腱板疎部

2010年12月13日

肩関節(55)

肩関節

腱板疎部

腱板疎部損傷の臨床症状は?

肩関節が可動域の制限をおこす拘縮型あるいは不安定型の二種類に分類される。

1.不安定型

 不安定型は若年層(平均23歳)に多発する。

 主な訴えは疼痛で90%以上にみられる。
 
 安静時痛よりむしろ外転・外旋位の運動時痛を訴える。

 圧痛は90%以上にあり、腱板疎部の著明な圧痛であるが、その部位は烏口突起の一横指外側にある。

 この他の訴えには、

 肩のだるさや肩から上肢にかけてのしびれ感など肩の不安定性に起因する訴えが多い。

 他覚的には肩関節の下方へのゆるみすなわちlooseningが80%に認められる。

 loosening slipping現象は肩関節の内旋位のみにみられ、外旋位では消失する。

2. 拘縮型

 拘縮型は主として年齢層が比較的高い(平均35歳)、

 肩関節の挙上、外旋の可動域制限と運動時に疼痛が主訴となっている。

 などが特徴的であるとされています。


いかがでしょうか?

腱板疎部はこのように拘縮と不安定という相反する病態をおこす部位です。

理由は今まで解剖学的にも述べています。


このように腱板疎部の損傷は腱板周囲の組織つまり肩甲下筋や棘上筋の不均衡のみならず、
鳥口上腕靭帯を含めた関節包や関節上靭帯や滑液包炎あるいは上腕頭筋長頭などに影響を与え、

腱板の血行障害や加齢による変化あるいは関節包内圧の変化なども加わり、

不安定肩(loose shoulder)や50肩・40肩に代表される凍結肩(frozen shoulder)にいたり、

肩甲帯の機能不全にも影響を与え様々な肩関節周囲の疾患に発展することは想像される。


ちなみに肩関節の第一人者と言われる信原氏の肩関節周囲炎の分類と頻度では

 1)烏口突起炎(5%)
 2)上腕二頭筋腱炎(12%)
 3)肩峰下滑液包炎(2%)
 4)変性性腱板炎(外傷性腱板炎・腱板不全断裂)(41%)
 5)石灰沈着性腱板炎(4%)
 6)臼蓋上腕靭帯障害(不安定肩関節症)(3%)
 7)いわゆる「五十肩」(疼痛性関節制動症)(25%)
 8)肩関節拘縮(外傷後など)(8%)
となっています。

本当にこの腱板疎部周囲は非常に臨床に重要です。

 

touyou8syok9 at 20:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年12月09日

肩関節(54)

肩関節

腱板疎部

○腱板疎部の周囲の滑液包

 肩関節における三大滑液包が存在しています。

 肩甲下滑液包、上腕二頭筋腱滑液包、肩甲下滑液包の三つの滑液包です。

 肩甲上腕関節の関節包と交通している滑液包には、

 上腕二頭筋腱滑液包と肩甲下滑液包との二つが存在しています。

 
1、上腕二頭筋長頭腱滑液包

 結節間溝滑液包鞘を通じて直接関節腔とつながっています。

 上腕二頭筋長頭腱が結節間溝を通る部分を鞘状に包んでいる。

 この結節間溝では、棘上筋と肩甲下筋の線維が結合していると報告されている。

 また滑液鞘は結節間溝の下端で閉鎖性に終って二頭筋腱の表面に移って終わる。

2、肩甲下滑液包
 
 烏口突起の基部で肩甲下筋の腱の下にあり、上・中関節上腕靭帯の間にある

 Weitbrecht孔を介して関節包と交通しています。


もうひとつ臨床で問題になるのが、

3、肩峰下滑液包です。

 肩峰下滑液包の上面の一部は、三角筋下面の筋膜、肩峰下面、烏口肩峰靭帯、

 肩鎖関節下面の関節包と一体になっています。

 そして、肩峰下滑液包の下面の一部は、腱板表層に密着し一体となっています。

 肩峰下滑液包、三角筋下滑液包、鳥口下滑液包(個々の滑液包か一つの滑液包かの定説はない)が、

 腱板と肩峰ー三角筋アーチの狭い空間に滑液包が十分に広がることは、肩の機能関節としての
 重要な第2肩関節の動きを滑らかにすることになる。


肩峰下滑液包における肩の第二関節としての動き

 肩関節外転挙上時(三角筋および腱板収縮時)には、

 肩峰下滑液包はその包の形のまま肩峰下を移動するのではなく、
 肩峰下滑液包の上面と下面の線維性結合部を中心キャタピラを転がすように滑動し、
 肩峰下滑液包の前面と後面は三角筋の前と後方の線維によって肩峰の下に
 折り畳まれる様に引き込まれる。

 肩甲上腕関節の運動が円滑に行われるには肩峰下滑液包の機能は重要です。
 
 肩峰下滑液包の肥厚や内腔縮小などの障害は、

 可動域低下と密接に関係し、弾発肩の弾発音やインピンジメントなどの原因となっています。


回旋筋である肩甲下筋の説明から、腱板疎部のお話になり思わぬ方向に移りました。

それは、

腱板疎部が棘上筋と肩甲下筋との間の薄い膜様の構造である解剖学的弱点であり

腱板の上には烏口上腕靭帯が存在し、烏口上腕靭帯が烏口突起から腱板疎部を通り

大結節及び小結節に付着しており、その付着部は棘上筋を取り囲むように付着して

腱板と関節包の間にまで線維を伸展させ、棘上筋前縁と滑液包面を補強しています。


加えて腱板の下には、上腕二頭筋長頭腱が存在し結節間溝においては棘上筋と肩甲下筋の

線維が結合してます。


そして、腱板疎部周囲には肩甲上腕関節にの運動に重要な役目を果たしている

滑液包まで話が進んで行きました。


この腱板疎部周囲の解剖や機能を十分に知ることは、肩関節の臨床においては

非常に重要なことだと思っています。

もうすこし続けます。




touyou8syok9 at 21:19|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年12月06日

肩関節(53)

肩関節

腱板疎部における注目すべき機能

○上腕二頭筋長頭

 上腕二頭筋は上腕の筋としてポパイの力コブの筋肉である屈筋として有名ですね。
 
 すでに述べたように、

 上腕二頭筋長頭は肩甲骨関節結節、上方関節唇を起始として、

 関節包内で鳥口上腕靭帯の下方で棘上筋と肩甲下筋の間である腱板疎部を走行し、

 上腕骨の結節間溝中に入り結節間滑液鞘に包まれ関節腔を出て筋腹に移行します。

 一方の短頭は、肩甲骨の鳥口突起からおこり下方に走り筋腹に移行し、

 長頭・短頭が合して、紡錘形の筋腹をなし、強い腱となって前腕の橈骨粗面に付着します。

長頭は前腕を外転し、短頭は前腕を内転します。
この筋が全体として働くときは、前腕を屈曲しかつ回外します。
 
非常に大きく力もあり、簡単に表層から触れることができるのでアウターマッスルのように見える筋肉です。


しかし、腱板疎部周囲における上腕二頭筋長頭はインナーマッスルとして作用します

上腕二頭筋長頭の機能

 ○上腕二頭筋長頭腱は結節間溝に位置するために、上腕頭を内旋時、外旋時にも安定させ、

  挙上時にも上腕骨頭の上方への移動も防ぐ役目を持っています。

 ○棘上筋腱と肩甲下筋腱の腱板による支持の不足している(関節包の上関節上腕靭帯を含めて)
  腱板疎部という弱点部を補強している。

  いいかえれば、

  上腕二頭筋長頭筋腱は鳥口上腕靭帯、前・下方から上関節上腕靭帯によって包みこまれている。

 ○上腕二頭筋長頭腱は、肩甲上腕関節の外旋位、内転位で結節間溝内を近位に滑走する。

  結局、長頭筋の緊張は高くなる

  また、内旋位、外転位では遠位に滑走するので緊張は低下する。

  上腕二頭筋腱は外旋、内転方向において緊張する。

  長頭筋腱による骨頭の安定化は肩関節外旋位で最も効果が高まる。

 この長頭筋腱の緊張は上腕骨頭の求心性を高めている。

 ○上腕二頭筋長頭腱は、上方関節唇を持ち上げることで、骨頭の上方移動を抑え、

  安定化を高めている。


上腕骨頭が肩甲骨関節窩における回転の軌跡が破綻すると、

上腕二頭筋腱長頭の不安定性や亜脱臼が生じ、炎症が起こる可能性が十分考えられる。


また、上腕二頭筋長頭による強力な牽引力や骨頭による剪断力によって、肩上方関節唇損傷

(SLAP lesion superior labrom anterior to posterior lesion)は有名です。

ヤーガソンテスト(Yergason test)も有名です。


このような結果、

上腕二頭筋長頭腱の安定性と腱板疎部の機能不全は密接にかかわるとされています。




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2010年12月02日

肩関節(52)

肩関節

腱板疎部における注目すべき機能

○鳥口上腕靭帯

 肩甲上腕関節の上腕の下垂位の外旋、伸展制限として働いている。
 
 下垂位外旋で強く緊張する。
 腱板疎部は前後方向で狭くなり、骨頭の安定化に役立つ。

 反対の内旋では鳥口上腕靭帯は弛緩する。
 腱板疎部は前後に拡大する。

これらの性質を利用した理学的検査があります。

 肩関節不安定テスト

 内旋により腱板疎部および鳥口上腕靭帯が弛緩
 肩内旋位下方牽引を加えると骨頭の下方への不安定性が出現
 しかし、
 肩外旋位では腱板疎および鳥口靭帯が緊張し下方不安定性は現れない。

 もし、
 下方不安定肩において、外旋位に不安定性をしめすSulcus sign(サルカスサイン)が
 見られる場合は鳥口上腕靭帯を含めた前上方組織の弛緩を疑う

  ※Sulcus sign(サルカスサイン)
    肩関節を下垂位にして、上腕を把握し下方へ牽引を加える。
    この時に肩峰と上腕骨頭の間に陥没を認めると陽性とする。
    肩関節内旋位、中間位、外旋位の3種類の肢位で比較する。

このように

腱板疎部を構成している鳥口上腕靭帯は、鳥口突起から上腕骨に付着する唯一の靭帯であり、
肩甲上腕関節の求心性の安定化および運動制限に関わっている。

肩の関節上腕靭帯が関節包と一体化して、肩甲上腕関節を安定させ、および運動制限に関わる靭帯であるならば、

この鳥口上腕靭帯も求心性による安定化および運動制限因子として重要な機能を持つ。

そして烏口突起上腕靭帯の下層には棘上筋腱部が重なるようにひっついており、

肩甲下筋腱との間には関節包・滑膜が介在している。

この構造が機能的には棘上筋腱と肩甲下筋腱の走行の作用の違いを緩衡して、

上肢挙上・回旋運動を円滑にしていると考えられている。


次回は腱板疎部の上腕二頭筋長頭





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2010年11月29日

肩関節(51)

肩関節

肩甲下筋の周囲はなぜ?解剖学的に非常に厄介なのでしょう?


腱板の弱点である腱板疎部

腱板疎部とは? 何度も聞く名称ですね。
もう一度良く観察してみましょう。

腱板疎部とは?

鳥口突起の外側で棘上筋腱と肩甲下筋腱との間隙部をいう。

薄い滑膜に裏打ちされた関節包と結合組織からなる解剖学的に抵抗減弱部位とされています。


図があればすぐ理解できるのですが・・・・(スイマセン)

復習をかねて腱板疎部の周囲を観察してみましょう。

肩甲上腕関節は肩甲骨と上腕骨は関節包に包まれる滑膜性の関節です。

関節包の外層の線維膜と腱板とが一体化して、肩甲上腕関節が補強されている。
肩甲骨と上腕骨の関節包の上層の上面には棘上筋腱、前面には肩甲下筋腱があります。

 ○棘上筋:肩甲骨棘上窩、棘上筋膜から、上腕骨の大結節、関節包に付く。

 ○肩甲下筋:肩甲骨肋骨面の肩甲下窩から上腕骨の小結節、小結節稜、肩関節包に付く。

この様に関節包と回旋筋腱板が一体化しています。


関節包は、腱板だけではなく靭帯および筋の腱によっても補強されています。

関節包の上方の補強には鳥口上腕靭帯、上腕二頭筋長頭腱が存在しています。

棘上筋腱部の上層には烏口突起上腕靭帯が重なるように引っ付いており、肩甲下筋腱との間には関節包・滑膜が介在している。
肩甲下筋腱との間には関節包・滑膜が介在しています。
この腱板疎部は健常者の約9%に開口が見られると述べている。( DePalma)

 
 ○鳥口上腕靭帯:肩甲骨の烏口突起の外側縁の全長と基部から起こって関節包の上部を被い、
        やがて関節包に癒合し二股になり上腕骨の大結節と小結節に着く。
        関節包の上方面を補強する強い靱帯になります。


大結節と小結節の間が上腕骨の結節間溝の部位になります。

この結節間溝部は横靭帯で補強されて、この結節間溝の中を上腕二頭筋長頭腱が通過します。 

結局、上腕二頭筋長頭腱も関節包を補強します。

 ○上腕二頭筋長頭:肩甲骨の関節上結節からおこり、関節包内で上腕骨頭の上に沿って外側方にいき、
   
    上腕骨の結節間溝は横靭帯で補強された骨線維性のトンネル内を通過します。
    この部分まで結節間溝滑液包鞘と呼ばれる筒状の滑膜に包まれています。
    次いで下方に向かって上腕骨結節間溝中に入り結節間滑液鞘に包まれ
    関節腔を出て筋腹に移行します。

 つまり上腕二頭筋の長頭腱は、

 肩甲上腕関節の関節包内を通過し、結節間溝を通過後に関節包外に出ていくことになります。

 回旋筋腱板を構成する肩甲下筋腱と棘上筋腱の間を貫き、鳥口上腕靭帯の二股に分かれた部分も通過します。

以上の解剖学的な特徴は、腱板疎部周囲におこった損傷などによる炎症は滑液包を

介して容易に波及することとなります。


もう少し腱板疎部周囲も観察してみましょう。

○関節包の前上方の補強には上関節上腕靭帯が存在しています。

 上関節上腕靭帯:関節上腕靭帯の構成する上・中・下の三束の線維束の上束部
 
 関節上腕靭帯は関節包を補強する靭帯です。

 肩甲骨関節唇の上、前、および下部から出て不明瞭な線維束となり、上腕骨の解剖頚に着く。

 肩甲上腕関節の関節包が周囲の筋の腱で補強されている以外の所で、深層の線維の集団で肥厚している部分。

 上にある上束と前壁を斜めに外下方に走る中束との間の前壁外上部は関節包の弱いところとなる。

 この部分も解剖学的に抵抗減弱部位とされています。

肩甲上腕関節の関節包と交通している滑液包には、上腕二頭筋腱滑液包ともう一つ

肩甲下滑液包との二つが存在しています。

肩甲下滑液包は、上・中関節上腕靭帯の間にあるWeitbrecht孔を介して関節包と交通しています。

この肩甲下滑液包は、腱板炎や腱板疎部損傷あるいは肩関節捻挫や打撲といった様々


肩関節疾患によって閉鎖するために、原因疾患にかかわらず運動痛と可動域制限が出現する。


これらが肩甲下筋の周囲が解剖学的に非常に厄介だという一つの理由です。




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