2008年04月18日

筋・軟部組織の治癒過程(次


○腱の治癒過程(4)

 腱自体に再生修復作用があるかどうか、様々な意見があります。
 まあ、それはともかくとして、

腱が損傷すると、

第一段階
 腱鞘組織(パラテノン)あるいは腱鞘からの前駆細胞から線維芽細胞を増殖し、(3〜4週間)
 3〜4週で、筋の牽引力を伝えるための抗張力が強くなります。
 その後は、膠原組織(コラーゲン線維)をつくり欠損部に着床します。
 5〜6週でほぼ癒合しますが、当然正常の腱組織ではなく瘢痕組織です。
 6〜8週以降は、
 膠原繊維が腱の部をその走行に沿って縦に並び、
 周囲は横の方向に並び腱鞘様組織になっていきます。
 このような過程を経て、腱の癒合と腱の滑走性が出てきます。
 そして、仮腱と呼ばれる腱になるまでには、なんと約5ヶ月間かかります。

第二段階
 ここからは、、運動を負荷していくと再修正されていきます。
 新しい膠原繊維が本来の引っ張られる方向に均一で平行な配列に変わっていきます。
 完成されるには、なんと約3年を要するといわれています。

運動がなぜ必要か?
 線維性組織には、線維方向に伸張が加わると肥大・成長する原則があります。
 有効刺激が反復して加わると、腱内および腱周囲の細胞に対するシグナルとなり、
 コラーゲンを追加する働きがおこり腱の横断面積が大きくなります。
 その結果、腱は、引っ張り強度が増します。
 肥大すればするほど伸張刺激も強くしなければ有効刺激として働きません。
 丈夫な腱に成長するためには適当な有効な引っ張り刺激が必要です。
 裏返せば、癒合直後の伸張刺激は、わずかで良い。

腱の入れ替わり
 自然の状態では1年で約5%と非常にゆっくりと新しい線維と変換されています。
 大部分が目に見えない微細損傷の修復過程として入れ替わっています。

腱の治癒で重要なことは
 腱が癒合しても周囲と癒着していまって動かなければ、腱の作用のエネルギーの伝達作用が
 なくなるわけですから、意味がありません。
 何度も繰り返しますが、
 腱が癒合し、抗張力を残し、周囲組織との癒着を防ぎながら滑走性を残す。
 という相反する治癒機転を考慮しなければなりせん。


運動開始の時期
 手術後の縫合の運動の開始の目安は抗張力が強くなる3週が一応の目安になります。
 ギプス固定後の運動開始時期も3週間〜6週以降が一つの目安になります。
 腱周囲の損傷程度とそのための瘢痕化と抗張力の回復と関節の拘縮の問題を常に
 考慮して運動療法をしなければなりません。
 本当に充分な負荷をかけていいのは、5ヶ月以降になりますね。
 アキレス腱断裂後の運動では運動開始時に再断裂する場合が多いので注意。
 

 皆さんが、過度な安静、過度な負荷、過度な回数、過度な可動域訓練にならないように、
 治癒過程を知る事は非常に重要です。



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2008年04月15日

筋・軟部組織の治癒過程(察

○腱の治癒過程(3)

<腱の構造>
 
 腱のほとんどが線維性組織から成り立ち、組織の基本は膠原繊維です。

 腱は膠原組織の密な集合体である腱原線維から成り立っており、牽引力のかかる方向に
 平行に配列されています。
 
 この腱原線維と腱細胞が腱線維を形成しています。
 腱線維の集合体がいわゆる腱と呼ばれています。
 一つの腱線維の周囲は内腱鞘で被われ、線維間には血管があり腱を栄養する。

 これらの多数の腱線維が緻密に平行に走って、一次腱束を形成する。
 この一次腱束は結合組織に被われお互いに隔てられています。→外腱鞘
 この隔てる隔壁のなかを神経や血管が走っています。→腱鞘間膜
 一次健束が多数集まって二次健束を形成する。
 これらの腱束はそれぞれ内・外腱周膜に被われる。
 
 最終の健束すなわち「腱」はさらに腱傍組織に被われる。
 この腱傍組織(パラテノン)は腱を保護し、腱の滑りを良くする働きを持つ。
 
 腱傍組織(パラテノン)は外腱鞘を包む粗い組織で、腱構造には属さない。
 この腱傍組織は鞘になっており全長にみられるが、屈曲するところのみにある腱もあります。
 また、腱が特に強い摩擦にさらされる所では、前回のべたような特別な構造を持った
 付属器官が存在しています。
 たとえば、
 指屈筋腱などで腱鞘が腱周囲を被っているトンネル部分は、腱傍組織がなく腱は滑液による
 潤滑機構を有しています。同じようにトンネル部では腱鞘間膜もなく代わりに、索状の組織が 腱に付着しています。血行の豊かな腱鞘間膜の代わりを果たしています。

 この腱傍組織(パラテノン)は腱の血行と滑走に大切な構造です。
 つまり、治癒過程にも腱の作用に果たす重要な役割を果たすわけですね。

<腱の血行>

 ○腱の血行は、長い腱では両端よりそれぞれ三分の一までは起始部、停止部より
  血行があるが、この血行は中の三分の一の栄養はできません。
 
 ○中の三分の一は、腱鞘間膜および索状の組織が血行を確保します。
 
 ○腱傍組織を有する腱は非常に血行に富んでいるが、腱鞘内の血行は粗く
  索状の組織による血行が重要になっています。
 

今回はここまで、少しわかりづらかった?でしょうか?

 腱の治癒過程で重要なことは、筋の牽引力を伝える強い抗張力と滑走性という機能が
 同時に必要になります。
 
 腱自体が損傷や傷害を受けた際は、腱が癒合しながら、且つ周囲組織との癒着を防止し、
 滑走機能を残す。という相反する修復過程が必要になります
 腱が癒合しても周囲と癒着していまって動かなければ意味がありません。
 腱の大きな作用である、筋肉からのエネルギーを伝達し、目的とする動作ができなくなる
 わけですから、非常に重要になるわけですね。
 
 そのために少し構造が特殊的であり、修復過程には血行が重要なために、あえて腱の構造を
 詳しく述べてみました。


 

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2008年04月11日

筋・軟部組織の治癒過程(此

○腱の治癒過程(2)

知ってるようで知らない腱

治癒過程までもう少し「腱」についての説明です。臨床的にも重要です。

 ○筋がエネルギーを産出させ、、腱はそのエネルギーを伝達させることが主なる目的です。
  エネルギーを効率よく確実に安全に伝達するために、腱自体は次の作用を持つ。
   1、筋の収縮を骨・筋・皮膚に伝えるために、腱自体が緊張することでその目的を果たす。
   2、腱自体は強い抗張力と滑走性をもちこれが柔軟性とも関連し、保護作用も備えている
   3、ゴルジ器官という筋収縮抑制機構をもつ。
  以上が前回の復習ですね。

腱自体の構造と治癒過程の説明にはいる前に、
今回は、腱がエネルギーを伝達する際に臨床で知ってほしい事の説明です。

 腱が力を伝達し目的の動作をするとき、どうしても腱が周囲組織の間を動く必要が生じます。
 そのために、周囲の組織、筋・腱・骨に接する部分に大きな抵抗と摩擦が生じます。
 腱や周囲組織の抵抗と摩擦による組織の炎症や損傷や力の伝達の損失を防ぐために、
 腱付属の器官の助けが必要になります。
 
<腱付属の器官>

1、滑液包
 潤滑に必要な粘りのある滑液を適量にいれる小さな袋状の器官です。
 薄い膜(滑膜)から成り、その膜の中身は空虚でへしゃがています。
 滑液は滑膜から生成されています。
 
 筋または腱と骨との間にある結合組織の包で滑膜に被われ,その中に粘液様の滑液を入れる
 擦れあう内面を滑液が潤滑し、腱の動きにともない滑液包は変形しながら損傷を予防します。
 関節腔と交通するだけでなく多数の腔に分かれることがある
 存在される場所により、皮下滑液包、筋下滑液包、腱下滑液包など
 典型的な例は、前膝蓋滑液包、膝蓋上滑液包、鵞足滑液包など。
 肩の傷害では肩甲下滑液包、上腕二頭筋長頭腱滑液包もよく炎症をおこします。
 肩甲骨の内上角滑液包・下角滑液包などの炎症は「肩こり」とよく間違えられます。
 
滑液包は関節のいたるところに存在しており炎症がおこりやすく、傷害も多く、臨床では重要です
力任せの粗雑、乱暴な手技により、炎症させる場合も多く注意が必要です。

2、腱鞘
 筋膜に由来する線維性の半管状の嚢で、骨に付着し、腱を通しこれに滑動性を与える。
 
 これは管状滑液包ともいわれています。
 滑液包と同じ性質の器官です。
 
 形状は、大雑把には、・・・・・・・・・・以下は、想像してみてください。
 管という名前のとおり、小さなマカロニのような管状になった状態の側面に切れ目を入れ、
 その切れ目側を骨の上に置いたような形状をしています。
 その小さなマカロニの内面と外面の間に少量の滑液が入る鞘状構造を形成しています。
 マカロニの内面を、腱が通りマカロニの切れ目に腱間膜があり外面の外側が腱線維鞘です。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上、こんな形を想像していただければ良いと思います。
 
 内面の層を腱の滑液鞘といい、滑膜と同様の性状をもつ。
 滑液鞘は腱に直接触れる部分と、反転してそれにつづく外側を被う部分があります。
 両部分の間に少量の滑液が入っています。
 
 滑液鞘の外層は腱の線維鞘といいます。反転した部分の外側になります。
 線維性結合組織からなり、滑液鞘内・外層の移行部からは腱間膜または長い腱の紐がでて 骨に付着し、血管・神経を導きます。
 滑液鞘は往々にしてこれら全体を支える強い鞘状靭帯によって包まれます。
 典型的な例は指の屈筋腱などです。
 臨床的には狭窄性腱鞘炎のデベルバン病や
        手指屈筋腱の限局性肥厚による、ばね指などが特に有名ですね。

3、筋滑車
 腱が急に曲がっている場所へ固定し、且つ動きやすくするための繊維性の輪で、腱側の面は
 軟骨に被われることが多い。
 典型的な例は、外眼筋の上斜筋
 
4、腱弓
 筋の起始あるいは付着が弓状の腱索となり、その凹下側を血管、神経などが通る。
 典型的な例は、ひらめ筋腱弓

5、種子骨
 腱付着部付近で腱の中に入っている小骨片のことです。
 腱が骨の突出部上を通り、、かつ旺に移動する場所で摩擦抵抗を減らすため、また、
 テコの原理により力のモーメントを大きくするために発生したもの。
 骨化することなく軟骨片からできるときは、種子軟骨という。
 典型的な例は、膝関節の膝蓋骨です。
 

腱の構造と治癒過程は次回に。



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2008年04月09日

筋・軟部組織の治癒過程(后

○腱の治癒過程(1)

知っているようで知らない腱について

皆さんも、スジ=関節の周囲→靭帯・腱・筋という感覚をお持ちだと思います。

よく似た靭帯は説明しましたね。簡単に復習すると、

関節靭帯は、
 関節運動の激しいところの関節包の線維膜の一部に発生した特に強靭な結合線維です。
 時に弾性繊維を含む靭帯を副靭帯、副靭帯が両側にあると側副靭帯という。
靭帯の作用は、
 骨と骨を結合させ、骨格機構の安定させ、関節運動を一定の枠内に制限し方向性を与える
靭帯の配列は
靭帯は、張力にかかる方向の他の方向にも少しの張力を受けるので、線維が交叉している。

本題の腱は、

腱は解剖学的には筋の補助装置とされています。
 
 筋は自らが伸びたり縮んだりする作用をもち、骨格筋の筋線維は随意筋です。
 しかし、腱自体は筋のように自ら伸びたり縮んだりすることはできません。

 つまり、筋はエネルギーを生産し、、腱はそのエネルギーを伝える役目をしています。
 
 筋の両端が腱となり骨あるいは靭帯、皮膚などにつきます。
 腱の形状は基本的には索状ですが、筋の形により様々な形状を持ちます。
 筋の形状から、骨だけでなく二腹筋のように筋腹と筋腹と連結する中間腱や
 多腹筋(腹直筋)のように多数の筋腹をもち、これらが腱束によって腱画をつくっている。

腱の作用は、

 1、筋の収縮を骨に伝える作用が主となり、腱が緊張することでその目的を果たす。
   このため膠原繊維の配列に多少の違いがあります。

 2、筋収縮による牽引力を伝ええるために強い抗張力をもつ。一方では、
   筋収縮に対する牽引力に滑走する事ができるという作用機能を持つ。
   これは柔軟性とも関連し、保護作用も備える
   
   健束は張りつめた状態ではなく、波状の小さなうねりを呈して、ゆとりを持つ。
   そのために、急激な運動のストレスが加わってもある程度の弾力をもち腱の損傷を防ぐ。
   またこの弾力が戻る力によって筋力が補われる。
   硬い組織である骨に対しても保護機転が働くことになります。
 
 3、特殊な抑制作用がありこれも損傷防止に作用する。
   腱は力学的な負荷に対する特殊神経終末と疼痛神経線維をもつ。
   これらは中枢神経と連絡して安全機構として働く。
   筋収縮→腱のゴルジ器官→?b線維→脊髄後根→脊髄後角の抑制性介在ニューロン
   →脊髄前角に在る運動神経に伝えられその動きを抑えます。
   その結果、引っ張られている筋の動きを抑え、それ以上に引っ張れないようにして、腱損傷   を防ぐ。

腱の配列は、

 腱は張力が一定しているので、線維は規則正しく平行に配列いて腱の働きに備えている。
 健束は張りつめた状態ではなく、波状の小さなうねりを呈して、ゆとりを持つ。

構造
 以上の作用を保持するために腱の構造は少し特殊的であるます。
 靭帯とはかなり異なっています。
 今回はここまでとします。
 治癒過程から少し遠ざかりましたが治癒過程で覚えておいて損はありません。




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