ゲームレガシー

アップル、アタリ、コモドールといった海外レトロPCゲームについて。iPhoneのレトロゲーム情報もあわせて紹介します。このブログについて→ 電子書籍『ハルシオン・デイズ~コンピュータ・ゲームの先駆者たち』 (刊行準備中)→

アドベンチャー

30周年を迎えたゲーム「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)の新装版が英BBCのサイトに登場

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ダグラス・アダムス原作の「銀河ヒッチハイク・ガイド」といえば、日本ではもっぱら小説として知られていますが、原作は1978年に放送されたBBCのラジオ番組であり、小説版はその翌年に出ています。そして1984年にはアドベンチャーゲームの最高峰であるインフォコムが手掛けたゲーム版が発売されましたが、それがちょうど30年前のことでした。続きを読む

アドベンチャーゲームの一回性に挑んだ意欲作 「ジンダーノフ号の殺人」(Murder on the Zinderneuf)

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アドベンチャーゲームとは一回きりのもので、クリアしてしまえばそれでおしまい、というのが常識ですが、それを克服しようとした試みもありました。その中でもとりわけ知られているのが、1983年にエレクトリック・アーツより発売された「ジンダーノフ号の殺人」(Murder on the Zinderneuf)です。続きを読む

「キングス・クエスト」シリーズを独自改良したアマチュア集団、AGDインタラクティブ

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もう10年以上も前の話ですが、シエラ・オンラインの代表作「キングス・クエスト」シリーズの初期作品を独自に改良したアマチュア集団が話題となっていました。その名前をAGDインタラクティブ(AGDI)といいます。続きを読む

初期のシエラ・オンラインとハイレゾ・アドベンチャー・シリーズ その3 「ダーク・クリスタル」

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意欲的な大作は期待外れに終りましたが、幸いにもシエラ自体の経営は揺らぎませんでした。とはいえ、周囲の状況は激変のただなかにありました。のんびりとしていたPCゲーム業界も、次第に外部の目にさらされるようになり、従来の体質を改める必要が生じていたのです。続きを読む

初期のシエラ・オンラインとハイレゾ・アドベンチャー・シリーズ その2 「タイム・ゾーン」

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世界初のグラフィック・アドベンチャー・ゲームを発売したことで、急成長をとげたシエラ・オンライン(当時はまだオンライン・システムズという名前でしたが、便宜上こちらの名前を使います)でしたが、最初の大きな躓きとなったのもアドベンチャー・ゲームでした。経営上の致命傷にこそなりませんでしたが、この挫折は会社にけして小さくない傷を残すことになります。続きを読む

初期のシエラ・オンラインとハイレゾ・アドベンチャー・シリーズ その1 「ミステリー・ハウス」

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シエラ・オンラインはCD-ROMやネットワークゲームにもいち早く進出するなど、常に新しい技術の活用に積極的な会社でしたが、その基盤は常にアドベンチャー・ゲームにありました。続きを読む

名作SF小説のゲーム化としては例外的な成功を収めたアドベンチャーゲーム 「ニューロマンサー」

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文芸ジャンルとしては、SFはファンタジーに次いでゲームと親和性の高いものですが、実際にそうした動きが始まったのは80年代半ばのことでした。その多くはアドベンチャーゲームで、出来栄えとしては残念ながら芳しくないものが大半でしたが、例外的に高い評価を得たのが「ニューロマンサー」でした。

これは1988年にインタープレイより発売されたもので、アップルⅡ、コモドール64のほか、アミーガやアップルⅡGS、IBM-PCにも移植されました。原作はもちろん、サイバーパンクという文化を生み出すきっかけにもなった、ウィリアム・ギブスン作の同名小説です。

筋書きは原作に準じており、2058年のチバ・シティを舞台に、プレイヤーはサイバースペースを駆け巡るカウボーイとなり、友人たちが次々と謎めいた失踪を遂げるなか、その裏にある事情をさぐる冒険の旅に乗り出す、というものです。

ゲームの内容としては、基本的にはアドベンチャーに分類されるもので、チバ・シティをうろつきながら、さまざまな人物とやりとりすることが中心なのですが、それとは別の作中世界として「サイバースペース」が設定されています。

サイバースペースにアクセスできるようになると、プレイヤーは大企業のデータベースに侵入し、敵対者である人工知能と戦うことになります。この戦いではお互いの能力値が関係してくるため、この要素をもって本作をRPGに分類する向きもあります。

プレイヤーの能力は、脳に埋め込まれたチップによって決まります。能力を伸ばすには難しい課題をクリアするか、新しいチップを店で購入する必要があります。また身体の部位も人工化されたものが商店で売られており、そうしたものと取り替えることで身体能力を向上できます。

主人公はチバ・シティとサイバースペースという、ふたつの世界を行き来しながら、この世界を覆っている謎を次第に解明してゆくことになります。

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本作は発表当時から高く評価されました。とりわけ原作小説の設定をうまく再現していることと、戦闘システムが優れていたことが、こうした高評価につながったようです。たとえばゲーム専門誌の「コンピュータ・ゲーミング・ワールド」は本作を1988年度の最優秀アドベンチャー・ゲームに選出しているほか、1996年にも「オールタイムベスト150作」のひとつに選んでいます。

もっとも、アドベンチャー・ゲームとしては本作がそこまで優れているかどうかは正直いって疑問なのですが、SF小説のゲーム化としてはかなり成功した部類に入るのは確かです。とりわけ原作が、物語としてはどうにもつかみどころのないものであることを考えると、それなりに健闘しているといっていいでしょう。

また、本作は音楽が良く出来ていることでも知られています。ロックバンド、ディーヴォの曲をアレンジしたものが使われているのですが、一聴の価値がある出来栄えになっています。(アップルⅡGSを除く)各機種の比較動画がありますので載せておきますが、やはりコモドール64版が抜きん出ているのがよく分かります。






アタリ2600で動くテキスト・アドベンチャー 「ダーク・メイジ」(Dark Mage)

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アタリ2600といえば、もう35年前のゲーム機なわけですが、今なお新作が作られているのにはやはり驚いてしまいます。その中には意欲的なものも少なくありませんが、ここでは、1997年に作られたテキスト・アドベンチャー「ダーク・メイジ」をご紹介したいと思います。

そもそも、1ボタンのジョイスティック、ないしパドルしかインタフェースのないアタリ2600で、テキスト・アドベンチャーを作ろうというアイデア自体が大したものですが、そうしたハード面での制約をこのゲームはなかなか巧妙な方法で克服しています。

ストーリーはいたって簡単なもので、プレイヤーは王宮の道化師を演じます。酒の問題で王宮を追放されてしまい、またそれによって、王国の財産が闇の魔術師(ダーク・メイジ)のところに持ち去られてしまいます。その財産を祖国に持ち帰ることができれば、ゲームは完了となります。

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インタフェースですが、まず東西南北の移動はジョイスティックを希望の方角に倒すだけです。コマンドの入力は、ジョイスティックで選択し、ボタンで実行となります。とはいえ、使えるコマンドはさほど多いわけでもなく、「ミル」「トル」「オトス」「ハナス」「ツカウ」「モチモノ」くらいなのですが。

本作が発表された当時、まず注目されたのがテキスト表示でした。というのも、アタリ2600で文字をテレビ画面に表示させると、どうしてもフリッカー(ちらつき)が目立ってしまうのですが、このゲームはそれを見事に解決しているのです。

このゲーム、物語としては、ひとまず完結はしているのですが、クリア画面では続編が予告されており、残念ながらそちらは未だに発表されていません。

本作はパブリックドメインとして配布されており、エミュレータで手軽にプレイできます。またプログラムのほか、ゲームの解法も、ネットで検索すれば容易に見つかりますので、興味のある向きは試されてみてはいかがでしょうか。

シエラ・オンラインの歴史に関するドキュメンタリー映画の資金公募が開始

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「ミステリー・ハウス」に始まり、グラフィック・アドベンチャーというジャンルを切り開いてきたゲーム会社、シエラ・オンラインの歴史をまとめたドキュメンタリー映画が企画され、今月より資金公募サイトのキックスターターでキャンペーンが開始されました。

この映画、タイトルを「ヒーローズ」(Heroes)といい、モトロフ・エンジェルという、新たに設立された映像制作会社の第一作として企画されたもので、関係者の証言を中心に、数々のヒット作にまつわるエピソードなどもまじえつつ、シエラの歩みをまとめた内容になるそうです。上映時間は1時間半を予定しているとのこと。

登場する人々は、シエラの創業者であるケンとロバータのウィリアムス夫妻のほか、「レジャー・スーツ・ラリー」の作者アル・ロウ、まだオンライン・システムズと名乗っていた初期の重要メンバーであるウォーレン・シュウェイダーやジョン・ハリスなど、幅広い時代から選ばれています。

また、コンピュータ関係のノンフィクション作家として知られるスティーブン・レビーも登場するとのこと。レビーの書いた「ハッカーズ」は、80年代前半のシエラ・オンラインの内情を克明に描いており、良くも悪くもシエラという会社の知名度を高めたという経緯があります。そのレビーが今になってどのようなコメントをしているのか、これは確かに興味深いところです。

キャンペーンの方は、まだ始まって数日ですが、それなりに反応もあるようです。映像作品ということもあってか、目標額もそれなりに高めですが、キャンペーン自体は8月初めまで続くそうで、なんとか実現までにもっていってもらいたいところです。

日本からの申し込みも受け付けているはずですので、興味のある方は下のリンクよりキャンペーンのページにアクセスしてみてください。

The History of Sierra On-Line through a Documentary Film by Luke Yost — Kickstarter

人気TVドラマ「ダラス」のアドベンチャー・ゲーム版 「ダラス・クエスト」

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「ダラス」というアメリカの連続TVドラマがあります。テキサスの富豪の人間模様を扱ったドラマなのですが、これが大変な人気を呼び、1978年の放映開始以来、10年以上続くという記録的な長寿番組になりました。

この番組、1984年にはアドベンチャー・ゲームになっています。発売元はデータソフトというゲーム会社で、アクションを中心にしていたものの、RPGなどでも秀作を残しています。作品を見る限りでは、わりと技術力のある会社のようでしたが、残念ながら80年代半ばには消えてしまいました。

本作の対応機種はアップルⅡ、アタリ800、コモドール64、TRS80で、オープニングではちゃんと番組のテーマ曲まで演奏してくれます。プレイ動画がアップロードされていますので、いろいろな機種で聞き比べもできますが、音はなかなかアップルも健闘しているものの、画面としてはやはりコモドールの方がいい雰囲気を出しています。TV版のオープニングと一緒に挙げておきましょう。







肝心の内容なのですが、ごく平凡なグラフィック・アドベンチャーです。難易度もわりとやさしい感じで、初心者向けといえるでしょう。ストーリーも、キャラクター以外は原作と無関係ですので、予備知識がなくともプレイできます。一応いくつかの評価サイトを見たのですが、わりと好評のようでした。

実はこのゲーム、なかなか貴重な存在なのです。なにしろ、80年代に限っていえば、TVドラマのゲーム化自体がまだまだめずらしいことでした。しかもアドベンチャー・ゲームになった例といえば、それこそ「プリズナー」か「銀河ヒッチハイク・ガイド」くらいしかありません。

ちなみにこの「ダラス」、日本ではまったくの不評で、1981年に大々的な宣伝と共に放映が始まったのですが、1年ほどで打ち切られてしまいました。作中の人間関係が複雑で、気楽に見られるようなものでもなかったので、仕方なかったのかもしれません。

「キングス クエスト」を初めとするシエラ中期のアドベンチャーが遊べるサイト

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オランダ・ハーグ在住のマーティン コール氏は、ウェブ制作会社に勤める2児の父親であり、そしてシエラ オンラインのアドベンチャー ゲームの熱心なファンでもあります。その熱が嵩じて、コール氏は実際にシエラのゲームがプレイできるサイトを開設してしまいました。それがこちらです。

このサイトの始まりは2003年に遡ります。当時、コール氏はシエラ作品に関するファンサイトを開設し、昔のアドベンチャーを模したグラフィック インタフェースでチャットが出来るというサービスを実施していました。そうするうちに、どうしても本物のアドベンチャーゲームを復活させたいと思うようになり、実際のゲームを解析して、ついには自分のサイトで再現させることに成功しました。

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こうした動きの背景には、シエラや(後にシエラを買収する)アクティビジョンが、過去作という資産を埋もれたままにしていることへの不満があったそうです。

その後もコール氏はサイトの改良や、新しい作品を加えるなど、改善を続けてきました。もちろんすべての収録作には権利者の許諾を得ており、メディアからの評価も高く、「レジャー スーツ ラリー」の作者でユーモア作家としても知られるアル ロウもその功績を讃えています。今後はiPhoneアプリの進出も考えているとのことで、コール氏の今後に期待したいところです。

さてシエラというと、日本では「ウィザード アンド ザ プリンセス」「ユリシーズ」「タイムゾーン」といった初期の、いわゆる「ハイレゾ アドベンチャー」というシリーズ名を冠された作品群が、比較的知られているように思います。これはまだ日本でPCゲームが珍しかった時代に、いち早く国産機に移植されていたところが大きいでしょう。

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一方で、このサイトでは「キングス クエスト」以降の作品が主に選ばれています。これはコール氏の好みもありますが、実際シエラといえばこの「キングス クエスト」で大きく飛躍した会社であり、どちらかというとこの中期の作品群の方が知名度も高いのです。

ただテーマが地味なせいか、あるいはグラフィックがお世辞にも凝っているとはいえなかったためか、この時期の作品はあまり国産機に移植されていません。

というわけで、一時代を築いた作品群をこのサイトで追体験してみてはいかがでしょうか。

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ゲームをプレイするには、画面右側に並んだタイトルを選択します。

今のところプレイできるのは「ゴールドラッシュ」「キングス クエスト」1~3、「レジャー スーツ ラリー」「ポリス クエスト」「スペース クエスト」1~2、「ブラック コルドロン」です。

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(サイト独自の機能として、マウスで操作できるコマンドメニューがあります)

なおプレイの注意点として二つほど書いておきたいと思います。

まずひとつは、ゲームのセーブは可能ですが、このサイトではセーブデータはURLという形で生成されます。手順は次のとおりです。

1. [CTRL]キーと[5]キー(このサイトではCTRLと数字キーでファンクションキーをエミュレートしています)を同時に押すか、またはコマンドラインでSAVEと入力する

2. ブラウザのURLバーに新たにURLが生成され、表示中のURLをブックマークするよう促すダイアログが表示される

このブックマークするURLが、いわゆるセーブデータとなります。これにはキャラクターの場所や持ち物、ゲームの進行状況といった情報が含まれます。

もうひとつは、主人公キャラクターの操作についてです。このサイトにあるゲームをプレイしていると、マウスを使っている場合、本来いてはいけないところにキャラクターが移動してしまうことがあります。たとえば、部屋の中を移動していて、なぜか壁の中に入り込んでしまうような場合があります。また、一度こうなると、正常な移動範囲に復帰できません。

これが発生した場合は、正常な移動範囲の好きな場所を、マウスボタンでダブルクリックしてください。そうすると、キャラクターがその場所に移動し、再びゲームを進めることができるようになります。

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なお、このサイトではマルチプレイに対応しています。とはいえ、参加しているプレイヤーどうしが協力できるというわけではなく、ゲームを同時にプレイしているプレイヤーが他にいる場合、画面上に表示される、という程度のものです(そもそも、元々のゲームがマルチプレイ対応ではないので当然ですが)。他人がプレイしている様子がリアルタイムで見られるというのは、なかなかに面白いことではありますが、ゲームプレイのさまたげになるかもしれません。その場合はメニューの [more] から [disable multiplayer] を選択すると、シングルプレイモードに設定できます。

また、あくまでブラウザゲームですので、動作に不安定なところもあります。より確実な形でプレイしたいという場合は、エミュレータなどの使用をおすすめします。

レジェンド エンタテインメント~インフォコム直系にして最後の継承者

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アドベンチャー・ゲームの最高峰であるインフォコムが、実質上の活動を停止したのは1989年のことでした。社員は散り散りになり、一部はフリーのゲーム作家として活動を続けましたが、大半の人々はそのままゲーム業界を離れてしまったようです。ただし、その中でひとり、インフォコムの意思を継承するために、自らゲーム会社を興した人物がいました。

その人の名はボブ・ベイツ。末期のインフォコムで「シャーロック」「アーサー」という2作のアドベンチャーを発表したゲーム作家であり、インフォコム消滅の直後にレジェンド・エンタテインメントという会社を創業しています。

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(ボブ・ベイツ)

とはいえ、娯楽小説のありとあらゆる分野を扱っていたインフォコムとは違い、レジェンドは当初からジャンルをある程度絞っていたようです。主なラインはふたつあり、ひとつはユーモア・ファンタジー、もうひとつは人気小説のゲーム化でした。

前者の代表作としては、まず元インフォコムのゲーム作家、スティーブ・メレツキーによる「スペルキャスト」シリーズがあります。

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ストーリーは至って簡単。魔法使いを志した田舎の少年が都会の大学に進学し、魔法を学ぶ一方、課外活動に参加し、美人ぞろいの女子学生たちとも交流を持つというものです。とはいえテキスト量はかなりのもので、学生生活の描写などはかなりリアルなのだとか。

ゲームとしては、基本的にはテキスト・アドベンチャーであり、添え物的にグラフィック画面が追加されているという感じです。コマンドについてはキー入力のほか、画面上のメニューから選択することも出来ます。

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面白いのはテキストが2モード用意されているという点です。それぞれ性的な描写の「あからさま度」が異なっており、好みに応じて選べるようになっています。とはいえ、テキスト自体には成人指定されるような、本当にあからさまな描写はいっさいなく、あくまでユーモアに重点が置かれた内容になっています。

この作品はなかなか好評だったようで、シリーズ化されて続編2作が発表されています。思えばメレツキーの出世作「レザー・ゴッデス・オブ・フォボス」も、ユーモラスかつ性的な要素を思わせる内容で商業的にも成功しました。レジェンドとしても、あれと似た路線であれば手堅いと考えたのかもしれません。

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そしてもうひとつの代表作が、「粗忽者エリック」(Eric The Unready)です。ボブ・ベイツ自らが手がけた作品で、箱絵はファンタジーアートの大御所、ボリス・バジェホが担当していました。

舞台は典型的な西洋のファンタジー世界で、騎士になったばかりの気弱で不器用な少年がなぜか陰謀に巻き込まれ、王女を助けるための冒険に参加する羽目に陥ります。旅を通じて一人前の騎士となる主人公の成長ぶりがストーリーの見所といえるでしょう。

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この作品も「スペルキャスト」と同じシステムが使われており、基本的にはテキスト・アドベンチャーであることも同様です(もっとも実際にはシステムが先にあり、ストーリーは後から作られていました。この点もインフォコムと共通しています)。ただし作中のジョークらしき箇所には、何だかよく分からないものも多々ありました。どうやらモンティパイソンからの引用が多いらしく、そのあたりの知識があれば、ディテールの部分もふんだんに楽しめるのではないかと思います。

なお、このタイトルは史上初めてグリーンランドに上陸したと言われる10世紀のノルウェー人、赤毛のエリーク(Erik The Red)にちなんで付けられたのだそうです。

さて、もうひとつの小説ゲーム路線ですが、こちらの筆頭は何といっても、フレデリック・ポール原作の「ゲイトウェイ」でしょう。

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これは好評だったようで、続編も出ました。

その他、レジェンドがゲーム化した小説には、ピアズ・アンソニー「魔法の国ザンス」、ジョン・ソール「ブラックストーン・クロニクル」、スパイダー・ロビンソン「キャラハン」、テリー・ブルックス「シャナラの剣」などがあり、なかなかに興味深い選択といえます。

レジェンドのアドベンチャー路線は唐突に終わってしまいます。1998年には別のゲーム会社に買収され、それ以降はアクションゲームに方向転換してしまったのです。2002年にはFPSの「アンリアル」が大ヒットし、続編となる2003年の「アンリアル2」は前作をさらに上回る売行きを示しましたが、結局はそれが最後の作品となりました。2004年の年明けに親会社から「レジェンドは活動を停止しました」という短い発表が出され、そのまま静かに消えていったのです。

レジェンドは、優れた作品を発表したものの、結局は路線の変更を強いられました。市場の変化もあり、もはやアドベンチャー・ゲームは商業的には難しくなってしまったのでしょう。そうした意味で、インフォコムの意思を継ごうとした、レジェンドのような会社はもう二度と現れないのではないかと思います。アドベンチャー・ゲームの愛好者としては、実に残念なことです。

ボブ・ベイツは現在もゲーム業界で活躍しており、業界団体の要職にあるほか、大学でゲームデザインについて教えたりもしています。これまでに関わったゲームはおよそ40点あり、全作の売れ行きを合計すると600万部にも及ぶのだとか。日本では無名ですが、ゲーム作家としては相当なキャリアの持ち主と言えるでしょう。

もはやレジェンドのような会社は現れないでしょうが、それでもアドベンチャー・ゲームが完全に消えてしまったわけではありません。目立たないかたちではありますが、商業作もコンスタントに発表されています。そして何より、アマチュアの世界では今でもかなりの作家が活躍しており、とくにテキスト・アドベンチャーに優れたものが出てきています。こうした動きについては、いずれまた取り上げてみたいと思います。

マグネティック・スクロールズ~インフォコム唯一のライバルにして欧州アドベンチャーの頂点

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インフォコムといえばアドベンチャーゲームの最高峰。その彼らが唯一ライバル視していたのが、イギリスのマグネティック・スクロールズでした。わずか6年ほどしか存続せず、日本では知名度ゼロの会社ですが、アドベンチャーゲームの快作を次々と発表し、今なお根強いファンがいます。

思えばインフォコムがゲーム業界を席巻していた頃、いくつもの競合相手が現れたものでした。シナプス、テラリウム(トリリウム)、エレクトロニック・アーツといったあたりですが、そのすべてがインフォコムに対抗するどころか足元にも及ばないままアドベンチャー・ゲーム市場から撤退していきました。そして唯一、インフォコムにその存在を意識させたのがマグネティック・スクロールズだったのです。

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マグネティック・スクロールズの第一作『ザ・ポーン』(The Pawn)は1986年に発表されました(実はその前年に原型となる作品が出ていましたが、シンクレアQLというマイナーなマシンでしか動作しなかったため成功しませんでした)。アドベンチャー・ゲームとしてはそこそこの出来でしたが、当時の16ビット機ならではの美しいグラフィック画面とマウス操作にいち早く対応していたことから、発売早々に注目され、売れ行きも好調でした(アタリ800やコモドール64のような8ビット機でも動作しましたが、そちらではグラフィックはごく平均的な出来です)。そして何よりも重要なのが、コマンドの処理部分である、いわゆるパーサーが優れていたことでした。

当時のアドベンチャーゲームにおいて、パーサーの優劣はゲームの出来に大きく関わる要素でした。優れたパーサーは複雑なコマンドを適切に処理できるため、ゲームの自由度を大いに高めることになります。この点においてインフォコムの技術は他社を遥かに凌いでおり、それがそのままインフォコム作品の魅力にもなっていました。マグネティック・スクロールズのパーサーは、さすがにインフォコムには及ばなかったものの、それ以外の他社製品を大きく引き離すほどの出来でした。

マグネティック・スクロールズもそのことを意識しており、広告でパーサーの優秀さを大きく打ち出していました。たとえば、宣伝の謳い文句に"Get all except the cases but not the violin case then kill the man-eating shrew with the contents of the violin case."(バイオリン・ケースを例外として、ケース以外のものをすべて拾い、次にそのバイオリン・ケースの中身で人喰いネズミを殺す)というコマンドも受け付けることができるとあります。じっさい、マグネティックのパーサーは一度に32ものコマンドを処理でき、この点に関してはインフォコムをはるかに超えていました。

また、ユーザーが指定すればグラフィック画面をオフにすることもできました。たとえ絵の助けがなくともクリアできるよう、テキストには情景描写がふんだんに盛り込まれてあり、そもそもこのゲームではグラフィックは単なる付け足し的な要素でしかありませんでした。それがまた、テキスト・アドベンチャーこそ至上と考えるハードコアなゲーマーにアピールする結果になったのです。

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翌1987年に発表された第2作『盗賊たちのギルド』(The Guild Of Thieves)は、あらゆる面において前作を上回る出来でした。見習いの盗賊が一人前になることを目指してさまざまなアイテムを手に入れてゆく、というのが主な筋書きですが、ストーリーよりも謎解きを重視した内容で、プレイ時間も長くなっています。またパーサーも改善されており、場所の移動に関しては"goto (目標の場所)"を入力するだけで目的地に着くことができるようになりました(つまり、マップに従っていちいちキタだのミナミだの入力する手間が省かれたわけです。ただしこの機能は、当然のことながら一度行ったことのある場所にしか当てはまりません)。またアイテム探しにしても、徐々に難易度が上がってゆくよう綿密にデザインされています。

マグネティックはそれ以降もいくつかの作品を出していますが、その中では『腐敗』(Corruption)がとりわけ個性的な内容といえます。それまでのファンタジー路線を離れ、現代のロンドンを舞台にした意欲作で、不倫にインサイダー取引、麻薬の密輸といった要素が登場する社会派ミステリーでした。

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ところが、状況はマグネティックに不利な方向へと動いてゆきます。アドベンチャー・ゲームの主流がマウスでコマンドを指定してゆく、いわゆるコマンド選択式に変わってしまい、もはやパーサーの優劣が意味をなさなくなってしまったのです。そこでマグネティックは、GUIを強化したウィンドウ型の新しいエンジン「マグネティック・ウィンドウ」を開発し、時代に取り残されないための努力を重ねてゆきます。

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ただしそれでも、マグネティックのゲームは内容的には従来のテキスト・アドベンチャーと変わっておらず、アドベンチャーの主流はシエラやルーカスアーツに移ってしまいました。大変な労力をかけて開発した「マグネティック・ウィンドウ」でしたが、そのシステムを使った作品はルイス・キャロルの有名な童話をモチーフとした『ワンダーランド』1作だけで、旧作を「マグネティック・ウィンドウ」に移植した新装版を出したりしたものの、思うような売り上げにはつながらず、かつての勢いを取り戻せないまま1992年にマグネティックはその活動を終えました。

マグネティックの敗因は新型エンジンの開発にあまりもの予算と時間をつぎ込んだことにありますが、たとえその失敗がなくとも、全体的に見ればアドベンチャー・ゲームの人気そのものが80年代の終わりとともに急速に縮小していたため、アドベンチャー専業であった同社はいずれ大きな危機にさらされていたことでしょう。そして、その流れにはインフォコムですら乗り切ることができなかったのです。

マグネティック・スクロールズはわずか8作しか残しておらず、会社としても短命でしたが、その影響力は今なお絶大なものがあり、アドベンチャー・ゲームの世界ではインフォコムに次ぐ人気を誇っています。マグネティックに関するサイトもいくつかあり、インフォコム同様、その作品は時代を超えた価値があるといっても過言ではないでしょう。
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