『宿六日記』
宿屋つばき 009

春を告げるふきのとう。
例年だとすっかり雪が解け、ぽかぽか陽気の春が始まっているのに今年はまだまだ冷え込みが厳しく雪さえ降っている。それでも自然は春を感じ取っているらしい。陽だまりからひょっこりと顔を出したふきのとう。東北あおもりの春の使者。厳冬を耐え忍び、たくましく芽吹く。食べると大地のほろ苦さが口の中いっぱいに広がる。苦みは冬の間に溜まった体内の毒素を外に出す成分だそうだ。春の山菜を食べることによって毒素を排出すると同時に大地の息吹を取り込む東北の食文化。日本全国に春はやってくるけれど、震災の被災者のニュースを見て、そのことを想像すると胸が痛く、春なんて程遠く感じる。今盛んに「早期の復興を」と言われておりますが、建物や村、町の復興はそんなに時間はかからないことでしょう。しかしこころの復興は?こころの底から笑えるようになる春はいつ訪れるのでしょう?一瞬にして最愛の人や家・財産すべてを飲み込み、押し流していった大地震後の巨大津波。あの悪夢の現実を受け入れることが出来るのでしょうか?受け入れることが出来ても心の中で消化して整理をするまでにいったいどれくらいの時間を要するのでしょう。宮古にいる友人とは未だに連絡つかず。今私に出来ることは祈ることととわずかばかりの義援金、それだけなのでしょうか?更に追い討ちをかけるように福島原発による放射能物質による汚染や風評被害、東日本計画停電による経済不安と未来への不安。そして今後のエネルギー問題はこれからの日本経済・文化、そして日本全国民の生活に大きくのしかかり、岐路に立たされているようだ。未来の日本の安全・安心の礎を築く等と大それたことは出来ませんが、せめて子供たちの笑顔を護れるように頑張るぐらいの覚悟と責任を持って生きて行こうと思う。