「緊縛が好きである」という人は少なくない。
「緊縛の写真を撮っている」という人も少なくない。
でも、

「緊縛が好きなので写真を撮って雑誌を作ってしまいました」

という人に初めてお目にかかり驚いた。
だって、普通じゃないでしょう、良い意味で。
緊縛師の奈加あきらさんから紹介された、カスカベキタロウさんという人の雑誌だ。

vol.1とvol.2が刊行されており、さっそく取り寄せて、見る。

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vol.1、美しい緊縛写真集、でもそれだけではない。
モデル一人一人の個性が強く感じられる写真集だった。

私にはこだわりがあり、女性の「個」がはっきりと滲出してくるような写真と縛りが好きだ。
そんなの当たり前じゃんと言われるかも知れないが、私は縛りの技術が秀れていることよりも、縛られている女性の「個」が際立っていることのほうを大切に感じる。
それは取りも直さず、縄と写真によって一人の女を暴いているということだから。

これは私の好みであって、人に押し付ける気はさらさらない。
その意味で、好い写真集だと思った。


彼は縛られてみて、その体験から考案していくこともしている。
そういった作業はとても大切なことだ。
奈加あきらさんも濡木痴夢男さんも、女囚着の衿を縫ったり鼻フックをこしらえるようなこともしていた。
自分の手や肉体を通して作業した作品には芯が入る。


vol.2には『妄想具現』というサブタイトルが付いている。
開いて「あっ」と思った。

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写真にはキャプションが添えられており、それが団鬼六さんや江戸川乱歩を彷彿とさせる文体で、非常にナラティブなのである。
これって、私がやりたかったやつ、とちょっと嫉妬する。

そして尊敬する河原梓水先生による『歴史のなかの「SM」小説』なる特別寄稿も掲載されており、VOL.2は写真集ではなく立派な雑誌になっているのだ。
これは面白い本である。


二冊ともに登場するモデルのあかねさんとは、団鬼六没後十周年企画のAVで関わらせていただいていた。
団鬼六先生原作『生贄夫人 縛る』(アタッカーズ/魁監督)の脚本を私が書かせていただき、主演は川上ゆうさん、縛りは奈加あきらさん

川上ゆうさん演じる上流夫人の家の家政婦なのに、次第に悪に染められていき、夫人をいたぶるという屈折した役を演じてくれた人だ。
縛られ、責められるモデルをしているあかねさんだからこそ理解できる重要な役どころであった。


vol.2はほかに責め絵もあるし、後半はラバー写真なのだ。
ラバー写真の中に女性の呼気を撮影したものが4点あり、湿度と体温を感じてゾクゾクした。
個人的に非常に好み。

現在vol.3の制作がはじまっているとのこと。
若い人の新奇なチャレンジ、実験に期待大である。