〜治療後に起きる細胞死−フェロトーシス−を抑制する心不全治療法の開発〜
心筋梗塞は、心臓の筋肉への血流が遮断される疾患で、治療後も心筋の障害は進行しやすいのが現状です。疾病の進行は極めて早いため、これまでは病態が進行した“後”で行われる研究が主なものでした。
今度、慶應義塾大学医学部の市原元気助教、佐野元昭准教授、同スポーツ医学総合センターの勝俣良紀専任講師と京都大学大学院医学研究科の杉浦悠毅准教授の共同研究グループは、心筋梗塞の“代謝変化”に注目した新しい治療アプローチを発見しました(2023年10月30日リリース)。
同研究グループは生きた疾患モデルマウスを用いて、心筋の虚血再灌流障害が段階的に進む過程を、新技術「代謝分子を用いたモニタリング手法」で詳細に観察しました。
この新手法の活用により、心筋梗塞が引き起こす有害な活性酸素の除去機能が徐々に低下するメカニズムを特定しました。
そして、この知見を応用して、活性酸素の除去を強化する代謝経路に介入することで、虚血再灌流障害後の心筋のダメージを減少させることができることを確認しました。
この新たな治療法は、心筋梗塞患者の生命を救い、生活の質の向上や病態からの回復をサポートする重要な選択肢として期待されます。
(参)虚血再灌流障害
カテーテル治療などにより、心筋組織に急速に血流が再開するとともに有害な活性酸素が発生し、それが原因で細胞死(フェロトーシス)が生じる。