Q:植物は重力を正しく感知して根を下方向に伸ばしているみたいですが、どのようにして重力を感知しているのでしょうか?
よくオーキシン感受性変異株が重力屈性に異常をきたすことから、オーキシンが何らかの重力を感知するための機能に関与していることは理解しているつもりですが、私にはそのメカニズムを想像することがとても困難です。
野生株と変異株での器官レベルでの動態の違いなどにふれながら教えてください。
さらに加えて空気中の器官すなわち茎についても同様に、どのように重力を感知しているかを知りたいと思います。
A;重力屈性の反応を少し分けて考えると、
1.重力の方向に対して自分の体がど う傾いているかを感じとり、
2.その刺激を細胞内や細胞間で伝えやすいものに変換し伝達して、
3.器官の上下で細胞の伸長速度に差が生じ、器官が屈曲 します。
おたずねの‘重力の感知’については、1.に当てはまります。
多くの植物種 が、特殊な細胞の中に、
重力方向に沈降する比較的大きなアミロプラストと呼ばれるオルガネラを持ちます。
アミロプラストとは色素体の一分化形態で、葉緑体の仲間です。
これは、デンプンを蓄積して比重が大きくなっており、植物体が傾くと
重力の方向へと細胞の中で沈降(移動)します。
このアミロプラス トが平衡石として働き、重力を感受していると考えられています。
アミロプラ ストを含む細胞(平衡細胞)は、根では先端部の根冠に、
茎では主にデンプン鞘と呼ばれる組織にあります。
オーキシンは主に3.の反応に関わっていると考えられています。
オーキシン は植物体内で様々な働きをする植物ホルモンですが、
重力屈性においては主に 細胞伸長に関わります。
重力の刺激を受けた器官において、重力側のオーキシン濃度が高まり、
反対側との間に濃度差が生じます。
根では濃度が高くなった側で細胞伸長が抑制されるため、重力方向への屈曲が起こります。
逆に茎や胚 軸といった地上部の器官では、
オーキシン濃度の高い側で細胞伸長が促進され るため、
重力とは逆の方向に屈曲が起こります。
'器官レベルでの動態’については、
どういうことを意図されているか把握で きてないかもしれませんが...
変異体を用いた遺伝学的な研究は、
おもにモデル植物であるシロイヌナズナを中心に行われています。
重力屈性変異体の多くは、根、胚軸、茎のどれか、
も しくは根と胚軸、胚軸と茎といった器官特異的な重力屈性異常を示します。
ア ミロプラストを平衡石として利用する点は、根でも地上部でも共通しています
が、重力屈性反応の遺伝学的な背景は各器官で多少異なると思われます。