを合成できない状態に陥っていることが分かりました。この機能不全は、オキシトシン神経細胞を一過的に興奮させることで持続的に回復し、社会性行動も改善することが判明しました。
本研究成果は、自閉スペクトラム症など社会性の不調を伴う発達障害の理解に新たな概念を提供し、将来的な治療標的の設定に貢献するものです。