2011年07月06日

チクセントミハイがダボス会議に招待された際のエピソードが167ページに紹介されています。

その時、チクセントミハイは一緒に招かれていた3人のノーベル賞受賞者の経済学者から発せられた言葉に耳を疑います。

会議の主催者が、「現代の経済学においてもっとも重要な課題は何か」と問いかけたのに対し、3人のノーベル賞学者は説明の最後に一様に、

行動に関する十分な説明を経済学はいまだに提示することができない」
経済学には『何かが足りない』」

という意味の発言をしたそうです。

それに対し、チクセントミハイは、彼らの優れた洞察力を賞賛したそうです。つまり、<モチベーション2.0>では現代の課題を説明しきれないということです。

フローの概念は1970年代半ばに発表されましたが、すぐに世の中に受け入れられたわけではありません。それは、
<モチベーション2.0>には、フローのような異質の概念を受け容れる余地がほとんどないからです。

しかし、状況はだんだん良くなってきています。フローが体験できない職場は高い代償を払わなくてはならない状況に追い込まれ、フローを配慮した環境の創造が、職場の生産性と満足度を上げるという事実に多くの企業が気づきはじめています。

スウェーデンの運送会社グリーン・カーゴ社は、エリクソンでフロー概念を社内に導入し成功した副社長のステファン・ファルクを引き抜き、マネージャーに対してフローの果たす役割について教育を施したところ、過去125年間ではじめて黒字を計上したそうです。

アメリカの企業における科学者やエンジニアを対象にした調査では、知的挑戦への欲求が、生産性(向上)を予測するうえでもっとも的確な判断材料だとわかっているようです。また、内発的な欲求に動機づけられた科学者は、金銭が動機の科学者と比べて、驚くほど多くの特許を出願するのだそうです。


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「モチベーション3.0」第5章「マスタリー(熟達)」では、ミハイ・チクセントミハイに関する記述に多くの頁があてられています。

チクセントミハイとフロー理論については、ネット上にも多くの情報があるので、そちらを参照していただくとして、この章の中でいくつか重要と思われるところを紹介します。

「もっとも重要なのは」、と前置きしてダニエル・ピンクが述べているのは、

フローにおいては、「やらなくてはならないことと、できることの相関性がぴったりと一致する」という点です。

多くの人は、「やらなくてはならないこと」という言葉を聞くと、あまりいい印象を持ちません。特に若い人ほど「やらなくてはならないこと」をするよりも、自分が「やりたいこと」をする方を望むでしょう。

しかし、仕事においても人生においても、それが与えられたものであっても、自ら設定したものであっても、必ず「やらなくてはならないこと」が存在します。それらに対してネガティブな感情を抱いていると不幸なことになります。

逆に、単に従順な姿勢で「やらなくてはならないこと」に取り組むだけでは、精神的に満たされた人生を送れないことは、先にも書いた通りです。「やらなくてはならないこと」をやりながら、フローと呼ばれるような状態になることが大切です。

「やらなくてはならないこと」をやりながら、フロー状態に入るには、いくつか条件が必要になります。

「課題は簡単すぎず、難しすぎないこと」

「現在の能力よりも一、二段高く、努力しないと到達できないレベルのことをほぼ無意識にうちにやっていること 」


それでは、フロー状態に入るとどうなるのでしょうか?

「月並みな体験とはまったく異なるレベルの集中と満足感を生み出す」
「その瞬間をきわめて深く生きている」
「完全に思いのままになると感じる」 
「時間や場所、自分自身でさえ存在を忘れるような感覚を抱く」

これらのことが起こるそうです。

そして、人はフロー状態では自律的である以上に、その活動に打ち込むんだそうです。

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2010年12月16日

現代の職場でもっとも顕著な特徴は、

●社員のエンゲージメントの欠如
●マスタリーへの無関心

この二つかもしれないとダニエル・ピンクは言います。

この点について、ギャラップ社が広範囲な調査を行ったそうです。その結果アメリカでは、

●従業員の50%以上が仕事にエンゲージしていない
●従業員の約20%が意識的にエンゲージしていない

このような事実が分かりました。

これは、年間およそ3000億ドル(30兆円近い)の生産性の喪失に相当するそうです。この金額は、ポルトガルやシンガポール、イスラエルのGDPを上回ります。

それでも、コンサルティング会社のマッキンゼーによると、労働人口のほんの2〜3%しか仕事に自発的な関心を示さない国があるようですので、それに比べるとずいぶんましな方かもしれません。

しかし、企業や国家の経済的損失だけでなく、仕事に自発的に取り組めない、また、組織や仕事に積極的に関与できないというのは、個人にとっても不幸なことだと思います。

従順な態度は、ただ生きているだけでいいなら有効な戦略であるが、充実感を味わいながら生きるには粗末な戦略である。精神的に満たされた人生を送りたいなら、管理する側の要求を満たすだけで不十分である、とピンクは警鐘を鳴らしています。

人々が過剰に従順になり、エンゲージしなくなったのは、職場や学校、家庭に原因があると思われます。それらでは、人々が従順な方がやりやすいので、人々に従順になることを求め、エンゲージメントは求めてこられませんでした。

従順な態度でもその日一日は乗り切れますが、エンゲージメントがないと明日への活力は湧いてきません。昔に比べると、無気力な人が多くなり、精神を病んでいる人が多くなっているのも、こういったところに原因の一端があるのではないかと思います。

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モチベーション 
先に、「マスタリー」は少し理解しにくいと書きましたが、本書にも、「マスタリーの追求は、その重要性にもかかわらず第三の動機づけのなかではあまり目立たないことも多い」と書かれています。

続いて、

「(マスタリーの追求は)経済の発展においては必要不可欠になってきている」とも書かれています。

では、なぜマスタリーが経済発展に不可欠なのでしょうか?

それは、今までの仕事の大半がルーチンワークであり、従順な労働者を雇えば組織は機能していましたが、そういう時代は終わりを迎えたからです。

そして現代は、以前より複雑な世の中になっており、それら複雑な問題の解決には、探求心と新たな解決策を試そうとする積極的な意志が必要だとダニエル・ピンクは言います。

<モチベーション2.0>では従順な態度が求められていましたが、<モチベーション3.0>では積極的関与が求められているのです。そして、積極的関与だけが物事に熟達することを可能にする、とピンクは言います。

現在、就職難の時代が続いていますが、企業の求める人物像も、以上の記述に合致していると思います。それは、企業も時代の変化を敏感に感じているからだと思います。

どうやら、マスタリーと積極的関与(エンゲージメント)は、切っても切れない関係にあるようです。

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モチベーション 
ここから、「モチベーション3.0」第5章の「マスタリー(熟達)」に入ります。前章の「自律」は割と理解しやすい内容だったと思いますが、この「マスタリー」が<モチベーション3.0>にとってなぜ重要な要素なのか、少し理解しにくいと思いますので、じっくり学んでいきたいと思います。

本書160頁から、「マスタリー」についての説明がなされている箇所を抜粋すると、

●自律の反対は統制(コントロール)である
●自律と統制は対極に位置し、私たちを異なる目的地へと導く
●コントロールは人を従順へと導く
●自律は関与(エンゲージメント)へと導く
●この相違から「マスタリー(熟達)」がもたらされる

この、上から3番目までは比較的理解しやすいと思いますが、4番目、5番目がわかりにくいと思いますので、もう少し掘り下げてみましょう。

まず、「関与(エンゲージメント)」という概念にあまりなじみがないと思いますので、本書に補足説明されている箇所を抜粋してみます。

「(エンゲージメントは)本来は『関与』『絆』などを意味する。最近は、『仕事に対する真剣な取り組み』、さらに『個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合う関係」を指す』」

これらの説明から、

「人が自律的に仕事をするようになると、仕事に対して真剣に取り組むようになる」

「人が自律的に働いている組織では、個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合う関係ができあがる」

このように理解したらいいのではないかと思います。仕事に真剣に取り組み、人と組織が成長すると「マスタリー(熟達)」に到達するということですね。

「マスタリーとは、何か価値あることを上達させたいという欲求」

このように、本書にも書かれています。人が統制から逃れ、自律性を取り戻すとマスタリーを目指すようになると、ダニエル・ピンクは言いたいのだと思います。

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モチベーション 
人はそれぞれ、人によって異なる欲求を持っています。そうした個人の欲求は一見その人の自己表現に見えますが、それは共通の根源から芽生えている、とダニエル・ピンクは言います。

その根源とは何か。それは、これまで繰り返し述べられてきたことです。

「私たちは、ゲームの駒ではなくプレーヤーになるために生まれてきた」

「私たちは、本来は自律的な個人であって、機械仕掛けの人形ではない」

「私たちは、生来タイプIなのである」

これらが、我々に備わっている初期設定なのですが、それを変更している、あるいは変更しようとしているものは何か。それこそが外部圧力であり、人は管理される必要があるという観念なのです。

したがって、そうした外部圧力や観念を取り除かない限り、我々は本来の状態を取り戻すことが出来ません。

そのためには、職場、学校、家庭など全ての環境を<モチベーション3.0>にアップデートする必要があります。そして、リーダーになる人が人間の本質についての真実と、それを裏づける科学の成果を素直に認めるよう努力しなければなりません。

「人間の歴史の流れはこれまで、大きな自由を手に入れる方向へと進んできた。それには理由がある。自由の切望は、人間の性分だからだ」

これは、内発的動機づけ研究の第一人者エドワード・デシと共同研究を続けている、リチャード・ライアンの言葉です。さらにライアンは次のように語っています。

「人間の本質が発揮されることがあるとしたら、結局のところ、もっと自律的になることによってそうなるはずだ」

<モチベーション3.0>の重要性は、どうすれば従業員のモチベーションを上げることができるのかという、テクニックやノウハウ論ではなく、我々が人間本来のあるべき姿を取り戻す必要がある、というところにあると思います。

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モチベーション 

2010年12月11日

<モチベーション3.0>の考え方に共感し、自分の職場をそのように変えたいと思っても、現状はほとんどの職場が<モチベーション2.0>のやり方をベースにしているため、移行は容易ではありません。

仮に、管理された環境(現在のほとんどの職場がそうである)で働いている人を、いきなり<モチベーション3.0>的な職場環境に放り込んだとしたら、その人の苦労は目に見えています。

本書には、自律的な働き方を実現するための移行について、次のように表現されています。

「移行のステップを各従業員が見つけられるように、組織は『足場』を組む必要がある」

ここでのポイントは、「移行のステップを従業員自らが見つける」ことと、「組織はそれをサポートする」ということだと思います。

また、「自律に向けて移行すると、従業員一人ひとりが自律の異なる側面を重んじるようになるはずだ」とダニエル・ピンクは言います。ある人は課題設定についての自律を切望し、別の人はチーム編成に対する自律を望むかも知れません。

このように、従業員自らが自律を求めるようになれば、着実にステップを踏んでいると言えるのではないでしょうか。

ダニエル・ピンクがザッポスの創業社長シェイから受け取ったメールの内容が本書に紹介されています。次の文章はその一部の抜粋です。

「人が何をコントロールしたいと感じるのかは、本当に人それぞれです。(中略)雇用主にとってもっとも有効な戦略は、従業員一人ひとりにとって何が大切なのかを理解することではないでしょうか」

今までの社会は、ひたすら効率化を目指してきたので、マネジメントにおいても画一的な手法がとられやすくなっていると思います。実際、経営者や上司が従業員一人ひとりのことを詳細に把握するのは、恐ろしく手間のかかることです。

しかし、それが避けられないことなら、手間を惜しまず、勇気を持って取り組む必要があると思います。その先に、従業員にとっても経営者にとってもよりよい未来があることを信じて。

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モチベーション 

2010年12月09日

自分のペースで仕事をしたい、自分のやり方で仕事を進めたいと思っている人は多いと思います。

有名な芸術家は、どんな仕事をしなければならないのか、仕事を何時に始め、何時に終えないといけないのか、誰と一緒に働かなくてはいけないのか、などといった制約の元に作品を制作していないでしょう。だからこそ、偉大な芸術作品が生まれてきたとも言えます。

しかし、そのような仕事の仕方に対する欲求は、芸術家だけではなく、どのような職業についている人にも当てはまるのではないでしょうか。つまり、どのような人も、元々自律的に働きたいという欲求を持っているのです。

しかし、自律的になるということは、責任をないがしろにしてもいいということではありません。モチベーションのOSが3.0であっても2.0であっても、仕事には責任を持たなければなりません。重要なのは、人間の本質についての考え方です。

<モチベーション2.0>では、自由を与えれば人間は怠ける。だから、自律的にやらせると責任を回避するだろうと考えます。

一方、<モチベーション3.0>では、人は本来、責任を果たすことを望んでいる。だから、課題や時間、方法、チームを確実に任せることが、目的に至る早道だと考えます。

それぞれ、考え方が違うので、自由や責任の与え方、任せ方が異なります。考え方が<モチベーション2.0>のままで、<モチベーション3.0>のやり方をマネしても、絶対にうまくいかないと思います。 

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モチベーション 

2010年12月08日

<モチベーション2.0>型の組織で、チーム編成についての完全な自律性を実現するのは難しいかも知れません。しかし、組織を超えた枠組みを作るのは、ソーシャル・ネットワークの影響力やモバイル・アプリケーションの台頭により、以前よりも技術的には容易になりました。

ウィキペディアファイアーフォックスリナックスアパッチなどを開発するために集まった、オープンソース・プロジェクトがその例です。オープンソースの例については、下記の記事も参考にして下さい。

http://blog.livedoor.jp/trophy8046/archives/65919284.html

これら、自主的に組織されたチームで働く人は、既存組織内のチームで働く人よりも満足感を抱いているという、豊富な研究結果もあるようです。また、内発的動機づけ研究の第一人者デシやその他の研究者によると、内発的動機づけが高い人は優秀な同僚として評価されているそうです。

これらの理由により、チームに関する自律性は大きく発展する可能性がある、とダニエル・ピンクは言います。それは、どうしてでしょうか?

人は誰でも認められたいという欲求を持っています。また、働きやすい環境で働きたい、一緒に働きたい人と働きたい、というのは至極当たり前の感情です。

しかし、今まではそういった職場を自力で作ることは、自分で起業でもしない限りかなり困難でした。でも、そういった働き方が出来る選択肢が増えてくると、人はより働きやすく、より働きがいのある職場環境を選ぶ可能性が高くなることは誰でも容易に想像できます。

タイプIの人とともに仕事をしたければ、自分自身がタイプIになることが一番の近道だ」

このようにピンクは書いています。自分が一緒に働きたいと思う人と一緒に働きたいならば、自分自身が一緒に働きたいと思われる人になることです。それは、自分自身の幸せな働き方を実現することにもつながるのです。

また、ピンクは次のようにも書いています。

「結局のところ、自律性は伝染するものだから」

昨今、新型ウイルスの流行が大きな問題になっています。体に害のあるウイルスへの感染は防がなければなりませんが、自律性はもっともっと流行して、感染者が増えていって欲しいと願っています。

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前回まで、自律性が重要な仕事の4つの基本的要素の、「課題」、「時間」、「方法」についてみてきました。これらは、<モチベーション2.0>型の組織でも、果敢に物事に取り組む人なら、いくらかは自由を得ることが可能かも知れません。

しかし、チームで一緒に働く人を選ぶ自由を与えられることはほとんどないと思います。でも、人間関係の問題で職場を離れる人は少なくありませんので、チーム編成に関する自律性はとても切実な問題だと思います。

ところが、少ないながらもこの自律性を実現している企業があります。自然食品スーパーで有名なアメリカのホールフーズでは、各部門の責任者が人材を採用するのではなく、各部門の従業員が採用する人を選ぶ仕組みにしています。

また、ゴアテックスで有名なW.L.ゴア・アンド・アソシエイツ社では、昇進してチームを率いたいと思う人は誰でも、自分と働きたいという仲間を集めなければならない仕組みになっています。

グーグルでは、20%ルールで新たな製品のアイデアが生まれたときには、自分たちで仲間を集めて「小グループ」を編成し取り組むことができます。この「小グループ」には予算も権限もほとんどないようですが、トップからの指示ではなく自発的に編成することができます。

これらの先進的な企業もありますが、4つの基本的要素の中で「チーム」に関する自律が一番進んでいない、とダニエル・ピンクは言います。その理由は、自由裁量の要求がその他の責務と利害が一致しないからです。

フェデックス・デーを導入しているアトラシアンでも、 20%ルールを試みた際には、社員がその20%の時間を使い切っていなかったうようです。その主な理由は、進行中の仕事から離れることで、同僚に迷惑をかけたくないと社員が感じたからだそうです。

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