34ec385b.BMP茂木健一郎の『生きて死ぬ私』(ちくま文庫)をやっと読み終わったが、この本については今まで述べてきたとおりだ。茂木さんは科学者として、というか人間としての根本的な疑問を持っていて、いつもそれを忘れない。もちろん解決しようとしている。
この本は33歳ごろ(茂木さんは1962年生れ)に書かれたということもあり、まだ未成熟な点もある。前に指摘したままになっている76ページから80ページにある「悟り」についての記述は私なんかとはだいぶ認識がちがう。「悟り」は「全知感」だといい、「自分が宇宙のすべてを知っている」と感じることだと述べている。そしてこれはソクラテスの「無知の知」と反する認識であり、新しいことに挑む姿勢を欠落させるとも言っている。そこに違和感があると書いてある。
仏教の「悟り」はおそらく「無知の知」に等しいというか、「無知の知」を踏まえた認識だと察する。すべてを知ることなどできるわけがない。金田一先生だって読めない漢字はあるのだ。また、アフリカの小さな国の首都や産物、生活の様子をすべて知り尽くすことは不可能だ。
いくらなんでも、悟っているからといって、そんな地球の隅々まで知り尽くせるわけがない。ましてや大宇宙の隅々まで分かってたまるか!? 「悟る」とはそんなことではないだろう、と思うけどね。もちろん、分かりません。
作品:SM「若草」
天気:晴れのち曇り。寒い。