TxK-title

前のエントリでは、ジェフ・ミンターの新作「TxK」に対し、アタリが著作権侵害との申し立てを行い、結果として移植版が発売中止になった件を取り上げましたが、ここではその補足として、アタリ側の具体的な言い分を取り上げてみたいと思います。
ミンターは、「TxK」が「テンペスト2000」の著作権を侵害しているというアタリの主張に関し、先方が突きつけてきた論点を列挙しつつ、次のように反論しています。

* * *

アタリ側の非難は、ラマソフト(ミンターの会社)だけでなく、ぼく個人に向けられたものもあった。

おおまかにいえば、先方の言い分は「TxK」が「テンペスト2000」に似ているというものだ。その中には、次のような傑作もある。

・両者はあまりに酷似しており、「テンペスト2000」のソースコードを剽窃したものと考えられる。(そもそも「テンペスト2000」の作者はぼくだ。たとえソースコードを持っていたとしても、それを参照する必要などない。「テンペスト2000」の開発は、ビットマップ・グラフィックを担当してくれた一人を除いて、すべてぼくが一人でこなした。となると、どうやらぼくは過去の自分自身を剽窃したらしい。)

・「TxK」の音楽は「テンペスト2000」のそれと実によく似ている。(「TxK」の音楽は完全なオリジナルであり、しかも高く評価されている。Develop Awardを受賞し、Bandcampでは1位になった)

・自機がジャンプする。(どうやらジャンプの権利はアタリが持っているらしい)

・「TxK」にはAIのドルイドが登場する。(AIのドルイドは「テンペスト2000」の3年前に作った「ラマトロン」以来、ぼくの作品のほぼすべてに登場しており、ぼくの作風における不可欠な要素だ)

・ぼくはアタリが権利を所有している「テンペスト」という名前に便乗しようとした。(それもわざわざ「TxK」という、あいまいな名前を使って)

・ぼくはアタリの名作に自作ゲームを関連付けることによって、アタリがもつ素晴らしい評判に便乗しようとした。(ぼくはアタリの名前を引き合いに出してなどいないし、そもそもラマソフトを、「スター・レイダース」の名前を下らないスロットゲームに使うような、死に損ないの現アタリに関連付けることなど、まったくもって望んではいない)

StarRaiders-Slot
(これがそのスロットゲーム。「スター・レイダース」はアタリ800向けの3D宇宙ゲームで、これがプレイしたいためにアタリ800本体を購入する人が続出したという、いわゆる「キラーソフト」の最初期の例として知られています)

どれも下らないたわごとだが、法的な主張をしてきているため、これに対抗するのは高くつく。何度か文書をやりとりしたが、それだけで(おそらくドルで)4ケタもの金がかかってしまった。こちらは、このようなもめ事に費やす金など持ち合わせてはいない。

思うに、アタリはPlaystation Vitaの「TxK」が高く評価されているのを知り、ぼくが大金を稼いでいると考えたのだろう。ところが、Vitaの市場規模はさほどのものではない。「TxK」は開発費用は回収できたが、儲けはささいなものでしかなかった。それでも騒ぐのをやめようとしないので、ぼくは売上げの明細を送った。こちらが大金を稼いだりしていないことを分からせようとしたのだ。

さらに、もしあの作品でまとまった利益が得られるとしたら、それは当時制作していた移植版が発表されてからのことになるだろうし、その移植版に対して、アタリのブランドを付けることを考慮しても良い、とも伝えていた。そうすれば、少なくとも移植版が世に出ることになると考えてのことだったが、先方はいっさいの協力を拒んだ。

そこまでやってなお、アタリはVita版「TxK」の販売中止を求めてきたのだ(開発費をようやく回収して、ほんの少しずつ利益が出てきたに過ぎないのだが)。さらに、ぼくに対して「テンペスト」風のゲームを二度と作りませんという誓約書に署名しろとまで言ってきた。そのため、移植版が世に出る可能性はなくなった。

ところで、特定のゲームが別の作品と似ているかどうかという判断について、何らかの前例があれば参考になると思わないだろうか。実は、そういうものは実在する。しかもそれには、アタリと「テンペスト2000」が関わっているのだ。

「テンペストX」というゲームをご存じだろうか。これは「テンペスト2000」をプレイステーションに移植したものだ。ぼくは以前から、どうして名前を変えたりしたのか不思議に思っていた。それだけでなく、ゲームの細かいところも変えてあったりするのだ。ずっと後になって、その移植版を手がけた人間とチャットする機会があり、その理由を聞かされた。印税の支払いを回避するための措置だというのだ。

ぼくとアタリとの契約では、「テンペスト2000」の移植版についてはぼくにも印税が支払われることになっていた。「テンペストX」はいろいろ変更が施してあり、それは法的に別のゲームであると判断される程度をきっちり満たしていた。そのおかげで、ぼくに支払う分の印税を節約できたというわけだ。

その「テンペストX」だが、

・ぼくのソースコードを元にしている
・音楽はまったく同じ
・パワーアップの遷移も「テンペスト2000」と同じ
・名前と効果音、ウェブ(画面上の蜘蛛の巣状の図形)はいくらか変えてある
・なおかつ、ハイスコア一覧で特定の語を入力すると、隠し要素として「テンペスト2000」がプレイできる。

つまり、それくらいには「テンペスト2000」に類似している。

それでいて、今のアタリは、法的に見て「TxK」の方が「テンペストX」よりも「テンペスト2000」に酷似していると主張しているのだ。

* * *

ミンターは、裁判での争いを断念した理由として費用のことを挙げていますが、上の説明にあるように、今のアタリがまともな理屈の通る相手ではないこともほのめかしているのです。

一方でアタリの主張は法的には一理あるとの指摘もあります。「TxK」がアタリの知的所有物である「テンペスト2000」に類似しているという主張が成り立つのは確かであり(「テンペスト2000」の略称として「T2K」という名称が定着している)、またミンターが「テンペスト2000」のソースコードを参照していないのはおそらく事実でしょうが、それを法的に証明してみせることは難しいのもまた事実であるからです。皮肉にも、「テンペスト2000」の作者であることが、ミンターを不利な立場にしてしまっているのです。

この問題が明るみに出てから、ゲーム系メディアがアタリに問い合わせたのですが、「TxK」が「テンペスト」に酷似しているのは周知の通りだと回答しており、その証拠として各メディアの「TxK」評を例示したりしています。

当然、このような説明で納得できるはずもなく、アタリはさらに追求されることになりましたが、今のところ追加のコメントは出していないようです。

そしてミンターはこんな夢も語っています。

(「もしぼくが儲けられたなら、アタリを買収して、みんなに分け与えたい。われわれの多くがアタリから出発しているし、もうそれは、われわれみんなのものになるべきなのだから」)



(「TxK」と「テンペスト2000」の比較動画です)

Regarding the TxK persecution: a brief summary - yakyak.org