「慎重に審査しましたが、今回は融資を見送らせていただきます」
銀行からこの一文が届くと、誰でも落ち込む。「自分の年収が低いからだ」「自己資金が足りないからだ」——そう考えて、不動産投資そのものを諦めかけてしまう人は少なくない。
しかし、一つの銀行に断られたことは、本当に「投資に向いていない」ことの証明になるのだろうか。
なぜ、同じ物件でも銀行によって評価が変わるのか
結論から言うと、融資の否決は、属性や自己資金の低さだけが原因とは限らない。同じ物件を持ち込んでも、ある銀行は「築年数が古いので厳しい」と断り、別の銀行は「営業エリア外なので難しい」と断る。担当者によって、収益物件の審査経験や稟議の組み立て方にも差がある。
日本には、地方銀行だけで62行、第二地方銀行37行、信用金庫254、信用組合143――合わせて500近い預金取扱金融機関が存在する(2024年9月末時点、日本金融通信社調べ)。それぞれが得意とするエリア、物件の構造・規模、属性重視か事業性重視かという融資姿勢を持っている。一つの銀行の「NO」は、その銀行の融資方針と自分の案件が単純に合わなかっただけ、というケースが実は多い。
否決を「失敗」で終わらせないための記録術
大切なのは、断られた時に感情的に終わらせず、次につながる情報として記録しておくことだ。否決の連絡を受けたら、可能な範囲で担当者に次のようなことを確認し、メモに残しておきたい。
- 銀行名・支店名・担当者
- 打診した日付
- 物件のエリア・構造・築年数・価格
- 希望した融資額・期間・金利
- 提出した資料
- 回答までの日数
- 説明された否決理由
- 次回改善できる条件
もちろん、銀行側がすべての否決理由を教えてくれるとは限らない。「総合的な判断により」で濁されることも多いだろう。それでも、担当者の言葉や追加で求められた資料から、評価されなかったポイントはある程度推測できる。これを積み重ねていくと、「A銀行は築浅木造」「B銀行は土地値の高いRC」「C銀行はエリア内の中古アパート」というように、銀行ごとの融資傾向が見えてくる。融資否決は単なる失敗ではなく、次に狙うべき物件と、相談すべき銀行を教えてくれるデータになる。
セミナー情報は「事実」か、それとも「誰かの意見」か
今は融資情報がネットや不動産会社のセミナーでも簡単に手に入る時代だ。だからこそ、注意したいことがある。「年収◯◯万円以上でないと融資は出ない」といった情報を鵜呑みにして、実際には当たってもいない銀行を最初から候補から外してしまう人がいる。
その情報が古かったり、特定の人のケースにたまたま当てはまっただけだったりすることは珍しくない。融資姿勢はタイミングによっても変わる。気になる銀行があれば、まずは自分の目と耳で確認する。それだけで、可能性が広がることもある。
次の融資につなげる5つの確認ポイント
- 物件と自分、どちらが評価されなかったのか
- 融資額や融資期間を変えれば検討の余地があったのか
- 自己資金を増やせば可能性があったのか
- エリア・築年数・構造のどこが基準外だったのか
- どのような物件なら次回検討してもらえるのか
この5点を否決のたびに確認し記録していくだけで、「なんとなく断られた」という感覚が、「次はここを直せば通るかもしれない」という具体的な戦略に変わっていく。以前このブログで取り上げた「不動産投資はオワコンなのか」という記事でも触れた通り、金利が上昇局面に入った今、銀行の審査姿勢もこれまで以上に慎重になっている。だからこそ、一つの否決に一喜一憂せず、データとして積み上げていく姿勢が、これからの規模拡大を左右すると考えている。
融資を受け続けている投資家は、否決されたことがない人ではない。否決の理由を分析し、次の銀行、次の物件、次の条件に生かしている人だ。
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