銀座人形館にて。

多賀新さんの作品に刺繍の作品があり、驚く。
多賀新さんはこんな表現もするのだと、これこそ目で見ないとわからない。

美術に詳しくない私でも多賀新さんの名は知っている。
まだ小学生の時に江戸川乱歩に心の平和を乱され、大人になってもその嵐をずっと楽しんできたから。
特に『黒蜥蜴』はいずれも高嶋政宏氏Ver.で2003年、2008年に見ている大好きな話。

「今日、多賀新さんの個展もやっているんですよ」

と、加藤俊章さんにお誘いいただき、マーガレットさんとともに3人で同じ銀座の養清堂画廊に向かう。
密かにドキドキする。
友だちと「冒険だ！」と寄り道をした小学校の頃みたい。

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多賀新さんの絵は1973年頃の作品も最近の作品も、いずれもエネルギーにあふれて、たくさんの物語が複雑に詰まって、何時間でも見ていたくなる。
一点一点の前に立ち尽くして、再び贅沢を愉しむ。

多賀さんは私より若い人だろうと勝手に思っていたので、御年77歳ということを知って驚いた。

「こっちへ座って画集をご覧なさい」
「皆でワインを飲もう」

と、立ったり座ったり機敏な方で、明るく楽しくもてなしてくださる。
ふと、濡木痴夢男さんがいた頃のこと、その笑顔を思い出して既視感を覚える。

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@養清堂画廊
左から加藤俊章氏、多賀新氏、筆者、小倉東＝マーガレット氏


多賀さんの画集を持っていないので、後日ヴァニラ画廊で買おうと思う。
今流れている時間と、過去の時間を繋ぐものがほしい。
取り返しのつかない何かを、埋めたい。

人形館でお会いした猪瀬冬樹さんとも多賀新さんと、風俗資料館や団鬼六先生、有末剛さんといった共通の知人があることを知った。
多賀さんは、隠すことがエロティックなのだという意味のことを何度かおっしゃった。

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AV業界の人間は、「ネットでモザイクなしの性器が見られるようになったからAVが売れない」と言いがちだが、それは「おかずカタログとしての映像」の話でしかないと思う。
あからさまにすればするほど、ネットで無料動画を漁るだけの若い男性たちがエロ離れしていくのは当然なのではないだろうか。

乱歩があんなに妖しくて美しいから、私たちは輝くルアーを追いかける魚のようにエロの罠にかかったのだろうし、それは「おかずカタログ」では満たされないものだ。
そのことを仕事にどう反映していこうかと思っていたら、多賀さんが素敵な言葉を教えてくれて、腑に落ちる。

「エロマンスだよ」

昨今、緊縛業界では（そう呼ぶのもおかしいが）「緊縛はエロか芸術か、エロか美か」ということを言う人がいるらしいけれど、どちらでもないと思う。

「エロを求めて女を縛っていたら、そこに美が発生してしまいました」

そういうことではないかしら。
やはりエロマンスだ、そうだ、エロマンスで行こう。

＊多賀新展は2023年4月28日（金）15時30分まで開催。