2006年07月29日

ゲド戦記 5点(100点満点中)

外道照身霊波光線!
公式サイト

思った通りに駄目でした(笑

本作の原作者が今回の映画化にOKを出したのは、アカデミー賞などで国際的に高い評価を受けているアニメ作家・宮崎駿が作ると思ったからなのだそうだ。

そうやって映画化権を取得しておいて、実際に監督を担当するのは今までに一度もアニメも映画も作った事がない息子の宮崎吾朗とは、これって詐欺じゃないのかと言いたくなるほど原作者が可哀想に思えてくる。

別に世襲だろうがなんだろうが、作品としての出来がよければ誰も何も文句は言わないし、仮に言う奴がいてもそれは単なる妬みとして一蹴されるだけだ。

が、本作の出来は良くない。これは批判されて当然。しかも宮崎駿の息子である事を宣伝材料としてアピールしまくっているのだから、比べられて当然。

というわけで、作品として何が駄目なのかを、ところどころ宮崎駿との比較を交えながら述べていく。


まずは脚本・ストーリー部分について。

本作は脚本にも宮崎吾朗の名前がクレジットされており、当然氏の責任によって書かれていると思って問題ないだろう。

これまでの宮崎駿作品には、「説教くさい」という評価が付いて回っていたが、それはあくまでも作品内の世界観や演出・ストーリーなどの中に、暗喩として込められていた"作家の主張"が、作品鑑賞を通じて観客に訴えかけられているというものであり、それは宮崎駿の作家性を際立たせるための一つの手段であったといえる。

ひるがえって本作も、より極めて説教くさい作品と仕上がっているのだが、その手法はひたすら登場人物に説教台詞を喋らせるという、映像作品として最低の手法が取られている。本作は、全ての登場人物のほとんどの台詞が説明と説教で構成されているというつくりになっており、全く評価できるものではない

全ての表現を文字のみで行うメディアである小説では、台詞が説明的であったり説教であったりしても、問題はない。だが、映像作品には、ダイアローグ以外の表現手法がいくらでもある。それらを使い分けて独自の作品とするのが映像作家の仕事である。眼で言葉を追う小説と、耳で言葉を聞く映画では、言葉の持つ意味は全く異なるのだ。小説的台詞をそのまま喋らせるなど言語道断であり、それは創作とは呼べない。

ストーリーは、長い原作の途中の1エピソードを抜粋して作られているのだが、上述の様に説明と説教ばかりで埋め尽くされている割には、物語の根幹に関わる重要な説明はほとんどなく、結局どういう世界のどういう話なのかはよくわからないため、余計に説教のみを押し付けられているようにしか感じない印象を強めてしまっている。

つまりひとつの物語として成立していないのだ。


次に映像面について。

本作のキャラクターデザインは、いつもの宮崎アニメと同様、大塚康生風のキャラクターが使われているので、普通の人たちなら、いつもとあまり変わらない印象を受けるのかもしれない。

が、宮崎駿アニメが優れていた理由は、アニメ製作における各作業パートへの異常なまでの介入と要求が、それを許せるだけの天才的なセンスに満ちていたからなのだ。

アニメは実写と違って、全てを人間の手で絵に描いて見せなければいけない。デジタルが発達した現在でも、データを入力するのは人間の手であり、要求されるセンスは変わらない。

まず、映像の設計図となるコンテに壊滅的にセンスがない。さすが素人としか言い様のない、凡庸でつまらない構図が延々と続き、見ていて少しも楽しめない。「これをここからこう見るのか!」と、カットごとに驚きを与えられていた宮崎駿作品とは大違いだ。まずこの時点で駄目。

風になびく髪、枝から地面に落ちる枯葉、鳥の羽ばたき、立ちのぼる煙…

そういった、画面上に存在するあらゆるものの"動き"を、どの様に描き動かすか、どの様に見せるのかが、アニメーターの才能・技術の見せ所であり、ここにアニメーターの作家性が如実に示されるのだ。

これらの作業は、もちろん複数の人間によって分業で行われるのだが、宮崎駿はこれらの作業に対して細かすぎるチェックを入れ、細かすぎる指示をして、自分の作品を作り上げていた。だからこそ、宮崎アニメの映像は、独自のカラーを強く打ち出しているのだ。

が、今回の監督はアニメを作った経験ゼロの素人であり、そんな指示ができるはずもない。これまた、宮崎駿の指示によるセンスに満ちた中割りとは、比べようもない低いクオリティとなってしまっている。予告編でも使われている、ヒロインの髪が風になびく映像などを見てもらえれば、アニメに詳しくなくてもわかると思う。

映像作品として、見るべきところは無い


最後に声関連。

本作も例によって、役者やタレントを声優として起用するという、誰に何の得があるのか皆目理解できないキャスティングがなされている。

さすがのジブリブランドのお陰で、他社作品に比べて豪華な顔ぶれが揃ってはいるのだが、違和感無く聞けたのは香川照之くらいで、後は散々な結果。もちろん、小説的な説明・説教台詞も足を引っぱってはいるのだが。

これは、"作品を楽しむ"という最重要課題にとって、明らかにマイナスとしかなっておらず、この悪しき慣習は本気で考え直さなければいけない重大問題であろう。

タレントや芸人を使うなというのではない。役に合った演技のできる人間を使って欲しいだけだ。

一番酷かったのは言うまでも無く、何故か本作のヒロインに大抜擢されプッシュされまくっている、手嶌葵とかいうよくわからない素人だ。

予告編やCMなどでも聞ける通り、明らかに素人としか思えない棒読みだ。宣伝で使われまくって耳について離れない劇中歌は、谷山浩子によるメロディーが秀逸なだけで歌が上手いわけではない。

なぜこんなズブの素人を起用したのかは全くわからない。パパがエラい人なんですか?


結論:宮崎駿の天才ぶりを再確認できるというだけの、単なる駄作。デビルマンのようなネタ的楽しみも全く無く、存在価値は無い。こんな愚かな商業主義の塊でしかない悪作を、これ以上作らせてはいけない。もうジブリは潰れるべきだ。

原作は面白いので、機会があれば。


tsubuanco at 16:25│Comments(28)TrackBack(4)clip!映画 

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この記事へのコメント

1. Posted by 田中墓石   2006年07月31日 06:31
5 全くもってその通りですw
2. Posted by とおりすがり   2006年07月31日 11:06
1 私もみてきたんですが
やたらと殴る蹴るなどの描写が多いせいか
ハイタカが刺されそうになったところで
子供が一人泣き出して親と一緒に劇場から
でていきましたからねえ。汗
やっぱり娯楽性がまったくないのが
この映画の最大の失敗ですねえ。
3. Posted by NANA   2006年07月31日 13:44
5 まったくそのとおりです。
言い返す言葉が一つもありません。
映画がひどすぎましたね。

親父の駿さんは原作が好きでむかしアニメにしたくって申し込みにいったそうですが、ことわられました。
それで仕方なくナウシカを作ったらしいです。
その後もいろんな作品でゲド戦記のネタを使いながらつくっています。
それほど思い入れのあった原作をここまで無茶苦茶にされて、親父の駿さんはさぞ無念っだったでしょうね。

もう一度、第1巻でいいから駿さんが作るべきじゃないでしょうか?
っていうか作り直さないとあらゆる面でお詫びできないんじゃないかな?
4. Posted by yosh   2006年08月01日 02:27
いやいや想像どほりですね。
いがみ合つてた吾郎の親父が試写を見た後のコメントが、
「素直な作りで良かった]
でしたが、まあプロの目から見れば他に言いやうが無かつたのかなあと。

ジブリは、と言ふか、こういふ売り方を積極的に行ふ鈴木某は腹を斬つて死ぬべきであると思ふね。駿氏も廻りの人材に恵まれないもので、ただただ気の毒です。

まづい声優はトトロ以降のジブリのお家芸(それでも糸井重里はマシであつたね)になつているけれども、作品自体が面白くなければ、より粗が目立つね。この前TVでやつたハウルも酷かつたけれど、それ以下かも。

ところで"場人物に説教台詞を喋らせるという、映像作品として最低の手法"てのは某橋田壽賀子とか言ふ無能だけれどもやたら先生面して偉さふな脚本家にも言へますな。何故あのやうな者をもてはやすのか、僕にはさつぱり判らない。
5. Posted by さむらい   2006年08月01日 08:54
みなさん厳しいですな。
観てないから解らんけど、逆に興味がわく。
10. Posted by ebihara   2006年08月01日 23:35
>さむらいさん

ほめるところがあるなら多分誰かがほめていますよ。私の知る限りテルーの歌のメロディーのみかな。
11. Posted by Blog主には・・・   2006年08月04日 00:11
口直しに「時をかける少女」を観にいってもらいたい。
12. Posted by ぬるぽ   2006年08月04日 11:56
5 全く、仰る通りです!!私が映画に対して感じた不満を論理的に述べて下さって、読んでいてすっきりしました。
13. Posted by つぶあんこ   2006年08月04日 14:28
・田中墓石さま
 どうもです。

・とおりすがりさま
 というかそれ以前の問題でしょう。

・NANAさま
 会社を大きくしただけで
 作品の向上には全く寄与していない鈴木氏が消えない事には、
 愚行は止まらない様な気がします。

・yoshさま
 橋田壽賀子は下世話な作風があまり好きではないので
 最近はほとんど見ないんですが、小山内美江子の金八の様に、
 説教の資格がある人間が、ドラマ展開の締めとして説教をするという様な使い方は、
 説教台詞を作品内に有用に活かせている好例と思うのです。

・おさむらいさま
 見たら負けだ!

・ebiharaさま
 ボクシングかモデルかどっちの方でしょうか?
 あのメロディーだけは本当にいいと思います。
 「みんなのうた」とかで流れてても違和感ない名曲ですよね。

・ Blog主には・・・ さま
 地元で公開されたら行きます。

・ぬるぽさま
 どうもです。
14. Posted by ペト子   2006年08月04日 22:56
私はまだ見ていないのですがおすぎさんが
クソつまらない最低の映画だとラジオで言って
たんである程度予想はしてましたがここまでとは・・・
私は宮崎アニメでは魔女の宅急便が死ぬほど
好きなのですがゲドをわざわざ映画館行って
立ち見するより魔女の宅急便をビデオレンタル
で借りて家で寝っ転がって見たほうがよほど
有意義な気がしてきました
15. Posted by 2ちゃんから来ました   2006年08月05日 02:42
全く同感です。論理的に説明されているので、心のモヤモヤがすっきりしました。
このブログをスタジオジブリ(特に鈴木プロデューサー)に読んでもらいたいです。

こんなの世界上映されたら、日本のアニメ文化に傷が付きます。
16. Posted by 到来   2006年08月05日 21:35
マジその通り。ズブの素人の監督と声優。でも高いブランド性。なんだこれって言いたくなりますな。
親子喧嘩もいいけど、それで作品に悪影響を与えるのは勘弁して頂きたいもの。
17. Posted by つぶあんこ   2006年08月06日 22:34
・ペト子さま
 おすぎは映画評論家などではなく、
 配給会社から金を貰って映画の宣伝をする
 単なるイロモノ芸人ですので、彼(彼女?)の映画の話は
 全くもって客観的な指標にはなりません(><)

 ちなみにオイラが一番好きな宮崎アニメは
 『パンダコパンダ』です。

・2ちゃんから来ました さま
 鈴木氏は金の事しか考えてないと思うので、
 仮に読んでも無駄でしょう。

・到来さま
 というか吾朗氏が鈴木氏に騙されて
 監督を引き受けちゃったから
 ケンカになったようですね。
18. Posted by じじさん   2006年08月10日 01:52
そう言えばもうTV宣伝見ませんね。ジブリも元が取れないとわかって打ち切ったのか。
19. Posted by つぶあんこ   2006年08月13日 04:45
ですか?
あまり日テレ見ないもんでよく知りませんが。
20. Posted by (゚∀゚)   2006年08月15日 14:39
つぶあんこ氏・・・(・∀・)イイヨーイイヨー
21. Posted by つぶあんこ   2006年08月17日 16:23
どうもです。
22. Posted by more   2007年07月18日 14:37
1  DVDになっちゃいましたね。
確か、劇場で見たとき、すっげー
損したって気持ちと後悔と落胆は
かなりあった。
でも、そのはずなのに、
買うか迷う俺・・・。
人間、忘れることができるから
生きていられるんですねぇ。
ってここを見直して、読み直して、
買わない決意を固めます!

 個人的にはシュナの旅を、親父さん、
リメイクしてほしいなぁ。
ゲド戦記は原作知らない^^;
23. Posted by つぶあんこ   2007年07月19日 17:20
まあ買いたい人は買えばいいと思いますが。
24. Posted by 徒歩   2007年07月26日 23:28
そう1ヶ月前くらいでしたっけDVD発売のCMしてたのって・・・
そのCMを目にして僕は
「あれ?ゲド戦記ってレンタルで観たんじゃなかったっけ??TVだったっけ?? あれぇ?????」
まさか、まさか帰りに途中下車して映画館で観た事すらすっかり忘れ去っていたとは・・・
まぁその程度のモノでしたがね(笑
25. Posted by つぶあんこ   2007年07月30日 17:39
逆に忘れられません
26. Posted by 名無しさん   2007年07月31日 17:35
グロッキー状態の敵役の絵が画太郎先生っぽかったのだけ覚えてます。
27. Posted by つぶあんこ   2007年07月31日 17:44
あれは子供にはトラウマ必至のホラー絵でしたねえ。目の描き方が特に。
29. Posted by udon   2007年10月23日 00:36
見えぬものこそ…

結局、鈴木プロデューサーの責任なんじゃないですかね。
あのスタッフの中で、一番プロとしての経歴が長く、一番責任を取るべき立場の人なんですから。

吾郎なんて、別にいいんですよ。
作れなくて当たり前なんだから。
マンガの編集者が新人のネームを没にし続けるように、鈴木Pは、吾郎のコンテを、使い物になるまで、没にし続けないといけなかったはずなんです。
そうやって、叩いて叩いて、いい物が出来たらGOを出す、というのが「まっとう」な方法なんですけど。

明らかに、見切り発車で作られちゃってる。
なんとかなるだろ、スタッフも優秀だし、というノリで。

もう、どこがつまらなかったとか、考えるのもおっくうな程の駄映画でした。
30. Posted by つぶあんこ   2007年10月23日 17:28
鈴木氏に的確なチェックが出来るとも思えませんが(笑
31. Posted by ぽち   2007年11月28日 00:22
原作を中途半端に変えたため、主人公がただの非行少年になったり、原作で補完しなきゃ話がまとまらなかったり、悲惨な映画でしたね。
プロの声優を使わないのは宮崎駿のこだわりだそうです。
普通の人間は生活する上で、あんなに作られた声で会話しないから。だそうです。
あらゆる評論家が酷評しても、75億も稼げるなんて、改めてジブリブランドの凄さを感じた作品でした。
32. Posted by つぶあんこ   2007年11月28日 19:10
むしろブランドに盲目的に従う愚衆の多さにウンザリです。
33. Posted by テン   2008年12月04日 13:18
はじめまして、私は谷山浩子ファンです。
谷山さんのメロディーが秀逸とのこと、大変嬉しく思います。
分かってくださる人はいるのですね
(^▽^)!

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