前回は日本株、円債、外株、外債の4種類のリスク資産を使ったポートフォリオ投資について説明し、4種類のインデックス投信と預金を組み合わせて最適ポートフォリオを構築する方法を解説しました。

 読者の中には、さまざまな投資信託商品があるのに、なぜインデックス投信を使う必要があるのか、疑問を持たれる方がいると思います。その理由はコスト・パフォーマンス(投資関連コストと投資利回りのバランス)という切り口から見たときに、インデックス投信の運用成績が他の投信商品よりも優れていることが多いからです。

 前回同様、投資初心者の方には少し難しいかもしれませんので、「投資上級者向け」というカテゴリーがつけてあります。初心者の方で難しいと感じられた方は読み飛ばしてください。

 さて、投資信託商品の目論見書を読むと、多くの場合、運用の目安となるベンチマークと呼ばれる指数が設定されています(一部にはベンチマークを規定していない商品もあります)。

 投資信託のベンチマークとしては、
日本株投信ではTOPIX(東証株価指数)や日経225株価指数が一般的です。
円債投信(公社債投信)では、野村證券金融経済研究所が発表している野村BPI総合指数がよく使われます。(ただし、同指数の時系列データはネット上で公表されていないため、本ブログでは円債の投資利回りの計算に日興BPI総合指数を使っています。)
外株投信の場合、MSCI Barra社が公表している、MSCI KOKUSAI指数(除く日本、円ベース)が一般的です。
外債投信の場合には、シティグループ(旧ソロモン・ブラザーズ)が公表しているシティグループ世界国債インデックス(WGBI、除く日本、円ベース)が標準的です。

 投資信託のファンド・マネジャーは、ベンチマークを上回る運用成績を達成することを目標として運用を行っています。したがって、投資信託の運用成績がベンチマークを上回る(ベンチマークをビートするともいいます)か否かが、投資信託の運用成績の優劣を評価する判断基準となります。

 ある投信商品が運用利回り10%を達成できたとしても、ベンチマークとなる指数が12%上昇していれば、その商品の運用成績は芳しくないと評価されます。逆に運用利回りが-5%だったとしても、ベンチマークとなる指数が-10%下落していれば、その投信の運用成績は優れていたということになります。投信の運用評価は絶対評価ではなく、相対評価なのです。

 なお、相対評価に飽き足らない投資家向けに、絶対評価に耐えうる運用商品(ベンチマーク指数がマイナスの場合でもプラスの運用利回りを達成する運用手法)を提供しているのが、近年急成長しているヘッジファンドとよばれる運用会社です。

 ところが、ベンチマークを上回る運用成績を達成できる投信商品は非常に少ないのが現実です。投信商品がなかなかベンチマークをビートできない理由としては、第一に投資関連コストがかかること、第二に運用能力の問題、が挙げられます。

 投資信託は、運用手法の切り口から見た場合、大きく分けて、ファンド・マネジャーやアナリストが積極的に運用調査や銘柄選択を行うアクティブ・ファンドとインデックス連動のシンプルな運用を行うパッシブ・ファンドとに分かれます。

 インデックス投信は後者のパッシブ・ファンドに含まれ、運用方法は極めてシンプルです。日経225株価指数をベンチマークとするインデックス投信であれば、ファンドに集まった資金で、日経平均株価を構成する225銘柄を構成比率通りに買うだけです。運用成績は当然ながら日経平均株価の動きと連動します。なお、毎日、投資関連コストとして信託報酬がファンドから差し引かれるので、その分だけ運用成績はベンチマークに割り負けることになります。運用調査や銘柄選択などにあまりコストがかからないので、信託報酬は年率0.5〜0.6%程度です。

 一方、日経225株価指数をベンチマークとするアクティブ・ファンドの場合、ファンドの中身を、日経平均株価の銘柄や構成比とは異なるものにすることにより、ベンチマークである日経平均株価を上回る運用成績を目指します。運用調査や銘柄選択にコストがかかるため、投資関連コストはパッシブ・ファンドよりも高くなります。我が国の投資信託の純資産トップ20商品の信託報酬の平均は年率1.26%で、パッシブ・ファンドの2倍以上です。優秀なファンド・マネジャーでも高い信託報酬に見合う運用成績を挙げて、ベンチマークをビートすることは容易ではありません。

 このように大半の投資信託はベンチマークをビートできないという現実を踏まえると、投資関連コストの高いアクティブ・ファンドよりもパッシブ・ファンドであるインデックス投信がお勧めと考えられます。

 次からは、主要な投資信託の運用成績をベンチマークと比較するとともに、ベンチマークを規定していないファンドについても、スタイル分析という手法を使って、運用成績を評価してみることにします。

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