2004年08月11日

理性より感情を優先する中国

日付が古いが、面白い記事があったので紹介する。2000年03月28日 産経東京夕刊「日中歴史問題の不毛 まかり通る中国側の感情論/中国総局長 古森義久 」による。

日本研究学者孫歌氏の「日中戦争 感情と記憶の構図」という論文において、99年四月に中国の国営テレビの人気番組「実話実説」が東氏(*1)とその弁護組織を招き、中国人関係者らを加えて展開した討論の様子を論じている。孫氏はとくに同討論で日本人研究者の水谷尚子氏が東氏の主張はあいまいだとし、中国側の「南京大虐殺で中国人三十万が殺されたことを認めるか」という問いつめに、この討論は東訴訟がテーマだから、と答えを拒んだことを批判している。

 水谷氏は日本女子大から中国人民大学博士課程に留学して中国の抗日戦争史を研究する若手学者で、「実話実説」には招かれて参加した。南京事件については「虐殺があったことは認めるが、三十万という規模の根拠は理解できない」というスタンスである。
  だが孫氏は水谷氏が中国側の南京大虐殺の主張をそのまま認めなかったことは間違いだと断じる。その理由として「南京大虐殺は具体的な歴史事件そのものを意味せず、中国人の感情記憶の最も際立ったシンボルなのだ」と述べ、「『被害者三十万人』という一個の数字に拠(よ)って、中国人は日本人の間の友と敵を確認するからだ」と書く。
 孫氏はつまり「被害者三十万人の南京大虐殺」とは「歴史の客観真実性」よりも「中国人の感情の記憶におけるシンボル」であり、「単に敵と味方を弁別する記号」なのだから、水谷氏は素直に同意すべきだった、というのである。歴史も、こと日中戦争に関しては理性ではなく感情、しかも中国側の感情を最優先させて取り組め、というわけだ。



さて、この孫の主張を、古森は「日中間の歴史認識での絶望的なほど深い断層を指し示す」とし、「日本側の感情にはなんの意味も与えられない。戦争犯罪の被害者を悼む感情は日本側にももちろん存在する。だが東京裁判でA級戦犯を処刑され、南京など中国各地での軍事裁判でBC級戦犯を処刑され、村山富市氏はじめ歴代首相が謝罪を繰り返しても、根拠不明の「南京大虐殺三十万人」説を全面的に受け入れない限り、なお「軍国主義者」とか「非人道的」とか「危険な極右」とムチ打たれ続ける日本側の感情はまったく排されてしまう」、と続ける。

事実より中国の感情を優先せよという孫の主張には、国家間において感情と感情の衝突など何も生み出さないので賛成できないし、中国がその立場でいるかぎり、日本と歴史を共有することは不可能だろう。古森が絶望的と言ってしまうのがよくわかる。

記事中の水谷尚子の産経新聞への寄稿が Shu's blog 雌伏編さん 「ニュース、オピニオン記事に中国語版を」で紹介されている。日本の偏向教育にさらされた人でも、昨今のネットワークの広がりによって事実を知り、植え付けらたものではない自分なりの考えを持てるようになってきている。果たして、中国にも同じ事が起きることを期待してもよいのだろうか。

[*1]「南京虐殺本」の訴訟で敗れた被告。日本軍兵士として南京攻略に加わり1987年刊行の自書で、当時の上官が郵便袋に中国人を入れ残虐な方法で殺すという光景を記して、実名を出されたその上官から事実無根として、名誉棄損で訴えられた

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『過去に何があったのか、ぼくらは、どうしても見たいんだ』 〓今、語りたい、中国
中国と日本の足跡を辿るトークライブ開催のお知らせ【平和のために「もっと知り隊」!】at 2004年09月06日 05:43
この記事へのコメント
 トラバありがとうございます。
 (が、遅いっ!ですね。迂闊にも今日気付きました。すみません^^;)

> 昨今のネットワークの広がりによって … 自分なりの考えを持てるようになってきている。果たして、中国にも同じ事が起きることを期待してもよいのだろうか。

 私自身記事でひとつの提案をしてみたものの、中国の場合実際にはそう簡単にいくまいな、と思っています。
 何らかの政治的事件等により中国国内のムードが大きく変わるような機会が必要でしょうね。(人は見えるものではなく、見たいものを見る、というのは真理をついていますよね…彼らは一層その傾向が強いかも^^)
 しかしそうした機会、あるいは危機の要因を多分に内在している国であるのも事実で、今後も注視が必要ですね。
Posted by Shu UETA at 2004年08月22日 22:05
ここ数日忙殺されてました。その間、オリンピックでは金メダルとりまくってるし、高校野球は北海道の駒大苫小牧が優勝してるしで、話題にはことかかなかったのに残念。

さて、中国のこの問題なんですが、古森の記事を紹介したものの私自身以前のエントリーでネットワークの浸透によって変わるだろう、という相反する記事を書いてます(^-^; 私自身中国を知らなすぎるというのもあるのですが、大陸引き上げ組の父親の話や少数民族の話を聞いていると、十把一絡げに中国人は○○だ、というには抵抗があったりします。というわりには、そう書いちゃってたりするわけですが(苦笑)
ただ、この元記事にもかかれているように、シンボル化してしまったもの(ただの開き直りにしか見えない)が、教育等により中国つつうらうらに浸透してしまうと、やっかいなのは事実です。

> 何らかの政治的事件等により中国国内のムードが大きく変わるような機会

東西ドイツの壁の崩壊、ソ連の崩壊と同等ぐらいのインパクトが必要かもしれないですね。

Posted by toybox2004 at 2004年08月24日 04:19
TBさせていただきました。平和のために自分たちでできることも模索しているグループです。
興味を持っていただければさいわいです。
Posted by はせやまん at 2004年09月06日 05:45