2011年07月14日

肩関節(94)

○肩関節

前鋸筋

肩甲骨の安定化の異常は肩関節の運動の破たんにつながります。

前回は、長胸神経麻痺による前鋸筋の筋力低下による翼状肩甲および

副神経麻痺による僧帽筋の筋力低下による翼状肩甲の症状を述べました。


このように、文献では有名な翼状肩甲ですが、実地臨床の場においては、

長胸神経麻痺による翼状肩甲は比較的スポーツなどが原因で神経が繰り返し引き延ばされたり、

この神経の走行は深い部位を走行するために絞扼性神経障害をおこし、

その結果麻痺をおこすためといわれています。

その神経走行のため胸郭出口症候群を合併する場合も多いとされています。

つまり、本当の意味での神経損傷ではないですね。

実際、

長胸神経は深い部位に存在し、単独で損傷するには、事故などによる直接的な原因が必要とされています。


一方、副神経麻痺による僧帽筋麻痺における翼状肩甲の場合は、

副神経麻痺は脳神経の第11に属しますが、脳幹に連絡していないが、高位頸髄から出る

脊髄神経であるのですが、大後頭孔頭蓋内に入って頚静脈孔から外にでるため脳神経の一つとされています。

そのため頚部リンパ節の生検や脳腫瘍の手術後などが原因でひきおこる場合が多いとされています。


以上のように、

私どものような巷の施術者のもとには、長胸神経、副神経が直接的に傷害され損傷し

神経麻痺をおこし翼状肩甲を呈することはめったに遭遇することはありません。


ただ単に、翼状肩甲を呈する場合は多いように思います。


前鋸筋と僧帽筋の問題としてとらえると、

前鋸筋の作用は肩甲骨の外転です。

僧帽筋は全体として肩甲骨を内転させます。

このバランスが重要ですね。両筋は拮抗筋ともいえます。

腕立て伏せの場合などは、この僧帽筋の中部線維の内転力と前鋸筋のb線維の外転力が同時に収縮し

肩甲骨を胸郭に対して正しい位置に固定しています。


前鋸筋の筋力が落ちれば、当然翼状肩甲が出現します。


反対に前鋸筋の短縮・筋スパスムがあれば、肩甲骨が外転・下制します。

そして、僧帽筋の下部線維、中部線維の筋力低下があれば(この線維は非常に筋力低下しやすい)

肩甲骨が益々外転下制し、あたかも肩甲骨の内側縁が薄っぺらになって浮いたようになります。

一般に多くみられるのがこのタイプです。

通常そのような人の肩甲骨の多くは外転位・下制を呈してしまっています。

その結果は上腕骨が内旋してしまいます。

上腕骨が内旋位になれば当然挙上時に様々な障害がおこります。

上腕骨の内旋位は大胸筋、小胸筋あるいは広背筋の短縮位も問題になるでしょう。

しかも大胸筋、広背筋は肩甲骨を下制する作用も大きいので注意が必要です。

ここで注意するべきことは、

翼状肩甲のある側が必ずしも患側では無いという事です。

利き腕にむしろ翼状肩甲が多く、痛みなどで使用しない患側の肩甲骨側が正常である場合もあるのです。

このあたりが肩の臨床が難しいところですし、面白いところです。


肩関節そのものが複合関節であり、しかも体幹も含めて総合的な診断力が必要な由縁です。



touyou8syok9 at 21:19│Comments(3)TrackBack(0) 肩関節 

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この記事へのコメント

1. Posted by yuto   2011年07月21日 22:46
少し気になった事があったので、質問させてください。
なぜ大胸筋は肩甲骨を下制させる働きを持っているのでしょうか?

大胸筋は体の前面(鎖骨・胸骨)から上腕骨の大結節に付着していますが、肩甲帯には付着していません。肩関節の屈曲に伴い、肩甲帯が下制する働きの事を言っているのでしょうか。

回答して頂けるとありがたいです。
急な質問失礼しました。
2. Posted by 作者   2011年07月22日 19:24
Posted by yuto 様 コメントありがとうございました。

ご指摘の通りです。 誤解を与えたこと申し訳ありませんでした。

大胸筋は、鎖骨部、胸骨部、腹部からの3つの線維から成り上腕骨の大結節稜に停止します。

広背筋は特別に線維部を分けていませんが、胸腰筋膜の浅葉、下位4〜8の胸椎棘突起、全腰・仙椎 の棘突起、腸骨稜、下位3〜4肋骨、肩甲骨下角から上腕骨の小結節稜に停止します。

これらの筋は、ご指摘の通り直接的には肩甲骨の動きには関与しません。

どちらも大きな筋であり、加えて筋の長さも長いため力のモーメントが強いために肩関節にあたえる影響は非常に大きく重要な筋であります。

肩甲骨を下制と言う言葉は、これらの筋の短縮あるいは緊張が伴うと肩関節屈曲時の肩甲骨の挙上を非常に制限するという意味で書いたものです。

Posted by yuto 様のご指摘の通りです。非常に大きな誤解を与えたことお詫び申し上げます。

付け加えるならば、

大胸筋の鎖骨部の短縮は、上腕骨を内旋・内転させ肩甲骨を外転変位にしてしまいます。

胸骨部・腹部の短縮は上腕骨を下方に牽引し肩甲骨を下方回旋する結果になります。

全体として肩の前方変位になってしまい相対的に肩甲骨が下方回旋、外転、やや下制という結果になります。

大胸筋は直接的に肩甲骨を動かすわけではありませんが相対的のこのような結果が生じてしまいます。

加えて、大胸筋・広背筋の短縮あるいは緊張は肩関節内旋位から外旋位に移行する際の障害になる影響も非常に大きい。

ご指摘ありがとうございました。


3. Posted by yuto   2011年07月23日 00:32
ご回答・ご説明ありがとうございます。
分かりやすい説明で理解する事が出来ました。

また私の運動学・解剖学についての知識不足で申し訳ありませんでした。
とても勉強になり興味深いブログなので、また読ませてください。

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