2006年09月17日

ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟 90点(100点満点中)

レオ 君の番は?
公式サイト

昭和ウルトラのTVシリーズ最終作『ウルトラマン80』から、ストレートに引き継いだ時系列と世界観で、親子揃って楽しめる作品として好評なシリーズ最新作『ウルトラマンメビウス』の劇場版。

平成ウルトラの映画は、ゼアス以降コンスタントに製作されているが、"ウルトラ兄弟"が活躍する映画は平成初。完全新撮のウルトラ兄弟映画としては『ウルトラ6兄弟vs怪獣軍団』以来、約四半世紀ぶり

脚本は長谷川圭一、監督は小中和哉と、平成ウルトラを上質な作品として作り続け、なおかつ昭和ウルトラ直撃世代でもある、理想的と言って問題ない布陣。実力のあるクリエイターが、思い入れたっぷりに挑んだ、まさにウルトラ40周年を記念するに相応しい作品となった。

本作の一番の見どころはやはり、黒部進、森次晃嗣、団時朗、高峰圭二の4人が本人(ウルトラ兄弟)役で出演する事だろう。しかも単なるゲスト出演的扱いではなく、当時のままのハヤタ、ダン、郷、北斗を演じきっているというのが何よりも嬉しい。年をとっている事に対するフォローも、劇中でしっかりと説明されており、抜かりはない。

特に高峰圭二の熱演は印象的で、暴走しがちな熱血漢・北斗星司の、当時のキャラクターがそのまま蘇ったかの様な演技は見事。北斗の登場シーン、ウルトラリングを嵌めた手がアップでフレームインし、職業はコック。しかも私服では白スカーフと、見た目も中身もこだわりぬいた、その姿勢には感服。

クライマックスに彼らが変身するシーンなどは、もう涙無くして見る事は不可能だ。安易なお涙頂戴ではなく、"歴史の重み"による感動は本物の感動なのだ。

この様に、昭和ウルトラの設定や背景を、一切手を抜かずに活かす姿勢が、全編通して溢れている。大人はいちいち感激し、児童誌を熟読しているマニアックな子供も納得し、よくわからない子供は親に教えてもらう。ファミリー映画として理想的な状態だ。

冒頭からいきなり、マン、セブン、新マン、エースの4人が、ヤプールの変異した最強超獣・Uキラーザウルスと戦うシーンから映画は始まる。出し惜しみも焦らしも全くない太っ腹な構成に、大人も子供ものっけから画面に釘付けだ。

このUキラーザウルス、明らかにエースキラーのデザインからアレンジされたもので、しかも戦う場所は月面。これだけで昭和ウルトラ世代の魂を大いに刺激するのだが、もちろんそれだけで終わらない。

『ULTRAMAN』以降、TVシリーズも含めCG監督を担当している板野一郎による、ウネウネと襲い来る触手や、無数に発射される納豆ミサイルの隙間を縫う様に飛びまくるウルトラ兄弟の空中戦の映像は、まさに実写版板野サーカス。まだタイトルすら出ていないのにこのハイテンション。この時点で観客のハートをガッチリ掴む事に大成功している。

この実写(CGだが)板野サーカスもまた、本作の大きな見どころである。巨大ヒーローであるウルトラマンが小さく見えるほどの超巨大な敵に、ウルトラ兄弟がチームプレイで挑み戦う。これはかつて内山まもるの漫画等で見られたシチュエーションであるが、それを実写映像で、しかも劇場の大スクリーンで、なおかつ板野一郎による演出で見られると言う、まさに夢の実現だ。

最近のTVシリーズでは自主規制されている切断技も、本作ではついに解禁。八つ裂き光輪、アイスラッガー、ウルトラブレスレット、ウルトラギロチンが次々にUキラーザウルスの触手を斬りまくるラストバトルのカタルシスは、視点が目まぐるしく変わりまくる映像と相まって迫力満点。

出番の少ないタロウやゾフィも、飛行→スライディング着地→ストリウム光線の流れをワンカットで見せる映像や、上空からのM87光線発射などで存在感は充分だ。(というか篠田三郎が出ない事が、本作一番の不満点なんだが)

もちろんCGだけでなく、着ぐるみとミニチュアセットを使った昔ながらの巨大特撮映像も、最新の技術と一流のセンスとによって、劇場の大画面で見て遜色のない、リアルで迫力あるものとなっている。

第二次ウルトラシリーズ(帰マン〜レオ)の頃、"ビル街の真ん中にポッカリ何もないスペースが空いている"状態が、俗に"ウルトラ広場"と揶揄された事もあったが、本作では画面手前にもミニチュアを立体的に配置し、更に徹底してローアングルで撮影する事で、この"ウルトラ広場"を見えなくするとともに巨大感、奥行き感を出すという効果を上げているのだ。

戦う敵はUキラーザウルスだけでなく、ザラブ星人、ガッツ星人、ナックル星人、テンペラー星人と、かつてウルトラ兄弟と戦った悪の宇宙人が登場し、ザラブは偽ウルトラマンとなり、ガッツとナックルは十字架でウルトラマンを磔にし、テンペラーは大口を叩く割に弱いと、旧作ストーリーを彷彿とさせる活躍ぶり。

この星人達との戦闘を、中盤にテンポ良く配置する事で、子供にとって退屈となるドラマ部が冗長になる事を防いでいる構成も、よく考えられており、また、クライマックスの二転三転する攻防もまた、良く練られたものとなっている。

ドラマ部では、心に傷を負った一人の少年が、ウルトラマンの頑張りを見て、それを克服するというストーリーが軸となっているが、普通この手の作品に出て来る子供キャラというのは、正直存在自体が目障りで少しも感情移入出来ない事が多い。

が、本作の場合は、ウルトラマンに憧れる少年のその感情の動きを、トラウマを背負う段階からしっかりと描き、二転三転するウルトラマンの戦いと並行してその心理的葛藤を見せる事で、感情移入を促して観客視点の象徴となり、更にドラマ部と特撮部に繋がりを持たせ、双方が相乗効果で盛り上がるという、見事な構成となっている。これはドラマ性の高い平成ウルトラを書き続けた、長谷川圭一の本領発揮である。

これらの映像、ドラマを盛り上げているのが、佐橋俊彦による劇伴音楽である。ウルトラ兄弟が登場するシーンでは、各ヒーローの主題歌をアレンジした曲を流し(新マンとエースは主題歌だけでなく冬木透による"テーマソング"までも使用するというこだわり)、兄弟が揃って活躍するシーンでは「ウルトラ6兄弟のうた」を様々にアレンジした曲を流す事で、通常の何倍も感動を増す事に成功している。パロディやオマージュなど、本歌取りを得意とする佐橋俊彦のアレンジセンスが存分に発揮されている素晴らしい仕事ぶりだ。

ウルトラ兄弟の"声"に関しては、初マン、新マン、エースは当時のものを、セブンは本人によるアフレコ、タロウは『ウルトラマン物語』で声を演じた石丸博也が、それぞれ演じており、エースの声が納屋吾朗でない事を除けば、ほぼ不満のない選択となっている。特にセブンの掛け声を勇ましく演じる森次晃嗣は、数年前まで平成セブンで演じてた事もあり、相変わらずの迫力。

本作、「ウルトラマンが好きで良かった!」と心の底から思える、最高の作品である。ウルトラマンが好きなら、かつて好きだったなら、迷わず劇場の大画面で観るべし。エンディングの映像がある意味一番楽しいかもしれないので、最後まで帰らない事。





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1. 「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」試写会 感動はあなたの目で。  [ 長江将史〜てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ  ]   2006年10月03日 20:17
万感の想い、本当に幸せですひと足先に観てまいりました「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」このブログをご覧になっているすべての方に観てもらいたいので、ネタバレを極限までさけてありのままに感動を伝えたいと思います。
2. 「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」 作り手の「ウルトラ愛」を感じる  [ はらやんの映画徒然草 ]   2006年10月05日 21:08
ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作品です。 「スーパーマン リターンズ」を観

この記事へのコメント

1. Posted by TXJ   2006年09月20日 00:33
ガッツ星人、ナックル星人、テンペラー星人と並ぶとザラブ星人は1枚格落ちるかな、という感じなんですが(ウルトラマン中の強さで行ったらケロニア、メフィラス星人あたりじゃないですか<そもそも宇宙人少ないんですが>)、ニセメビウスってところで、納得。
あとは、喋り始めたら青野武兄だったのに気付いた瞬間思わず噴いた。(森山周一郎兄はもう鬼籍に入ってますが)青野武兄、40年ぶりに同じ宇宙人アテたか……すげぇ。
2. Posted by つぶあんこ   2006年09月20日 11:57
青野武は88年の帯番組『ウルトラ怪獣大百科』で
怪獣を紹介するナレーションをやってたんですけど、
ザラブ星人の紹介の時だけは一人称で自己紹介してたんですよね。

中に入ってた事もあって、思い入れもある様で、
ファンとしてはうれしいですよね。
3. Posted by まきしむ   2006年09月22日 02:57
>TXJ
森山周一郎を勝手にに殺したらあかん
4. Posted by endo   2006年09月28日 01:58
自分は各ウルトラの回想シーンで思わず熱いものが
こみ上げました。自分自身が子供の頃観たものが、今こうして大人になって観ていることに歴史と時代の共有意識を受け自分自身にしか分らない歴史に感動したみたいな(笑




5. Posted by つぶあんこ   2006年09月28日 17:05
あの回想シーンもよかったですねえ。

でも2回目の鑑賞の時には、
ダン、郷、北斗がそれぞれヒロインがらみの回想なのに、
ハヤタだけピグモンが死ぬシーンだったりして、
「お前、そっちの方が好きだったんか!」って
心の中で突っ込んでしまいましたけど(笑

それと、カプセル怪獣とマケット怪獣の
夢の共演が見られなかったのが残念です。
TVの方でもいいから見てみたいものです。
6. Posted by エースキラー   2008年05月01日 19:19
>TXJ
ガッツ星人とナックル星人とテンペラー星人とザラブ星人とヤプールは、島本和彦のウルトラマンGのオマージュではないのですか?

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