20090812
D&D鬼草紙 第2回「牛頭鬼&馬頭鬼」



逞しい巨躯を持つこれらのオニは、定命の世界の遠い血族たちとは異なり、それぞれがその名の通りの動物の頭部を持つ。
牛頭鬼は牛の頭、馬頭鬼は馬の頭を持つのが、本来は草食獣であるはずのそれらには鋭い牙が生えて、オニらしい恐ろしげな姿をさらしている。彼らはナラカ(冥府)と呼ばれる死者の魂の審判場において獄卒を務めるが、しばしばナラカへ落ちるべき魂を追って定命の世界を訪れ、必要以上の暴力と殺戮をもたらすとして恐れられている。
・遭遇グループ
◆レベル10遭遇(XP2200)
・馬頭鬼(レベル10精鋭 砲撃役) 1体
・赤鬼の兵卒(レベル9 暴れ役) 3体(第4回に登場予定)
◆レベル10遭遇(XP2400)
・牛頭鬼(レベル11 精鋭 暴れ役) 1体
・鬼女の般若(レベル11 砲撃役) 2体(第7回に登場予定)
◆レベル13遭遇(XP4150)
・牛頭鬼(レベル11 精鋭 暴れ役) 1体
・馬頭鬼(レベル10精鋭 砲撃役) 1体
・青鬼の兵卒(レベル8 遊撃役) 3体(第5回に登場予定)
・黒鬼の兵卒(レベル7 兵士役) 1体(第6回に登場予定)
牛頭鬼 大型・シャドウ・人型、オニ | レベル11 精鋭 暴れ役 XP1200 |
イニシアチブ+9 感覚:〈知覚〉+8;暗視 焦熱獄([火]):オーラ3;範囲内に入るか、範囲内で自分のターンを開始したオニではないキャラクターは6[火]ダメージを受ける。またオーラの範囲内は立ち上る陽炎によって軽度の隠蔽を提供するマス目になるが、このオニはこの軽度の隠蔽から受ける視認困難を無視することができる。 hp:276;重傷値:138 AC25;頑健26、反応25、意志21 移動速度:6、飛行3(飛行時劣悪) | |
[m]金棒(標準;無限回)◆[武器] | |
間合い3;+14対AC;2d8+5ダメージ。 | |
[m]角突撃(標準;無限回) | |
牛頭鬼は突撃を行なう;+15対AC;2d6+5ダメージ。目標は伏せ状態になる。 | |
[M]ぶん回し(標準;無限回)◆[武器] | |
牛頭鬼は自分に隣接するクリーチャーすべてに1回ずつの金棒攻撃を行なう。 | |
属性:悪 言語:共通語、巨人語 技能:〈威圧〉+11、〈運動〉+15、〈隠密〉+14、〈地下探検〉+13 【筋】21(+10) 【敏】18(+9) 【判】16(+8) 【耐】18(+9) 【知】10(+5) 【魅】12(+6) | |
装備:ハイド・アーマー、金棒(大型モール) |
・牛頭鬼の戦術
牛頭鬼は遭遇開始の時点で可能ならば、必ず角突撃から戦端を開き、敵の目を自分に引きつけようとする。敵が自分に脅威を感じて接近してきたなら、以降はぶん回しを使用することで複数に金棒攻撃を行ない、大きな被害を与え続ける。
馬頭鬼 大型・シャドウ・人型、オニ | レベル10 精鋭 砲撃役 XP1000 |
イニシアチブ+7 感覚:〈知覚〉+9 極寒獄([冷気]):オーラ3;範囲内に入るか、範囲内で自分のターンを開始したオニではないキャラクターは5[冷気]ダメージを受け、自分の次回のターンの開始時まで減速状態になる。 hp:174;重傷値:87 AC24;頑健26、反応20、意志24 移動速度:6、飛行3(飛行時劣悪) | |
[m]鎖分銅(標準;無限回)◆[武器] | |
間合い3;+16対AC;1d10+2ダメージ。 | |
[m]噛みつき(標準;無限回) | |
間合い2;+15対AC;1d6+2ダメージに加えて継続的ダメージ5。 | |
[r]妖光眼(標準;無限回)◆[凝視]、[光輝] | |
遠隔10;範囲内の馬頭鬼が見ることのできる敵2体まで;+15対“意志”;2d6+5[光輝]ダメージ。目標は動けない状態になる(セーヴ・終了)。 | |
属性:悪 言語:共通語、巨人語 技能:〈威圧〉+11、〈看破〉+14、〈地下探検〉+14、〈歴史〉+11 【筋】13(+6) 【敏】14(+7) 【判】18(+9) 【耐】21(+10) 【知】13(+6) 【魅】12(+6) | |
装備:ハイド・アーマー、鎖分銅(大型スパイクト・チェイン) |
・馬頭鬼の戦術
馬頭鬼は妖光眼のパワーを駆使して、遠距離から敵を動けない状態にしていたぶることを好む。しかし、敵が接近してきた場合はわざわざ距離を離すよりは鎖分銅や噛みつきで仕留めてしまおうとする。遭遇グループを牛頭鬼と組んでいるのならば、派手に暴れて敵の目を引きつける牛頭鬼を援護するように攻撃を行なう。
・牛頭鬼、馬頭鬼に関する知識
〈魔法学〉判定に成功したキャラクターは以下の情報を知っていることになる。
難易度20:牛頭鬼、馬頭鬼はオニの一族である。オニは多くの人型クリーチャーを奴隷として扱う支配的種族であり、強靱な肉体的戦闘能力と妖術と呼ばれる魔法戦闘能力を併せ持つ。彼らはオニの中でも定命の世界ではなくシャドウフェルをその活動本拠地とする。
難易度25:シャドウフェルの地下深くにはナラカ(冥府)と呼ばれる地底王国があり、そこが牛頭鬼、馬頭鬼の暮らす場所だ。彼らの多くはこの王国で役人や獄吏として一生を送っている。
難易度30:シャドウフェルをその起源とする牛頭鬼、馬頭鬼は通常のオニ族にくらべて不可思議な能力を残している。ナラカに満ちる妖力をそのまま身にまとう能力は「獄」と呼ばれ、意識せずとも牛頭鬼、馬頭鬼の周りに広がり身を守る。

以下のパワーは牛頭鬼、馬頭鬼の持つオーラの代替パワーとして入れ替えて使用することができる。また、先祖返りによって冥府のオニの力を取り戻したなどという設定で、牛頭鬼、馬頭鬼以外のオニを強化するために使用してもよいだろう。
焦熱獄([火]):オーラ3 | |
オーラの範囲内に入るか、範囲内で自分のターンを開始したオニではないキャラクターは3[火]ダメージを受ける(11レベルで6ダメージ、21レベルで9ダメージに増加)。またオーラの範囲内は立ち上る陽炎によって軽度の隠蔽を提供するマス目になるが、このオニはこの軽度の隠蔽から受ける視認困難を無視することができる。 |
極寒獄([冷気]):オーラ3 | |
オーラの範囲内に入るか、範囲内で自分のターンを開始したオニではないキャラクターは5[冷気]ダメージを受け(11レベルで10ダメージ、21レベルで15ダメージに増加)、自分の次回のターンの開始時まで減速状態になる。 |
刀葉獄:オーラ3 | |
オーラの範囲内はオニではないキャラクターにとって無数の刃の立ち並ぶ移動困難な地形となる。またオーラの範囲内で飛行や穴掘りの移動モードを用いずに移動するオニではないキャラクターは1マス移動する毎に3ダメージを受ける(11レベルで6ダメージ、21レベルで9ダメージに増加)。 |
血泥獄:オーラ3 | |
オーラの範囲内はオニではないキャラクターにとって血と泥の混じり合ったぬかるみに覆われた移動困難な地形になる。オーラの範囲内に居るオニではないキャラクターはシフトを行なうことができず、またオーラの範囲内で伏せ状態になったキャラクターは立ち上がるために標準アクションを必要とする。 |
等活獄:オーラ3 | |
オーラの範囲内で癒された傷は、すぐに再び開き、絶え間ない苦痛を与え続ける。オーラの範囲内で回復力を消費した敵は即座に10ダメージを受ける(11レベルで20ダメージ、21レベルで30ダメージに増加)。 |
黒縄獄:オーラ3 | |
オーラの範囲内は敵に与えた傷が自らに返る応報の理を示す。オーラの範囲内でこのオニの味方に攻撃をヒットさせたキャラクターは、即座に5ダメージを受ける(16レベルで10ダメージに増加)。 |


ナラカ(冥府)は、シャドウフェルのアンダーダークの奥深く、少なくとも深さ800リーグ(約4000km)以上の闇の中に存在する、国家と呼んでも差し支えのない法と秩序を備えた一つの共同体である。ナラカは広大な広さを持ち、様々な伝承や文献ごとに異なった記述が見られるが、小さく見積もっても、定命の世界での大規模な国家が丸ごとすっぽり入る程度の大きさはあると考えられている。
大半の次元界の成り立ちや構造を知らない人々にとって、あるいはしばしば他次元界への冒険をこなしたことのある英雄たちにとってさえ、そこはおとぎ話に語られるアビスや九層地獄と変わらない、恐るべき破壊と悪徳に満ちた世界であると思われている。しかしながら、彼らはいくつかの点について、正確な認識を欠いていると言わざるをえないだろう。
ナラカの真の役割は(その過程において過剰な暴力が振るわれることがあるにしても)そこを訪れた死者の魂の生前の罪を審議することにある。死を迎えた定命のクリーチャーの魂は、死後まずはシャドウフェルを訪れ、その後、自らの信仰する神格の待つ領界への旅立ちに代表される最後の宿命を受け入れるのである。
しかし、その生涯において充分な信仰を持たなかったものや、重大な罪を犯してしまったために、いかなる神からも魂の受け入れを拒否されてしまう魂も少なくないのである。それらの魂はゴーストなって、シャドウフェルや定命の世界に留まり続けるか、捕らえられてナラカに降り、審判を受けることになる。
ナラカは10人の王(裁判官)を中心に運営されている。それぞれの王は何らかの神格のエグザルフであったり、エンジェルであったりする。また王たちの補佐官の中には定命の世界から死ぬことなく迎え入れられた者もいるとされている。ナラカの十王たちは死者の魂の前に7日ごとに現れ、それぞれが違った方法でその生前の善行や悪行を調査し、裁き、ふさわしいと判断したならば、自らの主の領界へと迎え入れる。しかし、十王全員の詮議を経た後も、いまだ向かうべき最後の宿命を得られない魂は、自らの引き受け手が現れるまで、残忍で醜悪な獄卒のオニたちが待ち構えるナラカの牢獄で長い時を過ごす羽目になるのである。
ナラカの十王の筆頭を務めるのは、ヤマと呼ばれるレイヴン・クイーンのエグザルフ(側近)である。彼は裁きを行なう者に似つかわしい、いかめしい顔つきと大きな身体を持ち、その声は幾千もの雷鳴が響き渡るように聞こえると言われている。
ヤマの居城は100リーグ(約480km)四方もの敷地に7重の城壁と4つの鉄の門を備えた、ナラカでも最大級の城塞である。
ナラカの十王には、様々なクリーチャーが配下として仕えているが、その中で大きな割合を占めているのはオニたちである。ナラカのオニには定命の世界で暴れる同族たちとほぼ同じ姿や能力を持つものから、牛や馬などの動物の頭部を持つものまで様々なものがいる。その数、種類ともに定命の世界で見られるものを遙かにしのぎ、すべてのオニたちの起源がこのナラカにあるという説の信憑性を限りなく高めることになっている。
ナラカのオニたちは、心ない案内人として死者の魂たちを十王たちの前に引き立て、また宿命を得られず牢獄に落ちた魂にとっては凄惨な拷問を加える悪夢のような獄卒鬼となる。

D&D鬼草紙、第2回「牛頭鬼&馬頭鬼」でした。D&D第4版の標準宇宙観は中世ヨーロッパ風の世界ですから、“地獄”は悪魔たちのものでオニたちの入る余地はなかなか少なそうに思えます。そこで今回は、オニたちが獄卒として住まう東洋風の“地獄”を用意してみました。ナラカ(奈落)という名前はデーモンたちの領域であるアビスの訳語、奈落として使用されちゃってますが、そこはまぁ、別物だと考えていただけると幸い。
今回はD&D第4版用のモンスター化にあたり、障害となると思われるディティールはそぎ落としましたが、シナリオ作成など実際の伝承を参考にしたい場合はwikipediaに詳しい記述があります。
牛頭馬頭
次回第3回は、ちょっと趣向を変えてデータはお休み。オニの生態や社会構造に迫る「オニたちの社会」です。お楽しみに!
カテゴリ:TRPG記事