大学教師はなぜ仕事が遅いのか

企業の退職者や現職者の多いシニア社会学会の会長になって、今更ながら企業人の仕事の速さに感嘆しています。シニア社会学会では、昨年の2月以来、1年間かけて今後のシニア社会学会の方向性について検討し、その結果をまとめて、今年の3月に報告会を開催いたしました。

会員に対するアンケート調査を実施し、その結果をまとめ、今後の方針を見出すのにわずか1年。大学関係者ならば、3年はかかるのではないでしょうか。あっと言う間に図表にまとめ、毎月行われる会議の議事録をネットに掲載。あれよあれよという間でした。

大学教師、とりわけ文系の教師の仕事が遅い一因にデジタル能力の欠如があります。コロナ禍が始まって、理系や社会科学系では、比較的早くからオンラインに切り替えていたようですが、人文系では、かなり長い間対面の会議が続いていたと聞いています。その理由として、直接会って話し合わなければ意思疎通ができないという固い信念があることに加えて、デジタル機器が使えないこともあるようです。

企業人の仕事が早いのは、何が何でも納期に間に合わせなければならないというプレシャーもあるようです。文系の人たちにも、原稿の締め切りというものがありますが、これは無理すれば延びるものです。文系の人たちの全集などは、発行が遅れるのが当たり前。かつて私が関係した社会学の講座など、完成までに四半世紀もかかり、その間に社会情勢がすっかり変わってしまったので、全体構想を見直さなければなりませんでした。

もちろん拙速は避けなければなりませんが、企業人たちのスピーディーな仕事ぶりは大いに学ぶ必要があります。仕事の遅い私には、企業人から学ぶところがたくさんあり、いつも感謝しております。

日本人のロシア・イメージ

前触れもなく2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻して、早や2月あまり。停戦交渉はなかなか進みません。ロシアとウクライナのめざすところが、まったく違っているのですから両者をすり合わせるのは至難のわざです。ベトナム戦争の頃、2頭の牛が争う際、傷つくのは地べたの草だと言われたことがあります。ロシアと欧米諸国に支援されるウクライナが戦っている今日、もっとも被害を受けているのは、戦場となった地域に暮らす市民です。このまま戦争が続けば、市民の被害はますます拡大するものと思われます。

現在の日本では、ウクライナは善、ロシアは悪というイメージが定着しているようです。これまでも日本におけるロシアのイメージはあまり良いものではありませんでした。日露戦争で負けた国であることに加えて、終戦の直前に突如満州に侵攻し、略奪や強姦を繰り返したこと、そして60万人の日本人捕虜をシベリアに抑留し、そのうち1割が死亡したということなどが、日本人のロシア・イメージを形成しているようです。

その一方で、日本人の間では、トルストイやドストエフスキーなどの作品、オペラやバレーなどの舞台芸術、ロシアン・アバンギャルドとよばれる絵画など、優れたロシア芸術への憧れがあることは確かです。私は、崩壊直前のソ連を訪れことがあります。「ボリスゴドノフ」や「白鳥の湖」に感動し、エルミタージュ美術館の素晴らしい絵画に感嘆しながら、現実生活における食事の貧しさやトイレの汚さに辟易したものです。

あれほど素晴らしい芸術を生み出した国が、なぜこんなことになってしまったのか。共産主義革命は何だったのかという想いにとらわれます。今後、ロシアがどのような国になるのか、まったく予測がつきませんが、少なくとも人権と尊厳を守る国になってほしいものです。


デジタル化の光と影

コロナ禍の中、急速にデジタル化が進みました。デジタル化については、もっぱら効率化や能率化、そして便利さなどが強調されます。その一方で、個人の情報が企業や国家に集約され、監視社会が実現することへの危機感が乏しいように思われます。

現在の中国を見ていると、ジョージ・オーウェルの「1984年」のように思われます。日常の買い物も行動もすべてスマホ一つで済んでしまうという便利さがある反面、個人情報は、すべて政府によって把握されています。ある時、中国からの留学生に「個人情報が政府に把握されているのは嫌ではないか」と尋ねたところ、嫌ではないと答えられたのにはびっくりしました。なかには、習近平やその夫人の写真をスマホに取り込んで、得意そうに見せてくれる人もいました。何だか洗脳されているような気もしますが、彼らにとっては当たり前のことなのかもしれません。 

最近、堤未果の「デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える」(NHK出版新書)を読みました。かねてより彼女は、外資によって日本の資産が奪われることに対して警鐘を鳴らしてきました。今回は、デジタル化を通じて日本から情報が流出することへの警告を発しています。日本政府はデジタル庁を創設し、「デジタル田園都市構想」などをぶち上げていますが、デジタル化の影の部分については、あまり考慮されていないようです。トヨタは富士山麓にスマートシティを立ち上げると盛んに宣伝していますが、おそらく住民の行動は丸裸という状態になりそうです。

厚労省はマイナンバーカードに医療情報を乗せ、マイナンバーカードを保険証代わりに使えるようにすることになっています。しかし、個人の医療情報が流出する危険性は十分にあります。なかには、個人にとって不利益をもたらす情報が流出する恐れもあります。エイズが流行し始めた時、アメリカで生命保険会社が患者情報を入手して、エイズ患者の保険加入を拒否するという事件がありました。同じようなことが日本でも起こらないとは限りません。個人情報はあくまでも個人に属するものであり、一方的に政府が管理するものではありません。どのような情報を収集するか、それをどのように管理し利用するかについては、新しい倫理規定が不可欠です。
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