ピピピピピピピピピピ
ーーん……なんだ……
ピピピピピピピピピピ
ーーうるせぇな……
ピピピピピピピピピピ
ーー……
ピピピピピピピピピピバシッ!

しつこい目覚ましの音で目を覚ましたオレは、のっそりとベッドから体を起こす。
この場合、しつこいのはいつまでも寝ているオレなのだがその辺りは気にしない。
数年前ぐらいから寝覚めが異様に悪いのだ。
しかし、マンションで一人暮らしなので自分で起きなければ昼まで寝過ごしてしまう。
新学期早々、それは避けたかった。

そう、そうなのだ。
今日からオレは高校二年生であり、しかも転校初日でもあるのだ。
失敗する訳にはいかない。


欠伸をしながら新しい制服に着替え、パンを焼く。
ジャムは何塗ろう……
面倒なので何も塗らずに牛乳で流し込む。


この転校というのは少し訳アリのようだった。
前の学校の教頭からさりげなく転校を勧められた。
三ヶ月と少しの間、毎日欠かさずにな。
何故か知らないがどうしても転校して欲しかったみたいだったので、「善意」の価格でこのマンションに住んでいる。
とても申し訳ない。
……3LDKで手を打ちました。

しかし、この広大な横浜閉所、通称クローズドシティの中でもそれなりに遠い高校に転校した訳なので何分勝手が分からない。
しかし、30分ありゃ着くだろ。
上がり始めたテンションに任せ鼻歌を歌いながら、前のアパートには無かったエレベーターで一階まで降りる。


クローズドシティ、横浜閉所は神奈川の東半分を覆っていて、その周りは高い塀に囲まれている。
その理由は簡単、危ないからだ。
具体的に言うと、ゾンビが、即ち「狂人類」が闊歩しているのだ。
20X1年1月13日奇しくも金曜日、有史至上最も最悪の日。
ゾンビ記念日。
実際はそんな可愛らしいものではないのだが。
その日、何が起きたのか遂に把握することは出来なかった。
政府の発表に依れば、不確定暴走症候群と言う病で、人類を含めた全生物の6%近くが患った、ということになっている。
その症状は原因の無いまま狂人化し、周囲の人に襲い掛かる。
脳の神経はブチ切れ、人体のリミットを超えた力を発揮し、もちろん痛覚などない。
止める為には、物理的に動けないように筋肉や筋を断つ。
脳や心臓を停止させる。
大量に出血させる。
例外で毒殺、絞殺も可能。
それ以外に方法無し。
そんな悪魔のようなヤツらがフラフラしている塀の外に出たい奴なんていない。
なので、シティ内は基本自給自足で、シティ間の移動は空路や海路に限られるのだ。


マンションを出たオレは地図を見ながら「西中高校」へ向かう。
あれ?割と遠い。
少し急ぐか。


ゾンビ記念日から一年半ほど、閉所のシステムが安定し出した頃、
新たな問題が起きていた。
不確定暴走症候群に罹りながらも暴走しない「超人類」の存在が認められたのだ。
ある程度まで、脳のリミットが外れた彼らは何故か超能力を使うことが出来た。
まあ、詳しくは分からん。


どうやら西中高校は隣のエリアにあるようなので、ゲートを通って隣のエリアに移動する。
少し焦り始めたオレは心なしか駆け足で移動する。


その後、超人類の扱いで相当揉めた。
ちょっとしたパニックまで起きたのだ。
いつか暴走するのではないかと、心配する声も多かった。
その対策の為にシティを幾つかのエリアに分け、その境界線上にも塀を作ることで落ち着いたらしい。

ヤバい、遅れる。
オレは既に全力で走っていた。
地図を見ると残り数キロメートルらしい。
ふと時計を見ると残り4分。
早急に自転車を買おうと思った。