2006年05月05日

小さき勇者たち 〜ガメラ〜 75点(100点満点中)

仲間さんの過去チャーハン作るよ!
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現実世界に怪獣が現れたらどうなるか」という、リアル寄りの視点による本編と、徹底して"人間の目線"にこだわったローアングル映像の多用で、これまた"現実に現れた巨大怪獣"というシチュエーションをリアルに視覚化させた特撮によって、怪獣映画のみならず日本映画界そのものに新しい流れを起こした革命的傑作『平成ガメラ3部作』から7年。ついに登場した新作ガメラは、好評だった前作の路線をあえて踏襲せず、元祖である昭和ガメラシリーズが持っていた"ファミリー向け怪獣映画"路線を、21世紀の現代に蘇らせる方向性を取ったものとなった。

ファミリー向け映画とは、子供をメインターゲットに設定した上で、その子供を劇場につれてきた保護者をも退屈させずに楽しませてしまうという、それぞれの世代が、それぞれの視点で楽しむ事が出来る作品である。これは単純に子供だけに媚びた"子供騙し作品"や、上っ面だけご大層な事を言って難しいフリをした"似非大人向け作品"と違い、製作者の卓越したバランス感覚が要求される、最上級のエンターテイメントジャンルなのだ。

その作り手として選ばれたのが、『平成仮面ライダー』『実写版セーラームーン』『sh15uya』など東映特撮番組において、突出した演出力を見せつけていた実力派監督・田崎竜太である。平成3部作の監督である金子修介は、キャラクター特に女性キャラを魅力的に描写する能力に優れた演出家であった。一方田崎は主として画面上の空間構成・例えば階段や坂道など地形の高低を人物配置に利用し、キャラクターの人物関係の表現や内面描写として投影させるといった、視覚的演出を得意とする演出家であり、これは本作においても、坂道の多い田舎町を舞台とした前半部、高層ビル街という高低差がより顕著となる後半部ともに、存分に発揮される事となる。

本作のストーリーは、1973年の伊勢の海岸にて、ギャオスの大群を迎え撃つガメラの戦いから始まる。この場面は、前作『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』における、"イリスを倒した満身創痍のガメラに、ギャオスの大群が迫る!"という、燃え度120%のラストシーンからつながったかの様な印象を与え、平成3部作のファンに対するサービス的な意味合いもあるのだろう。

が、それだけではなく、その戦いを見ていた少年が、現代(2006年)では主人公の父親になっていると設定する事で、"主人公のガメラに対する思い"と、父親のそれとの対比を描くなど、本編における親子関係のドラマに、世代を渡ったバックボーンを設定する役目を果たし、それと同時に、子供の頃に劇場やテレビ放送で昭和ガメラ映画を観て育ち、今は自分の子供を劇場に連れて来ている親を、作品世界に感情移入させるための導入部として、大きく機能している。この事により本作は、先述のファミリー向け映画として成功してるのだ。

みんな死んでる…また、平成3部作との大きな違いの一つといえるファクターに、"作品世界におけるカメの存在"というものがある。リアルさを最重要課題とした平成3部作では、ガメラという存在が"巨大なカメ"では滑稽さが出てしまうという事で、作品世界そのものを"カメの存在しない世界"と設定し、ガメラの姿も名前も、"完全に未知の怪物"とする事で、昭和ガメラが持っていたコミカルな空気を排斥していた。この、ある意味逆転の発想的世界観は、一つの方向性として正解である。

亀すくいやーひるがえって本作では、"少年が拾った子供のカメが、実はガメラだった"という、全く逆の手法をとる事となる。これは、子供と、かつて子供だった大人達が持つ、"自分で小動物を育てようとする"という、全世代の共通体験を想起させ、作品世界を自身の経験と同化させる事で、荒唐無稽な怪物であるはずのガメラに対し、自然とリアルに感情移入させているのだ。平成3部作の手法が、悪く言えば「臭いものにフタ」であったのに対し、本作では"カメ"というファクターに真っ向から対峙し、作品テーマとして昇華させ感動を生み出している。作品の方向性の違いが、いい意味に動いた好例である。

前半は、舞台となる伊勢の、親世代にとってはたまらなくノスタルジックな街並みを背景とし、そこで行われている子供達の遊び(パンツの脱がしあい・大人に黙って動物を飼う・町外れの秘密基地etc)や生活風景(窓を開けたら隣の幼馴染)など、涙が出るほど懐かしい光景が続出する。この段階で、子供達だけではなく、大人の観客をも完全に物語世界に没入させてしまう事で、後半のぶっ飛んだ展開に対する違和感を見えなくしてしまう効果を生んでいるのだ。

後半、舞台を名古屋に移してからの展開は、トトとジーダスの攻防を背景に、子供達がトトを救うために奔走する展開は、"ガメラは子供の味方"という昭和ガメラのテーマを基盤とした上で、本作が"子供はガメラの味方"という、更に新しい方向性を打ち出した事を指し示す、集大成的クライマックスシーンとして、大いに盛り上がったものとなっている。その子供達の頑張りがトトの大逆転へとつながり、そして最後には再び子供達がトトを守る。本作のメインタイトルが『ガメラ』ではなく『小さき勇者たち』である意味が、映画を最後まで観る事でわかるのだ。

肝心の特撮面では、手の平サイズの小亀が巨大怪獣へと段階的に成長する様を見せ、"あまり大きくないトト"を高層建築が無い伊勢の街並みに出現させる事などで、巨大特撮ものにありがちな、"本編と特撮の乖離"をなくしている
また、第1ラウンドとなる志摩大橋での戦い・第2ランドの名古屋ツインタワー近辺での戦いともに、舞台を単なる背景としてではなく、建物の形状や地形を活かした戦闘シーンとして映像化する事で、凡百の怪獣プロレスとは一線を画す、本作ならではの特撮映像を作り出す事に成功している。これは本作が特技監督として本格デビューとなる金子功のみならず、本編監督である田崎竜太や、造型担当である原口智生なども含めた、複合的産物であろう。

造型的側面では、前作のG3ガメラがあまりに凶悪なビジュアルであったのに対し、本作の"トト"はまるでミニラの様な、可愛さとグロテスクさが高次元で融合した奇妙なビジュアルを有し、これに対する拒絶反応のために、作品の評価を下げてしまっている頭の堅い人達がいるであろう事は簡単に想像できるが、実際のカメを使って撮影された子供ガメラが成長すれば、当然こうなるだろうという、本編をちゃんと見れば違和感のない物となっており、また、冒頭に登場する"先代ガメラ"とのビジュアルギャップもまた、主人公父子の、ガメラに対する見解の相違とリンクさせる演出意図とも考えられ、この造型は正解といえる。

誰?敵怪獣であるジーダスは、どう見てもハリウッド版ゴジラにエリマキをつけたモノ。要するにハリウッド版ジラースを意図してデザインされたものである事は、その名称からもあからさまであるが、それだけではなく、細身の胴体、長い手足、ダブついたウロコの皮膚、そして長く伸びる舌と、ガメラの最初の敵怪獣である"冷凍怪獣バルゴン"を意識した造型となっている事も、ガメラ好きであれば一目瞭然であろう。これまたあらゆる世代の怪獣ファンを意識したサービスである。

本作は、日本の怪獣映画が本来持っていた"ファミリー向け娯楽映画"という属性に回帰し、その娯楽としてのクオリティにこだわりぬき、大人は楽しかった子供時代の思い出の回想を、子供は今の楽しさの再確認を、それぞれ自然と行う事が出来る、上質のエンターテイメント作品である。見ないと損だ。夏帆ファンも見ないと損だ。




tsubuanco at 17:17│Comments(4)TrackBack(2)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by ウイングゼロ   2007年05月10日 21:45
5 はじめまして。
トトのフィギュア持ってます。管理人様の言ったとおりのデザインセンスをしっかり再現してくれている優れ物です。
2. Posted by つぶあんこ   2007年05月11日 17:13
そういや自分は持ってないですわ。
超合金くらいは買っとこうと思ってはいるんですが。
3. Posted by ガメラ医師   2007年06月01日 17:46
 こんにちは。突然のコメント恐れ入ります。
私は上記のTBを致しました「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。映画ガメラについての情報収集Blogを更新しており、こちらの記事にはガメラの検索から参りました。
 拙Blogでは以前から小さき勇者たちの感想記事をまとめており、今回上記の更新中にてこちらの記事を引用・ご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
 乱文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。
4. Posted by つぶあんこ   2007年06月04日 14:35
どうもです。適当にご利用ください。

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