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30年前のIBM-PCを復活させるというプロジェクトの第2回です。前回では本体の修理が完了したところで終わっていましたが、ここからは実際にソフトウェアを動かしてみることになります。

今回は画像の表示、インターネットへの接続、ウェブやツイッターの使用、ワープロソフトでの文章作成といった作業に挑戦し、どれも見事クリアしています。とりわけワープロに関しては、現代のPCと比べても悪くない使い心地だったとのことです。

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2日目(つづき)

ソフトウェアをどこから調達するか

準備を経て、いよいよ本来の仕事に取りかかるはずだった。ところが、もうひとつ別の障害があったのだ。つまり、ソフトウェアをどこから調達するか、という問題である。

手元には、5インチフロッピーの詰まった箱が8つもあった。何十年もかけて集めた、IBM-PC用のソフトウェアである。

また、フロッピーにないプログラムが必要になった場合に備えて、Windows95で動くペンティアム2のPCまで用意しておいた。このマシンには5インチのフロッピードライブとイーサネット・カードも備えてあるため、5150ともファイルのやりとりが出来る。

つまり、インターネットや自宅サーバーからソフトウェアを取ってきて、それを倍密の5インチフロッピーに書き込めば、5150でも使えるというわけだ。

まず最初に、マスターの起動ディスクを作った。OSにはPC DOS 3.3を使用したが、それは昔のものであることと、手近にあってすぐ使えるためだった。必要なDOSのファイルをフロッピーに書き込み、続いてDOSのテキストエディタでAUTOEXEC.BATファイルを作成した。これはDOSに実行するタスクを指示するバッチファイルで、これによってコンピュータが起動時に読み込み、実行するドライバを指定できる。

それにしても、AUTOEXEC.BATファイルなんて、本当に懐かしい感じがした。

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CGAは思っていたほど悪くない

ディスクを調べてすぐに見つかったのが、シェアウェアの画像ビューワだった。CompuShow(CShow)というプログラムで、1990年代初めにはよく使ったものだった。地元のBBSからダウンロードしたGIFファイルを見るために使っていたのだ。

CShowの一番の魅力は、IBM-PCのありとあらゆるグラフィック・モードをすべてサポートしていることだった。画像を開くと、マシンのグラフィックカードに応じて、適切な形に自動変換してくれるのだ。

CShowは5150で問題なく動作した。そこで、手持ちのGIFファイルをいくつか表示してみた。


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(「Xファイル」のジリアン・アンダーソン)

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(CGAより解像度の高い画像を表示させたもの)

いずれの画像もCShowはうまく変換している。CGAモードの性能を考えると、大したものだといえるだろう。

いずれにしても、このマシンで画像を扱うには、まずフロッピーの容量が問題になる。360Kでは、2、3枚も画像を入れればディスクは一杯になってしまうのだ。


ネット巡回は可能か

画像でいろいろ遊んだ後に、ふと気が付いた。しばらくの間、メールのチェックをしていなかったのだ。そこで、5150でやってみることにした。

インターネットにどうつなぐかという難問については、いくつか方法を考えてあった。いちばん難しいのが、なんらかの機材を使って5150をイーサネットに接続するやり方だった。いったんイーサネットでつないでしまえば、ウェブやメールを扱うためのプログラムを5150で実行することで、ウェブの閲覧やメールの確認が出来るはずだ。

実際、出来ることは分かっていた。前にも古いDOSマシンで似たようなことをやったりもした。ただし、これだと大変な手間がかかってしまう。

また動作確認済みの、パラレルポートにつなぐイーサネットのアダプタも持っていた。だがこれもセットアップに時間がかかる。そして何よりも問題なのは、入手したDOSベースのインターネット関連プログラムは、どれをとっても360Kのフロッピーディスクに収まらないことだった。(一番サイズの小さな、テキストベースのウェブブラウザですら無理だった)

そこで結局、いちばん簡単な方法を試してみることにした。5150をシリアルポート経由で今のPCにつなぐのだ。この場合、今のPCがいわばインターネットのプロバイダがわりになる。偶然にも、同じようなLinuxのマシンを既にセットアップしていた(年代物の、シリアル接続の端末をテストするために使っていた)。

Linuxは、その祖先であるUNIXと同様に、テキストによるコマンドプロンプト(MS-DOSでいうコマンドラインのようなもの)を、ホストマシンからシリアルポートに出力できる。

つまり、ホストとなるLinuxマシンに5150をシリアルで接続し、5150では端末エミュレータを実行する。これによってLinuxマシンから、5150のモニタとキーボードが使えるようになるのだ。

このやり方はズルをしているように思われるかもしれないが、5150が出た当時から90年代初頭までは、まさしくこの方法でインターネットなどのネットワークに接続していたのだ。ホストにダイヤルアップで接続し、ネットワークにログインして、リモート端末でソフトウェアを実行するのである。

つまり、モデムを使い、電話回線を経由して、リモートのネットワークに接続していたのだ。

ただしここでは、ダイヤルアップは必要なかった。2台のコンピュータの間には、ほんの数メートルの距離しかなかったからだ。


ユー・ガット・メール

擬似プロバイダとなったマシンに5150を接続し、起動してからデータストーム社のProcomm Plusを走らせた。1980年代にとても人気のあったプログラムで、シェアウェアの端末エミュレータである。

次にLinuxマシンにログインし、Pineを実行した。Linuxになじみのある人なら覚えているかもしれないが、インターネットのメールをチェックするためのプログラムである。クライアント側で動作するメールソフトが普及する前は、メールの確認にはこのようなソフトを使うのが一般的だった。

Pineは正常に動作した。残念なことに、新規のメールは届いていなかった。5150のメール機能をテストするのだから、メールの送信もできるかどうか確認しないといけない。そこで職場の同僚に簡単なメールを送ってみた。

メールはぶじ使えることが分かった。次はツイッターである。IBM5150で果たしてツイートできるだろうか。その答えはイエスである。Linuxマシンにあらかじめツイッターのクライアントをインストールしてあったので、それを使うことで可能になった。


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(5150でツイッターを使う)

理屈からいけば、端末エミュレータになった5150なら、テキスト表示であればウェブ閲覧も可能なはずだ。ブラウザにはLynxを選んだ。UNIX関連のOSでは広く使われているテキストベースのブラウザである。この場合、Lynxを実行しているのはLinuxマシンだ。

最初は問題なく動いているようだった。そこで、実際にウェブサイトにアクセスしてみることにした。だが、どこのサイトを見ても画面に妙なアスタリスクが出てくる。どうやらフォーマット関連のコードがうまく処理できないようだった。

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とはいえ、表示におかしいところはあるものの、必要な情報は読み取ることができる。こうして、5150でウェブを閲覧するという目的は達成できたのだ。


文章作成は問題なし

インターネットにつなぎ、ツイッターで遊ぶのもいいが、仕事となると、少なくともぼくの場合は、文章作成が主な用途になる。ワープロソフトというと連想するのがMS WORDだが、残念ながらDOS向けのWORDは、一番古いもの(バージョン3.3)ですら、360Kのフロッピー1枚には収まらなかった。当然、動作もしない。

次に思いついたのが、統合ソフトのMS WORKSだった。これのワープロ機能は、DOS時代にぼくも使っていた。だが、手持ちの中でいちばん古いMS WORKSも、実行ファイルのサイズは372Kで、これまた360Kのフロッピーには入りきらない。いったいどうしたものか。

答えを思いつくには、360Kのフロッピーが普通に使われていた頃のことを思い出さなければならなかった。たまたまぼくは、父が若い頃に使っていたPCのフロッピーをいまだに所有していた。父のマシンは(すでに記事の前半にも登場したが)ITT XtraというIBM-PCクローンで、360Kのフロッピードライブを2台積んでいた。ぼくの5150と同じだ。

その父のフロッピーには、ライフツリー・ソフトウェアという会社のVolkswriter 3という製品があった。これは当時人気のあったワープロソフトで、MS WORKSに乗り換える前は、父がメインで使っていたものだった。

幸いにも、Volkswriterのフロッピーは問題なく使うことができた。そこでプログラムをロードし、起動した後で、手慣らしに短い文章を入力してみた。

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Volkswriterは実に使いやすいプログラムだった。これまでいろいろな用途を試してきたが、現代のPCとの比較ということでは、文章作成は遜色のない使い心地だったといえるだろう。

(つづく)

その1 その3