2006年09月06日

アキハバラ@DEEP(映画版) 20点(100点満点中)

ダルマさんが消された
公式サイト

『池袋ウエストゲートパーク』や、最近では『下北サンデーズ』等で知られる、石田衣良の同名小説を実写映画化、本作に先立ってドラマ版も製作・放映されているが、両作は制作会社もスタッフもキャストも異なる完全な別企画であり、関連性はない。

ドラマ版は、原作の大筋をベースとして、"現代の秋葉原"や"現代のオタク"をしっかりと研究・取材した上でリアル、ディフォルメ、コメディを絶妙に混在させ、更に原作にはない"秋葉のトラブルシューター"という設定を追加するなどして、特異なシチュエーションとキャラクターを最大限に活かしきった作品として、大きく評価出来るものであった。

ひるがえってこの映画版、大まかなストーリーは原作に沿ったものとなっているが、ドラマ版に匹敵あるいは超越する面白さを出せているかと言えば、かなり厳しい。あえて比較せず、全くの別物として評価した場合でも同様。

まず、オタクという設定を見せる上で、真っ先に目につくであろう要素はその外見である。が、本作のメンバー達はどれも変に小奇麗で、全くオタクっぽく見えないため、通行人等で映っている"リアルオタク"と全くなじんでおらず、浮いた存在になってしまっている。

更に外見だけでなく言動なども、オタクっぽさはほとんど感じられない。"目を見て話せない"だの"吃音"だのと言った個性は、本来オタクとは関係ない、どんな人種にも有り得るものだ。年寄りではあるまいし、"パソコンが得意な人=オタク"でもないだろう。

舞台となる秋葉原も、表通りの電気店がクローズアップされ、裏通りや路地のパーツ屋・ジャンク屋はアングラ扱い。現在のいわゆる"萌えの聖地"としての一面はほとんど取り上げられず、唯一登場するメイドカフェはまるでキャバクラである(というかドラマ版に登場した"エロメイドカフェ"に似ている)。

要するに、この映画の製作者は、オタクの事も秋葉原の現状も、全くわかっておらず、それならそれで取材をする事もなく、「秋葉原・オタクってこんなものかな?」という、製作者の脳内イメージを見せられているだけなのだ。それでも、実際と違うなら違うで、別の魅力や面白さを持った世界構築が出来ていればいいのだが、そんな事もない。

こういった、基盤となる部分がしっかりと設定されていないので、この時点で話にならないのだ。そもそもオタクや秋葉原を題材とした意味があったのだろうかという疑問さえ起こってしまう。

ただ、映像的な面で言えば、光と影のコントラストを巧妙に駆使した画面作りは美しく、独自の雰囲気を出す事に成功しており、この部分だけ見れば、そこは評価出来る。

が、この"全体的に暗い画面"が、作品全体の雰囲気までも暗いものとしてしまっている事も確かで、本来ネガティブな印象が強いオタクがポジティブに活躍するはずのストーリーにおいて、この映像作りの方向性は逆効果であるとしか感じられない。

内容的にも、ひたすら暗い話が淡々と続き、生々しい暴力・拷問・監禁シーンには痛みどころか嫌悪感さえ感じてしまう有様だ。それらのシーンは本来、最後に用意されている、カタルシスとなる展開を際立たせるためのギミックなのだが、最後まで淡々と暗いトーンで話が続くため、カタルシス自体が薄く、結局暴力シーンの後味の悪さを引きずったまま終わってしまうのだ。これは困る。

また、いわゆる"オタクネタ"はほとんど出てこないのに、何故か藤圭子の歌が流れたり緋牡丹お竜の映画を見たりと、60〜70年代の東映映画ネタが強調されるなど、本作のターゲット層(若者層・現代オタク層など)にとって意味不明な作りとなっている。(おそらくは先述の暴力シーンも、この"東映映画ネタ"の一環なのかもしれない)

本来なら個性が溢れてこぼれるほどの登場人物達も、先述の吃音等の外面的な特徴をなぞっているだけで、全くの没個性で、キャラクターの魅力というものがなく、少しも感情移入出来ない。各メンバーの持つ、吃音や潔癖性、フリーズなどの"欠点"も、ストーリーを面白くするために活かされているとは言えない。

唯一、敵キャラである中込社長のみが、異常性・幼児性を強調されたキャラクターとして立っていたくらいだが、それもまた、作品の雰囲気を陰鬱なものとする一因になってしまっているのは皮肉か。

何より、メンバー達を結びつけ、なおかつ中込と敵対する理由の根本ともなるはずのキャラクターであるユイの存在が、この映画版では極めて軽いものとなっているのも問題。この事も、全体的なストーリーの流れに一貫性がなくなり、キャラの行動理由が希薄となる一因だ。後半に至っては、完全に存在が消えている有り様。

結局のところ本作は、誰に見せようと思って作ったのかが全くわからない、ちぐはぐな作品に終わっている。読んでないのではないかと疑ってしまうほど原作の良さを活かせず、それに代わる独自の面白さも薄い。上映期間短縮は当然の結果だ。見なくていいです。

ドラマ版は出来がいいので、機会があればどうぞ。
立派

蛇足:
山田優のファンなら、一応チェックしておいた方がいいかもしれない。手足がスラッと長い彼女の格闘シーンは、それなりに見応えはある。

相手が寺島しのぶでしかも負けるというのは問題だが(笑

個人的には、ドラマ版の小阪由佳を応援しています。松嶋初音もいろいろ大変だろうがガンバレ。





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この記事へのコメント

1. Posted by Ageha   2006年10月15日 02:02
いきなりわわわっとTBしてどうもです。

ユイのライフガードのこともそうだし、
ダルマさんってどんなひと?ってのがあって
原作も読みました。
オチは本のほうが好きかな・・・。

寺島しのぶさんと親子共演が最近多いんですよ
お竜さん。(笑)
それが狙いだったのかもしれません。

個人的にはガンダムネタ満載で
それだけで喜んでました。(!)
2. Posted by つぶあんこ   2006年10月16日 11:52
寺島しのぶ×藤純子とか、
藤圭子の歌が流れるのは山田優と顔が似てるからとか、
意図はわかるんですけど、それを若者向けのこの映画で
やる意味はあるのかというのが謎です。

ガンダムネタはただ出してるだけといった感じで、
一昔前のパロディセンスに感じました。

量産型ザクを見たアキラが「何この地味なロボット」
って言うところは笑えましたが。

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