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先日、亡くなったことが伝えられた「ロードランナー」の作者ダグ・スミスですが、ここでは追悼の意も込めて、貴重なインタビューを紹介したいと思います。
収録されたのは1999年で、当時の新作であるNINTENDO64(N64)向け「ロードランナー3D」の宣伝も兼ねたものですが、オリジナル版への言及も多く、興味深い内容になっています。

* * *

オリジナル版の「ロードランナー」を思いついたのはいつ頃のことですか。

あれは1982年夏のことだった。当時ぼくはワシントン大学建築科の学生で、お金がなかったから、大学の電算センターでアルバイトをしていたんだ。学生にコンピュータの使い方を案内するって仕事でね。

ところが夏休みだから学生も来ない。それで暇つぶしにコンピュータをいじっていた。そうするうちに、友だちとゲームを作り始めたんだ。

2週間ほどで友だちは抜けたけど、ぼくは夏の間、ずっと作業を続けていた。作ったゲームは学生なら誰でも遊べるようにしてあったから、やがて熱心なファンが付いた。面を自由に作れる機能とか好評だったよ。他にもいろいろ機能を試したな。

プログラム自体はPascalとFortranで書いたけど、アセンブリ言語を使ったところもある。対応機種はDECのミニコン、VAX 11780だった。

夏の終わりごろ、電算センターに8歳のいとこを連れていった。なんせ小さいから、ゲームの内容はあまり分かってもらえなかったけど、こんなことを言われたんだ。「おうちで遊びたいから、アップルⅡのフロッピーディスクに入れてよ」ってね。

あんまりしつこく言われたもんだから根負けして、アップルⅡに移植したんだ。3日かけてね。とりあえずって感じで、グラフィックはハイレゾじゃなかったし、色もついてなかった。ジョイスティックにも対応してなかったから、キーボードで操作するんだ。ただゲームとしては、製品版の「ロードランナー」にある要素はすべて揃っていた。

それがブローダーバンドに持ち込んだバージョンなんだ。10月だったかな。返事は不採用だった。うちの会社には合わないって言われて、この時はそれで終わった。


その時にはもう「ロードランナー」という名前だったのですか。


 いいや。「マイナー」(Miner)って名前だった。


 
(ロードランナーの原型、「マイナー」。本人の説明と違うところもあり、正確にはこれではないとの指摘もありますが、製品版との違いがよく分かります)

たくさんの友だちから励まされたんで、またやってみる気になってね。借りた1000ドルでカラーモニタとジョイスティックを調達して、プログラムに手を入れていったんだ。同じ年のクリスマスに、そうして出来たゲームをまた持ち込んでみた。今度は4つの会社に送ったんだ。シエラ・オンライン、ブローダーバンド、シリウス、それとシナジスティックだ。

ぼくが選んだのはブローダーバンドだった。ブローダーバンドの提示してきた印税率は、他よりすこし低かったけど、売れるに従って、こっちの取り分が増えるようになっていた。それで決めたんだ。1982年末のことで、その時は1万部売れれば万々歳だ、なんて言われたよ。

それからもゲームに手を入れて、タイトル画面とか、アニメーションとか、レベルエディタとか、いろんな要素を付け足していったんだ。そして翌年の6月に、アップルⅡ版が発売された。


最終的にはどのくらい売れたんですか。

詳しくは分からないけど、アップルⅡ版は数十万部は売れたと思う。当時としては大変な数だよ。

その後でアタリ800とコモドール64の移植版にも関わったんだ。アタリ版はぼくが作ったし、コモドール版は友だちがやった。それからIBM-PC版も手伝った。83年の秋からは、ブローダーバンドと一緒になってあちこちで取材をこなすようにもなった。

これはあまり知られていないことなんだけど、実は「ロードランナー」の売り上げのうち8割は日本なんだ。日本のファミコンで最初に出た10作のゲームに「ロードランナー」が入っていて、それはハドソンソフトが移植した。それが150万部も売れたんだ。全部の機種を合計すると、300万部以上になる。


今回の新作ですが、日本ではバンプレストから発売されるそうですね。

1983年の、ブローダーバンドとの最初の契約は10年間っていう期限付きで、作品の権利は会社持ちだったし、外部へのライセンスとかもすべて向こうが仕切ることになっていた。93年に権利がぜんぶぼくのところに戻ってきて、それからはぼくがすべて管理している。

作品の許可を外部の会社に出したりもしているんだけど、そのひとつがT&Eソフトだった。ゴルフのゲームとか作ってる会社なんだけど、スーパーファミコンと、それから任天堂の次世代機にも移植する許可を出したんだ。当時は名前も決まっていなかったけどね。

そんなわけでT&EはN64版の権利を持っていたんだけど、市場の状況もあって、ちょっと出来ないってことになったから、バンプレストに権利を譲渡したんだ。それでバンプレストはアメリカでの流通も確保しようとしていたんだけど、またもや市場の変化で、取りやめになった。その後でビッグバンが開発して、(アメリカでは)アンフォグラムから発売されるって話が決まったわけ。


これまでにも「ロードランナー」のリメイクがいろいろありましたが、今回の3D版ではどのような役割を担っておられるんでしょうか。

今の仕事は作品の権利を管理するってものだ。契約の取りまとめ役だね。ぼくとしては、作品の開発にもっと関わっていきたいんだけども。

なんて言えばいいかな……これまでのリメイクに関しては納得のいかないところもあったけど、今度の新作は本当にいい感じなんだ。オリジナル版のゲームをうまく生かしているからね。

「ロードランナー」って作品に関わって17年になるけど、最初の15年間は使用料の支払いを確認するだけだった。ただ今回の新作からは、またいろいろやるようになったんだ。出来上がった作品はとても気に入っているし、今後は作品の内容もしっかり管理しようと思っている。


「ロードランナー」というと、どうしても昔の、数ピクセルでできた単色のキャラクターを連想してしまいます。あまり現代的なイメージもなかったんですが、今度の作品ではとても未来的なデザインになっていますね。

そういうところはぼくが決めたわけじゃないけどね。

昔のハードだと、グラフィックで特徴を出すことは難しかった。オリジナル版の「ロードランナー」では、ぼくがぜんぶ作ったんだ。グラフィックも、サウンドも、プログラミングも自分でやった。でもぼくは、絵はまったく駄目なんだ。

未来風のデザインだけど、それはぼくに言わせれば、オリジナル版の設定からして自然なことだと思う。あたりを走り回っては、レーザードリルで岩を崩して、金塊を集め、バンゲリング帝国の番兵をやりすごすって内容だったからね。まあ番兵は、時間が経つにつれて「モンク」って名前になったけど。


「ロードランナー」は、アップルⅡを始めとする初期のPCで大変なヒット作になりました。今のゲーマーは家庭用のゲーム機で育った世代なわけですけど、果たして「ロードランナー」は彼らにアピールすることができるでしょうか。

まさにそれこそ、みんなが知りたいと思っているところだろうね。「バトルゾーン」とか「アステロイド」なんかは、いっぱいリメイクが出ているけれども。

映画業界とゲーム業界の移り変わりを見ると、両方ともリメイクが盛んに行われている。ゲーム業界は映画業界の後追いをしていて、だからこそ旧作のリメイクが増えてきたんだ。今の子供たちが見ている映画にしても、古い作品のリメイクが多いけど、ちゃんと受け入れられている。それこそオリジナルを知らなくてもね。


熱心なゲーマーについてはいかがですか。昔の「ロードランナー」に熱中した人々にとって、今度の新作は受け入れられると思いますか。

もちろんだよ。いろんなリメイクがあるけど、今回の新作にはオリジナルにあった面白さが保たれていると思う。


最近の家庭用ゲーム機ではフル3Dのゲームが多くありますが、「ロードランナー3D」は完全な3Dではありませんね。

オリジナル版のパズル的要素を考えると、ゲーム世界に制限を設けた方がいいんだ。完全に自由な世界にしてしまうと、パズルに集中できなくなるからね。

視点をシンプルにすることで、熱心なゲーマー以外にもアピールする作品になった。家族みんなで楽しめるものにしたかったんだ。


確かにそうですね。フル3Dのゲームだと、視点とかコントロールに気を取られて、パズルに集中できない傾向があります。3Dのプラットフォーム・ゲームだと、初期のものでは「マリオ64」がありましたが、あれなんて目立つのは周囲の風景よりもマリオのお尻ばかりって感じでした。

そうだね。宮本茂が言っていたことだけど、開発にかけた時間のうち、80パーセントは視点のアングルと空間のデザインに費やしたそうだ。それでも、きみが言うように、完璧にはほど遠い出来だった。まあ、当時出ていた他の作品に比べれば、遥かにいい出来だったけれども。

これまでの「ロードランナー」のリメイクでは、より自由な空間にしようとしたために、オリジナル版のパズル的要素を損ねている場合もあった。

著作権に関していえば、「ロードランナー」っていう作品はキャラクターに基づいているわけじゃない。そこがマリオと違うところでね。

「ロードランナー」の著作権はゲームの仕組み(メカニクス)に基づいている。そして、その部分こそが「ロードランナー」の心であり、魂なんだ。


もし選べるならば、むしろ2Dのゲームを作ってみたいと思われますか。今だと何でも3Dと付ければ売れるような風潮がありますが、ゲーム作家と話してみると、昔みたいな2Dの作品を作ってみたいという人が多いんです。

今回の新作についていえば、3Dの可能性をうまく示したものになっているとは思うけど、それでも細かく見ていけば、結局は2Dの要素が強いんだ。

確かに、ゲームの作り手にしてみれば、2Dの方がずっとコントロールしやすくなる。なんせ、3Dのゲームを作るのはいろいろと大変だからね。

思い出すのは1985年のことだ。当時のゲーム作家は、3D表示のできるハードウェアが出てきたら、きっと凄いことになるだろうなあ、なんて言っていた。

それが今、現実になったわけだけど、ぼくに言わせれば、開発者の90パーセントはあまりの可能性に圧倒されてしまっている。3Dで優れたゲームを作り出せている開発者は、残りの10パーセントってところだ。3Dをうまく使うにはたくさんのノウハウが必要なんだけど、それが身についていない人が多い。


N64にはいろいろゲームが出ていますが、ご覧になりましたか。

ぼくはN64の熱心なファンなんだ。今いちばん気に入ってるゲーム機だよ。ぼくには5人の子供がいるんだけど、もう家中みんなでゲームに熱中している。


N64のゲームで気に入っている作品は何でしょうか。

ぼくはマリオの、宮本茂のファンなんだ。それで、やっぱりパズル要素のあるゲームが好きだから、マリオやゼルダは本当に気に入っている。

FPSは、かっこいいとは思うけど、あんまり自分でやる気にはならないな。30分もすると、もういいやって感じになる。うちの娘はPSXの「トゥーム・レイダー」に夢中だけど、自分でやってみると視点のアングルがどうしても気になってしまう。

5人も子供がいると、マルチプレイヤーのゲームは本当に楽しいよ。急ぐつもりはないけど、将来的にはマルチプレイヤー対応の「ロードランナー」も考えてみたいね。


 
(各機種の「ロードランナー」をつないだ動画。大変な労作です)

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