先日の決算特別委員会で見てきた参考資料の中に『市税差押状況』というのがありました。多摩26市の他市と比べて狛江市はどうかというデータなのですが、なかなか凄い数字でした。

 単位人口当たりの市税差押件数は、狛江市は2位の福生市の1.5倍。他を寄せ付けない独走状態です。与党の生活者ネット(狛江市では自民・公明と組む与党です)がヒアリングしてきたという国立市と比べても2.3倍の多さ。その生活者ネットは、今の狛江市のやり方を何とか擁護しようと、他と比べて狛江市の徴税行政が特にひどい訳ではないと議会で言っていましたが、果たしてそうでしょうか。

多摩26市の市税差押件数

 他市並みならばいいという問題では決してありませんが、差押件数それ自体も、人口わずか8万の狛江市が、町田市に次ぐ第2位です。人口8万の市の差押件数が、人口56万の八王子市の差押件数の約2.9倍もあるなんて、どうなってるんですかね、一体。

■多摩26市の平成27年度中の市税(市税のみ)差押件数
(今年の狛江市決算特別委員会参考資料より)
団体名27年度
差押件数
人口(*1)
八王子市480562,572
立川市958179,090
武蔵野市892142,138
三鷹市775182,092
青梅市564137,052
府中市1,065254,551
昭島市730112,727
調布市756224,191
町田市1,649426,648
小金井市510117,427
小平市1,220186,958
日野市893180,975
東村山市512151,412
国分寺市564119,379
国立市56874,558
福生市68058,553
狛江市1,39179,096
東大和市36786,162
清瀬市41574,374
東久留米市1,174116,494
武蔵村山市55772,092
多摩市291147,486
稲城市53486,594
羽村市28656,604
あきる野市43181,697
西東京市707198,267

*1:人口は平成27年1月1日現在の住民基本台帳登載人口

 また、この参考資料には、平成23~27年度の各市の年ごとの市税差押件数も載っていたので、そのデータも、タブ区切りのテキストとしてこちらに付けておきます。

物件別の差押件数

 件数もさることながら、問題はその中身。何をどう差し押さえるかです。

 以前の記事で、狛江市の各年度版『決算資料 主要な施策の成果説明書』に載っている、物件別の年度中差押件数のデータを表にまとめたことがあります。先日の決算委員会で、その2015年度分のデータを見てきたので、表をアップデートしておきます。

■狛江市の差押執行件数の推移

 なお、こちらの合計件数は、上の市税差押件数とはだいぶ違います。納税課に行って確認したところ、こちらは市税と国民健康保険税を合わせた数字なので、上の26市比較データ(市税のみ)とは違いますというお答えを頂きました。

給与差押は、勤め人にとって一番酷なやり方

 上の表を最初に作った時の記事にも書きましたが、最近の狛江市の徴税行政の中でも目立つのが、給与差押の増加です。去年の決算特別委員会の議事録を見ても、「中でも給与債権の差し押さえに力を入れ…」と、納税課長さんが明言しています。

 給与債権の差押は、2006年度まではゼロ(『主要な施策の成果説明書』で調べた限り、少なくとも2001~06年度はゼロでした)、2007年度はわずか2件だったものが、2015年度は259件。8年間で約130倍という凄まじい増加ぶりです。

 給与差押が出始めた2007年といえば、住民税の所得割税率が、所得に応じた3段階の税率から一律10%になった年でもあります。

 2000年代前半までは、差し押さえといえば電話加入権が一番多かったそうですが、その価値の低下もあり、預金債権や給与債権にシフトしてきたようですね。2006年の予算委員会の議事録を読むと、狛江市もすでにこの頃から「給与債権の差し押さえは最後の手段」という方針を転換せざるを得なくなってきた事が伺えます。

■これはメンタルに来るわ

 なぜ給与差押は最後の手段とされてきたか。その理由は、狛江市の税金督促ビラの裏面にあるこのフローを見れば、察しがつきます。

 すごいですよねえ。まず財産調査の段階で「勤務先に滞納の事実が知れる」、そして「債権差押通知書が勤務先に送達」される。もし勤務先が人の弱みにつけ込むブラック企業だったら、たまったもんじゃありません。しかもこの手順では、②の通知書は、本人へ送るよりも前に、まず勤務先の方へ先に送り付ける。ほんと嫌がらせ度の高いシステムですねえ。そしてトドメは「滞納金額がなくなるまで差押は続きます」の一言。(逆に言えば、取り立てる側は楽ですよね。給与差押は一度手続きが済めば、あとは自動的に継続可能でしょうから。)

 これを見てよく分かりましたよ。「財産調査はあなたの『社会的信用』に重大な影響を与える場合があります」という、このビラの表側にある言葉の意味が。またそれが単なるハッタリではないことも。

今や狛江市では、差し押さえの7件に1件が給与差押ですから。

おわりに

 本来、税金を払おうにも払うのがままならなくなった人の担税力を取り戻すために行政が行うべき事はまず、その人の就業環境を良くするための支援です。それには当然、その人の社会的信用を守ることも大事なはず。それを、こんなやり方で取り立てたら、その人の就業環境は良くなるどころか、逆にどんどん悪くなりかねません。

 今日、大学生の2人に1人が奨学金という名の借金をしています。こちらの調査によれば、平均借入総額は300万円超。社会に出る前からこれだけの借金を背負ってしまえば、思わぬ出来事によって収入と支出のバランスが崩れた時、税金を滞りなく払うのがままならなくなる、そんな状況にいつなってもおかしくありません。

 むしり取る徴税行政から支える徴税行政への転換。それこそ、真の「行政のプロ」が取り組むべきことではないでしょうか。