apple_welcome-ibm-seriously

5150といえば、IBMが初めて発売したパソコンであり、当時アップルがIBMのパソコン市場参入を祝う広告を出したことでも話題になりました。1981年のことです。

米PC World誌はレトロゲーム、レトロコンピュータ関連に面白い記事が多いのですが、2011年にはIBM-PCの30周年を祝って、初代機である5150をいま実際に使ってみるという実験をやっていました。

その結果として分かったのは、グラフィックスやネット関係はともかく、テキストベースの仕事なら今でも使えなくはない、ということでした。日本語という重荷?を背負っている日本のユーザーには考えられない話で、まことにうらやましい限りです。

それでもすんなり使えるというわけではなく、古いPCを復活させるのに何かと苦労させられるのは同じのようです。

―――

今から30年前、IBMは初めてのパーソナル・コンピュータ、5150を発売した。それは実に味気ないマシンだったが、それは意図的なことだった。IBMは5150を、真面目な仕事をしている真面目な人々のための真面目なコンピュータとして作ったのだから。

それを踏まえて、われわれは30歳の誕生日を迎えた5150にふさわしいイベントを思いついた。やっぱり働いてもらうことにしたのだ。具体的には、今でも仕事に使えるのかどうか、実際に検証することにした。

ibm-pc1

果たして30年前のPCで、われわれが日常的にこなしている作業ができるものだろうか。たとえばメールを使ったり、ウェブを閲覧したり、文書を作成したり、画像を編集したり、ツイッターを使ったり、というようなことだ。

その結果はどうだったか。

現在のPCは、30年前には考えられもしないような用途に使われている。そして5150は、当たり前だが、そういう作業をするにはあまりにも非力である。ただし、本来想定されていた用途であれば、5150は今でも十分にそれをこなすことができるのだ。


1日目 セットアップ

5150をじっくり使ってみたいと思うようになったのは、この機種が今のPCの始祖といえる存在であるためだ。

30年間にわたり、IBM-PCはコンピュータ・ユーザーが経験した数々の進化の基盤でありつづけた。今のPCですら、この30年前のマシンといくらかの互換性を有しているのだ。

ただし、実際に5150を使ってみようとしたところで、あることに気が付いた。そのための特別な環境が必要だということだ。

自宅では無理だった。なにしろ今のPCがあちこちにあるわけで、ついついそっちを使ってしまいかねない。

秘密の空間が必要だった。誰にも邪魔されることなく、レトロPCにじっくり取り組める場所がなければならなかった(なにしろ、家には1歳になる子供もいるのだ)。いろいろ考えた結果、実家の使っていない部屋に間借りさせてもらうことにした。

そして機材を持ち出した。PC本体のほか、外部機器や、トラブルの際に必要となりそうなものを持っていった。ISA形式の拡張ボード(スペアのビデオカード、シリアルカードなど)や数台の5インチフロッピードライブ、工具にケーブルなどだ。

こうして、1日目の大半は機材を移すことに費やされた。


2日目 本体を修理する

この日はPCの検査で始まった。まず最初に本体のケースを外して中を見てみる。ISAの拡張スロットが5つあり、CGAのビデオカード、メモリ拡張カード、フロッピーのコントローラ・カード、マウスなどの外部機器を接続するためのシリアルカードが差さっていた。

ibm-pc2

データ保存機器としては、5インチのフロッピードライブが2台、本体に備わっている。RAMは640Kあった。ありがたいことに、前の持ち主はメモリを最大まで増設してくれていたわけだ。

驚いたのはCPUだった。インテルの8088がザイログのV20に換装されていたのだ。

ibm-pc3

V20はNECが開発したチップで、8088とはピン互換性があり、しかも8088より30パーセント速くプログラムを走らせることができた。それも、クロックは元の4.77MHzでだ。しかし、今回の実験はあくまでも歴史的な面を重視しており、このような高速なチップを使うとさしさわりが出てきてしまう。そんなわけで、V20を外し、手持ちの8088に戻した。

次に、本体をモニタにつないだ。これも純正のIBM5153 CGAモニタだ。起動してみたところ、当初はCGAボードのビデオ接続回路がおかしいようだったが、いったん掃除すると、それからは正常に動いてくれた。

だが、またもやトラブルが起こった。RAMチップの不良だ。POSTエラーコードのおかげで、どのRAMチップがおかしいのかは分かった(まあ、実際には手持ちのネットブックからインターネットでコードの意味を調べたのだが)。さいわいにも、このRAMチップはソケット式だったので、交換は容易にできる。問題は、換えのチップを持っていないことだった。

それにしても、RAMに問題があるわりには、本体は問題なく動いているようだった。5150はROMにフルセットのBASICを備えており(アップルⅡと同じ)、フロッピーディスクからブートしない場合は、そちらが起動する。

ibm-pc4

このBASICはフロッピードライブを持たないマシンを前提としているため、データの保存はカセットテープでしか出来ない。(5150の一番安いモデルはRAM16K、フロッピードライブなし、というものだった)

そう、IBM-PCといえど、この5150には、当時の他のパソコンと同じように、背面にカセット端子があるのだ。

ケーブルさえあれば、フィリップス方式のコンパクト・カセットテープにデータの保存、読み込みができた。遅いし使いにくいものではあったが、1981年当時、データレコーダやカセットテープは、フロッピーディスクよりははるかに安価なものだったのだ。

ibm-pc5

40カラムで行き詰る

BASICを起動すると、文字表示が40カラムで固定されているのに気づいた。これはつまり、画面の文字列が横方向で40字までしか表示できないモードだ。

ビジネス用途のマシンということで、5150は80カラム表示をサポートしている。80カラムに切り替えることはできるはずだが、その方法が思い出せないのだ。

5150では、システムの設定はBIOSのようなソフトウェアではなく、マザーボードのディップスイッチで行う。たとえば、使用するビデオカードの種類や、RAMの容量、フロッピードライブの台数などを設定するわけだ。だが、マザーのディップスイッチはきちんと80カラムに設定してあった。

次にフロッピードライブからPC DOSの3.3で起動してみた(PC DOSとはMS-DOSのIBM側での名称)。それでも40カラム表示のままだ。PC DOSのマニュアルで調べたところ、ビデオモードを設定するMODEというDOSのコマンドがあるらしい。こちらが希望するモードはCG80というものらしかった。DOSで80カラムのカラー表示を行うモードだ。これでようやく、80カラム表示にすることができた。

その間、本体に2台目のフロッピードライブを増設することも決めた。そうすれば今後の作業がいくらか楽になるはずだ。前日に、こうなることを見越して、ドライブをもう1台持ってきてあったのだ(もう何年も前に、別のPCから取り外したものだった)。なんせフロッピードライブが1台しかないと、何度も何度もディスクを抜き差ししないといけなくなる。そんなのは御免だった。


3日目 いよいよ検証実験に取りかかる

この日はガレージでの探しものから始まった。5150本体のRAMチップに不良品が出たため、代替品として4164CのRAMチップが必要になったのだ。幸いにも、ITT Xtraというマシンから取り出すことができた。このマシンは1984年製のIBM-PCクローンである。

再び「隠れ場」に戻り、5150のケースを開け、不良品のRAMチップを取り替える。これで準備は整った。


(つづく)

その2 その3