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ビル・ログディス氏はアメリカ在住のレトロゲーム・コレクターで、PCと家庭用ゲーム機を中心に収集を続けてきました。10年ほど前からは執筆活動にも乗り出し、すでに複数の著書を出版されています。ところが、そんな氏が昨年、コレクターからの引退を宣言し、30年以上かけて集めた品の大半を処分してしまいました。
コレクションには持ち主の性格が表れるといいますが、氏の場合もまさにそれが当てはまります。レトロゲームといってもいろいろで、普通は特定の機種、特定の時代に絞って集めるところですが、氏の場合は、あらゆる機種のあらゆる時代に関心を向けてきました。またレトロゲームに加えて、最新のゲームも追い続けており、PCやゲーム機も常に新しいものを入手していました。その一方で古いものも特に処分したりしなかったため、結果として、巨大なコレクションが出来上がったというわけです。

その内容を見ると、アーケードこそほとんどないものの、PCと家庭用ゲーム機に関しては、アメリカで販売されたもののうち、かなりの部分が網羅できているといっていいでしょう。それに加えて、ヨーロッパや日本の製品も含まれています。具体的な内容については、処分を委託された業者のサイトに情報が掲載されています。

Bodnars Auction May 31, 2018 Special Gaming Collection

ここを見れば、あくまで一部ではありますが、だいたいのところは把握できるかと思います。見ての通り、ハード、ソフトともに莫大な量で、今となっては入手の難しい希少品も多く含まれています。

数でいえばハードが500点、ソフトが3000点というところだそうですが、めずらしい品も多いことから、たとえばイーベイに出せばかなりの値段になることでしょう。ところが氏が選んだのは、地元の競売業者でした。ハード、ソフトに加え、ゲームとは無関係のCD、DVDも含めて、すべて一括で引き取ってくれるということで、この業者に決めたのだそうです。

コレクションはすでに昨年末に引き渡され、5月31日に競売にかけられる予定になっています。そのうち貴重品100点ほどはネットオークションに出されるそうですが、それ以外の品はニュージャージー州にあるオークション会場に行かない限り、入札に参加することもできません。

一括放出、しかも大半の品は会場に行かなければならない。これでは参加できる層もかなり限られてしまい、おそらくは収益額も大きく下がってしまうことでしょう。いくら貴重な品でも、その価値が分かる相手に見せなければ、しかるべき値段にはなりません。ですが本人は、承知の上であえてそうしたわけです。

氏はコレクターからの引退にあたって、ライターらしく、その心境を文章に残しています。またゲーム愛好家の掲示板でも詳しい事情を明かしています。いずれもたいへん貴重な内容であるため、その一部をまとめてみました。

* * *

自分のゲームコレクションを処分することをSNSに書いてから、いろんな人にその理由を聞かれた。そのことについて答える前に、いくつか事情を説明しておきたい。

ぼくは1972年に生まれた。つまり、コンピュータが個人に使えるようになった時代に育ったわけだ。確かにぼくは、ゲームやコンピュータのあらゆる進歩につきあってきた。そもそも、ぼくにとっていちばん古い記憶も、母のひざの上でポケット電卓をいじっているというものだったりする。まだ3歳にもなっていない頃のことだ。

それから数年して、わが家にポンがやってきた。デパートのシアーズが販売していた家庭用のモデルだ。その頃にはすでに、ゲームに対する関心がすっかり出来上がっていた。7歳の時にはアタリVCSを手に入れた。母はすぐに飽きるだろうと思っていたが、まったくそんなことはなかった。

1983年のぼくは、ゲーム雑誌の熱心な読者になっていて、いろんなゲームの画面写真をよく眺めていた。当時のぼくにとっては、雑誌とアタリVCS、そしてたまに行くアーケードが、ゲームを体験できるすべてだった。一方で、いろんな機種のいろんなゲームで遊んでみたいという気持ちは募る一方だったが、子供にとっては無理な話だった。

10歳の時、ようやく自分のコンピュータを手に入れた。コモドールのVIC-20だ(日本でいうVIC-1001)。それはすぐにコモドール64に替わった。同じ頃には友だちもパソコンやゲーム機を持つようになり、おかげでいろんな機種に接することができた。

だがゲームやコンピュータに対する欲求は強くなる一方だった。そして少しずつ、ものを集めるようになった。ゲームのコレクターという存在が一般的になるはるか以前から、ぼくはコレクターだった。いろんなものを手に入れてきたが、当時はまったく簡単だった。90年代は、それこそ捨て値でいろんなものが転がっていた時代だったのだ。

大学を卒業して実家を出る時、当然コレクションも一緒に持って行ったが、この頃は機種でいえば4、5種類くらいしかなく、管理に困るようなこともなかった。それから何度か住まいが変わり、結婚もしたが、コレクションも次第に大きくなっていった。レトロゲームの本を書くようになってからは、趣味は実益を兼ねるものにもなった。自宅にコレクション専用の部屋を構え、収集欲はますます高まった。それに拍車をかけたのがイーベイだった。おかげで、どんなものでも容易に入手できるようになったのだ(値段も高いが)。

この頃にはコレクションの量が飛躍的にふくらんだものの、まだ1部屋に収めることが出来ていた。だが、その後でより広い家に引っ越した時は大変な思いをした。それでも置き場所に余裕が出来たことと、執筆のために、ますます物を集めるようになった。


集めるものがどんどん増えていく

すでに触れたように、ぼくはあらゆる機種のあらゆるゲームに興味がある。コレクターというものは機種や時期をあるていど絞って集めるのが普通だが、ぼくの場合はそういうことがなかった。何にでも関心があるのだ。

そして、古い機種であっても、すでにあるものを集めれば終わりになるわけではない。たいていの機種には愛好者のコミュニティがあり、次々と新しいハード、ソフトが作られているのだ。そのおかげで、フラッシュメモリを使ったROMカートリッジやネット接続といった現代的な機能が、大昔の機械でも使えるようになっている。もちろん、そうしたものもまた収集することになる。

興味の対象を絞っていれば、まだ何とかなるかもしれない。だが、たくさんの機種を追いかけているとなると、この状況はいよいよ手に負えなくなってくる。

そう、まさにこれが問題の核心なのだ。

ぼくは自分のコレクションをきっちり整理してきた。21世紀に入った頃も、管理にさして苦労することはなかった。だが広い家に移り、複数の部屋が使えるようになると、そうもいかなくなってきた。執筆のためにいろんな機種を使う必要が出てくると、いちいちいろんな機械を出し入れしなければならないのだが、それが面倒に感じるようになった。モノが増えると、それだけ管理も大変になる。

部屋の整理もしだいに行き届かなくなった。それをするだけの時間がないのだ。それに、いくら広い部屋があるといっても、すべてを整えた状態にしておけるだけの余裕もない。とにかくモノが多いのだ。

ぼくにも仕事や家族がある。一方でゲームやコンピュータに対する熱意も薄れることがなかった。だからこそ、常に新しいゲーム機やコンピュータを手に入れてきたのだ。だが仕事も家族も趣味も、同じように時間がかかる。どれかひとつを選べば、残りをないがしろにすることにもなる。そしてぼくは、次第に古い機種を使わなくなっていった。なにしろ、ただ使うだけでも準備に手間がかかるのだ。


何を優先すべきなのか

今のぼくはすっかりデジタル志向になっている。デジタルなら、いくらモノがあろうと、場所を取られることがない(所有権の問題はあるが、ひとまずそこは措いておく)。それに、今の技術はとにかく便利だ。中年になると、便利であるということは何にもましてありがたい。なにしろ、時間こそもっとも貴重な資源だからだ。

念のため言っておくと、ぼくはけして、収集趣味を最優先に考えたことはない。ぼくにとっていちばん大切なのは家族であり、次に仕事で、趣味はその後でしかない。それに、コレクションの整理が行き届かなくなってはいたものの、いちおう決まったスペースからはみ出さないようにすることは出来ていた。つまり、いくら収集に熱を入れていたといっても、分別はわきまえていたのだ。

今回オークションに出すことにしたのは、モノを減らして、趣味を続けていくためだ。ごくわずかな品は残すが、それ以外はすべて引き取ってもらうことができた。おかげで、使いもしないモノを山のようにためこんでいることの罪悪感から解放されたのだ。

引き取られた品のうち、とりわけ貴重なもの100点ほどはネットオークションにも出品されるが、それ以外はすべて会場に行かないと入札もできない。競売はニュージャージー州の会場で、2018年の春に実施される(後に5月31日に決定)。


利便性には勝てない

ぼくがコレクターに戻ることは二度とない。持っている機種をこれ以上活用できるとは思えないのだ。妻とぼくは家のモノを大幅に整理するつもりで、そうなればより身軽になることだろう。それに古いモノを処分すれば、新しい品を手に入れる余裕ができることにもなる(こういう言い方には抵抗があるが)。

もうひとつ理由をあげると、たとえば昔のゲームソフトを手に入れたとして、もうそれを試すための時間がないのだ。ハードとなると、もはや考える気にすらなれない。

昔のコンピュータRPGをプレイするとなると、ソフトを走らせるだけでなく、付属の説明書を取り出したり、方眼紙にマップを描いたりしないとならなくなる。もはや、そうしたことのすべてが面倒なのだ。

ぼくはもう、今の環境にすっかり慣れ切ってしまった。分かりやすいし、便利で速い。そして昔のソフトウェアも、そうした環境で走らせるほうがずっといいと思うようになった。

思うに本当のきっかけは、個人的にいちばん思い入れのあるコンピュータRPGである「ファンタジー」(Phantasie)の第一作をあらためてプレイしようとして、うまくいかなかったことだろう。いろんな機種で試したが、どうしても走らせることができなかった。

ぼくにとっては「ファンタジー」こそが最高のゲームであり、それでいて遊び尽くせていない作品でもあるのだ。それはまた当時の他のゲームに比べて、実にとっつきやすく、あらゆるところで配慮の行き届いたものでもあった。

どうして動作しなかったのか、その原因は分からない。たとえば、メディアの不良なのかもしれない。だがもう、そういうことに対処するのが嫌になったのだ。

* * *

氏はコレクションの処分について、急に決めたことではなく、何年も前からずっと考えていたそうです。業者やゲーム関係の博物館に引き取りを持ちかけたこともあるのですが、結局はまとまりませんでした。一括で引き取るという条件をどこも承諾しなかったためです。ですが、断捨離をすることが第一の動機である以上、そこは譲れないところでした。そしてようやく、その条件を受け入れた相手が、今回依託された業者だったというわけです。

手持ちの品を処分するからといって、ゲームに対する情熱は変わらないと氏は言います。そしてすべてを手放したわけではなく、最小限の品は手元に残してあります。それはアップルⅡ、アタリ800、コモドール64、TRS-80カラーコンピュータといった8ビット時代のPCとブラウン管モニタ、プレイステーション3、そしてVectrex(日本でいう光速船)でした。

16ビット時代のPC、特にアミーガには強い思い入れがあるため迷ったのですが、仕様が複雑で実際に使うとなると大変であることから、結局は処分することに決めたそうです。一方で8ビット時代のPCはシンプルで使うことの楽しさもあり、残すことにしたのだとか。PS3は後方互換性のある初期型で、また優れたコントローラがあり実機の必要性があることから残したそうです。そしてVectrexについては、やはりベクター管の魅力は他に代えがたいということなのでしょう。

なお、すでに触れたとおり、コレクションの大半は公開オークションで処分されます。5月31日に実施されますが、参加するにはニュージャージー州の会場に行かなければなりません。具体的な場所については、業者のサイトで告知されています。

別に入札に参加せずとも、当日の会場のようすは見てみたい気がします。これだけの品がまとまって出るのはそうそうないことですし、さぞかし熱心なレトロゲーム愛好者が集まることでしょう。それこそE.T.の発掘現場のような、面白い光景が見られるかもしれません。

またネット出品分は以下のサイトに掲載されることになっています。

では締めくくりとして、氏自身がこのオークションについて広めてほしいと希望されておられますので、その宣伝も兼ねて、業者のサイトにある写真を使ってコレクションを紹介していきましょう。

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(タンディのTRS-80カラーコンピュータと、その類似品ドラゴン32)

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(アップルⅡ互換機のはしり、フランクリン)

col-pc6001+MacSE
(マッキントッシュSEの向こうにPC-6001Aの箱が置かれています。PC-6001の海外版で、キーボードがストロークのものに替わっていました)

col-mz-800
(MZ-800。MZ-700の海外向け強化版で、CP/Mが標準で付属していました)

col-phan4-msx
(日本製のパソコンソフト。大半はMSXですが、PC-98版のファンタジー4も見えます)

col-neo-geo
(NEO GEOのソフト。ここ数年で海外ではすっかり高騰してしまいました)

col-olympic-deca2
(オリンピック・デカスロン。アドベンチャーと並んで、初期のマイクロソフトが出していた数少ないゲームソフトです)

col-videobrain
(ビデオブレーン。通販のみで販売された最初期のゲームPCです)

col-studio2+vision
(RCAスタジオII。フェアチャイルド・チャンネルFと並ぶ最初期のカートリッジ式ゲーム機です。手前にエポック社のカセットビジョンが見えます)

col-microvision
(マイクロビジョン。世界初のカートリッジ式液晶ゲーム機です)

col-arcade-marquee
(アーケード筐体のマーキー)

col-sylpheed
(シルフィードのアップルⅡGS版。その上にあるのは遊撃手でも紹介された宇宙戦闘シミュレーションのコズミックバランス2)

col-russki-duck
(ラスキー・ダック。ナサー・ジベリのアメリカ時代の作品です)

col-pc-fx
(ゲームのコントローラ類。奥にPC-FXとそのソフト群が置かれています)

col-maze-master
(ゲームソフトの棚。左側にメイズマスターが見えます。バーズテイルの作者がその前に作ったRPGです)