2006年03月12日

ドラえもん のび太の恐竜2006 90点(100点満点中)

「モスラ対ゴジラ2006」は同時上映されません
公式サイト

1980年に公開された劇場版ドラえもん第一作のリメイク。旧作公開当時、親に連れられて観に行って楽しんだ事は良く憶えているし、原作となった長編は当時から現在まで何度も何度も読んでいるし、DVDだって持っている。旧作は極めて良質な子供向けアニメ映画であり、心から愛してやまない作品の一つでもある。そんな名作が26年ぶりに復活。期待と不安が入り交じった複雑な気持ちで観に行ったのだ。

公開二週目ながら劇場はなんと超満員。何とか一つだけ残っていた席を確保出来、場内を見渡すと、メインターゲットである親子連れでいっぱい。どうやら新生ドラは受け入れられている模様。もちろん自分も新生ドラ肯定派なので、この状況は素直に嬉しいのだ。

いきなりタイトルが現れ、主題歌が流れる始まり方は、今までの劇場ドラにはないパターン。(プロローグの後、のび太が「ドラえも〜ん!」と叫んでからOPが始まるのが従来のパターンだった)しかも流れる歌は「ドラえもんのうた」ではなく新生主題歌である「ハグしちゃお」。個人的な願望を言えば、OPは「ドラえもんのうた」にしてほしかったところだが、この歌も決して悪い曲ではないので文句を言う程ではない。OPの映像は新規で撮影されたクレイアニメ。ここはカッコ付けて3DCGなどにするよりも、この方が本編の動きまくる動画と対比出来る狙いなのだろうか。実際本編が始まると同時に大画面をこれでもかと動きまくる動画演出は、慣れるまで目が疲れるほどで、スタッフの気合いの入れ方が半端じゃない事が伝わってくる。

ストーリー的には基本的な流れは旧作と同じなのだが、ちょっとした改変が概ねいい方向に変えられている印象。例えば…
・のび太が布団にくるまって卵を温めるシーンで、パパが書斎から持ち出された恐竜図鑑を見て、「自分もこんな事に夢中になった時代があった」とのび太に語りかける台詞などは、旧作を子供時代に観て、今度は自分が親として子供を連れて来ている層の感情を直撃する最初の泣きどころとして上手に機能しており、この様なエモーショナルな演出は、本作の監督・渡辺歩(「のび太の結婚前夜」等の監督でもある)の得意とするところ。
・大きく育ちすぎて公園の池で飼わざるを得なくなったピー助の存在が町の噂となってしまう展開では、公園に群がる野次馬やマスコミの大群衆を描く事で、のび太の決断をより後押しするものとなっている。
・原作にはあったが旧作映画では削られていた、「おれは歩く! のび太と一緒にな!」の名シーンも本作ではしっかり描かれている。ここがあるのとないのでは、映画になると漢度が急激にアップするジャイアンの存在感も大きく変わってくるし、実は一番リアリストであり臆病なスネ夫が勇気を振り絞る見せ場ともなっている。また、全員が足並みを揃える決断に至るまでの、各キャラクターの見解の相違をしっかりと描く事で、ドラ映画の重要ファクターである「仲間」「友情」を、ドラマとしての流れの中でより自然に強調する事にも成功している。
・原作や旧作のクライマックスは、重要キャラクターであるはずのピー助が不在のまま話が進んでしまうのだが、本作では、ピー助の行動によってタイムパトロールが恐竜ハンターのアジトを発見し、事件の解決につながり、そして旅の間に成長したピー助が、みんなを乗せて泳げる様になるなど、存在感が消えない様にされている。
・原作や旧作では、恐竜ハンター組織を壊滅させた後、そのままタイムパトロールに日本まで送り届けてもらい、現代へと帰還する展開になっているのだが、本作ではのび太一行は自分達だけで日本までの旅を完遂させ、タイムパトロールはそれを見守るという展開へと変えられている。これは、原作の元ネタとなった中編「のび太の恐竜」(「鼻でスパゲッティ食べる機械を出してくれ〜」で終わる)の時点から掲げられて来た、「のび太が自分で決めた事を、自分の判断でやり遂げる」メインテーマを重視し、本来は事態の解決法としては反則技である(が、映画ドラにおいては何度か使われる)、タイムパトロールやドラミなどの外部からの干渉を避けたものとなっており、また、序盤においてのび太の奇行を止めずに見守ったパパのシーンともリンクしている。のび太達は26年かかって、自分達だけで冒険をやり遂げる事が出来たのだ。これはもう泣かせてもらうしかない。
・先述の通り、ピー助が成長したという描写と重ね、のび太達も少しだが成長をした事がしっかりと描写されている。原作短編やTVにおいて「ドラえもん」は永遠に終わらない閉じた世界の物語であり、のび太は決して成長してはいけないキャラクターなのだが、映画では桁外れの経験を通じて成長し、一歩大人へと近づくのだ。

ただ、微妙な部分もあるにはある。例えば…
・「あたたか〜い目」はギャグとしては面白いのだが少し過剰かも。
・秘密道具に関する説明がほとんどない。コンクフード・キャンピングカプセル・エラチューブ・深海クリームなどの説明がなく、「子供達だけでのキャンプ生活」に対するワクワク感が大幅に削がれてしまう。
・上記と重なるが、映画ドラの醍醐味の一つである「キャンプの楽しさ」の描写が少ないのが残念。また、アメリカから日本まで、長い長い旅路を往く冒険感もあまりない。これらは尺の都合なのだろうか。
・桃太郎印のきびだんごを食べたティラノサウルスの、リアル顔からコミカル顔への変貌は、個人的には面白いが賛否両論あるのは仕方ないだろう。
・クライマックスの大逆転で、大暴れするティラノの頭にまたがったドラえもんが、ヒラリマントでハンター達の熱線を跳ね返すシーンがない。ここは最大のカタルシスでありドラえもん自身の最大の活躍どころでもあるのだから残念。
・自分達で最後まで日本へ向かうと決めた後の、「ポケットの道具は全部流れた」という台詞は明らかに無用。これから先の日本までの長い道のりを、子供達が手ぶらで行けるものか。何故こんな台詞を入れたのかが多いに疑問であり、終盤の素直な感動に水を差す余計なものとなってしまっており、本当に残念だ。

多少の不満点はあるものの、全体としては笑って泣いて大いに感動出来る見事な冒険映画である事は間違いない。本編は「うん…、ちょっとね…」のシーンで終わるが、この時ドラえもんが原作通りの「あったかーい目…」になっているのにも注目。エンディングでは、この映画のために作られたスキマスイッチの「ボクノート」が流れる中、のび太とピー助の思い出のアイテムが次々と現れ、原作のラストページ(ピー助が好きだったボールをのび太が抱きしめ、「おやすみ、ピー助」と一緒に布団に入る場面で原作は終わる)がそのままスクリーンに大きく映し出され、もはや溢れる涙を止める事はできない。周囲の親子連れもみんな鼻水すすりながら泣いている。そしてラストカット、「おわり」の文字とともに藤子・F・不二雄のサイン。これは、この作品はあくまでも、藤子・F・不二雄が作り出した「のび太の恐竜」である。という、スタッフのメッセージであろう。

正直なところ、ここまでの出来に仕上がっているとは予想もしていなかった。この様な素晴らしい作品を観せてくれた、藤子・F・不二雄及び映画製作スタッフ達には感謝の気持ちでいっぱいだ。来年もリメイクらしいが、おそらくここまでのクオリティは無理だろう。スタッフ達は、気合いを入れすぎるあまり、自分達自身で高いハードルを作ってしまった様だw

ところで、こういう「泣ける映画」は、場内を明るくするのをもう少し遅くしてくれた方がありがたいです。それと感動のあまりパンフ買うのを忘れて帰ってしまいました。どうしてくれよう。




tsubuanco at 17:09│Comments(8)TrackBack(1)clip!映画 | 漫画

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1. 「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」レビュー  [ 映画レビュー トラックバックセンター ]   2007年03月13日 07:28
「映画ドラえもん のび太の恐竜2006」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *キャラクター(声):ドラえもん(水田わさび)、のび太(大原めぐみ)、しずか(かかずゆみ)、ジャイアン(木村昴)、スネ夫(関智一)、ピー助(神木隆之介)、黒マスク(船...

この記事へのコメント

1. Posted by meganeya2g   2006年03月17日 22:37
5 映画かー、テレビでしかドラえもん観なくなったなあ
最後に映画館でみたのは魔界大冒険が最後かなあ
昔はドラハッパーだっけ?そんな夢のような作品があったような??
映画だったかテレビスペシャルか 記憶が定かではないが・・・
今は地味にてんとう虫コミックスを古本で集めはじめてます
コミックでのドラえもんの色の表現にトリビア的な地味な感動が!!
今更ですか?
2. Posted by つぶあんこ   2006年03月18日 17:23
「ドラQパーマン」の事なら特番やね。
「ハットリくん+パーマン」は映画。
3. Posted by meganeya2g   2006年03月19日 00:18
なんか思い出してきた
衛星打ち上げて何かするやつだ!!!
映画も観にいったかも
忍者集団と戦うやつかな?
うーん わからん
4. Posted by ゆりンコ      2007年10月01日 05:34
なんでも観るんですね。ジャンルは問わないんですか?
5. Posted by つぶあんこ   2007年10月02日 10:41
問わない様にしてます。
6. Posted by ゆりンコ      2007年10月03日 05:08
3 レビューのためですか?
7. Posted by つぶあんこ   2007年10月03日 17:40
どんな作品でも、観ない事には面白いかどうかはわかりませんですからね。
8. Posted by ゆりンコ      2007年10月04日 05:23
2 そうですね。けど私は邦画とアニメはお金払っては見ることは滅多にないです。退屈で耐えられない。

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