(ゲイ映画を見倒すNo.92)
 tsonag4Guy Pearceの話tsonag4
 直前の記事でゲイ映画を見倒す人が最も見返している『L.A. Confidential (1997)』について紹介したが、長くRussell Crowe狂で生きてきた私はなかなかGuy Pearceの魅力に気づくことができなかった。しかし、今日紹介する超有名ゲイ映画『Priscilla (1994)』を見て目が覚めた。 まさかLAPDのEdがその3年前にドラッグ・クイーンになりきっていたなんて、どこから想像できるんだろう? 
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 Guy Pearceの演技は硬い、という風に思う人は多かろう。なぜならば彼は今まで大半の映画で、寡黙でナイーブなヒーローを演じてきたから、基本的には表情を崩さず、瞳だけで表情をつくりだすという難易度高い演技を求められているからね。しかし、今作『Priscilla (1994)』を見て戴けば、ド派手なメークの下でヒロイズムをうっちゃってナルシズムだけで表情を爆発させることを許された Guyさんが、それはもう豊かな表情を見せるのである。そして鍛え上げられた肉体から繰り出されるダンスの達者なこと。いつもの映画では目につかない体のしなやかさが光る。実はこの人は歌も超絶に上手く、本当に何でもできる人である。
 何でもできる人がそのことをドラッグ・クイーンを熱演してみせて証明した、これはあまり例を見ない方法では??
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 tsonag4Priscilla (1994)tsonag4

    Country:Australia | UK lLanguage:English | Filipino
    Director: Stephan Elliott
    Writer: Stephan Elliott
    Stars:Hugo Weaving, Guy Pearce and Terence Stamp

guy pearse

↗tsonaguのこんな感じイメージ画。「懐かしのボディワイヤー(タトゥーワイヤー)をしたGuy Pearce


 tsonag4あらすじtsonag4
 "Mitzi"はシドニーのライブハウスを基点に活動しているドラッグ・クイーンである彼女は舞台を降りると、生まれたままの姿のAnthony(通称:Tick)に戻るのだが、その姿は少し額が後退しかかって来た痩せ型の、極めてフツ―の男である。彼は私生活では女装をしない
 そんな彼のもとに出張パフォーマンスのオファーが。オーストラリアの地方都市のリゾートホテル、経営者の女性 Marion、実はTickの妻で一人息子は彼女に育てられていた....
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  Tickは二人のパフォーマーを誘い、3人でショーを行うことに彼らは女性歌手のヒットソングに合わせて軽く口パクで歌い、軽い振付で踊り、衣装やメイクはとにかくやりすぎる、という戦法でステージをつくっていた。、
 一人目は年配の、完全に性転換を済ましたBernadette、彼女はごく最近愛する人の葬式を経験してそれが尾を引いて、ますますイーヨーのような厭世感を強めていて、Tickは友人として心配していた。
 そしてもう一人、Adamが一緒に来ると知ってBernadetteは不快感を表す。彼女からすれば彼は単細胞で、いつもふざけている、考えなしのけたたましいゲイ・ボーイにすぎなかった。Adamは20代でBernadetteの息子でもおかしくない。しかしTickは彼の鍛え上げられたムチムチの上半身と尻が生みだす高いパフォーマンス・スキルを買って、仲間に加えたのだった。Adamも性転換や日常的な女装を必要としない
 
 3人は"Priscilla, 砂漠の女王"号と名付けられたでかいバスに乗り込み、4週間、荒涼としたオーストリアの地をエンジン全開オカマ度全開で突切って行く....
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  旅は順調に行くはずはなかった。
  3人は途中下車してホテルの部屋を借り、"おしゃれ"して夜の町に繰り出す。Bernadetteはいつも通り、地毛の長いブロンドを束ね、白っぽい品のあるファッションで済ましていたが、Tickは"Mitzi"として、派手な化粧とウィッグを付け、何十個ものビーチ・サンダルが丸カンで繋ぎあわされたベリー・ショートのドレスを纏い、Adamも"Felicia"に変身してサザエさんの形をしたマカロンカラーのプラスチック製のヘルメットを被り、コスチュームの背面はT-バックで引き締まった若い尻が丸出しだった。二人とも厚底サンダルを穿いてなお一層デカイ。一行はその小さな町には一軒きりだと見られる酒場に入って行った。
 客層は下腹の出たオヤジさんばかりで、彼らの目にはエイリアンのように映った3人を前に、店員すら茫然となってしまって注文に応えられない。
 「お前達なんかに出す酒はないよ! 」
  ここで典型的なトラブル・メーカーのレズビアン(のような)のオバサンが登場する。彼女は自分が正しいと信じ込んでいる点で醜かった。世の辛酸をなめ尽くした末に女になったBernadetteは誰よりも肝が据わっていので、オバサンを説教してねじ伏せただけではなく、どちらが酒に強いか勝負して勝ち、酒場の人々を大いに沸かせた....三人は楽しく飲んで酔ってホテルに帰った。翌日「エイズ蔓延者は帰れ」という落書きをPriscilla号の車体に発見することになろうとは夢にも思わず....
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 悲しみのうちに出発した3人を更に追いつめるようにバスが故障。荒涼とした赤い大地の上で立ち往生....Bernadetteは遭難して死ぬかもしれないのに一人徒歩で、助けを求めに行く。AdamはPriscilla号をラベンダー色に塗り替えることに。Tickは誰よりも落ち込んでしまった風に見えたけれども、近くの丘に登って新しい振付を考え始めた....

  「あんた、誰か走ってくる。女の人みたいよ」
 老夫婦の運転する車にBernadetteが駆け寄ってきた。彼女が車の直ぐ傍まで到達すると、あまり女の人ではないように見えたけれども、老夫婦は彼女に言われる通りに車を走らせてやった。しかし故障したバスのところに着いて、降り立ったBernadetteにTickが抱きついて行ったとき、状況急変。顔色も変えずアクセル踏み込み急発進、蜃気楼の彼方に消えていった助け舟....
 「自分がどんな恰好だか考えてみなよ! 」
 Tickはダンスの練習をしている間コスチュームを身に着けていた。
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 気のいいアボリジニ達に自分達のショーを通じて受け入れられ、心和む時間を過ごした3人は、自動車整備工のBobと出会って ことなきを得た。白い髪やヒゲ、ご機嫌な大きなほっぺをした彼はBernadetteと同世代だったが、オープンマインドで新しい物事を好む性格から、3人を家に招いてくれる。彼の妻は若いフィリピン出身の女でかなり淫売そうで、自分もパフォーマンスするのだと、嬉しそうに打ち明けたが....
 
 彼女はBobが封印しておいた過激なハイレグのレオタードを着て、村のパブに現れた。股のあたりにジッパー、下ろして中にピンポン球を挿入、そして腰をくねらせて、ベチャベチャになったその白いものを....ぽんっ! 客は熱狂している....クイーン達はその前の自分達のパフォーマンスがうけなかったことも忘れてその異様な光景に見入っていた....

  より良い"夫"を求めて妻が出て行ったあと、BobはPriscilla号のお抱え整備士として旅の一員となる
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 目的地のホテルを目前にして降り立った町で、TickとBernadetteはレストランに入って女子会。
 「Bobのこと、好きなんでしょ? 」
 「まさか。タイプじゃないわ」

 ....お話は中断。窓の外に暴漢に追いかけられているAdamの姿が!
 保護観察が行き届かないところでAdamは白い粉に手を伸ばし、ハイテンションな女の子姿で一人、夜の街に繰り出して行ったのだった。Priscilla
                                                (↗tsonaguのこんな感じイメージ画。「Adam」)

―酒を飲み交わす荒くれ者達の輪に、女装姿で入って行ったAdam、彼の美しさならば男達はある意味、彼に優しくしてくれただろう。しかし人寂しいけれども慰み者になろうとは思っていないAdamは逆に喧嘩を吹っ掛けてしまった
 Adamの乱入前まで男達と共に和気あいあい飲んでいたBobは始めAdamを無視するという許せない行動に走る。彼の綺麗な顔に拳骨が一発お見舞いされた辺りで仲裁に入ろうとする素振りを見せるが、役立たずな男である。事態を収拾、すなわちAdamを暴行しようと考えて興奮していた男のちんこに膝蹴りを食らわせて、ギャラリーを一蹴したのはBernadetteだった。Bobはその勇ましい姿に惚れてしまう。
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 その後TickはAdamを惨々説教する。でもAdamは彼らと違って若いのだし、間違いを犯してしまうことだって仕方ない....Bernadetteの理解は深かった。Adamとはそれまで仲が良いとはいえなかったが、ここで二人の中に
絆が芽生えた。
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 ついにホテルに着いた
 Tickは彼の"結婚"についてBernadette達に旅の道中やっと明かせたという始末で、彼の7,8歳にもなる息子の姿を見たBernadetteは卒倒する。でも一番混乱しているのはTickだ。息子BenjaminはTickが父親だとは知らないことになっている。それでも女装の姿を彼に見せるのは気が引けた。Marion(こちらは男らしい肝っ玉母ちゃん)は夜間のショーだということも配慮して、Benjaminは寝かしつけておいたと言ってくれたので一安心ではあるが....
 控室、クイーン達が魔法の変貌を遂げていく中、Bobが花束を持って訪れ、迷うこともなくBernadetteに渡す....

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  ....最高のショーを届けることができた。音楽が終わり、最後のポーズを取った3人の心は一体となって、それぞれが晴れやかな表情を浮かべていた。しかし彼らの期待通りの熱狂を示す客は、MarionとBobと、それから聞き覚えのあるかわいらしい声....ステージ上から息子の姿を認めたTickはその場に卒倒してしまった....
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 翌日6人はPriscilla号でピクニックに出かける。Tickはいかにも男みたいな恰好をしてきてみんなの失笑を買う。彼はこの場に及んでまだ息子を騙し続ける気でいたのだが、まもなく息子Benjaminが全てをお見通しで、しかも父親のセクシャリティやキャリアについて、子どもながらに理解を示してくれていることを知る

 
   今3人のクイーン達は素の自分とステージ上の自分との間の隔たりを克服し、真の、それでいて真新しい自分として、色鮮やかなコスチュームにに身を包み、Adamの個人的な夢であった、「"Kings Canyon"をドラッグ・クイーンとしてバッチリ決めた出で立ちで登頂する」という難行を成功させようと、赤く乾いた急斜面を荷物も持たず這い上がっている
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 「やり遂げちゃったわね」
 雲と太陽を直ぐ傍に感じながら、Priscilla号の戦友達は顔を見合わせ合った。彼女達の体の中には旅の前とは比べ物にならないほどの自信と愛が漲っていた。
 「次はどうする? 」
 「帰りたいわ」

 Bernadetteはもう少しホテルに残ると言って一緒には帰らなかった。Bobも彼女と残ることにしたからだ。その代りに、BenjaminがPriscilla号の一員となってシドニーを目指した----
 
 tsonag4tsonaguのゲイ映画熟視熟考tsonag4
    Guy Pearceは16歳の頃オーストラリアのボディビル大会で優勝経験を持つという。日に焼けていて、パツンパツンに張った肌はその下の健康で濃い血液と弾力ある肉を想像させる。スカートを穿かせるより、T-バックを穿かせたがった監督(または衣装さん、または本人)のおフェチに感動。
    Guy Pearceはインタビューで、

"―僕は本当の女性を演じたとは思っていない。僕が演じたのは女装好きな「ホモ」で、彼は女性との問題(過保護すぎ、かつ理解のない母親など)を抱えている....Adamは女嫌いのガキだ―"


"鏡の前に座り続けて2時間、スタッフがメーク・アップしていって、あなたは思う。「これが女性版の僕なのか」、と。これってかなり複雑。だってあなたは自分のことを見てるけど、それは"女性"なんだよ!? 僕なんかマジで母親に見える。----僕はそんなに女性になったみたいな気はしなかったけど、心の女性的な面がすぐそこまで表出してくる感じを覚えた。魔法のような経験、事実わくわくするような、僕は心からそれを楽しんだよ。でも僕には僕がキレイに見えているか自信がない。僕は仮にこの女の姿の自分が街の通りを歩いている姿に出くわしたとしても、好きにならないと思うよ。僕はたぶん二度見してしまうだろう、これ以上おかしなものを見た試しはないぞって"
=tsonaguのこんな感じ訳。

 と、語った通り、「女嫌いのAdam」はつまり、「世の中の女共を模倣するようなオカマではない」ということ、だから「日常生活では典型的"女装"はしない」ということ、はストイックに守られていて映画の役作りに一貫性を感じた。  まぁグロスくらい塗ってもよかったのではないかとは....だってほぼなんの装飾もしていないAdamよりBIGBANGの方がよっぽどオカマっぽい恰好でキメている!! 顔にシール張るとかね、まあボディワイヤー(タトゥーワイヤー)をしていたのはその延長線上なので評価するけれども。首に密着性のあるきつい首輪をつけるというのは、自分がする感じを想像すると身震いするほど苦しいのだが、その苦しいのを快楽に変えて寝る時もお風呂入る時も首輪し続ける、という人は物凄くセクシーではないだろうか。一時期のアムロちゃんみたいにもっと付けて欲しかったですね。あれは90年代世界的にヒットした拘束具的セクシー・アクセなのである。
 
 Hugo Weavingは『The Matrix (1999)』でその名を知らしめた人物なのでご存じだろう。彼は『Happy Feet (2006)』で傴僂の長老ペンギンの声をやっている。
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   (紹介記事:ゲイ映画を見倒す : 最大テーマは「性機能」~ペンギン映画『Happy Feet (2006) 』で思い出したゲイ映画『C.R.A.Z.Y. (2005)』)
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―今回紹介ゲイ映画の女装した彼を見ているとグランディーバ バレエ団にこんな人いたなぁ、と。でも瞳がキッとしてたり歯がトガっているイメージがあったりするところがDavid Bowieを彷彿とさせる。
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   一回りずつ年の離れたオカマ達が一緒に旅を続けることで....それぞれの悩み、Adamは若さゆえに落ち着きに欠け、ときに危険な行動に走ってしまうことや、自分のセクシャリティにまだまだ悩んでいる。Tickは子供のこと、結婚のこと。Bernadetteは老い支度を始めるにあたり、最後のパートナー選びに揺れる....それぞれの年代の人間なら男女問わず直面するであろう困難に、代表者となって果敢にアタックしていくのだ。全世界あらゆる層の支持を保ち続けているのが納得の感動のゲイ映画。