2018年11月

2018年11月22日

腰痛(58)

特異的腰痛の問題

頚肩腕症候群は、腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄と類似しています。

頚肩腕症候群

 1,頚椎症・・・・・・・頸椎の変形性脊椎症および頸部椎間板ヘルニア
 
 2,頸椎後縦靱帯骨化症(※OPLL)

   OPLLという名称は、ossification of posterior longitudinal ligament

                直訳:骨化・硬化、後部、縦軸・縦断、靱帯

   したがって後縦靱帯骨化症の意味で、厚生省の指定難病69になっております

   後縦靱帯骨化症は、頸椎のみならず胸椎、腰椎にもおこりますので、

   POLLは脊椎に起因した後縦靱帯骨化症という意味になります。

   私は、OPLLは、頸椎後縦靱帯骨化症の病名だと思っていました。

   頸椎におけるOPLLという使い方が正しい。 大変申しわけありませんでした。

 3,胸郭出口症候群・・・・・・斜角筋症候群、肋鎖症候群

<原因の類似性>

1,頚椎症の頚部椎間板ヘルニアと腰部椎間板ヘルニア:ほぼ同じですね。

  頚椎症の変形性頚椎症と変形性腰椎症:ほぼ同じ。

2,頸椎後縦靱帯骨化症と腰部脊柱管狭窄症:非常に類似しています。

3, 胸郭出口症候群とentrapment neuropathy:

    神経が明確なトンネルを通ってはいませんが、神経叢と動脈・静脈が圧迫・絞扼され

    症状が出現するという意味で類似。

<症状>

1,2,3共に上肢帯、上腕・前腕・手部・手指。下肢帯、大腿・下腿・足部・足趾部位という

侵害された部位によって違いあるいは程度の大小などの違いはありますが

症状としての運動・感覚障害、疼痛、やシビレ違和感覚など類似しています。

<治療方法>

1,2,3ともに手段、方法なども、ほぼ変わりませんね。


臨床においては

1,頚椎症と腰痛症

   頚部椎間板ヘルニア、 腰部椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群、entrapment neuropathy、

   は関連する末梢神経が特定の部位によって絞扼されるという意味においては同類。

   ただ、どういうわけか?

   腰痛症といいう用語は明らかに使用しますが、頸痛症という用語は聞きませね?

2,頸椎後縦靱帯骨化症と腰部脊柱管狭窄症

   頚髄、腰髄(馬尾)という中枢が侵害されるという意味では同類

この2種類に分類するほうがスッキリするのでは?


さて現在、特異的腰痛である腰部椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄はまるで同列のように

語られています。

整形でも腰部椎間板ヘルニアの人は50歳後半には、ほぼ脊柱管狭窄と診断されます。

確かに、腰椎椎間板の脱出によって脊柱管の狭窄はMRIでは確認されます。

巷では、腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症が治る!!・・と宣伝されています。

腰部椎間板ヘルニアにおける手術率は非常に少なく、また入院時に手術を勧められた症例と

勧められなかった症例との間に長期成績に差は認められない。

そのために、単純に腰部椎間板ヘルニアによる脊柱管狭窄であれば、上記の考えは

ある意味正しい・・・・・がある意味正しくはない。


脊柱管狭窄と脊柱管狭窄症では全く疾病の質が違っているという認識が必要です。


今回は、少し脊柱管狭窄を観察してみましょう。

知っていても、もう一度よく確認してください。知っているようで意外と知らない。


因みに腰部脊柱管狭窄は、脊柱管の前後径が狭くなり、馬尾神経の絞扼や神経根に対する

圧迫している状態です。

そのためにMRI診断では腰部脊柱管狭窄と診断されます。

これらは形態による状態です。

変形性頸椎と同じですね。症状が出れば変形性頚椎症と診断されます。

変形性腰椎も同じです。症状が出れば変形性腰椎症と診断されます。


それでは、腰部脊柱管の狭窄しておこる腰部脊柱管狭窄症とは。

<症状>

 1、神経性跛行

   動脈性の間欠性跛行と区別するため神経性跛行と呼んでいます。

   歩行により腰から臀部、大腿、下腿へと疼痛が放散する。

   疼痛は、腰椎の伸展で悪化し、屈曲で軽快する。

   症状は、坐位では問題はなく、歩行が長くなると悪化する。

   これは、脊柱管狭窄により腰椎伸展により、脊柱管と椎間孔の横断面積が減少して

   神経根周囲の小静脈をが圧迫され怒脹しこれが神経の阻血を引きおこされる。

   腰椎屈曲によって阻血障害が改善されるため。

   面白いのは、腰椎脊柱管狭窄で神経性跛行のある人の70%ほどに、股関節が

   170度ぐらいまで何の抵抗もなく挙上出来る。

   つまり、ラセーグの手技で膝が腹壁につくほどまでに抵抗なく曲がる。

   ラセーグが陰性ほど脊柱管の狭窄の程度は強く危険。

   これは、脊髄癆にはよく知られた徴候とされています。

   腰部脊柱管狭窄でも後根は脊柱管の外側脊柱管に絞扼されるため脊髄癆の

   病変部位と類似するためにおこります。

  ※解剖学的には脊柱管狭窄である外側脊柱管は感覚神経である後根では

    前根に比べて中枢側が突出する傾向が有り後索が障害される傾向がある。

    そのため、後索障害により深部感覚である位置、運動、立体感などが障害される。

  ※一方、腰部椎間板ヘルニア解剖学的にはヘルニア塊は前根の運動神経を圧迫する。

    後根の感覚神経を圧迫するほどのヘルニア槐であれば運動障害は必発。・・・・のハズ。

    実際は、運動神経の障害のある腰部椎間板ヘルニアは極めて少ない。

    また、感覚障害も少なく、むしろ慢性的な疼痛を訴える。

    単純に腰部の椎間板が突出した状態。まさしくヘルニアの状態。

  
  2,馬尾症候

   頻尿感、残尿感、尿閉、便秘、両脚の「しびれ」や「まひ」(痛みはない)、

   異常な勃起(男性)、会陰部に「ほてり」異常な感覚(女性)などの馬尾症候。

   侵される神経は末梢神経ではなく脊髄という中枢神経です。

   脊髄障害は、いずれのレベルでも病勢が進行すれば出現します

   膀胱内圧を測定すれば神経因性膀胱は高率に検出されます。

   馬尾・円錐部の狭窄・圧迫においては膀胱・直腸障害が初発になります。

   問題となる腰髄2以下の神経根は馬尾神経を形成しています。

   したがって馬尾症候がおこります。

  3,病的反射

    バビンスキー反射:L5ーS1からの感覚入力に対してL5ーS2の運動出力

    脊髄は脳脊髄液にひたされて、脊柱管に治まっています。

  3,後索の固有覚の障害

    ロンベルグ徴候(立位閉眼テスト)

    ※深部感覚障害のため陽性になる。
    
    開脚歩行:腰椎脊柱管狭窄の特異度は80%

  4,腰椎脊柱管狭窄の半数で知覚あるいは運動の欠損が認められる

    筋力低下は軽く機能障害をおこすほどの筋力低下はない。

  5,その他

<分類>

 脊柱管の狭窄は中心部、椎間関節の下、および外側の椎間孔でおこる。

 1,骨性脊柱管の発育異常

   developmental stenosisi:椎弓根が短いためにおこる。

     20〜40で歳代で軽度の変性変化が加わり発症する。

     突発性(原因不明)、小人症の軟骨無形症などでみられる。

  2,加齢による退行性の変性・変形など

   degenerative stenosisi :最も多く発症するもので加齢によりおこる。

     〇中央部の狭窄でおこる場合

       椎間板変性で椎間板が後方に突出する。

       椎間関節のOA変化による骨棘と関節包肥厚、黄色靱帯肥厚し
 
       嵌入することによっておこります。

       また椎間関節のOAが進み嚢胞し脊柱管を圧迫します。

     〇周囲、側部の狭窄でおこる場合

        坐骨神経痛がおこるとされています。

     〇脊椎滑り症で狭窄がおこる場合

        腰痛が主症状で神経性跛行は二次的

   3、脊椎分離

   4、外傷

   5、医原性

      〇椎弓切除後

        手術部位の隣接部で狭窄する。

      〇椎体固定後

<画像診断にによって理解できる事実>

  〇単純レ線

    腰椎滑り、椎間板狭小化、終板の骨硬化、椎間関節肥厚、椎間孔の骨棘

  〇CT

    椎間関節のOA変化(関節面と関節面の形状)

  〇MRI

    椎間板、靱帯などの軟部組織の変化椎間板突出

    黄色靱帯肥厚、椎間関節肥厚、椎間関節嚢胞

<画像診断における注意>

 腰椎脊柱管狭窄はCT、MRIの画像診断の感度は70%を超えるのですが、

 60歳以上の人でも20%は画像で狭窄があっても無症状。

 したがって、特異度の%はの計算は難しいとされています。・・・・つまりわからない。不明。

 しかしながら以前にも述べましたが画像診断による脊柱管狭窄の内訳においては、

 神経根型70%、混合型16%、馬尾型14%が存在しています。

 そして、馬尾型の約30%が発症後5年内に最終的に手術に至るとのデーターがあります。

 従って脊柱管狭窄では、MRIの診断は何型か知るためで非常に重要な項目になります。

 脊柱管狭窄の馬尾型の人、混合型の人は、現状でたとえ馬尾症候が無くても

 長期観察が必要で、30%といえども将来的には手術の必要性があるという事実は

 知っておくべきでしょう。


脊柱管狭窄は、椎間板ヘルニアよる膨隆、変形性脊椎症、脊椎分離、すべり症などによる

脊椎後縁の骨や椎弓や椎間関節の骨肥厚、黄色靱帯肥厚などが関連します。

腰部椎間板のヘルニアは原因の一部にしか過ぎません。

たとえ狭い脊柱管というトンネルを通過している馬尾といえども完全に圧迫されても

神経の損傷状態は断裂まではおこらないでしょう。・・・・・が、

腰椎ヘルニアによってゼリー状の吸収されれ易い脱出した椎間板が脊柱管を圧迫するだけなら、

時間経過するとむしろ吸収され圧迫の程度は軽減する可能性はあります。・・・・・・・・が、

肥厚し硬くなっってしまった黄色靱帯、硬く肥厚した骨、骨棘、変性・変化した椎間関節面などは、

時間経過と共にむしろ変性変化肥厚は進行し、圧迫作用は更に進行する可能性が大きいでしょう。

ここが大きな違いで、ヘルニアは時間経過と共に吸収され減少する可能性は大きいが、

硬く肥厚した骨、骨棘、黄色靱帯などはむしろ時間経過と共に増大・肥大する可能が

大きい。

加齢による退行性変化とともに進行する可能性が大きいですね。

そしてその変化した部位によって馬尾型、神経根型、混合型と分類されます。

脊柱管狭窄の馬尾型の人、混合型の人達が発症5年後という加齢あるいは時間経過とともに

30%の人達が手術に至るという理由は納得できます。

それでも30%という見方もできますが、10年後はどうなるのか分かりません。

注意深く観察する必要がありますね。


まとめます。

脊柱管狭窄によって初期には限局性伝導障害であるneumapraxiaであっても、加齢や

時間経過と共に大きく圧迫された部位の神経障害部より末梢に変性が進み神経線維が

細小化されaxonocachexiaの状態に発展する可能性は大きいでしょう。

そして時間経過と共に更に狭小化し悪化すれば神経の回復は難しくなるでしょう。

それが、馬尾症候として現れ始めたときだとおもっています。注意すべきです。


以上のように脊柱管狭窄は腰腰部椎間板ヘルニアと別の疾患と考えた方が臨床的?

しかも侵される神経は末梢神経ではなく脊髄という中枢神経です。

不可逆性が大きいですね。

脊柱管狭窄症と腰部椎間板ヘルニアとは同列に考えることは危険ですね。

実際に脊柱管狭窄症と診断された場合は簡単に治る?とはいえないでしょう。

ただし、単純に画像診断により腰部椎間板ヘルニアが脊柱管を狭窄しているので

脊柱管狭窄症と診断するのもいたずらに患者さんを不安に陥れます。

せっかく、MRIやCT、X線で詳しく画像診断していますので詳しい診断を伝える必要が

あると思います。

せめて馬尾型、神経根型、混合型を伝え将来に備える必要があります。



腰椎ヘルニアは、運動・感覚障害がなければそれほど心配は無いでしょう。

むしろ、腰椎ヘルニアの手術により除圧目的で椎弓の切除や固定術の数年後に

脊柱管狭窄症を発症する危険性もあるのです。

腰椎椎間板ヘルニアで安易に手術するのはリスクが伴うことも理解すべきです。

どういうわけか、腰椎椎間板ヘルニアの手術は頸椎ヘルニアの手術は非常に比較すると

比較的安易に実施されているようです。

そして実際に再手術も多くおこなわれています。


腰椎脊柱管狭窄は腰部椎間板ヘルニアとは全く別の疾患だと思います。

単純にヘルニアが脊柱管を圧迫されているため同列の疾患と考えることは無理があるし

大変危険です。


一方、腰椎椎間板ヘルニアは、様々な疑問点を述べましたように脱出した椎間板があるだけで

基本的には腰痛症と同列の疾患と考えた方が臨床的?

全く別の疾患あるいは異質な疾患と考える方が無理があるのでは?



touyou8syok9 at 23:00|PermalinkComments(0) 腰痛 | 特異的腰痛

2018年11月08日

腰痛(57)

特異的腰痛の問題

神経損傷の種類

axonostenosis型の障害のentrapment neuropathyとは?

腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄と関連性があるのでしょうか?

整形では、腰椎椎間板ヘルニアや変形性脊椎症による脊髄神経根症状は

entrapment neropathyではない。・・・・・となっているのですが・・・・・・・・


entrapment neuropathyとは? 

entrapment(ワナにかける)neuropathyとは、末梢神経がその経路中の特定部位で

周囲組織によって圧迫、絞扼された状態になって局所障害をおこし、その結果

神経障害を起こします。 直訳すると絞扼神経障害 です。


因みに腰部椎間板ヘルニアの実験、実証(エビデンス?)では

犬の神経根に無理矢理に輪っかをはめ締め込んだり、硬膜外腔に異物を挿入したり・・・・・・と、

どこが違うの?


それはともかく、entrapment neuropathyは、末梢神経が靱帯や筋膜、腱などによって

囲まれた間隙あるいは骨と靱帯によって形成されたトンネルなどを通過する部位で

絞扼されることによっておこるとされています。

要するに、末梢神経が通る部位のトンネルやが狭くなるために引き起こされる。

あるいは日常生活による動作により絞扼される部位の機械的刺激によってもおこる。


神経損傷があるとはいえ、神経の軸索や髄鞘の限局性の変性あるいは内神経神経鞘は

無事で離断されず周囲を完全に包んでいる状態で再生していくため回復するとされています。


entrapment neuropathyの症状

 神経痛、知覚障害、運動障害であるが、多くは痛みが主になります。

 痛みは神経の利患部よりも末梢部に放散するが、時には中枢側への伝達痛もある

 知覚障害としては、自覚的なシビレ感のほかに末梢部の知覚鈍麻を認める

 運動障害は軽度であって、筋力の減退や筋萎縮を認めることがある。

腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄がヘルニアによる神を圧迫が原因とすると

神経損傷の種類においてはSeddonによる前回の1,局在性伝導障害(neurapraxiaと)と

今回のBauwens、Pによるaxonostenosis型のentrapment neuropathyが、

非常によく似ている?


整形では、腰椎椎間板ヘルニアあるいは腰部脊柱管狭窄による馬尾症状とは違う。・・・・・

鑑別が必要とされており、明らかに一線がひかれています。

でも、原因や症状は非常に類似していますね。


<代表的な疾患>

上肢におけるentrapment neuropathy

 手根管症候群

 尺骨管症候群

 肘管症候群

 橈骨神経のentrapment neuropathy

下肢におけるentrapment neuropathy

 モートン病

 足根管症候群

 総腓骨神経のentrapment neuropathy

 伏在神経のentrapment neuropathy

<治療>

  薬物は、抗炎症鎮痛剤、ステロイド、ビタミン剤

  あまり鎮痛補助剤は使用されていないようです。

  無効の場合は、最終的に手術となっています

いかがでしょうか?

病態と治療法は腰椎椎間板ヘルニアと非常に似ています。

治療のヒントが見つけられないでしょうか?


さて頚肩腕症候群も腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄と類似していますね。

頚肩腕症候群

 頚椎症・・・・・・・頸椎の変形性脊椎症および椎間板ヘルニア
 
 胸郭出口症候群・・・・・・斜角筋症候群、肋鎖症候群

 頸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)


頚椎症の頚部椎間板ヘルニアと腰部椎間板ヘルニア

頸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)と腰部脊柱管狭窄

胸郭出口症候群とentrapment neuropathy

非常に類似しています。

次回に






touyou8syok9 at 23:00|PermalinkComments(0) 腰痛 | 特異的腰痛