2011年02月

Carica papaya パパイヤ

学名 Carica papaya (ラテン語) 
別 名 チチウリ(乳瓜)、モクカ(木瓜)、パパヤ 
英 名 common papaw, melon tree, papaya 
原産地 メキシコ、西インド諸島、ブラジルにかけての熱帯アメリカ  
生産地 ブラジル、メキシコ、ペルー、ベネズエラ、アメリカ(ハワイ、フロリダ、カリフォルニア)、インド、インドネシア、マレーシア、台湾ほか熱帯、亜熱帯で栽培されており、日本でも沖縄で栽培されている。  
形 態 高さ2~10mになる常緑の低木。
植物体のほとんどの部分に傷をつけると、白色の乳液を出します。別名チチウリの「チチ(乳)」はこの乳液に由来します。
葉は大きく掌状葉、花は白く小さく、通常雌雄異株。
果実は、開花後4~5ヶ月後には成熟します。果実は倒卵形または長楕円形、球形で、長さ20~40cm、幅10~20cm、重さ200g~4kg、品種によって大きさには差が出ます。 
果皮はロウ質で最初は緑ですが、成熟すると黄色・橙色・赤色になります。
果肉は橙黄色または淡い紅橙色で、多汁。中央部は空洞になっており数百から千個の小さな黒い種子が入っています。  
特 徴 パパイヤはその実に、老化したり傷つき活性の衰えた体内たんぱく質を分解する酵素(プロテアーゼ)と脂肪を分解する酵素(リパーゼ)、糖質を分解する酵素(アミラーゼ)を保有する数少ない植物のひとつです。それらの酵素は新陳代謝をうながします。 
利 用 普通は成熟した果実を生食します。果実を縦に切り、種子や筋を取り除いて食します。
酸味がないので、酸味を加えるためにレモンやライムの絞り汁をかけることが多く、その他ジュースやアイスクリーム、ジャムなどに加工されます。
パパイヤの乳液にはパパインと呼ばれるたんぱく質分解酵素が含まれているため、生肉と果肉を一緒に料理すると、肉が柔らかくなることが知られています。 肉をパパイヤの葉で包んでも同様の効果があります。 
未熟果は野菜のように利用し、千切りにして油でいためて食べます。ブラジルの日系人は漬物にすることもあるそうです。 
台湾の高砂族という高地民族はパパイヤを上手に使います。青い果実の皮を干して山に行くときに携帯し、虫さされのときやすり傷、切り傷、打撲、またヘビに噛まれたときなどの利用します。
パパイヤに湿布・解毒・抗炎症剤としての効能があることを経験から知っているのでしょう。  
引用出典:土橋豊 『熱帯の有用果実』

パパイヤは健康食品

「智恵の食物学」室井綽 清水美重子著 地人書館  より
うそ! ほんと!
パパイヤは食後に食べる健康食品です
青味がなく、はち切れそうなものがよいのです。

パパイヤ
戦後、ずいぶんと世界が狭くなった感じで、いながらにして世界各地のおいしいものが入手でき、熱帯地方のくだものが自由に食べられるようになったのはすばらしいことです。なかでも、アボガド、マンゴー、ドリアン、パパイヤなどの熱帯果実は腐りやすく、戦前はみることすらできなかったものだけに、国が豊かになったことと、航空便による輸送方法の発達に感謝しています。
くだもの屋で目につくものは、何といってもパパイヤで、オレンジ色や黄色い実は、いかにも熱帯の太陽をいっぱいに浴びて健康そのものといった感じのするくだものです。独特の臭味が、熱帯の風味となっています。
パパイヤは漢名を「木瓜」と書き、青い未熟な実はウリと同じようにして食べます。沖縄では味噌漬けや糠漬けにされたものが出まわっていますが、歯切れもよく、とてもおいしいもので、中国人が木瓜と名付けたことに感心させられます。

雌雄異株の果樹
パパイヤは雌雄異株の植物で、熱帯地方を歩くと、一本の雌株だけでよく結実しているのをみることがありますが、それは近くに雄株があるからです。しかし、ごく近年、両性花のある枝が発見されて栽培が容易になったと報じられましたが、興味あることです。
すくすくと伸びたパパイヤのそばに立ってみると、幹は柔らかく、若い部分などは緑滴る色をしています。そして、トウゴマを大きくしたような形状なので、日本人なら誰でも草を思いうかべます。ところが、パパイヤは生長の早い樹木で、高さは10メートルにもなり、寿命は20~30年といわれています。パパイヤの実は、ふつうなら年中市場に出ていますが、本種は柔らかくて大きい木なので、台風の被害をまともに受けやすく、その場合は、半年ぐらい市場から姿を消してしまいます。それで、愛好者をがっかりさせることがしばしばあります。

実を切ると、コショウのような、黒くて丸い種が200~1,000粒もつまっています。これを春にまくと、夏から秋までのびのびとした、いかにも熱帯の植物らしい樹相を楽しめますが、冬は温室でないと枯れてしまいます。

観察のポイント①
日本のくだもの屋には、さまざまな形のパパイヤが各地から輸入されています。産地国によって、うまいとか、まずいかということはありませんが、4㎏もある大きな物はおいしくありません。
品質のよい物は、適度の甘味と、快い舌ざわりがあります。青味の残った物は若いものに多く、しわのついたものは古いので、はち切れそうな物を撰ぶのがコツです。
図①のような少し長い目のヒョウタン形で、あまり大きくない物が臭味が少なく、肉質もよくて一番おいしいものです。図③は、大きすぎてまずいし、図②のような球形のものも、最高においしいというものではありません。

パパイヤの実には酸味がないので、しいていえばそれが欠点です。したがって、食べるときにレモンやライムなどの絞り汁をかけると、独特の臭味を消して、みちがえるような味になります。また、薄く切ってニンジンの代わりにサラダに入れると、いっそう味をひきたてます。熟しすぎた柔らかなものは、シャーベットやジュースに適しています。

肉を柔らかにする働き
熟したパパイヤはビタミンCが豊富で、そのほかビタミンAも多く、まさに健康食品といえましょう。日本へは品質のよいものが入ってきますが、現地では、若いものは漬け物にしたり、トウガンやシロウリのように肉と一緒に煮たりしています。パパイヤには、パパインというたんぱく質分解酵素が含まれているので、肉を早く柔らかにします。ですから胃の弱い人が食間や食前にパパイヤを食べると胃の調子が悪くなるので、まず牛乳を飲むとか食事のあとに食べるのがよいのです。これは、胃の強い人にもいえますから、パパイヤは食後に食べることを常識としてほしいものです。薬や茎を傷つけたり、折ったりすると、白い乳液が流れ出ますが、これにもパパインを多く含んでいます。そこで、固い肉は1~2時間、この液に浸しておくと柔らかになります。現地人はこの液をうおのめやいぼの上に何回か塗って、いぼ取りに利用しています。

パパイヤ ウドの大木

岩佐俊吉著   熱帯の果物誌「古今書院」より

素晴らしきウドの大木

A 木に化けた草
およそ熱帯果物のなかで、早く実ることにかけては、パパイヤの右に出るものはないであろう。種子をまいて半年もたてば結実しはじめ、果物としての価値もまた高い。したがって果樹園として経済的に栽培されるばかりでなく、家庭栽培の果物として、熱帯ではあまねく各戸に植えられている。パパイヤが短期間に大きな実を生ずることは、かねてから驚きの目でみられてきた。1635年イギリスの詩人ウォ-ラ-は「ヒマと好もしきパパイヤは、造化の節理をよそに今はただ一粒のたね、されどせわしく巡る年半ばにして、影を投げやがて麗しき実もて装う」と歌った。

パパイヤは外見上常緑の小高木であるが、きわめて早く生育し、年内にも結実する。若い幹は中空で、組織は軟らかく、草木の特徴を備えている。果実の構造は、形態学的にトケソウと同様で、分類学的にもそれに近い。パパイヤの果実はしばしばメロンと比較されチチウリノキの呼び名があるが、そのウリ類にも近いと言われる。こうしてみると、パパイヤは木に化けた草ともいえるであろう。

パイナップルとの駆け比べ
パパイヤはその近緑種とともに、熱帯アメリカの北はメキシコから、南はボリビアにわたって生育していたが、果たしてどこで果実として原産したか、厳密にはわかっていない。しかしフーバーはメキシコからでたものとし、さらにパパイヤ類を専門に研究したソルムズ・ラウバッハによると、現在栽培されているパパイヤは、おそらくメキシコにおいて、野生種間の交雑によって生じたものであろうといっている。そしてパパイヤに関する学術的な記載は、17世紀初めフランスの植物学者クルシウスが、ブラジルで得た雌雄二本の木を詳細に図示し、これを外国植物沿革史に掲げたのが最初である。

パパイヤは新大陸発見直後の16世紀初頭、スペインの探検隊がパナマ、および南米北西部で発見してから急速に世界熱帯各地へ伝播した。インドのゴアに滞在して、東南アジアの情報を集めたオランダの旅行家リンスホーテンが、1598年に書いているところによると、パパイヤは16世紀スペイン人によりスペイン領西インド諸島から、フィリピンを経てマラッカへもたらされ、次いでインドへ伝わり、またたく間に全インドへ普及した。

当初は香りが不快であるとの先入観から敬遠されがちであったが、今日ではきわめて一般化し、マンゴ、バナナ、カンキツ、グアバに次いで、インド5大果物のひとつに教えられている。中国南部へは1656年にインドから伝わり、植物名実図考(1848)に記載がある。ジャワでは海抜600~700メ-トル地帯までに植えられており、この状態は外の東南アジアでも同様である。台湾への導入時期は明らかではないが、清潮末期に広東を経て入ったらしく、1903(明治36)年にハワイ種を、1911(明治44)年にハワイの大長実種を、そして1915(大正9~12)年の間に急激に増殖され、全島パパイヤを見ないところまでに普及している。

ハワイでは古くからパパイヤにヘイという独特の呼び名があって、ヨーロッパ人の来島(1778)以前アジア太平洋諸島を経て到来していたものともいわれているが、真相は1820~1823年の間に、マリンがマルケサス島から導入したのが最初らしい。現在、企業的栽培が盛んであるが、その主体品種はソロ種である。これは1911年ウィルダ-によってバルバドス、およびジャマイカから導入されたもので、1919年にソロと命名され、それまでの在来大長実種に代わり、1936年までにハワイのパパイヤ産業を支える唯一の経済品種として定着した。

その他、アフリカ熱帯でも、パパイヤは至る所に分布しており、今や全世界の熱帯に行き渡っているが、その分布の早かったことは、同じく新大陸発したパイナップルに似ている。それはいずれも草木的な植物で繁殖が容易、かつ果実が大きく、肉質の優れていることによるものである。

1981年全世界生産量は189.1万トンと報告されており、うちラテンアメリカが多くてアジア熱帯がこれに次ぎ、この両地域で全世界生産の8割以上を占めている。

木の果実と特色
パパイヤのセックス
パパイヤは幹高さ7~10メートル、樹皮は緑色であるが、老熟すると灰色に変わり、障害を受けない限り通常分岐しない。葉は長柄を有する掌状で、頂部に群生し、一見ヤシ植物を思わせる。種子をまいて繁殖するが、実生をすると雌花、雄花、雌雄両生花その他雌雄間の各種段階にある花の着生する株を生ずる。果実は熟して鮮黄かっ色、菓表は純5綾形で溝がある。果肉は濃黄色またはさけ肉食、汁多く軟らかで、独特の乳臭い香りがある果実の内部は中空で、内壁に半透明の種衣に包まれ、丸くて表面コンペイ糖状の黒色種子多数を付着する。

一般に雌花の株に生じた果実が、果形大きく生産量も高い。理論的には花粉がかからないと結実しないから、20本に1本の割で雄花の株を残す必要がある。しかし実際的には単為結果といって花粉がかからなくとも果実の発達する品種が多い。両性花から生じた果実は長形で角張り、小果で雌株の果実に比べると劣る。これら各種性の型を、種子の時に区別することは不可能なので、栽培上は1か所に通常3本の実性を植え、花をみるようになってから雌株だけを残し、雄株と両性花の株を除去する。この際雌花と両生花は、葉の付け根に直接群生しているが、雄花はひも状の花序に着手しているので分別はたやすい。さらに雌花は花を割って、雌ずいのみの発達しているものを確かめる必要がある。

ハワイのソロ種は自花授粉をするもので、雌株を全く必要としないが、実際には実生しても雌株33.3パ-セント、両性花の果実は小計の手頃な大きさで、形状西洋ナシ形を呈し、消費者ひいては生産者に好まれるため、両性花の株だけを残して栽培している。通常1か所2本の実生を植え、出現率の高い両性花の株1本を残す。ハワイのソロ種にはいくつの系統があるが、うち輸出用には果皮の強いカボホ・ソロおよびマスモト・ソロ2系が用いられている。

パパインの効きめ
パパイヤは生食用として優れた果物で、果実を縦に割り、通常レモンかライムの絞り汁をかけて食べる。7~9パーセントの糖分を含み、でん粉はほとんどないが果肉が黄色でカロチンを含みしたがってビタミンAの含量は、果物中でも特に多い。
果実また飲料、焼きパパイヤ、菓子、氷菓、他の果物と共にフルーツサラダなどとし、さらに砂糖菓子、ピクル、シラップ漬、乾燥品などをこしらえ、それらの缶詰品もある。若い果実をはじめ樹冠の頂部、幹の随などは野菜として煮食し、マレーシアやジャワでは若葉を、ララップといってカレーライスに添える一種の冷野菜として用い、花もまた砂糖で煮て食用とする。

食品としてのパパイヤの特色は、樹体に含まれる汁のなかに、パパインと呼ばれるたん白分解酵素があって、胃液中にあるペプシンと同様の働きのあることである。肉料理のあとのデザートとして優れているのはそのためであるが、熱帯では硬い肉をパパイヤの葉に包み、また若い果実とともに煮て、肉を軟らかく調理するのに利用する。熱帯に滞在中、素人で料理自慢の知人に招かれ、パパイヤの果肉に漬けておいたと聞かされたあと、豆腐のように軟らかくなった牛肉を食べたが、翌1日寝込んでしまった。たん白の分解が進みすぎて、有害物質を生じていたらしく、パパインの威力を身をもって体験する結果となった。パパインは消化剤として市販されているが、それにはパパイヤの未熟果実を傷つけ、しみでた汁の乾固したものを集め、一度精製アルコールに溶かしてから、乾燥させて得た粉末を原料として製造する。熱帯では葉を石けんの代用とし、果実の汁をソバカスやイボを除く化粧料として用いるが、いずれもパパインの作用を利用したものであろう。幹や葉にはパパインとは別に少量のカルパインといわれるアルカロイドがあって苦味を呈するが、これは強心剤としての作用がある。なお俗に果肉をやけどに塗ると、痛みを和らげるという。種子にはウォータークレスの香りがあるとされ、薬味として利用される。ジャワでは、未婚の処女はパパイヤを食べない習慣があるが、南インドでも導入当初、パパイヤ婦人病を起こすとの迷信があった。これら二つの間には何らかの関連がありそうに思われる。

両性パパイヤの育種

「♂♀のはなし」 鳥山 國士編者より

両性パパイヤの育種;豊富な南米型から可憐なハワイ型へ

パパイヤの魅力
パパイヤは北緯と南緯32度以内の熱帯と亜熱帯に育つといわれ、これまでは東南アジアや中南米の果物でしたが、最近ではわが国のスーパーなどにも輸入品がならぶようになりました。立派なごちそうのあとデザートとして出るパパイヤの冷菓は、小さなものだと縦に二つ割り、大きなものだと数個の舟形に切って、これにレモンやライムの汁をかけて食べます。かすかに乳臭いというか人間臭い香りがあり、ねっとりした口当たりで、甘みがあります(糖分は10%ほどといわれています)。これがレモンなどの酸味と調和して、それまでに食べた重厚な料理の印象を深めてくれるのです。そのうえパパイヤには強力な蛋白質分解酵素パパインが含まれていて、大きなビフテキも難なく消化してしまうのですから、ごちそうのデザートとしてはうってつけです。

そのほか、この果物にはビタミンA・C、カルシウム、鉄分などが豊富に含まれており、健康食品としてもすぐれています.
 この植物の果実、幹、葉などには、どこを切っても流れ出る白い乳液の中にパパインが含まれており、各部はさまざまに利用されています。私が生活していたブラジルでは、肉をパパイヤの葉に包んで焼いてました。これで肉が軟らかくなるのです。若い果実は刻んで煮物、漬物、サラダなどに利用します。

中国ではウリのように利用するところから木瓜とよびます。そのほか、花、若葉、若い茎の随まで野菜の代わりに食べるし、種子も香辛料に利用するそうです。
この木の幹や若い果実を傷つけて採集する汁液を集めて乾燥したものは、パパインと称して販売されています。そのすぐれた蛋白質分解作用は、医薬(消化剤)、革製造の柔皮剤にもなります。このようにこの植物全体が極めて利用価値が高く、熱帯の住民の生活に深いかかわりのあることがわかります。

名前の由来
パパイヤは、学名をCanica oaoaya L.あるいはpapaya canica GART.といい、パパイヤ科パパイヤ属の一種です。パパイヤ属はアメリカ大陸で22種が知られており、パパイヤ種はメキシコで同属植物の種間交雑により発生したといわれています。ブラジルにも類似の果実をつける同属植物が3種あり、パパイヤと同じように利用されていることからみて、にた植物がいろいろあって利用されたなかで、種間交雑によりもっともすぐれたパパイヤが現れて、広く伝播したものと推定されます。
属名のCanicaはイチジクを意味していますが、この植物の葉がイチジクの葉に似ていることに起源しています。種名のpapayaについて、インドでの呼び名papaiya-ambaから出発したという説があります。同様の呼び名がスペイン語をはじめ、イギリス、フランス、オランダ語にあり、また英語でpaw-paw,スリランカでpapel,タミル語でpapali、マライでkeoaya、フィリピンでcapayo、ハワイでpaw-pawとよばれています。アメリカ大陸では16世紀以前に南米で栄えたインディオのツッピー語でambapayaといい、中米のインディオのカリブごでもababayとよんだといわれています。また語源に詳しい研究社の『英和大辞典』には、papayaの名がカリブ語に由来すると記されています。

このように、アジア各地に欧州語とはややちがい、アメリカ大陸と似た呼び名があったのは、コロンブス時代(15~16世紀)以前にアメリカ大陸からアジア各地を含む熱帯に広く伝播し分布したことがあったのか、あるいはメキシコとフィリピンとの関係から伝わったこともあろうかと考えられ、興味深いものがあります。現在パパイヤはブラジルで一般にマモン(Mamao、ポルトガル語)とよばれ、アルゼンチンでもマモン(Mamao、スペイン語)とよばれています。これは乳房(Mama)からきた語で、雌果の形が乳房によく似ており、また若い果実から白い乳液がしたたりおちるところからも、大変ふさわしい名といえるでしょう。

ソロ種の育成
パパイヤは雌雄異株の木本植物です。幹は高さ7~10メートル、太さ約10センチメ-トルで肌は灰色をし、葉の落ちたあとの白い斑点が一面についています。幹の上方に70~100センチメ-トルほどの葉柄が輪状に側方へ伸び、その先に天狗のうちわに似た葉がついています。葉身の表面は濃緑色、裏面は灰緑色で美しい色合いです。雌株では葉腋に5センチメ-トルほどの白い雌花が咲き、また同じ形の雌株では葉腋に白い雄花が総状咲きます。

雌花は受精した後雌果となり、先端からつけ根に向けてつく5つの稜のあらゆるく張った球形の果実は、生長すると重さ1~5キログラムほどになります。これが雌株からやや下向きぶらさがった姿は、婦人の垂れ乳にそっくりです。開花語約3ヶ月で成熟すると、外皮が黄色になり、内部は果肉すなわち中果皮が黄色または鮮紅色で軟らかく甘くなります。その内側は5角形の空洞で、内壁に沿って数百個の黒い種子がつきます。

他方、雄株にもまれに両生花(雄ずいと雌ずいをもった花)がつき、小さな果実に生長することもあります。さらにさまざまな程度の両生株がありかなり多くの両生花をつけやがて長楕円形の立派な果実に生長するものがあります。

ハワイでは育種より、この両生花を主体とした品種を作り、ソロ(Solo)種と称して栽培しました。ソロ種の果実は長さ20センチメートル、直径9センチメートルほどで、重さは500グラム前後あり、半切りにして皿にのせるほどよい大きさです。果肉は鮮紅色で、甘みが強く香りは淡泊で、すぐれた品種です。この楕円形あるいは砲弾形の果実が両性木の頂部から横向きにつく姿は、乙女の突っ張り乳房に思わせる可憐なものです。
ソロ種はその後台湾に渡って改良され、台湾ソロ種となった品種は、果実の長さが35センチメートル、太さ15センチメートル、1個3~4キログラムほどの大型の実をつけます。肉質は黄色で甘みがやや劣るのですが、強健で多収です。
ブラジルでは純粋のソロ種はアマゾンの高温地帯で栽培され、市場に出荷されていましたし、台湾ソロ種はサンパウロ州で日系の農家が立派に栽培していました。私も台湾ソロ種を自宅の庭で育ててみましたが、年中果実が熟して楽しみでした。

両性パパイヤの遺伝
パパイヤ播種子で繁殖し、栽培するのですが、雌果の種子は育つと雌株一と雄株一の割合には分布します。このため小箱に種子をまいて幼苗を三本育てて、この箱を畑の一株として埋め、1メートルほどに育ったとき、雌木を残して一本に間引く方法をとり、全体で雌株90%に受粉用の雄株10%を混合して栽培します。
これに対し、ソロ種のような両性品種では、両性果の種子をまくと、一般に両性株2と雌株1の割合に分離します。このため育苗して両性株を見出す割合が高く、受粉樹も不要となる利点があります。
これらの性の遺伝について、アメリカの学者ジュレス・ジャニック博士は、次のように説明しています。
いま雄株の遺伝子をMm、両性株のそれをM1m、雌株をmmとすると(性染色体で示すとMはY、mはX、M1は両性をきめるY染色体となります)、ふつうの品種では、
雌(mm)×雄(Mm)→1 雄(Mm)+1雌(mm)
となり雌雄は1対に分離します。
一方、ソロ種での両生株の相互交配では、
両性(M1m)×両性(M1m)→M1M1+2両性(M1m)+1雌(mm)
となり、M1M1は致死のため生育せずに死んでしまい、両性2と雌1の割合になります。
ここで両性株の相互交配の次代に純粋な雌株を分離することから、この両性株は本来は雄でありながら雄花に雌ずいをうけるM1m型の雄性間性(andromonoecious)であることが明らかです。実際にこの植物の両性花は花筒が長く、本来花筒の長い雌花に似ている(雌花の花筒は短い)ことからも両性株が本来は雄性であることが裏づけられます。すなわちパパイヤの雌果の乱れ乳形は成熟した本来の乳房であり、両性果の突っ張り乳形は乙女の中性的な乳房ということもできるでしょう。

私が訪問することのできた中南米とアジアの国々では、ブラジルとバンコクのホテルでこの突っ張り乳形のパパイアに出会った以外は、ほとんどすべて垂れ乳形のものばかりでした。おそらくパパイアは土着の古くからの果物であるため、垂れ乳形のものでよいと思っており、よほどの改良の意識をもったところでないと、突っ張り乳形に変えることをしないのでしょう。それにしてもハワイでのソロ種パパイヤの育種は称賛に値するものといえましょう。

パパイヤの品種特性

品種名   ;苗生産;性    ;用途;花芽;高・果肉;果重
;表皮;ウイルス;種子;備考 
・台農2号    ・実生  ・両性 多・野菜・80cm・厚い    ・1200g 
・なめらか・無    ・有    ・現在一番生産多し・  
・台農1号    ・実生  ・両性  多・野菜・100cm ・厚い    ・2000g 
・なめらか・無    ・有    ・                ・  
・台農5号    ・実生  ・両性  多・野菜・70cm・薄い    ・2000g 
・なめらか・有    ・有    ・台湾でも生産少し・  
・パパヤ・ダ-・バイオ・メス    ・野菜・15cm・厚い    ・ 800g 
・なめらか・有    ・有;無・多産性          ・  
・パパヤ・ダ-・バイオ・両性    ・フル-ツ・15cm・厚い・赤・1200g 
・なめらか・有    ・有    ・パパヤ臭なし    ・  
・ワンダ-ドワ-フ  ・バイオ・メス    ・野菜・15cm・薄い    ・ 800g 
・でこぼこ・無    ・無    ・多産性;単為結実・  
・サンライズ  ・実生  ・両性 多・フル-ツ・120cm ・厚い・赤・ 600g 
・なめらか・無    ・有    ・立枯に弱い      ・  
・ソロ        ・実生  ・両性  多・フル-ツ・100cm ・厚い・黄・ 600g 
・なめらか・無    ・有    ・                ・  
・コ-ラルクイ-ン    ・      ・両性    ・    ・        ・厚い    ・ 500g 
・なめらか・無    ・有    ・宮古下地選抜種  ・ 

パパイヤの病気と対策

1、はじめに
パパヤは、健康野菜として生産が急速に伸びている。パパヤ栽培の施設化が進み、フルーツとしての栽培も開始されつつある。パパヤの野菜としての利用は、県外ではなじみが薄く、急速な消費拡大が望めない状況にあり、今後さらに伸びて行くためには、パパヤをフルーツとして栽培することが求められている。フルーツ・パパヤの栽培は、開花から収穫までの期間が長くなることにより、パパヤの病気が大きな問題となってくる。(1)

2、パパヤのウイルスについて
パパヤの果実を商品化する上では、ウイルスの問題がある。沖縄県において発生するパパヤのウイルスには、パパヤ奇形葉モザイク(PLDMV)、パパヤ輪点ウイルスがある。

(1)パパヤ奇形葉モザイクウイルス  (Papaya leaf-distortion mosaic virus;PLDMV) PLDMVは、Potyvirus属に属し、長さが約700nm、幅約12nmのヒモ状ウイルスである。このウイルスは、アブラムシによる伝搬及び汁液伝染をする。病徴は、はじめ頂葉に葉脈透化、ついで退緑斑紋が現れ、やがてモザイク状となり、淡褐色の斑点が現れる。病状が進展すると奇形葉が現れ、軽い火ぶくれ状となる。茎や葉柄には、濃緑色の斑紋や条斑が現れ、果実には濃緑色の輪紋、コブ状の隆起が形成される。このウイルスにかかると、開花・結実が少なく、果実は中が空洞にならず硬化・変形し商品価値がなくなる。PLDMVは、パパヤのほか、ペポカボチャ、シロウリ等のウリ科植物にも感染する。
PLDMVは、パパヤの病徴からモザイク系統、黄斑モザイク系統、奇形葉モザイク系統にわけられる。このうち、奇形葉モザイク系統の発生が最も多い。

(2)パパヤ輪点ウイルス (Papaya ringspot virus;PRSV)
PRSVは、Potyvirus属に属し、長さが約800nm、幅約12nmのヒモ状ウイルスである。パパヤ奇形葉モザイクウイルスとは、ウイルスの性質は似ており、病徴も似ているが異なるウイルスである。このウイルスは、アブラムシによる伝搬及び汁液伝染をする。PRSVにかかると、展開葉にクロロシスを生じ、次いで、葉脈透化、縮葉、明瞭な斑紋を生ずる。結局、葉は奇形となり、葉身が減り、極端に細くなることもある。濃緑色の条斑が葉柄や樹幹に生ずる。病樹は、萎縮し、葉柄は、短くなり、病気が進行すると結果数は減少する。感染後に生じた果実では、味や香りが極端に悪くなる。果実には、緑色から濃緑色の輪紋を生じる。
  PRSVは、パパヤのほか、多くのウリ科植物と一部のアカザ科植物にも感染する。台湾では、ヘチマなどにも発生している。

3、ウイルスの対策について
(1)両ウイルス(PLDMVとPRSV)は、病株から、主にモモアカアブラムシ、ワタアブラムシなどのアブラムシによって伝搬される。そのことから、伝染源の汚染株を早めに抜き取り処理することと、アブラムシの防除が大切である。

(2)伝染源は、主としてパパヤのウイルス罹病株である。PLDMVは、人工的にパパヤのほか、ウリ科植物にも感染するが、自然発生植物としてパパヤ以外見つかっていない。PRSVは、台湾では、パパヤのほかヘチマなどウリ科作物にも自然発生している。したがって、PRSVは、伝染源として、ウリ科植物も重要である。

(3)アブラムシの生態
アブラムシは、パパヤをホストとして普通は定着しない。沖縄県内のアブラムシは、胎生で増殖している。株から株を次々と刺して、移動し伝搬していく。アブラムシからの感染は、1分から5分間で殆ど感染する。アブラムシは、吸毒後、飢餓状態になると2から4時間経過すれば無毒化し感染能力を失うが、PLDMVは、20時間持続する。保毒したアブラムシは、他の植物を吸汁すると30分後には感染能力を失うことも知られている。アブラムシの大飛来は、9月頃から始まり、11月から急激に増加し、4月まで続く。

パパヤの野外での定植期はアブラムシの飛来の少ない5月から10月がすすめられる。
アブラムシは、黄色い色(主波長575から580nm)を好む傾向があるので、黄色水盤を用いるとアブラムシの園内の飛来状況を知ることができる。
(注)ウイルスの発生において、葉が黄色いからウイルスが発生しやすいとはいえない。

(3)アブラムシの防除法
アブラムシが飛来しやすいのは、周囲に障害物がなく、風の流れが旺盛なところである。このことから、露地で栽培するにも、防風ネット、防風林をきちんとすることが大切である。

①アブラムシの保毒と発生消長を利用して感染を抑制する「被害回避型」栽培方法がある。サトウキビもしくはトウモロコシを間作して、アブラムシの飛来防止セルターとして利用する。この方法によって、パパヤへの飛来を少なくすることができる。

②アミ(白ネット;サンサンネット1mm目)施設によって、栽培することによって、アブラムシの飛来を防ぐ。入り口は、アミによって、2重にすることがすすめられる。

③アブラムシは、シルバーを嫌うので、シルバーマルチもしくは、シルバーテープも有効である。

④アブラムシの飛来を完全に防止するには、網やビニールフィルム等をもちいた施設栽培が最も効果的である。

(4)汁液伝染防止対策
奇形葉モザイクウイルスは、汁液伝染もするので、刃物による収穫作業、手指による伝染も考えられる。器具をきちんと消毒することが大切である。しかし、アブラムシによる伝染に比べれば、実際の汁液伝染はまれと思われる。

(5)ウイルスに対する農薬は存在していないが、アブラムシを忌避させることは、アルフェート粒剤(未登録)でできる。ただし、開花が始まったら使用はやめる。

4、その他の病気
パパヤの病気は、苗立枯病、炭そ病、疫病、うどんこ病があげられる。

(1)苗立枯病(Pythium sp. ;Phytopthora sp.)
植え付け後間もない幼苗期に発生しやすく、植物が大きくなると発病は減るようになる。土壌水分の過多、排水不良、深うえ、植え痛み、窒素過多の場合に多い。品種特性があり、サンライズは、苗立枯病にかかりやすい。水はけをよくすることが大切である。未登録ではあるが、リドミル粒剤が有効である。

(2)炭そ病
パパヤの炭そ病は、貯蔵性病害で、パパヤ果実が成熟すると、典型的な病斑が現れる。病気が進行すると果実は腐敗し、果実の品質に影響する。炭そ病は、カビ類に属する病害で、無性有性代の両世代がある。圃場での感染は、分生胞子によるもので、降雨によって広がる。
20℃から30℃で発病し、生育適温は、28℃である。病原菌は、潜伏する可能性があるので、予防処置をする。マンネブW400倍、ジマンダイセン650倍が有効である。

(3)疫病  (Phytophtora nicotianae var. parasitica Dastyr)
4月から5月と11月から12月に多発しやすい。排水をよくすることが大切である。カリウム過剰による根が棒浸状になっていることである。植え付け時に、リドミル粒剤処理が有効である。

(4)うどんこ病(Oidium caricae Noack)
うどんこ病にかかった株は、葉の表には最初は黄色の斑点が現れ、白色粉状物がつく。最初は点在するが、後に葉全体に蔓延する。
3月から6月に多発する。発病適温18℃から22℃。モレスタン2000倍などを使用する。しかし、うどんこ病が発生しやすいのは、過湿条件と、土壌の苦土欠からもおこりやすいので、苦土(みどりマグ)を補ってやる必要がある。
 
(1)照屋林宏;「沖縄県におけるパパイヤ栽培の現状と産地化に向けての提言」沖縄経済連情報 93年9月号10月号
    

パパイヤ物語

パパヤは、熱帯果実として代表的なものです。
パパヤは、熱帯アメリカから、ボリビアにわたって
生育していました。
原産地は、メキシコという説もあります。

コロンブスのアメリカ大陸発見後、
スペインの探検隊が、16世紀はじめに発見して、
世界の熱帯に急速に広げられた。

インドには、スペイン人が、スペイン領西インド諸島から、
フィリッピンを経てマラッカにもたらされ、
ついでインドへ伝わり、インドで全盛を見るようになった。
パパヤの名前の由来

パパヤは、学名をCarica papaya といいます。
属名のCaricaは、いちじくを意味しています。
パパヤの葉が、いちじくの葉に似ているところからきています。
パパヤは、カリブ語に由来するとされています。

パパヤは、英語で、pawpaw(ポーポー)と呼ばれています。
ブラジル、アルゼンチンでは、マモンとよばれ、
乳房(ママ)からきた言葉で、果実のかたちが乳房ににており、
また若い果実から白い乳液がしたたり落ちることからきています。

中国では、木瓜といわれる。
それは、瓜と同じような利用の仕方をするからである。
パパヤの用途
パパヤは、生食用としては、優れた果物で、
7から9%の糖分を含み、果肉が、黄色から赤肉で、
カロチンを含んでいる。

従って、ビタミンAの含料は、果物中でもとくに多い。
パパインといわれる蛋白分解酵素があって、
胃液中にあるペプシンと同様の働きがあることが分かっている。
そのため、肉用のデザートとして、
優れているのはそのためである。

幹や葉には、カルパインというアルカロイドがあり、
強心剤として使用される。
果肉をやけどにぬると痛みをやわらげるといわれている。
種子は、香辛料として使用される。

パパヤの用途は、東南アジアでは、野菜として使用され、
千切りにしてゆがき、香辛料をのせて、
サラダとして食します。
沖縄では、豚肉と一緒に煮て、おかずとして食します。
パパヤは、生育の早い半木性の常緑果樹で、
樹高7から10mに達します。
パパヤの生育には、高温が好まれるので、適地は限られてくる。
風当たりの強いところや、塩風のあたるところは、
適していません。
土壌条件は、湿潤地よりも乾燥地に強いが、
過度の乾燥は嫌います。
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